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 京都や奈良の寺社と比べて著しく劣るのが鎌倉寺社の庭園である。京都や奈良の寺社を訪れると必ずと言って良いぐらい手入れが行き届いた素晴しい庭園がある。1つ2つでも京都や奈良の寺社の庭園に匹敵するものがあればどんなにか印象も変るのであるが。<br /> 鎌倉では瑞泉寺の庭園は夢窓疎石の手によるものと伝えられ、国の名勝に指定されている。仏殿背後の岩を掘り出した庭園は独自の景観を持つ禅宗庭園として有名である。しかし、実際に行ってみるとびっくりする。草茫々なのである。何時いってもそうである。聞いたら、庭園の花の種が落ちるように花が枯れてもそのままにしているそうだ。名勝でこれほど手入れがされていない庭園は有り得ないことだ。<br /> 鎌倉の寺の庭園では昭和や平成になって整備されたものが結構多い。円覚寺の庭や建長寺の庭は発掘調査に基づいて復元されたものと言う。しかし、円覚寺の庭の池には大きくはない鯉が放たれていて、まるで成金趣味の庭の感じである。円覚寺の僧侶や建長寺の僧侶に言わせると、鎌倉禅宗の寺の庭園は初期の庭園の形であって、後に完成する枯山水の庭園と比べると未熟な感じを受けるのは否めないとのことだ。京都や奈良の寺社の庭園はその後、室町以降の完成された枯山水の庭園などが多く、洗練されたものである。なるほど言われる通りである。しかし、京都松尾大社の庭園のように、昭和になって造営されたものでさえ洗練されており、散策して庭を楽しめる。一方、昭和になって造営された光明寺の枯山水の庭はコンクリート製の塀で隔てられ、京都や奈良の築地塀とは異なり、趣を損ねてしまっている。塀の外の電柱が目に入るのも興ざめである。最近造営された明月院(あじさい寺)の枯山水の庭は庭を散策しても気づく人がほとんどいないぐらい印象が薄い。広い庭の片隅に枯山水を造っても広い庭の雰囲気に飲み込まれてしまう。浄妙寺の枯山水の庭園は垣根で仕切られ、座敷の縁側に接しているが、垣根ではやはり空間を仕切れていない。垣根越しに広い庭の中に埋没してしまっている。京都や奈良の寺社では枯山水の庭園は必ず築地塀や建物で仕切られた空間に造られている。<br /> 京都や奈良の寺社の庭園は洗練された枯山水の庭園ばかりではなく、池が広がる水をたくわえた庭園も多い。広い庭園の一角には茶室がしつらえてあったりし、手入れも行き届いており、庭を散策するとほっと心が和む。鎌倉の寺の庭園内に茶室が設えてあるのを見たことがない。横浜三渓園にでも行かないと庭に茶室は見かけない。報国寺の竹林の中には茶屋があるが、茶室のような趣はない。光明寺のもう一方の池のある庭園(記主庭園)は散策できないために加点できない。また、散策するには狭い感じがする。この池の奥に、2階部分が八角で屋根に鳳凰を戴くお堂(大聖閣)が完成間近であるが、完成後はこの池のある庭園(記主庭園)も散策できて楽しめるようになるかもしれない。期待が湧く。鶴岡八幡宮の源平池あたりも雑踏で雰囲気がない。<br /> 鎌倉の寺社の庭園を三星で評価すると、報国寺の本堂裏の庭が1つ星といったところか。竹林の広さに小さな池が埋没してしまっている。残念なことだ。また、海蔵寺の本堂裏にある後庭も素敵に見えるが、公開はされていない。住職に聞くと、「公開すると料金徴収などに人員が必要になり、かえって大変だ。」と言って前の庭を掃除していた。それ以外の寺社の庭園では星1つさえ付けようがない。明月院(あじさい寺)の庭園などは、前庭には手が掛からないと西洋紫陽花を植え、本堂後ろの庭園にも花菖蒲を植えた安直さがあり、使われなくなった炭焼き釜が放置されている。近世の構造物は史跡指定とは無縁であろうから即座に撤去して美観を保つべきだ。花菖蒲や紅葉の時期には有料で開放する庭園としてはお粗末な感じがする。通年公開する庭園にすればおのずと庭のあるべき姿が定まるというものだ。長谷寺は花のお寺として知られているが、下段に池を配した庭を設定し、階段を登って中段に伽藍と展望休憩所を設け、上段裏山には西洋紫陽花などを植えて散策して楽しむ庭園にしている。全体的には参拝路が確保されているだけであり、庭園を楽しめるように散策路が設定されている訳ではない。周回式庭園というコンセプトにしたらそれなに楽しめる庭園になろう。<br /> 覚園寺の境内は史跡に指定されている。昔のままの庭だと言っているが、その実、近年の温暖化で北限が南の紀州あたりに設定されていた柑橘類を試しに庭に植えたら根付いてしまった。ソフトボールほどの柚(ゆず)の実や仏様の手が霜焼したような大きな実を付けた蜜柑(?)がたわわに実っていた。この寺では勝手に境内を散策できる訳ではないから庭を散策して楽しむという訳にはいかない。<br /> 概して言うと、古都鎌倉はそれまでの都の奈良や京都、あるいは近代の東京に比べるととてつもなく狭いことが特徴であろうか。三方を山で囲まれているために発展の余地がなく、山が入り組んで平地が少なく、谷戸を利用して寺社仏閣を建てるしか方法がない。そんな寺社に広い庭園など土台無理なこと。京都や奈良の寺社と比較して境内が狭く、伽藍が小さく、庭園がみすぼらしいのは致し方ないことではある。<br /> 京都や奈良の寺社仏閣を巡るのは3日、4日でも足りない。一方、鎌倉の寺社仏閣を巡るのは1日、2日もあれば足りる。ここに本質が隠れており、奈良や京都のような基準で評価したら点数は低くなるのは当たり前である。このことが奈良や京都の多くの寺社仏閣が世界遺産に指定されたのに対し、鎌倉の寺社仏閣は1992年に世界遺産暫定リストに掲載されたにも関わらず、今だ登録には至っていない最大の理由であろう。少なくても、これ以上多くの観光客が来たら生活もままならないというのが鎌倉市民の率直な気持ちかもしれない。インフラのない町鎌倉の限界は最初から分かっているのである。

鎌倉寺社の庭園

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2008/12 - 2009/12

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ドクターキムル

ドクターキムルさん

 京都や奈良の寺社と比べて著しく劣るのが鎌倉寺社の庭園である。京都や奈良の寺社を訪れると必ずと言って良いぐらい手入れが行き届いた素晴しい庭園がある。1つ2つでも京都や奈良の寺社の庭園に匹敵するものがあればどんなにか印象も変るのであるが。
 鎌倉では瑞泉寺の庭園は夢窓疎石の手によるものと伝えられ、国の名勝に指定されている。仏殿背後の岩を掘り出した庭園は独自の景観を持つ禅宗庭園として有名である。しかし、実際に行ってみるとびっくりする。草茫々なのである。何時いってもそうである。聞いたら、庭園の花の種が落ちるように花が枯れてもそのままにしているそうだ。名勝でこれほど手入れがされていない庭園は有り得ないことだ。
 鎌倉の寺の庭園では昭和や平成になって整備されたものが結構多い。円覚寺の庭や建長寺の庭は発掘調査に基づいて復元されたものと言う。しかし、円覚寺の庭の池には大きくはない鯉が放たれていて、まるで成金趣味の庭の感じである。円覚寺の僧侶や建長寺の僧侶に言わせると、鎌倉禅宗の寺の庭園は初期の庭園の形であって、後に完成する枯山水の庭園と比べると未熟な感じを受けるのは否めないとのことだ。京都や奈良の寺社の庭園はその後、室町以降の完成された枯山水の庭園などが多く、洗練されたものである。なるほど言われる通りである。しかし、京都松尾大社の庭園のように、昭和になって造営されたものでさえ洗練されており、散策して庭を楽しめる。一方、昭和になって造営された光明寺の枯山水の庭はコンクリート製の塀で隔てられ、京都や奈良の築地塀とは異なり、趣を損ねてしまっている。塀の外の電柱が目に入るのも興ざめである。最近造営された明月院(あじさい寺)の枯山水の庭は庭を散策しても気づく人がほとんどいないぐらい印象が薄い。広い庭の片隅に枯山水を造っても広い庭の雰囲気に飲み込まれてしまう。浄妙寺の枯山水の庭園は垣根で仕切られ、座敷の縁側に接しているが、垣根ではやはり空間を仕切れていない。垣根越しに広い庭の中に埋没してしまっている。京都や奈良の寺社では枯山水の庭園は必ず築地塀や建物で仕切られた空間に造られている。
 京都や奈良の寺社の庭園は洗練された枯山水の庭園ばかりではなく、池が広がる水をたくわえた庭園も多い。広い庭園の一角には茶室がしつらえてあったりし、手入れも行き届いており、庭を散策するとほっと心が和む。鎌倉の寺の庭園内に茶室が設えてあるのを見たことがない。横浜三渓園にでも行かないと庭に茶室は見かけない。報国寺の竹林の中には茶屋があるが、茶室のような趣はない。光明寺のもう一方の池のある庭園(記主庭園)は散策できないために加点できない。また、散策するには狭い感じがする。この池の奥に、2階部分が八角で屋根に鳳凰を戴くお堂(大聖閣)が完成間近であるが、完成後はこの池のある庭園(記主庭園)も散策できて楽しめるようになるかもしれない。期待が湧く。鶴岡八幡宮の源平池あたりも雑踏で雰囲気がない。
 鎌倉の寺社の庭園を三星で評価すると、報国寺の本堂裏の庭が1つ星といったところか。竹林の広さに小さな池が埋没してしまっている。残念なことだ。また、海蔵寺の本堂裏にある後庭も素敵に見えるが、公開はされていない。住職に聞くと、「公開すると料金徴収などに人員が必要になり、かえって大変だ。」と言って前の庭を掃除していた。それ以外の寺社の庭園では星1つさえ付けようがない。明月院(あじさい寺)の庭園などは、前庭には手が掛からないと西洋紫陽花を植え、本堂後ろの庭園にも花菖蒲を植えた安直さがあり、使われなくなった炭焼き釜が放置されている。近世の構造物は史跡指定とは無縁であろうから即座に撤去して美観を保つべきだ。花菖蒲や紅葉の時期には有料で開放する庭園としてはお粗末な感じがする。通年公開する庭園にすればおのずと庭のあるべき姿が定まるというものだ。長谷寺は花のお寺として知られているが、下段に池を配した庭を設定し、階段を登って中段に伽藍と展望休憩所を設け、上段裏山には西洋紫陽花などを植えて散策して楽しむ庭園にしている。全体的には参拝路が確保されているだけであり、庭園を楽しめるように散策路が設定されている訳ではない。周回式庭園というコンセプトにしたらそれなに楽しめる庭園になろう。
 覚園寺の境内は史跡に指定されている。昔のままの庭だと言っているが、その実、近年の温暖化で北限が南の紀州あたりに設定されていた柑橘類を試しに庭に植えたら根付いてしまった。ソフトボールほどの柚(ゆず)の実や仏様の手が霜焼したような大きな実を付けた蜜柑(?)がたわわに実っていた。この寺では勝手に境内を散策できる訳ではないから庭を散策して楽しむという訳にはいかない。
 概して言うと、古都鎌倉はそれまでの都の奈良や京都、あるいは近代の東京に比べるととてつもなく狭いことが特徴であろうか。三方を山で囲まれているために発展の余地がなく、山が入り組んで平地が少なく、谷戸を利用して寺社仏閣を建てるしか方法がない。そんな寺社に広い庭園など土台無理なこと。京都や奈良の寺社と比較して境内が狭く、伽藍が小さく、庭園がみすぼらしいのは致し方ないことではある。
 京都や奈良の寺社仏閣を巡るのは3日、4日でも足りない。一方、鎌倉の寺社仏閣を巡るのは1日、2日もあれば足りる。ここに本質が隠れており、奈良や京都のような基準で評価したら点数は低くなるのは当たり前である。このことが奈良や京都の多くの寺社仏閣が世界遺産に指定されたのに対し、鎌倉の寺社仏閣は1992年に世界遺産暫定リストに掲載されたにも関わらず、今だ登録には至っていない最大の理由であろう。少なくても、これ以上多くの観光客が来たら生活もままならないというのが鎌倉市民の率直な気持ちかもしれない。インフラのない町鎌倉の限界は最初から分かっているのである。

  • 光明寺本堂横の枯山水の庭。

    光明寺本堂横の枯山水の庭。

  • 光明寺の池のある庭、記主庭園。工事中で水抜された池。

    光明寺の池のある庭、記主庭園。工事中で水抜された池。

  • 建長寺の庭(右)。

    建長寺の庭(右)。

  • 建長寺の庭(左)。

    建長寺の庭(左)。

  • 円覚寺方丈裏庭園の池。

    円覚寺方丈裏庭園の池。

  • 円覚寺舎利殿下の池脇。

    円覚寺舎利殿下の池脇。

  • 明月院(あじさい寺)の前庭。

    明月院(あじさい寺)の前庭。

  • 明月院(あじさい寺)の前庭枯山水

    明月院(あじさい寺)の前庭枯山水

  • 明月院(あじさい寺)の後庭を望む。

    明月院(あじさい寺)の後庭を望む。

  • 明月院(あじさい寺)の後庭。

    明月院(あじさい寺)の後庭。

  • 明月院(あじさい寺)の後庭の花菖蒲

    明月院(あじさい寺)の後庭の花菖蒲

  • 明月院(あじさい寺)の後庭の花菖蒲。

    明月院(あじさい寺)の後庭の花菖蒲。

  • 明月院(あじさい寺)の後庭の額あじさい。

    明月院(あじさい寺)の後庭の額あじさい。

  • 明月院(あじさい寺)の後庭奥。

    明月院(あじさい寺)の後庭奥。

  • 明月院(あじさい寺)の後庭枯山水。

    明月院(あじさい寺)の後庭枯山水。

  • 明月院(あじさい寺)の後庭の池。

    明月院(あじさい寺)の後庭の池。

  • 長谷寺の裏山。

    長谷寺の裏山。

  • 長谷寺の本堂横の池。

    長谷寺の本堂横の池。

  • 長谷寺下段の庭の桜。

    長谷寺下段の庭の桜。

  • 長谷寺中段への階段横。

    長谷寺中段への階段横。

  • 瑞泉寺の前庭。

    瑞泉寺の前庭。

  • 瑞泉寺の後庭。

    瑞泉寺の後庭。

  • 瑞泉寺の後庭左奥。

    瑞泉寺の後庭左奥。

  • 瑞泉寺の後庭右奥。

    瑞泉寺の後庭右奥。

  • 報国寺前庭。

    報国寺前庭。

  • 報国寺前庭。

    報国寺前庭。

  • 報国寺竹林。

    報国寺竹林。

  • 報国寺竹林の向こうに茶屋が見える。

    報国寺竹林の向こうに茶屋が見える。

  • 報国寺後庭。

    報国寺後庭。

  • 報国寺後庭本堂脇。

    報国寺後庭本堂脇。

  • 報国寺後庭本堂脇の枯山水のような庭。

    報国寺後庭本堂脇の枯山水のような庭。

  • 報国寺後庭本堂脇の草に覆い隠された池。

    報国寺後庭本堂脇の草に覆い隠された池。

  • 浄妙寺の枯山水の庭。

    浄妙寺の枯山水の庭。

  • 座敷から見た浄妙寺の枯山水の庭。

    座敷から見た浄妙寺の枯山水の庭。

  • 浄妙寺上の庭園。

    浄妙寺上の庭園。

  • 浄妙寺の庭園。

    浄妙寺の庭園。

  • 鶴岡八幡宮池脇。

    鶴岡八幡宮池脇。

  • 鶴岡八幡宮源平池の蓮の花。

    鶴岡八幡宮源平池の蓮の花。

  • 海蔵寺の後庭を望む。

    海蔵寺の後庭を望む。

  • 海蔵寺の後庭。

    海蔵寺の後庭。

  • 海蔵寺の後庭。

    海蔵寺の後庭。

  • 海蔵寺の後庭。

    海蔵寺の後庭。

  • 覚園寺前庭。

    覚園寺前庭。

  • 覚園寺前庭。

    覚園寺前庭。

  • 覚園寺前庭。

    覚園寺前庭。

  • 覚園寺後庭。この木々の向こうに本堂がある。

    覚園寺後庭。この木々の向こうに本堂がある。

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