望蜀西安成都旅5:やけどパンを食べて念願の入蜀へ

2024/05/18 - 2024/05/25

ANAマイルが3月に大量失効するので行先を検討した結果、中学生の頃に三国志に出会ってからいつか行きたいと思っていた成都と、「項羽と劉邦」を読んで以来憧れていた関中の中心地である古都西安に出かけることにした。その旅行記の抜粋。完全版は下記URLに記載。
https://aamns2021.livedoor.blog/archives/cat_234951.html

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エリア 西安(中国)

【常平竹升雲呑麺】
陝西省歴史博物館見物の後、朝食から間が経ってないので軽い昼食がいいなと思って調べたら、あの蔡瀾がプロデュースしていることを謳った常平竹升雲呑麺という店が博物館と駅の間位にあるというので足を運んでみた。メニューを見る限りは香港の麺家に来たと錯覚を起こすような品揃え。

とりあえず定番の雲呑麺を頼んでみる。葱や黄韮など香味野菜は物足りないものの、雲呑の海老のぷりぷり具合といい、麺のぷつぷつ具合といい、スープの澄み切った味わいといい、香港のものと全く遜色がない。むしろ化学調味料の味がほぼしない分こちらの方が美味しいくらい。これで17元（約350円）ならほぼ半値近いので価値ある一杯。

【木子木水】
朝飯用にホテル近くのパン屋を検索していたところ、龍首原駅のある交差点角に「日式面包：木子木水」とあるのを見つけた。日本式パン店なのかと思って調べてみたら、自らを「やけどパン」と名乗っていて、久々に中国らしい誤訳に出会えて苦笑する。

ものは試しと店に寄ってみると、値段といい雰囲気といい高級店の類で休日には婦女子でごった返していた。ほとんどが甘いパンだったが二品選んでお会計は32元（約650円）。肉まんが1個2－3元で売られているのを考えるとひどくお高い代物。なので立派な紙袋に入れてくれた。

全国展開する店で最近西安に進出してきたらしく、紙袋で精一杯のお愛想を振りまいていた。NYに進出した時のユニクロを彷彿とさせるアプローチでさすが日式を名乗るだけある。店名の木子も発音はムージ（≒MUJI）となるし、なかなか考えたものだ。

小ぶりなのはデニッシュ、大きい方は胡桃の入ったふんわりメロンパンというお味で、出来は日本のものと遜色なく美味しい。まだ日本のものはお洒落で高級というイメージが残っているのに安堵はしたが、せめて「やけどパン」ではなく「焼きたてパン」と名乗ってほしいところ。

いよいよ西安に別れを告げて入蜀の時が来た。高速鉄道の西安北から漢中までの切符はTRIP.comで購入済み。手数料15％がかかって一人2400円弱。1時間ちょっとの行程の2等車（普通車）だったが、新幹線に比べるとかなり割安。検票口でスキャナーにパスポートをかざして無事入場。

出発して10分もすると緑濃い山々が見えて、長いトンネルに入る。時折トンネルの切れ目で外の風景が見えるが、狭隘な渓谷がごく短く見えるだけですぐにトンネルに入る。これが蜀を苦しめ、劉邦が失意と苦悶を抱えて越えた山脈だと思うと感慨深い。

直線距離にして100Km以上も山地が続いて、往時の辛苦が偲ばれる。日本でいえば東京ー三島間が全て箱根という感じ。それが今や1時間ちょっとで西安と漢中が結ばれているという。祁山・街亭・定軍山・天水・五丈原・・・あの手この手を駆使しても中原に進駐することが叶わなかった諸葛亮は泉下で何を思うだろうか。

やがてトンネルを抜けて漢中盆地に入ると、今まで見たことのなかった水田の風景が広がって驚く。漢江が盆地を潤して、山脈の向こう側とは異なる風景を生み出していた。確かに漢中の名物である面皮は米粉を蒸して作るらしいから、この辺り一帯は稲作文化の範囲なのだろう。

そうして水の張られた田圃の景色を見ているといかにも豊穣な土地柄を感じさせ、こうした景色を見た劉備以下流浪を続けてきた麾下の諸将も「ここならば」と意を強くしただろう。その頃には脳裏に光栄の三國志で随一の名曲と言われる蜀のテーマ「華龍進軍」が流れて、不意に胸が熱くなる。
https://youtu.be/xXiOqKUClvs?si=mmFbCghI4CL1d674

望蜀の宿願を果たして感激に浸る五十男を乗せて高速列車は250㎞で走行を続け、漢の高祖劉邦が、そしてその一族に連なる劉備が漢中王を宣した土地に到着した。