2007/07/30 - 2007/07/30
41位(同エリア675件中)
かっちんさん
2024/1/20ブラタモリ「黒部へ秘境旅なおも絶景探検」のTV放送がありました。
かっちんは17年前(2007年)の夏休みに関西電力主催「黒部ルート見学公募」(30名/日)に応募。
当日の抽選倍率2.4倍の中、運よく当選。鉄道好き夫婦は「ワクワク気分」で参加しました。
「黒部ルート」とは黒部峡谷鉄道の終点「欅平(けやきだいら)」から上流の黒部ダムに至る輸送設備で、関西電力の発電施設の保守・工事用として使用されています。
「黒部ルート見学会」は、一般の人に水力発電事業を体感してもらうため平成8年(1996)から一般公募が始まり、毎年2,000名が訪れていました。
今回の見学会出発地は黒部川上流の「黒部ダム」。(コースには欅平発もあり)
そこから保守・工事用ルートを、専用バスで「黒部トンネル」を通り、斜度34度の「インクライン」を下り、バッテリートロッコ列車で「上部専用軌道」を移動し、「竪坑エレベーター」で下り、「工事用トロッコ列車」に乗り、黒部川下流の「欅平」へ向かいます。
「黒部ダム(標高1,470m)」と「欅平(標高600m)」の標高差は870m、距離にして18kmほど。ここを1時間37分かけて5つの乗り物を乗り継いで行きます。
「上部専用軌道」は吉村昭の小説「高熱隧道」の舞台にもなり、硫黄臭と熱気の中を走ります。
途中、「黒部川第四発電所」では70分間の見学と昼食、他3ヶ所にも短時間の見学があります。
このルートは2024年6月30日から一般開放され「黒部宇奈月キャニオンルート」として始まります。
但し、2024年1月22日現在、「令和6年能登半島地震」の影響とみられる落石で黒部峡谷鉄道の鐘釣橋が損傷。
黒部峡谷鉄道の全線開通時期が不明なためアクセスが中断され、令和6年1月29日からの販売開始を延期しています。
なお、旅行記は下記資料を参考にしました。
・関西電力パンフレット「平成19年度黒部ルート見学会の御案内」
・黒部ルート経学公募委員会事務局「平成19年度黒部ルート見学のしおり」
・「黒部宇奈月キャニオンルート」のHP
・4トラベル『新周遊ルート「黒部峡谷パノラマ展望ツアー」に参加(富山)』2015/10/16
・4トラベル『黒部ダム周辺の色鮮やかに染まる紅葉(富山)』2015/10/14
・とむさんの「黒部ルート見学の記」2011/10/26
・神奈川県、発電総合制御所「水車発電機の構造」
・産経新聞ニュース「中島みゆきが熱唱した黒部ダム 名物トンネルを一般公開へ」2022/10/10
・ウィキペディア「ペルトン水車」「仙人谷ダム」
- 旅行の満足度
- 5.0
- 観光
- 5.0
- 交通
- 5.0
- 同行者
- カップル・夫婦(シニア)
- 交通手段
- 私鉄
- 旅行の手配内容
- ツアー(添乗員同行なし)
-
イチオシ
「黒部ルート見学会のご案内」(パンフレット)
平成19年度の応募できる条件は、小学校5年生以上の健康な人。
見学コースは、欅平出発コースと黒部ダム出発コースの2通り。
見学日は5/23~11/8まで計34回。各コースとも1日につき30名が定員。 -
「見学コースと行程」(パンフレット)
見学コースは、黒部ダムから黒部トンネル内専用バス、インクライン、黒部川第四発電所、バッテリートロッコ列車、エレベーター、工事用トロッコ列車を利用し、欅平に到達します。逆コースもあります。
「黒部ダム出発コース」は、10:45に黒部ダムを出発し、14:10頃に欅平に到着します。 -
「黒部川水系の発電設備概要」(黒部ルート見学のしおり参照)
戦後の急速な日本経済復興は関西地方に深刻な電力不足をもたらし、多雨地帯かつ急流河川の「黒部川の電源開発」が始まりました。
黒部ダムから欅平間には、上流から「黒部川第四発電所(昭和36年1月15日発電開始)」、「仙人谷ダム(黒部川第三発電所、新黒部川第三発電所の取水ダム)」があります。
欅平から仙人谷に至る軌道隧道は昭和14年までに敷設。
昭和34年に黒部川第四発電所建設に伴う仙人谷~発電所地点~黒部ダム間の工事用トンネルが貫通し、宇奈月から黒部ダムに至る資機材輸送ルートが形成されました。 -
「黒部ルート」の位置関係(「黒部宇奈月キャニオンルート」HPより)
2024年6月から始まる「黒部宇奈月キャニオンルート」の地図を利用して説明します。
「黒部ルート」は黒部ダムから欅平駅までの区間。
今までの観光は「立山黒部アルペンルート」と「黒部峡谷鉄道」が分離していましたが、2024年からつなげた旅行ができるようになります。 -
「黒部ルート」の詳細(「黒部宇奈月キャニオンルート」HPより)
欅平駅から黒部ダムまでの乗り物と見どころ(①~⑤)が示されています。
「黒部宇奈月キャニオンルート」と「黒部ルート」は同じルートです。 -
「参加者章」
当選後、事務局から参加者章「おこじょのダムダムくん」と必要書類が自宅に送付されてきました。
また、欅平~宇奈月間の交通は唯一「黒部峡谷鉄道」のみなので、事前にその分の購入が必要で代金を振り込みます。 -
観光放水中の「黒部ダム」(写真は別の時期に撮影)
ここから見学会の体験談を紹介します。
集合場所は「トロリーバス黒部ダム駅駅長室前」。
10:45に受付が始まり、関西電力で用意されたヘルメットを着用し、黒部トンネル内専用バスに乗り込みます。
前日は立山室堂の「ホテル立山」に宿泊していました。 -
最初の見学ポイントは「タル沢横坑」展望台
黒部トンネル内で専用バスを一旦降り、横坑を歩いて展望台へ向かいます。
ここはトンネル掘削当時、トンネル内の土砂を排出するためにつくられた横坑のうちのひとつです。 -
残念ながら濃霧で何も見えず(タル沢横坑)
-
その代わり展示されている写真が・・・
剱岳の絶景「裏剱」が見られるのです。 -
トンネル内天井からぶら下がる「セメントストロー」(黒部トンネル)
-
「インクライン設備概要図」
専用バスは「インクライン上部」に到着。
ここから「黒部川第四発電所」までインクラインに乗り、標高差456m(=1325-869)を下ります。
インクラインは昭和34年(1959)に完成し、斜度34度の急傾斜、長さ815mをゆっくり(約40m/分=時速2.4km)20分かけて下ります。
インクライン横には2390段の階段があります。
黒四発電所と取水する黒部ダムとは約10km離れていて標高差が600mあります。 -
急傾斜のインクライン(インクライン上部にて)
では、出発~。黒四発電所へ向かいます。 -
イチオシ
超ノロノロ運転(インクライン途中)
-
反対側の車両とすれ違い(インクライン中間地点)
ケーブルカーと同じ仕組みで、上と下にいた車両がすれ違います。 -
「インクライン下部」に到着
あれっ、一般的なケーブルカーと違って車内は斜めではなく水平。
どうして??? -
インクラインの構造(「黒部宇奈月キャニオンルート」HPより)
車体全体は傾けて造られていますが、客室は水平です。
なるほど! -
2番目の見学は「黒部川第四発電所」
ここは地下に建設された発電所。
その理由は
・中部山岳国立公園の自然景観を守る
・積雪・雪崩等冬期のきびしい自然条件から設備を守る
・構造物の配置を自由に決めて、外部の急峻な地形に関係なく安全・経済的な設計・施工ができる
など。 -
くろよんで記念写真(黒四発電所)
50代の頃の地顔を紹介。 -
「ペルトン水車」の羽根車(黒四発電所)
アメリカのレスター・アラン・ペルトンが1897年に発明したもので、羽根車に水流が入射しその衝撃を利用して回転する発電用水車です。 -
発電機と水車をつなぐ主軸(黒四発電所)
主軸の上部に発電機、下部に水車が接続されています。
発電機は東芝2台、日立2台が稼働。 -
運転室(黒四発電所)
発電所は平成5年から無人化し、遠隔操作されています。
発電所からの放水は、下流の「新黒部川第三発電所」と「新黒部川第二発電所」に再利用されています。 -
「上部専用軌道について」(黒四発電所)
昭和14年(1939)に日本電力が仙人谷ダムの建設資材輸送路として、欅平上部から仙人谷ダムまで5.7kmを敷設。その後、黒四発電所までの6.5kmとなっています。
このトンネルの輸送路は、河川勾配が1/24、標高差250mの急峻な地形のため、欅平から川沿いに鉄道を延ばすことができず、エレベーターで標高差200mを昇り、この「上部専用軌道」で残りの標高差50mを徐々に上っています。
ほとんどがトンネルで素掘りの箇所が多く、また建設資材輸送が目的だったのでトンネルの内径が小さく蓄電式バッテリー駆動車が客車をけん引します。 -
イチオシ
黒四発電所のホーム(上部専用軌道の後面)
発電所見学と昼食後、「上部専用軌道」の出発駅「黒四発電所」のホームに来ました。
蓄電式バッテリー駆動車に連結された客車が停車しています。
客車はトンネル途中に高熱区域(現在は40℃程度)を通過するため「耐熱式客車」になっています。
この場所は、平成14年(2002)12月31日のNHK紅白歌合戦で、中島みゆきが「NHKプロジェクトX~挑戦者たち~」の主題歌「地上の星」を熱唱したところです。 -
小さな車内(上部専用軌道)
車内は綺麗で、座れば快適。 -
後方の景色(上部専用軌道)
一番後ろの客車に乗っており、出発すると黒四発電所ホームが段々と小さくなります。 -
手掘りトンネル(上部専用軌道)
-
イチオシ
「仙人谷」の鉄橋で停車(上部専用軌道)
発電所から5分ほどで黒部川の仙人谷に架けられた橋の上で停車。
ここで仙人谷の景色を見学します。
鉄橋は冬季でも運行できるように屋根付きで側面も遮蔽できる構造です。 -
「仙人谷ダム」(鉄橋から)
標高859mの鉄橋から上流側に「仙人谷ダム」が見えます。 -
ダムの背後に「雲切の滝」(鉄橋から)
落差165mの「雲切の滝」が見えます。 -
「仙人谷」(鉄橋から)
ダム下は急峻な峡谷。 -
鉄橋の先は再びトンネル(鉄橋上)
分岐する線路はGoogle Mapで確認すると、下流側にある「関電人見平宿舎」へ延びています。 -
手掘りトンネル(仙人谷付近)
「仙人谷」を出発すると高熱地帯の「高熱隧道」を通るのですが、窓が曇りうまく写真が撮れていません。
車内にいても硫黄臭と熱気(現在約40℃)が感じられます。
かつてトンネル掘削時、岩盤の温度が160℃を超え、ダイナマイトの自然発火等があり、工事が難航しました。 -
手掘りトンネル(高熱隧道~欅平上部間)
-
イチオシ
「欅平上部」に到着(上部専用軌道)
先頭は「蓄電池機関車(蓄電式バッテリー駆動車)」です。
この近くに「竪坑展望台」があるので見学に行きます。 -
「竪坑展望台」
残念ながら雲がかかっています。
でも・・・ -
晴れた時の「竪坑展望台」(2015年10月16日訪問)
以前、「黒部峡谷パノラマ展望ツアー」に参加した時の写真です。
このツアーは2023年に終了しました。
眺望は、名剣山(左)と奥鐘山(右)の間に、白馬鑓ヶ岳、天狗ノ頭などの後立山連峰。
旅行記にしているのでご覧ください。
『新周遊ルート「黒部峡谷パノラマ展望ツアー」に参加(富山)』
https://4travel.jp/travelogue/11075163 -
「竪坑エレベータの欅平上部」(2015年10月16日訪問)
今回の「黒部ルート見学会」では写真を撮らなかったので、2015年の写真で説明。
「上部専用軌道」の前に「竪坑エレベータ上部口」があり、これから下に降ります。 -
「竪坑エレベータ内部の高さ表示器」(2015年10月16日訪問)
エレベータ標高差200mを昇降します。 -
「竪坑エレベータの欅平下部」(2015年10月16日訪問)
200m降りたので、ここの標高は600mです。 -
「工事用トロッコ列車」(欅平下部)
ここから「工事用トロッコ列車」に乗り、5分程で黒部峡谷鉄道「欅平」に到着し、ツアーが無事終了します。
黒部ダムから欅平までは、普段入れない18kmの関電工事用ルート。
鉄ちゃん夫婦には5つの乗り物を利用した「鉄道秘境旅」が最高のひと時でした!
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