2025/07/26 - 2025/07/26
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norijiroさん
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イタリア半島には、周囲をイタリアに囲まれた2つの小国がある。一つはローマ市内にあるバチカン市国、そしてもう一つが半島の北東部にあるサンマリノ共和国だ。私はこの手のミニ国家が大好きなので、すぐ近くにあるのに見逃すわけにはいかないだろう。当初はボローニャからミラノ日帰りというプランも考えたが、いま一つやる気が出ない。ミラノとサンマリノを天秤にかけてサンマリノに傾くという人間がどれほどいるかは不明だが、個人的には圧倒的にサンマリノに魅かれる。
ということで、イタリア旅行番外編、サンマリノへの日帰り国外旅行へと出発した。
- 旅行の満足度
- 4.5
- 観光
- 4.5
- グルメ
- 4.5
- ショッピング
- 5.0
- 交通
- 5.0
- 同行者
- 家族旅行
- 一人あたり費用
- 25万円 - 30万円
- 交通手段
- 鉄道 高速・路線バス 徒歩
-
サンマリノに鉄道はない。まずはボローニャ中央駅からローカル線で1時間半ほどのリミニ駅へ行き、そこからバスで国境を越える。あわせて2時間半ほどで、思いのほか時間がかかるなあ。
土曜日の朝早めの電車にかかわらず、ギリギリ座れるかどうかといった感じに混んでいた。こんな時間からいったいどこへ向かおうというのか。 -
リミニ駅を出発した列車は、ほぼ空気輸送車になって去っていった。ほとんどの乗客がリミニで下車したのである。みな一様にサンマリノを目指しているのだ。そんなにメジャーどころだったのか? 見たところ、外国人よりも地元イタリア人のほうが多い感じである。
バスは往復とも事前にネット予約をしておいた。当然のように満席札止めで出発したので、予約がなければ乗れなかっただろう。リミニとサンマリノの間のバスは1日8往復しかないので、これに乗れるかどうかは死活問題である。バスは直通というわけではなく、リミニ駅周辺を路線バスのように巡りながら、サンマリノへと向かう。 -
バスは箱根レベルの結構な山道をのぼり、サンマリノの旧市街に到着した。標高739メートルのティターノ山山頂付近が旧市街となっており、そこが首都のサンマリノ市である。そのほか山麓に広がる丘陵地をあわせて現在の面積は61.2平方キロメートルと山手線の内側とほぼ同じ広さ、人口は34,000人ほど。国の面積順では小さいほうから5番目、人口順も少ないほうから5番目と、一流のミニ国家といえる。
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横断歩道は国のイメージカラーであるサンマリノブルー。白は平和、水色は自由を表しているとのこと。横断歩道をわたって平和と自由を満喫しよう。
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観光機関車もサンマリノブルー。
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バス停から下界を望む。まるで登頂に成功したような光景が広がるが、本格的な登山はこれからだ。
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この国はキリスト教に対する迫害から逃れた信徒がティターノ山の山頂に砦を築いたことではじまったとされており、旧市街はその山腹に広がっている。現在でも11世紀ごろからつくられた防衛のための塔が残っており、いわば町全体が山城といってよい。さすが元お城だけあって、外側からはその全容をうかがい知ることができなかった。というわけで、道端の案内地図を見てもどこから中に入るのかさっぱりわからず難渋する。守りは堅いようだ。
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かなり苦労してようやく入り口を発見。城壁を前にウロウロしていたので、攻城戦ならとっくにやられていた。
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旧市街はなかなか観光地化されている。税金の関係上、物価がイタリアより安いそうで、買い出し目的のイタリア人もやってくるらしい。そして、どこへ行こうとも坂道が続く。
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登り疲れても、また容赦なく坂道。苦難多き人の一生のようである。
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ツーリストインフォメーションではパスポートに入国スタンプを押してもらえる。その昔、同じくヨーロッパの小国であるリヒテンシュタインに行ったときは、インフォメーションが時間外で入国スタンプを押してもらうことができず、涙をのんだ。せっかく来たからには、なにか証拠がほしいではないか。別の国ではあるものの、その積年の悔恨がようやく晴らせた。5ユーロを徴収するだけあって、名物の切手とあわせてなかなか立派である。
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バチカン・アンドラ・モナコ・サンマリノの4か国のユーロ硬貨はかなりレアだそうで、他の国でお釣りに紛れ込んでいる可能性などはほとんどないという。同じくやや希少性のあるマルタの硬貨は同国内でいくらでも手に入ったが、サンマリノ国内の店で買い物しても、お釣りはみんな他国産であった。そんな状況を見越してか、土産物屋ではサンマリノユーロ硬貨のセットが売られている。当然額面以上ではあるが、これは買うしかない。
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ティターノ山の3つの頂には、それぞれ塔が建設されており、国旗や国章にもこの3塔があしらわれている。こちらは11世紀に築かれたという最古のグアイタ塔の要塞。
要塞 史跡・遺跡
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要塞からは遠くアドリア海まで見渡せる。18世紀末には、北イタリアを制したナポレオンより、サンマリノ領をアドリア海沿岸まで拡大させる打診があったというが、将来的な紛争の火種になることを避けるため断ったらしい。「毛利は天下を競望せず」といった毛利元就に通じるところがある。
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塔本体。見栄でつくったボローニャの斜塔と違い、こちらは実戦向きである。中世そのままのような姿が印象深い。
グアイタ塔 史跡・遺跡
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2番目に古いというチェスタ塔。
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日本の天守閣にもある石落としだろうか。立派な要塞はあるものの、実際には建国から1700年間、一度も戦争をしたことはない。地形をいかした堅い守りに加えて、経済・交通の要衝でもなく資源もないためにわざわざ他国が攻めてこず、またサンマリノ自身が領土の不拡大方針をとってきたことの結果らしい。
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市庁舎となっている共和国宮殿とリベルタ広場。
リベルタ広場 広場・公園
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せっかくなのでサンマリノで昼食を。さすがにサンマリノ料理という明確なジャンルはないようで、ほぼイタリア料理と変わらない。リベルタ広場に面する「IN or OUT Food & Bar」でカレー味のクスクスを食べてみた。
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ミニ国家で割と共通しているように、サンマリノでも観光のほか、コレクター向けのコインや切手の発行が国の収入源の一部となっている。切手・コイン博物館では、過去に発行された珍しい切手やコインを見ることができた。売店では数百万の金貨が普通に売られていて、ほしかったがさすがに買えない。
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ちょうど帰る頃になると、霧が旧市街を包みはじめた。いかにも中世の山城といった感じで風流である。
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ふたたびリミニ駅から電車に乗り、ボローニャへ帰る。イタリアのローカル線では車両にトイレが設けられているが、この車両唯一のトイレは早々に故障し、使用不能になった。時々、待ったなしの表情をした乗客がやってくるが、この張り紙を見て無念そうに去って行く。張り紙はイタリア語、ドイツ語、フランス語の3か国語。なぜか英語はない。おそらく国内の一部の自治県でドイツ語、フランス語が公用語になっているためだろう。英語なんぞ眼中にないところが潔い。
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わずかの滞在であったが、つかの間の国外旅行が楽しめた。やはり別の国という希少性は大きい。もしイタリアの一都市だったなら、今日の隆盛は決してなかったことだろう。日本でも過疎に悩む農村は、独立して別の国になってしまえば珍しがって観光客が殺到する……かもしれない。
これでミニ国家10傑のうち、未制覇は6か国となった。フランスと陸続きのモナコや、観光地としてはメジャーなモルジブはなんとかなりそうだが、セントクリストファー・ネイビス、マーシャル諸島、ツバル、ナウルといった島国はつらい。果たして制覇できる日はやってくるのか。
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