2025/07/20 - 2025/07/22
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norijiroさん
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ここのところ、旅先の決定には家族の意向が反映されてきた。そろそろ私の番ではないだろうか。ということで、2025年の夏は以前より興味のあった中央アジア方面への渡航をたくらんでいた。が、フライングで買ってきたウズベキスタンのガイドブックを片手にいくら妻にアピールしても、「はぁ」とか「へぇ」とか「ふぅん」とか、捨て仮名を伴ったまるで気のない返事がかえってくる。要は「貴意に添いかねる」ということであろう。それならばと、子どもらに採用の可否を尋ねたところ、「飯うまいの?」と、反語的ニュアンスに満ちた懐疑的な意見を頂戴した。地元料理は羊肉が中心で、しかもかなり脂っこいらしい。羊肉は私の苦手な食べ物10選に常にランクインしている禁断の食材で、これにたっぷりの脂身がつけばトップ3入りは確実。中央アジアには行きたいが、現地での食生活を考えると躊躇してしまう。
そうこうしているうちに、どうやらマイルの期限が迫っていることに気づいた。ここ数年ズルズルと延長されてきたが、そろそろ使わないといけないらしい。相変わらず予約の取りにくいANAの特典航空券だが、いろいろと頑張って検索すると、提携航空会社であれば夏休み中にいい感じで予約できる行き先がいくつか見つかった。その一つが人民のフラッグシップ・中国国際航空を利用してのローマである。そのことを妻に話すと、これまでの素っ気ない反応とは一転し、ダブルの感嘆符つきで「行きたいっ!!」と、中央アジアの1,000倍くらいの意欲をみせた。ついでに、子どもらにも「イタリアどう?」と聞いたところ、同じく中央アジアの1,000倍くらいの食欲をみせ、「ピザとパスタ食べたいっ!!」という。中高生はサイゼリヤにでも行っておけばよいものを。
というわけで、今回はスターアライアンスおよび家族の総意により、旅先はイタリアに決定したのであった。
- 旅行の満足度
- 4.5
- 観光
- 5.0
- ホテル
- 4.0
- グルメ
- 4.0
- ショッピング
- 4.0
- 交通
- 4.5
- 同行者
- 家族旅行
- 一人あたり費用
- 25万円 - 30万円
- 交通手段
- 鉄道 タクシー 徒歩 飛行機
- 旅行の手配内容
- 個別手配
-
特典航空券の必要マイル数は締めて24万8,000マイル。さらに燃油代やら税金やらの追加料金が4人分で約15万円かかった。ANAよりは安い気がする。ヨーロッパまで往復4万円と考えれば上々だ。
これで旅行代金はかなり浮くとはいえ、この円安である。ただでさえ物価の高い欧州、現地での支払いは常に破産覚悟になってしまう。仕方ない。ついにあの虎の子を解放するときが来たか。1ユーロ=110円くらいの時に両替した現金(以前の旅行の余り)が、何と1,300ユーロくらいあるのだ。いざという時のささやかな資産として温存しておいたが、そんなことも言っていられない。現行紙幣より少々デザインは古いが、この魔法の紙を使えば、物価はすべて2/3になる。1万円のところが6,500円! 熟成によってすっかりうま味が増した。 -
懸念材料がさらに一つ。それが今回お世話になる中国国際航空である。評判がよくない。日本人の中国モノに対するレビューは得てして実態以上に辛口になりがちだが、遅延が多いというのは不安である。北京空港での乗り継ぎ失敗という涙モノの報告も枚挙にいとまがない。こればかりは完全に運なので、神に祈るしかないだろう。
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そして最後の問題。それはスリである。特に夏場は、警戒心の緩みきったバカンス客目当てに名うてのスリがイタリアの観光地に集結するそうで、被害に遭う日本人も後をたたないらしい。生半可な対策では簡単に餌食になってしまう。そこで少々不便かつ不格好ではあるが、腰に巻いて服の内部に隠せるタイプの薄いウエストポーチを用意し、これに現金、クレジットカード、パスポートの三大貴重品を収納することにした。さすがに服の中にまで手を入れてくることはないというので(鞄やポケットなどからバレないように盗るのが一流の証)、これで鉄壁防衛に徹することにする。
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迎えた当日、今回は久しぶりに羽田からの出発である。世間的に夏休みシーズンに突入したとはいえ、まだ早朝のため人はそれほど多くない。羽田で折り返しの運航となる搭乗便は前日にきちんと到着していたから、定刻どおり出発することだろう。今回の日程はいつにも増して余裕がないので、ここで飛行機が遅れたりしたらしゃれにならない。
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われらの機材はいわゆる沖止めであった。ボーディングブリッジを使うこと能わず。中国国際航空の経費節減策なのだろうか。機体に書かれた社名はかつての指導者・トウ小平の筆によるものらしく、なかなか達筆である。客は人民ばかりかと思いきや、意外にも半数以上はヨーロッパ系と思しき人であった。
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まかさのシートモニターなし。最近は国内線でも立派な最新のモニターがついているので、あるべきものがあるべき場所にないという違和感に貧乏旅行の悲哀を感じる。「そこになかったらないですねー」などと言われても納得できん。北京までは3時間40分ということで、なくてもギリギリ許容範囲ともいえるが。座席の布は若干すり切れており、硬めの布地とあいまって古びた民宿の古びた座布団といった趣があった。
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機内食は当然のように中華風のメニューである。今回のすべての搭乗便で、洋食や和食など他国料理を選択肢する余地は一切なかった。とはいえ、日本発の場合は日本で作られた食事と思われ、和風中華の無難な味つけである。もはや和食か。
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飛行機は予定よりやや早く、北京首都国際空港に到着した。本国ではさすがフラッグキャリアの威信か、堂々とボーディングブリッジを通っての空港ターミナル入りである。北京空港はだだっ広く、そしてあまり人がいない。店舗や飲食店もそれほど多くない。無数の人民でごった返していることを想像していたので、少々拍子抜けである。
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あまたの乗り継ぎ客が涙を飲んできた手荷物検査。次の便までの時間に余裕がない場合、この検査場をどれだけスムーズに通過できるかに乗り継ぎの成否がかかっていると断言してよい。チェックは非常に厳重で、特にモバイルバッテリーは一つひとつ重点的に確認される。このときはそれほど乗り継ぎ客もいなかったようで、20分ほどで悠々と通過できた。空港から出ない国際線同士の乗り継ぎの場合、手荷物検査がある国とない国がある気がするが、その差はなんなのだろうか。
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案内モニターはほとんど漢字クイズのようである。よく見ると、符拉迪沃斯托克(ウラジオストク)や伊爾庫茨克(イルクーツク)など、日本や欧米諸国では目下絶滅しているロシア便が健在だ。さすがロシアの友好国、中国である。今回、この友好国というお慈悲にすがり、いわゆる西側諸国の飛行機が通過できなくなっているロシア上空を飛んでいく。
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本日のローマまでの搭乗機。こちらも定刻どおりの出発で一安心である。貨物が訪日中国人旅行客のごとく多い。こんなに積めるのか。人間よりよほど重そうだ。
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長距離便ということで、さすがに席にはシートモニターが設置されていた。が、ハード的にもソフト的にも一昔前の感じで、全体的に垢抜けない雰囲気がぬぐえない。いまやIT大国となった中国の最新技術をみせてもらいたいものだ。日本語にはいっさい対応していないが、邦画は「ラストマイル」という1作品だけがラインナップされていた。
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そして機内食。鶏肉の甘酢あん的なものだが、八角などの香辛料がバリバリ効いており、完全に本場の味である。いわゆる「ガチ中華」が好きな人なら確実にハマるはずだ。
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ロシア上空をがっつりと通過中。ローマまでなら本当はウクライナ上空を飛行していくのが最短なのだが、さすがにそれは避けてバルト海寄りの迂回ルートを飛んでいる。本来より多少は飛行時間が長くなっているのだろう。
前評判が気になっていた中国国際航空であるが、実際に搭乗した評価を下したい。1)客室乗務員のサービスはかなりよい。頼めばなんでもすぐに対応してくれて、正直なところ欧米系航空会社のおざなりな対応よりはるかに上だ。2)機内食は中国発の便であればかなりの本格中華が味わえる。3)中国人のマナーが……という声もあったが、北京-ローマ便に関してはまったく問題なし。右も左もみな模範的人民である。中国出身の人に聞いたことがあるが、首都のプライドをもつ北京人は中国一まじめでマナーがよいといわれている、らしい。4)ロシア上空を飛行できるのはかなりのメリット。2025年夏現在、ANAの東京-ミラノ便は14時間半かかる。これと比べ、トータルの飛行時間はそこまで短くならないが、14時間半も座席に縛りつけられるのは苦行すぎるので、2便にわけたほうがだいぶ楽な気がする。5)一方、機体やエンタメ設備はお世辞にも新しいとはいえず、その点は少々マイナスであった。 -
というわけで、望外の快適な飛行で約10時間半、ローマ郊外のフィウミチーノ空港へと到着した。日本人への入国審査は極限まで簡素化されており、行列もなくあっという間に荷物をピックアップ、ホテルへと向かうことができた。ありがたい。
ローマ市内に入ると、タクシーの車窓からライトアップされた遺跡が目に入り、否が応でも期待が高まる。が、日本時間ではすでに草木も眠る丑三つ時のため、長旅の疲れもあってさすがに限界。おとなしくホテルで寝ることにした。 -
翌朝。いよいよイタリア旅行の始まりである。本来、われわれのような個人旅行者はその日の気分で自由に気ままに観光できるはずなのだが、ハイシーズンのイタリアでそんな勝手はいっさい許容されない。観光スポットはどこも激混み当然で、当日フラッと行ったところでいつ入れるともわからぬ長蛇の列に並ぶしかないのである。予約がなければそもそも入場できない、なんていう大阪万博のような悲劇も生じる。それは避けたい。というわけで、膨大なガイドブックを読み込んで予定を完璧に組み、予約できるところはすべて予約してきた。ほぼパックツアーと変わらないな。
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初日の予定は、午前9時のコロッセオツアーから始まる。コロッセオに向かう道すがらに「サンタ・マリア・マッジョーレ大聖堂」という有名な教会があるようなので、少し早めにホテルを出てついでに入ってみた。朝7時から営業していて、時間のない旅行者にはありがたい。この旅、一発目の観光スポットである。
サンタ マリア マッジョーレ大聖堂 寺院・教会
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本当についでに寄っただけであったが、イタリアがいきなり本気をぶっ込んできた。このクオリティである。豪華絢爛、荘厳美麗とはまさにこのこと。他の国なら町一番はもちろんのこと、場合によっては国を代表する観光スポットに数えられるレベルだ。
この大聖堂の起源は西暦356年の夏。聖母マリアが当時のローマ教皇リベリウスの夢枕に立ち、「数日のうちに雪の降ったところに教会を建てよ」と告げた。教皇が「いやいや、いま8月ですがな」と思ったかどうかは知らないが、ローマ温暖期をものともせずに本当に真夏の雪が降ったと伝えられており、お告げに従って教会が建てられたという。その後は幾多の増築・改築が繰り返されて現在の姿となっている。 -
こちらが本大聖堂の主役、聖母マリア。「ハンドパワーで雪を降らせてみせました」という感じにも見える。隣りでポーズを決める幼児キリストがファンキーでかわいらしい。
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整然と柱が立ち並ぶ大聖堂の内部。初っぱなからいいものを見せてもらった。なお、この後、各地でいろいろな教会を見たが、ここを超えるものはほとんどなかった気がする。あまりガイドブックには紹介されていないが、ローマの中心駅であるテルミニ駅からも近いので、お近くへお越しの際はぜひお立ち寄りを。予約は不要である。
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気分をよくしてぶらぶらと道を進むと、ついに前方にコロッセオを発見。
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手前の歩道橋からコロッセオの外観を一望する。完成から2000年近く経過しているとは思えないほど、しっかりとした構造が残っているようだ。
コロッセオ 建造物
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イタリア屈指の観光名所だけあって、朝からおおぜいの人が訪れている。他の日程との兼ね合い上、早めにこの日の予定を確定させたかったため、公式サイトよりもかなり前から予約ができたガイドツアーを利用した。
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2階部分から内部を見下ろす。外周には5万人ほどが収容可能な座席が設けられていて、日よけのための開閉式天幕まであったらしい。規模といい設備といい、現代からみてもまったく遜色のない巨大な競技場だ。世界史の授業でも扱われるように、このコロッセオは「パンとサーカス」という言葉に代表されるいわゆる愚民政策のために建てられたものである。競技場自体もローマ市民の目を楽しませたに違いない。
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アリーナからの眺め。なかなか壮観な舞台で、こんなところに立って観客の注目を一身に浴びるのも悪くない、と思ったが、猛獣と戦わされたりするのは勘弁である。
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当時は板敷きの舞台の下に隠れていた地下部分。剣闘士と戦う猛獣の檻があり、エレベーター的な仕組みで舞台に上げられていたらしい(誰がここまで猛獣を連れてきたのだろうか)。このコロッセオ地下部分のツアーは、おそらくイタリア全土でもっとも予約が難しいイベントの一つである。公式サイトでは1か月前の15:45(日本時間)より1日ごとに売り出されるが、0.1秒で完売する。民間の旅行会社が運営する現地ツアーだと、公式サイトの10倍くらいのぼったくり……じゃなくて、付加価値のついた価格で売り出されているようだ(要は、旅行会社が人海戦術の総力をあげて0.1秒の間に予約している。現地ツアーで仮予約しても、チケットが確保できずキャンセルになってしまうこともままあるという)。上から見てもそんなに変わらないので、そこまでもしなくても、という感じはする。なお、通常エリアのみであれば、かなり直前でも公式サイトで難なく予約することができるはずだ。
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コロッセオの見学後は、隣接する古代ローマ時代の公共広場の遺跡「フォロ・ロマーノ」へ。だが、写真からもあふれ出す熱気が感じられるとおり、とにかく暑い。東京よりは湿度がなくさっぱりしているが、暑いことには変わらない。オーブンにスチームをつけるかつけないかだけの違いである。すでに灼熱のコロッセオでヘロヘロになりかけているわれわれ。おそらく、個人で来たらザーッと見て終わりな気がするが、ツアーなのでそうもいかない。念入りな説明を拝聴しながら丹念に歩く。「ツアー中退」という魅力的なプランも頭をよぎるが、さすがに思いとどまった。厳しいなあ。
フォロ ロマーノ 建造物
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かろうじてごく一部が現存するなにか。ちょっとした嵐でポキッといってしまいそうだ。
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炎天下を耐え、ついにツアーの最終目的地、「真実の口」に到達した。教会の前廊下のようなところの壁に設置されている。「うそを言った者が口に手をいれると手を食べられる」という伝説はあまりにも有名だ。していない勉強をしたと偽装するのはうそではないらしく、子どもらの手はちゃんとくっついていた。教会内に飾られているものの、特に宗教的な意味合いのあるものではなく、もともとは井戸か溝の蓋という説が濃厚らしい。夜中に路上で見たらけっこう怖いぞ。
サンタ マリア イン コスメディン教会(真実の口) 寺院・教会
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時刻はすでに昼食時。ローマ最初のランチは、コロッセオ近くのピザ店「La Prezzemolina」へ。入口横のピザの化け物が食欲をそそらない。
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日本ではあまり見かけない四角いタイプ。すでに焼き上がったものが店頭に並んでいるので、これを温めなおしてもらう。サクッと軽い食感で、食事というよりはおやつ寄りな感じだ。
入口が開け放たれているためか、はたまたクーラーのパワーが弱いのか、店内は外とたいして変わらない暑さであった。もっと涼しさに貪欲であれ。 -
暑さにやられ、すでに午前中だけで十分な疲労感であった。甲子園球児以上に暑さ対策が必要だったのかもしれない。が、まだまだ歩みを止めるわけにはいかないのである。予約している場所もあるので、引き続き全力観光モードだ。途中、「トラヤヌスのフォルム」を横目で見学。要は昔の広場である。周囲より一段低くなっているが、実はこれが本来の地形の高さで、まわりの道路部分などは古代より行われてきた無数の工事を経てだんだんと高くなっていったらしい。ローマ市街はいくつかの小さい丘の中心に作られたとのことで、意外と坂が多い。
フォーリ インペリアーリ 史跡・遺跡
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少し歩き、純白の外観が目を引く「ヴィットーリオ・エマヌエーレ2世記念堂」へと到着。イタリア王国の初代国王を記念したもので、1911年に完成した。その光り輝くような威容はなかなか感動的ではあるが、ローマ市民からは周囲の遺跡の景観にあわないと酷評されることもあるらしい。難しいものだ。
ヴィットーリオ エマヌエーレ2世記念堂(ヴィットリアーノ) 建造物
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屋上の展望台からはコロッセオがよく見える。ちなみに、写真左側のコロッセオにつながる大通りは、イタリアのファシズム時代に、周囲の遺跡などを無視し、コロッセオの見栄えのみを重視してまっすぐに引かれたものだという(「ルポ国威発揚」という本に、「ファシズム映え」というなかなかのパワーワードとともに解説されていた)。
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風の通る涼しい屋上でしばし休憩し、多少体力が回復したところで散策を再開。街中にはあちこちに記念碑の柱「オベリスク」があり、こんなふうに象にのった変わり種もある。
ミネルヴァ広場 広場・公園
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現存するローマ建築の完全な遺構として知られる神殿「パンテオン」へとやってきた。鉄筋などを使わないコンクリート建築としては、現代においても世界最大のもの……とガイドブックにあったが、現代建築において鉄筋のないコンクリートで建物を建てることがあるのだろうか。世界最大の座は当面安泰なのかもしれない。内部から鉄が錆びて崩れることがないために長持ちしているという利点もあるらしい。
パンテオン 建造物
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古代ローマのすべての神々をまつる「万神殿」として建てられたもので、築1,900年とは思えない造り。天井に開けられた丸い天窓から太陽光が差し込み、光の筋ができている。太陽の動きにあわせて光線も移動していき、こういった一工夫がおしゃれ。柱のない完璧なドーム型も圧巻で、当時の建築技術に驚くばかりだ。
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本日の予定もあと少し。パンテオン前の喫茶店「La Casa del Caffè Tazza d'Oro」で名物のコーヒーかき氷をいただく。ホイップの甘さとコーヒーの苦みのコントラストが絶妙であった。普段、コーヒーは苦くて飲めない私でも問題なし。なにせ暑いので冷たいものがおいしい。
ラ カーサ デル タッツァ ドーロ カフェ
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最終目的地のナヴォーナ広場へついに到着。初日から飛ばしまくった1日だった。
ナヴォーナ広場 広場・公園
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これはなにをしているのでしょうか。とても真面目にやっているようには見えない。
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夕食はテルミニ駅近くのローマ料理店「Nerone」で。
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ローマ発祥というカルボナーラ。結構塩辛い。この味付けがローマ料理の特徴らしい。
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肉と野菜のソテー。こちらも塩味が強い。生活習慣病とか大丈夫なのだろうか。
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翌日。早くもローマに別れを告げ、この日の目的地であるポンペイ遺跡へと向かう。テルミニ駅周辺は特にスリが多いらしい。早朝でまだ閑散としているが、ウエストポーチを巻いたお腹あたりに自然と気合いが入る。
テルミニ駅 駅
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まずはナポリ駅まで、旧イタリア国鉄(現在は民営化)の新幹線「フレッチャロッサ」で移動する。ナポリまでは約230km、東京-浜松間に相当する距離で、乗車時間は約1時間10分。このフレッチャロッサの切符は事前に買うとかなり安い。2か月ほど前に予約したところ、料金は4人で1万2,000円ほどであった。日本の新幹線よりかなり安い(ただし、当日だと事前購入の倍以上になることも)。
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以前はこの列車のなかにもスリが大量発生していたらしい。発車までは車内に自由に出入りできたので、乗客が荷物を網棚にあげている隙にポケットから貴重品を盗むなどの不埒な悪行三昧に及んでいた。しかし、最近は駅に改札が設けられ、そのような不逞の輩の侵入はかなり減っているという。よいことだ。列車のなかくらいはリラックスしたい。
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列車は時間どおりにナポリ中央駅へ到着した。ここからポンペイまでは、ベスビオ周遊鉄道という私鉄ローカル線へ乗り換えとなる。そのままナポリ中央駅で乗り換えることもできるが、ベスビオ周遊鉄道は10分ほど歩いた先にある隣りのナポリ・ポルタ・ノラーナ駅が始発。確実に座りたいなら始発駅から乗ったほうがよいようだ。
ナポリ中央駅 駅
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ナポリはイタリア国内で治安の悪い都市として知られている。駅周辺は落書きだらけのくたびれた団地のような建物が密集しており、お世辞にも雰囲気がよいとは言えない。多少緊張したが、無事にたどり着いた。
ヴェスーヴィオ周遊鉄道 鉄道系(地下鉄・モノレールなど)
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やってきた車両。ヨーロッパならではのデコレーション列車だ。かなりオンボロで、当然のように空調もない。北ヨーロッパなら空調なしでもよいかもしれないが、平気で30℃を超えるイタリアで大丈夫なのだろうか。駅の設備も全体的に老朽化しており、不安が募る。
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始発駅にはほとんど客もおらず難なく座れたが、やはり次のナポリ中央駅からは大量の乗客が乗り込み、あっという間にラッシュ時並みのぎゅうぎゅう詰めになった。一駅分歩いた労力は無駄にならなかったようだ。だが空調のない車内は一気に不快指数が増し、いつぞやのスリランカの炎熱列車を思い出す。なぜか大音量で音楽まで流れ出し(車内放送なのか、誰かが勝手に流しているのか不明)、暑苦しいことこのうえない。
しばらくすると、遠くにヴェスヴィオ火山が見えてきた。長年にわたり繰り返された火山活動で山容はずいぶんといびつに見える。紀元79年の大噴火による火砕流によって埋もれてしまったのが、これから訪れるポンペイだ。 -
なんとかポンペイに着き、政治・経済の中心になっていたという公共広場から見学を開始。奥に神殿が建てられ、さらにその奥にはヴェスヴィオ火山が見渡せるナイスなロケーションである。古代都市にはこのような人々が集まる広場が付き物のようだ。家にいたところでネットも携帯もないから、こういうところに出てきて暇をつぶしたのだろうか。
フォーラムアットポンペイ 文化・芸術・歴史
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ポンペイは紀元前89年にローマ帝国の植民都市となり、以後、港湾都市として商業で栄えた。まっすぐな道でかなり均等に区割りされており、計画的に建設された都市であることがわかる。きちんと車道と歩道が分かれているのもすごい。
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漫画の影響から古代ローマといえば風呂、ということで、ポンペイで最古・最大の公衆浴場という「スタビアーネ浴場」へやって来た。
スタビアーネの浴場 史跡・遺跡
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天井の模様には、かすかな色彩も残っている。男女別に冷浴室、温浴室、脱衣場などを備えたかなり広大な施設で、さながらスーパー銭湯のようだ。この日も快晴で、すでに全身は汗まみれ。早くも風呂に入りたくなった。
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あちこちに火砕流で被害に遭った市民の復元遺体があった。火砕流は時速100km以上の速さで町を襲ったといわれ、とても逃げる時間などなかっただろう。これらは遺体の実物というわけではなく、鋳物の要領で遺体の跡にできた空洞に石膏を流し、型をとったものである。
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遺跡には空調はもちろん、日陰になるような場所もほとんどないため、早々に疲れてきた。少し早いがお昼にしたい。しかし。この広大な遺跡のなかに、飲食のできる店はほぼ1つしかない。当然のことながら、ライチタイム前から大混雑である。独占企業のためか料理の質は低く(メニューにはいろいろ載っているが、頼もうとするとほとんどは「ない」と言われる。実質、食べ物はパサパサのパンに味のしない肉としなびた野菜を挟んだやる気のないサンドイッチ一択であった)、サービスは旧ソ連のごとく悪い。もしもう一度ポンペイに来ることがあれば、ここで昼食を食べずにすむ方法を最優先で考えることだろう。
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気を取り直して見学を再開。かまどの向こうに壁画が見える楽しげなキッチンは、紀元前後のものとは思えない。現代よりも古代に来たほうがいいものが食べられた気がする。
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遺跡内をぶらぶらと歩いていると、ふと道端にこんなものがあったりする。ポンペイは「快楽の街」の異名でも知られ、夜の方面はかなり充実していたらしい。
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娼館は25軒もあったそうで、内部の天井近くには子どもの教育上よくなさそうな絵画が何枚も描かれている。ローマ人はもとより、言葉のわからない外国人でもサービス内容が一目瞭然、ということだったようだ。
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当地きっての豪邸「ファウノの家」にあるアレキサンダー大王のモザイク床。イタリア美術はこのころからすごい。絵画の技法などは時代によって進化するのかもしれないが、絵心のような芸術的センスは現代人も古代人もまったく変わらないのだろう。私は絵がきわめて苦手で、平気で4本足の不気味なニワトリを描いたりするので、そんなものが遺跡となって後世に残らないようにしたい。
牧神の家 史跡・遺跡
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炎天下、広大な遺跡内を正味4時間ほど散策し、さすがに限界が訪れる。最後の締めで、謎の大邸宅「秘儀荘」へと向かった。赤い背景にディオニソス教の入信儀式が描かれているらしい。ディオニソスとは「集団的狂乱と陶酔を伴う東方の宗教の主神」だそうで、なんだかよくわからないが、怪しげな雰囲気はよく伝わった。現代風に言えばパリピってことだろうか。なんの御利益があるのかも不明だが、とりあえずこれからの旅の安全を祈っておいた。品行方正、優等生風なカトリック文化もよいが、大衆的な欲望があふれたポンペイもなかなか魅力的である。
秘儀荘 史跡・遺跡
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秘儀荘から駅までは歩いて10分ほどの道のり。通常モードであればなんということのない距離だが、蓄積した疲労によってセーフモードが発動している。目に光を失い、落ち武者のような心境で駅に到着すると、あろうことか列車が遅れていた。ようやく居城に逃げ帰ったところで落ち武者狩りに遭ったような心境だ。確かゲーテの言葉に「ナポリを見ずして死ぬことなかれ」というのがあった気がする。小汚い駅の路地裏とはいえナポリも見たから、もう思い残すこともないか。潔く討ち取られよう。
ヴィッラ ディ ミステリ駅 駅
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ただでさえ列車の本数が少ないうえに(30分に1本くらい)、20分以上の遅れとあって、駅のホームは帰途につく観光客であふれかえっていた。ホーム上にへたり込む乗客の目は、いずれも深い疲労でよどんでいる。これで満員電車は命にかかわるという窮地で、偉大なるパリピ……じゃなくてディオニソス神のご加護が発動した。適当にホームに並んでいたわれわれのまさに目の前に、ちょうど列車の扉部分が止まったのである。もうディオニソス教に入信してもよいぞ。しかも、列車は空調つきである。涼しい車内で見事に座ることができ、なんとか多少は心身を回復させ、ナポリまで戻ることができた。
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この日は一旦ローマに戻り、ホテルに預けた荷物を回収したらただちに次の宿泊地、フィレンツェに向かうというありえない強行日程となっている。ローマへ向かってしまうと夕食を落ち着いて食べる時間などないため、せっかくなのでナポリ駅前のピザ店「Fedele 2.0」で本場のナポリピザを食べることにした。
ナポリで食べるピザは、チーズの塩気やトマトの酸味が立ったなかなか鋭い味をしており、日本の全体的に優しい味のピザとは一線を画している。武骨な海の男たちの集う港町の硬派な1枚、といった感じだ。 -
というわけで、フィレンツェ行きのフレッチャロッサから車窓の景色を眺めつつ、激動の2日目も間もなく幕を閉じる。2日間フルに動き回ったためそろそろ休みたいが、明日もまた早朝より続く予約が……。こんな日程を組んだのは誰なのか。
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