完全無人運転の「逆ロープウェイ」スカイキューブでつなぐ、国家庭園と順天湾湿地【坂の街釜山＆順天ハレの日その6】

2024/04/13 - 2024/04/13

　韓国は、狭い国土に交通網が発達していて「全国半日生活圏」を形成しています。結婚式は昼間に行われるので、遠方でも日帰りで参加するのが普通。
　しかしせっかくの機会なので、友人らとともに順天で１泊して楽しむことに。僕のリクエストで、最先端の無人交通システム「スカイキューブ」に乗ることにしました。

エリア 麗水(韓国)

• 旅行の満足度: 5.0
• 観光: 5.0
• ショッピング: 5.0
• 交通: 5.0

• 同行者: 友人
• 一人あたり費用: 5万円 - 10万円
• 交通手段: 鉄道
• 旅行の手配内容: 個別手配

　スカイキューブの始発駅は「順天湾国家庭園」にあるので、まずは国家庭園の駐車場を目指しました。
　駐車場へ入るための渋滞も相当なもので、入ってみればぎっしり満車。空いている駐車場を探し、正門はどんどん遠くなっていきます。

　ようやく見つけた駐車場は、正門から歩いて１０分の場所でした。大人気の観光地なんですね。
　電気自動車の充電スタンドも満車で、じわり普及が進んでいるようです。

　駐車場と庭園の間の川は、まるで自然の川のよう。菜の花がきれいです。上手に作ってあると、先輩ともども感心しました。
　スカイキューブの駅までは、国家庭園の中を通って行けば近道になりそうだったので、入場券を買って庭園に入ることに。

　よく調べないまま来たのですが、入場料は１万ウォン。国立の公園にしては、ずいぶん取るじゃないかとこの時は思いました。
　しかしゲートを抜けたそこは、美しく整備された花の庭園。チューリップが満開で、今がベストシーズンのようです。

順天湾国家庭園 広場・公園

　広い園内にはバスが走り、なんだかハウステンボスを見ているみたい。広さは３４万坪もあるのだとか。

　園内には「2023順天湾国際庭園博覧会」の石碑が残されていました。
　国家庭園はもともと、2013年の同名の博覧会に合わせて整備されたもの。１０年後に同じ名前で再開催されたということは、２０３３年にもあるのかな？

　並木とチューリップ。ヨーロッパの街並みを切り取ったよう。

　池のほとりにはパラソルが並びます。４月中旬にも関わらず30度を超えたこの日、パラソルの下で生ビールでも飲めば最高だろうな。
　呑んでいる人は見渡す限りいないので、売ってないのか、禁じられているのか。

　ぐるぐる回って登る山。我が子が大歓声で駆け上がりそう。

　アート作品も点在しており…

　まる１日散策できそうな庭園です。
　こりゃ家族で来ても楽しかったなと、福岡で留守番中のヨメさんと我が子の顔が浮かびました。

　スカイキューブの駅へは、もう１回、川を渡ります。なに、スペースブリッジですと？

　トンネル状になっていて、内部には輝くアート作品が飾られていました。

　長い橋を、飽きさせない工夫です。

　今日は暑かったので日陰というだけでありがたかったのに、頭上を流れる水のおかげで、より涼やかに感じられました。

　橋を渡ったところに立っているのは、ルフィー？
　なぜ韓国の地で巨大化してしまったのか、真相は分からぬままでした。

　順天は乗り換えを含め、今回が３度目の訪問。庭園都市を標榜するだけあり、前回、前々回とも美しい街というイメージを持っていましたが、今回それは決定的なものになりました。
　韓国らしい高層アパートを背景に、咲き誇る花々。短い休日を楽しむ観光客の歓声が響きます。

　庭園の西側エリアに、お目当てのスカイキューブ庭園駅がありました。来て知ったのですが、スカイキューブは、国家庭園の園内の乗り物なんですね。
　順天湾までの延長は、５ｋｍほどもあります。運賃は入園料とは別途で、往復８千ウォン。

　乗車券は30分毎の時間指定で、今の時間帯は売り切れ。次の時間帯を買いましたが、待つことなくそのままゲートを通してもらえました、
　観光シーズンとあって、待つ人の列が伸びています。

　10分ほど待って、乗り場に上がりました。無人運転、最大８人乗りの小さな車両が到着、扉が開きます。循環式ロープウェイのゴンドラを見ているようです。
　乗り場は３ヶ所あり、適宜空いているところに止まって、乗り降りしていました。自動運転の技術は、確かなものがあります。

順天湾スカイキューブ 鉄道系（地下鉄・モノレールなど）

　扉が閉まり、「出発」ボタンを押せば自動的に走り出すシステム。今日は係員さんが操作していました。
　グループで貸切にできたら楽しそうだけど、おばちゃん３人組と相乗りに乗って出発です。

　２条のレールの上を、軽やかに走り始めました。
　右に分かれるのは、庭園駅に帰って来たキューブが入るループ線。ちいさなキューブがミズスマシのように走りまわり、かわいいです。

　直線区間に入ると、結構スピードが上がります。ガタンガタンと振動が伝わって来て、乗り心地は列車というより、豆汽車みたい。

　時折、逆方向のキューブが高速ですれちがっていきます。今まで味わったことのない感覚です。

　スカイキューブは、いわゆる「鉄道」に分類されるものではなく、園内の遊具的な扱い。
　それでも4.6ｋｍの延長があり、道路との立体交差もあって、実用的な交通機関のスペックを整えています。

　開業は2014年なので、もう１０年も安定運行を続けているのも立派です。待ち時間なく利用できる点は都市交通としても優れており、今のところ「実用化」の話題がないのは残念なところ。
　およそ８分で、終点・順天湾駅に到着しました。

　順天湾の湿地へは、運賃無料のロードトレインに乗り換えます。大盛況で、２台ほど待ちました。
　頻発運行のスカイキューブのメリットが完全に削がれてしまっている状態で、なんでスカイキューブを湿地まで延伸しなかったのか？ と思います。

　ラムサール条約の登録湿地でもあり、軌道を敷設するのが難しかったかな？ なんとももったいない状態ではあります。
　暑いとはいえ、湿度の低いカラッとした陽気。オープンエアのロードトレインで受ける風は、待ち時間の疲れが癒えるほど心地よいものでした。

　順天が世界に誇る、順天湾湿地に降り立ちました。
　国家庭園の園内の扱いのようで、別途の入場料はかかりません。高いと思った入場料１万ウォン、かなりお値打ちかも。

順天湾自然生態公園 (葦群落地) 広場・公園

　実は10年前、入口ゲートまでは来ていたのだけど、観光バスが渋滞にはまり、列車の時間が迫っていたので泣く泣く引き返した湿地です。ようやく来れました。

　ハート形になっている葦原。人為的なものかしら？ 自然の造形物ならすごいんだけど。

　歩いていると気づかないのですが、じっと耳を傾けると、湿地帯に生きる生き物たちが動く「ガサガサ」という音が聞こえてきます。
　よく干潟を見てみれば、無数のカニが歩いていました。

　干潟の干満の差は激しいようで、佐賀出身の僕は親しみを覚えます。

　と思ったら、ムツゴロウまでいるじゃん！豊かな生態系も、ラムサール条約登録の理由の一つなんでしょうね。
　なお夜に乗ったタクシーでは、運転士さんとムツゴロウ料理の話題になりました。鍋はムツゴロウの姿そのままで煮込まれているので、かわいそうでとても食えないそうです（笑）。

　４月とは思えぬ暑さで汗びっしょりになりましたが、豊かな自然の生態に触れられて、楽しめました。
　スカイキューブが目的だったのに、思わぬ収穫。スロープカーを巡ったことをきっかけに、新たな釜山の魅力を発見できた昨日の昼を思い出しました。

　帰路のロードトレインはさらに混んでいて、３台見送りました。庭園はベストシーズンでもあり仕方ないけど、やはりスカイキューブが湿地まで通じていればと思います。
　スカイキューブはほとんど並ぶことなく乗れただけに、なおさらです。

　帰りはちょっと、うちらうちらしてしまいました。

　車庫には、何台ものキューブが待機中。整備工場も備えた立派な車庫で、「鉄道」扱いではないのが信じられないほどです。

　どこかの街で、実用化された姿で再会できますように…

　夕方４時を過ぎても、園内は大にぎわい。

　次回は家族旅行で、丸１日遊びたいと思える国家庭園でした。
　今はちょっと交通が不便な順天だけど、釜山からKTXで来られるようになれば、釜山拠点で日帰り観光もアリかも。ぐっと身近になりそうです。