2023/12/26 - 2023/12/26
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旅熊 Kokazさん
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国立西洋美術館 "キュビズム展 ~美の革命~"(その4)
- 旅行の満足度
- 5.0
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"20世紀初頭のロシアでは、西ヨーロッパからもたらされた前衛的な造形表現は、ロシア正教会のイコン(聖画像)や刺繍、食衆版画、店舗の看板といった、伝統的な民衆芸術や民間に伝わる様々なものと結びつき、「ネオ・プリミティヴィスム」と呼ばれる運動が生まれました。ミハイル・ラリオーノフとナターリヤ・ゴンチャローワはこの運動を推進した画家たちで、前者の《春》(no.89)はその代表作です。一方、《散歩:大通りのヴィーナス》(no.90)では、未来派的な運動の表現が荒々しい描き方と融合しています。またジャン・プーニーの《理髪師》(no.93)には、理髪店の看板に由来する理髪師の制服の図像が、キュビスム的な造形語彙の中に取り込まれています。
ロシアでは、フランスのキュビスムとイタリアの未来派がほぼ同時期に紹介され、この二派から影響を受けた「立体未来主義」が展開しました。ゴンチャローワらは、キュビスムの非再現的な画面構築と、都市や機械、そして工業といった未来派的なテーマとの融合を試みています。" -
89
ミハイル・ラリオーノフ
《春》1912年 -
90
ミハイル・ラリオーノフ
《散歩:大通りのヴィーナス》1912-1913年 -
93
ジャン・プーニー
《理髪師》1915年 -
94
ジャン・プーニー
《椅子、パレット、ヴァイオリン》1917-1918年頃 -
91
ナターリャ・ゴンチャローワ
《帽子の婦人》1913年初頭 -
92
ナターリャ・ゴンチャローワ
《電気ランプ》1913年 -
"1914年に勃発した第一次世界大戦は、ヨーロッパの美術家たちに多大な影響をもたらしました。フランス人芸術家の多くが前線に送られた一方、非交戦国スペイン出身のピカソやグリス、そしてマリア・ブランシャールやジャンヌ・リジ=ルソーら女性画家は銃後にとどまり、大戦中のキュビスムを担います。
戦争を予兆するような《大きな馬》(no.95)の作者であるデュシャン=ヴィヨンは、戦地で病を患い、1918年に早逝しました。グレーズは、従軍中のスケッチをもとに、「戦争の歌」を指揮する作曲家の姿を描き(no.97)、前線から帰する負傷兵を表したキュビスム的版画を、作家ジャン・コクトーによる愛国主義的な雑誌『ル・モ(言葉)』で発表しました(no.D22)。
大戦中の1917年には、バレエ・リュス(ロシア・バレエ団)による『パラード』がパリで上演されました。その舞台美術を担当したピカンは、登場人物の衣装をキュビスムの様式で制作する一方(no.D27)、帳などはより具象的、写実的に表現しており、画家がキュビスムから「新古典主義の時代」に移行する過程を示してもいます。" -
95
レイモン・デュシャン=ヴィヨン
《大きな馬》1914年(1966年鋳造) -
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97
アルベール・グレーズ
《戦争の歌》1915年 -
D27
ピカソがデザインした『バラード』の衣装写真 -
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"キュビスムをめぐる「戦争」
フランスとドイツとの間の戦争によって、キュビスムはナショナリズム的な政治闘争の対象ともなりました。キュビスムの芸術家たちの作品がドイツ人画商カーンヴァイラーによって扱われていたこともあり、すでに戦争の以前から、キュビスムはドイツと結び付けられ、フランス語のCではなくドイツ話的にKで始まるスペルでキュビスムが示されたり、「コニスト」(フランス語の「円錐(cone)」と、「患か者(con)」とが重ねられている)と併記して揶揄されていたりもしました(no.D23)。
大戦が始まると、キュビスムはドイツによる文化侵略だと非難されるようになり、当時の挿絵雑誌などでは、キュビスムによってフランス文化が堕落してしまったと糾弾されました。戦意発揚の名目で1915年に創刊された「ラ・バイヨネット(銃剣)』には、キュビスムの画家は、赤髪で口髭のあるドイツ人のように描写されたり(no.D24)、フランケンシュタインの怪物のごとき容貌で表わされたりしました(no.D26)。
これは、キュビスムこそがフランスの伝統を受け継ぐフランス的な美術であると考えていたサロン・キュビストたちの主張とは真っ向から対立する非難であり、アポリネールらはキュビスムを擁護する立場から反論を行いました。画家アメデ・オンファンが創刊した雑誌『レラン(飛躍)」には、「キュビスムの同志たちへ」と題された文章が掲載され、フランス人のキュビスムの芸術家たちが前線でドイツと戦っている事実を指摘し、フランスにおいてキュビスムを「ボッシュ(boche)」(「ドイツ人、ドイツの」を指す蔑称)の絵画と攻撃することが不当であると訴えています(no.D25)。" -
D22
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D24
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D26
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96
パブロ・ピカソ
《若い女性の肖像》1914年7月-8月 -
99
ファン・グリス
《朝の食卓》1915年10月 -
100
ファン・グリス
《椅子の上の静物》1917年4月 -
101
マリア・ブランシャール
《輪を持つ子供》1917年 -
98
ジャンヌ・リジー=ルソー
《1キロの砂糖のある静物》1915年頃 -
"大戦中に亡命したカーンヴァイラーに代わり、戦後はレオンス・ローザンベールがキュビスムの代表的画商となり、彼の画廊では、1919年にキュビストたちの個展が次々と開催されました。キュビスムは再び最先端の芸術表現としての地位を回復しますが、より平明で簡潔な構成へと変化もしました。
一方、戦争が終結して間もない1918年末、アメデ・オンファンとシャルル=エドゥアール・ジャンヌレ(ル・コルビュジエの本名)は、キュビスムを乗り越え、機械文明の進歩に対応した新たな芸術運動として「ピュリスム(純粋主義)」を宜言しました。二人は、明瞭な幾何学的秩序に支えられた普遍的な美を唱え、飛行機とリムジンを、「我々の時代の精神と様式を明確に特徴づける純粋な創造である」と賞賛しています。
ジャンヌレ(ル・コルビュジエ)は、この「機械の美学」を建築へと応用し、それは1925年のパリ装飾芸術国際博覧会のパヴィリオン「レスプリ・ヌーヴォー(新精神)」館で具体化します(no.D29)。そこには、レジェやグリスのキュビスム絵画とともに、リプシッツの《ギターを持つ水夫》(no.109)が展示されました。ピュリスムの理念に共鳴しつつ、レジェは近代社会のダイナミズムの表現を追求しました。機械のイメージそのものに魅了された独自の「機械主義」は、実験映画『バレエ・メカニック(機械のバレエ)』(no.108)へと結実します。" -
104
ジョルジョ・ブラック
《ギターと果物皿》1919年 -
105
パブロ・ピカソ
《輪を持つ少女》1919年春 -
106
ファン・グリス
《ギターを持つピエロ》1919年5月 -
103
アンリ・ローランス
《果物皿を持つ女性》1921年 -
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102
アンリ・ローランス
《頭部》1918年-1919年 -
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109
ジャック・リプシッツ
《ギターを持つ水夫》1917年 -
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D28
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110
ル・コルビジェ
《静物》1922年 -
111
ル・コルビジェ
《水差しとコップー空間の新しい世界》1926年 -
112
アメデ・オザンファン
《食器棚》1925年 -
107
フェルナン・レジェ
《タグボートの甲板》1920年 -
108
フェルナン・レジェ
『バレエ・メカニック』1923-1924年 -
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キュビスム関連年表(抜粋)
1907
ダニエル=アンリ・カーンヴァイラー、バリに画廊を構える。
ピカン、トロカデロ民族誌博物館訪問後、モンマルトルの「洗濯船」で《アヴィニョンの娘たち》(ニューヨーク近代美術館)を完成させ、続いて《三人の女》(エルミタージュ美術館、サンクトペテルブルク)に着手。
ピカソのアトリエを訪問したブラックは《大きな裸婦》(no.15)に着手。
1908
カーンヴァイラー画廊でブラックの初個展。南仏の港町レスタックの風景画や《大きな裸婦》(no.15)を含む27点を出品。批評家ルイ・ヴォークセル、限覧会等で「キューブ」の語を用いる。
1909
『メルキュール・ド・フランス』誌で初めて「キュビスム」という呼称が登場。 -
"ポンピドゥーセンターについて
フランスのジョルジュ・ポンピドゥー元大統領によって構想され、1977年に開館したポンピドゥーセンターは、パリの中心部にある複合文化施設です。
中核を占める国立近代美術館・産業創造センターは世界屈指の近現代美術コレクションを誇り、キュビスムの優品を数多く収蔵しています。プリツカー賞を受賞した2人の著名な建築家、リチャード・ロジャースとレンゾ・ピアノによって設計され、配管やチューブ状のエスカレーターがむき出しになった特徴的な外観でも知られています。" -
(続いて、国立西洋美術館常設展へ・・・)
おまけの "ロングバージョン" (^^♪
https://www.youtube.com/watch?v=GkSXCZS6FhE
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