2022/06/07 - 2022/06/09
114位(同エリア2812件中)
ひらしまさん
6月7日。ブルージュを立ったわたしたちは、最後の目的地ブリュッセルに向かった。でも、気になるのは明日の帰国便に備えてのPCR検査だ。
オランダもベルギーも入国時に陰性証明などは求めなくなったが、日本入国はそうはいかない。帰国前72時間以内のPCR検査での陰性証明がなければ帰国させてくれないのだ(注)。
しかも、検査の方法も証明書の記載項目も指定されているので、どこでもいいというわけにはいかない。そこで、日本大使館のお墨付きの出ているブリュッセル空港のテストセンターで受けることにしていた。
5月に日本からテストセンターを予約しようとしたが、どうしてもうまくいかない。ここだけは確実に進めたくて、現地在住の方に有償で手を貸していただくロコタビというサイトでニコさんという方にサポートをお願いし、適切なアドバイスをいただいて登録ができた。
(注)9月7日から帰国時の陰性証明は必要なくなります。
- 同行者
- カップル・夫婦(シニア)
- 旅行の手配内容
- 個別手配
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ブルージュで乗った列車をブリュッセル中央駅で降りてホテルにチェックインし、すぐに空港のテストセンターに向かった。1等車を探すのが面倒で2等に乗ったが、意外にもすいていて静かだった。
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テストセンターに着いたのは5時過ぎだった。登録は6時だが、日時は目安に過ぎず変更して構わないことをニコさんが確認してくれていた。
待つこと数分、妻と一緒に部屋に招き入れられた。冗談でなごませてくれるところが欧州らしい。PCR検査は痛いと聞いていたけれど、わたしは鼻がむずがゆくなってくしゃみをこらえるのが大変だった。検査は数分で終わり、結果はスマホに通知される。
その結果通知が24時間以内に来る通常コースで料金67ユーロ、3時間以内のお急ぎコースになると135ユーロもする。悩んだけれど、結果通知がもし24時間後だとチェックイン直前になってしまうので、万一陽性だった場合に対応する時間を確保したくて、3時間コース。2人で4万円の大枚を泣く泣くはたいた。 -
中央駅に戻り、夕食はラーメンかスパゲティにしようと、飲食店の多そうな通りを店を物色しながら歩いた。
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突然広場に出た。え、この豪華な建物群は、もしかしてグランプラスじゃないか。
最初に目にはいったのは北東側の右半分。真ん中の一番華やかなのは仕立て屋のギルドハウス。それぞれの1階にはノイハウス、マルコリーニ、ゴディバと高級チョコレート屋が軒を連ねている。 -
時計回りに南東側の堂々たる建物は、ブラバン公の館と呼ばれるけれどギルドハウスの集合体らしい。
ちなみに、調べてみると、ブリュッセルがブラバン公国の都となったのは14世紀。12世紀ころから市場となっていたこの場所に市庁舎が建ったのが15世紀で、華麗なギルドハウスが連なるグランプラスになっていく。17世紀にはフランス王の軍の攻撃で木造のギルドハウスは破壊しつくされたが、ただちに石造りで建て直されている。
そして、今世紀に入ってからの修復で、グランプラスは中世の華やかさにより近づいたという。 -
南西側の左半分。
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真ん中のビール醸造業者のギルドハウスの上に立つ騎士像は、18世紀オーストリアのネーデルラント総督だったカール・アレクサンダー・フォン・ロートリンゲンらしい。よそから派遣された支配者ながら結構支持されたという。
フランドル地方の広場の像とはずいぶん違うものだ。 -
南西側右半分は市庁舎。グランプラスで唯一現存する中世建築だ。守護聖人聖ミカエルをいただくブリュッセルの自治権力の象徴であり、高くそびえる塔とぎっしり像が彫りこまれた壁面で圧倒的な存在感だ。
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北西側左半分。間口は狭いがそれぞれに華やかなギルドハウス。
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その続き。1階はカフェのテラス席が並んでいる。
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北東側左手。
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一周して最後の北東側中央。柱廊が印象的な建物は、向かいのブリュッセル市庁舎に対抗してブラバン公が建てさせ、のちにネーデルラント生まれのスペイン王カルロス1世が改築させたという「王の家」。現在は市立博物館になっている。
なお、ヨーロッパの有名な広場には必ずある教会が、このグランプラスにはない。ブリュッセルが商工業者の都である証なのかもしれない。
夕食は結局、部屋に帰って煎餅、あられ、クラッカー、にゅう麺などを在庫一掃することになった。 -
最後の晩の宿はヒルトン・グランプラス。中央駅の目の前でグランプラスもすぐと、立地は申し分ない。
でもWiFiがつながらず、つなげるためにはヒルトンに個人情報をたくさん放出させられた。腹は立つが、PCR検査の結果を受け取るため背に腹は代えられない。
検査結果は2人とも陰性で、ほっと一安心。でも、それを受付でプリントしてもらうのにメールで送るよう求められ、ホテルの長~いアドレスをスマホに打ち込むのにまた一苦労だった。 -
夜11時ころ、グランプラスの夜景を見に1人で出かけた。周辺の飲食店はどこも大盛り上がりだった。
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市庁舎はよりきらびやかになった。
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北西6棟はあでやかさを競い合っている。
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総督は月に向かって馬を走らせる。
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おやすみ、グランプラス。
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離れてもよく見える市庁舎の塔。
最後の晩は湯船にゆっくりつかり、12時就寝。 -
6月8日。現地最終日。
ヒルトン・グランプラスの朝食はおいしい。食堂の窓からは西側の教会が見えた。我々の部屋は駅前広場に面していたけど、高い部屋はこっち側なんだろう。
小雨降る中、朝のグランプラスを見に行く(写真)。さすがに人が少ない。 -
頑丈そうな門を通って市庁舎中庭に行ってみた。
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中世的雰囲気が残っている気がした。
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続いて、ギャルリー・サンチュベール。
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なるほど格調高いギャラリーだ。
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チョコレート屋が多い。
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その中でお手頃で馴染みのあるレオニダスにはいる。
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物価高騰と超円安にもかかわらず、日本の3分の1以下の値段で買えたと妻は喜んでいた。
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もう1軒はピエール・マルコリーニ。
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自分の好きそうなプラリネを伝えて、100g(11.9ユーロ)の袋をいくつか作ってもらう。1袋には12個くらい入っていた。もっとも、食べてみるとあまりに小さく、物足りない感はあったが。
店を出てすぐ店員が追いかけてきたので、忘れ物でもしたかと思ったら、なぜかプラリネを1個ずつ手渡してくれた。
部屋に帰って荷造りして預け、昼食に出かける。 -
ベルギーで1回くらいはフランス料理も食べたいと、グランサブロン広場近くのレブリジッティーヌを予約していた。
本降りの雨の中、近道しようと思ってかえって遠回りになり、なんとかたどり着く。
片言の日本語を話す陽気なギャルソンに、聖母教会が見える窓際の席に案内された。ビストロの雰囲気でもある。 -
左上から時計回りに、妻が前菜から頼んだ鯖のビネガー〆と白アスパラの卵ソース添え。わたしは定食で、野菜のトマト詰め、鶏のクリーム煮パイ詰め。
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そして、デザートの茄子とオレンジのソルベ。デザートに茄子って驚いたけどおいしかった。
昼の定食35ユーロはどの皿にも意外性があり、雨の中行ってよかったと思えるお値打ちものだった。 -
午後は王立美術館へ。ロッカーに使う硬貨の持ち合わせがなくクロークで両替を頼んだら、なんと2ユーロ貸してくれた。すばらしい大らかさだ。
写真はエントランスホール2階ギャラリーの彫像。 -
ホールの展示は見応えがあった。
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王立美術館はいくつかの美術館に分かれていて、その中から我々は世紀末美術館を選んだ。
入ってみると、地下の3階から8階にわたり、思っていたより多彩な作品が展示されている -
ついつい見入っているとなかなか先に進めない。
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そのうちに妻が疲れてしまい、アールヌーヴォーのガラス工芸などは最後の方なので大急ぎで見ることになってしまった。
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上に戻るエレベータがとても広く、椅子が設けられているのには驚いた。
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予定していた楽器博物館もアールヌーヴォーの外観だけを拝んで済ませ、ヴィタメールでお茶しようと向かったが、立ち席しかやっていないとのことであきらめる。
ホテルで荷物を引き取り、駅のスタバで休憩してから空港に向かった。 -
ブリュッセル空港のANAチェックインは早くから始まっており、日本人職員がサポートについていた。陰性証明対応で航空会社も大変なんだな。
張り切って免税店に向かった妻は、品揃えが少ないとがっかりして帰ってきた。
時間もあるし軽く食べておこうと行ったラウンジで、2組の日本人ご夫婦と話した。こういう特殊な状況にあると、連帯感みたいなものが生まれる。
実は昨晩MySOS 登録をした時、妻のスマホはいきなり入国済の画面になってしまい、情報を登録できずに困っていた。
(MySOSとは、もともと入国者の位置確認等のために厚労省が採用したスマホ用アプリで、入国前に情報を登録し審査を受けておけば日本到着時の検疫にかかる時間が短くなるというふれこみだった。)
隣の席の同年配のご夫婦は「ブリュッセルにいる娘が全部やってくれたからわからない」とうらやましいお話。もう一組の若いご夫婦は「去年ハワイから帰ったときも成田でやったからとくに設定してない」とのことで、安心した。
彼らとはそのあとも、旅先での経験やホテルの選び方などの話で楽しい時を過ごすことができた。
機内は21席のブロックに乗客は4人だけと、行きよりもさらに少ない。CAが名前で呼んでくれるという初めての経験をした。行きは北極海回りだったけれど、帰りは南回りで帰ってきた。 -
6月9日。成田の検疫で目の前のスタッフが外国人なのに面食らった。あれ、日本に帰ってきたんじゃなかったっけ。中国、フィリピン、インドネシアあたりの人とお見受けした。厚労省が人海作戦のために外注した企業が雇用する多国語対応労働者なんだろう。
6月から入国時のPCR検査がなくなっているので、たくさんある関門を書類とスマホを見せて通るだけ。わたしのMySOSは途中までしか登録してなかったがまったく問題なかった。
でも、妻はMySOSが不具合で、わたしが一周して戻ってきてもまだ同じ場所に止まったままだった。スタッフがなんとか入れ直したときにはほかの乗客は誰もいなくなっていたので、その後の妻の検疫ツアーはあっという間に終わった。
結構面倒臭いわりにあまり意味のないように思えるMySOSにこだわるのは、考え直していただきたいものだ。 -
コロナ、記録的円安、欧州の物価高騰、さらにロシア領空回避による長時間フライト。お金はたくさんかかるし、なにかと余計な時間はとられるし、ひどい時期の旅だった。こんな時期に行く奴は馬鹿だ。
でも、自分でも非合理的だと思うけど、あのままそれ以上に旅を待ち続けることができなかった。
それに、そういう馬鹿な旅行者を温かく歓迎してくれるのを感じる場面もあり、やはり行ってよかったと思っている。 -
ただ、現地でコロナ感染した場合の準備はしていたつもりだったがまだ足りなかったという反省がある。その点で、これから海外旅行をお考えの方は、実際に旅先での感染を経験されたGuteReiseさんの旅行記「コロナに感染、ウィーンで隔離、どうする2022」を参考にされることを是非おすすめしたい。
https://4travel.jp/travelogue/11769244
そして、ベルギーの旅については、sanaboさんの旅行記「秋色のベルギーひとり旅」シリーズをわたしは教科書のように参考にさせていただいた。感謝!
https://4travel.jp/travelogue/11340027 ほか
それでは「復活海外旅 初夏のオランダ・ベルギー」をこれで終わります。長々おつきあいいただき、ありがとうございました。
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この旅行記へのコメント (2)
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- sanaboさん 2022/09/03 18:48:28
- 祝・旅行記完結☆彡
- ひらしまさん、こんばんは
最後のブリュッセル編も興味深く拝読させていただきました。
ドキドキのPCR検査は陰性で本当に良かったですね。
それにしてもお二人で検査費用が4万円とは高過ぎですよね?!
9月7日から帰国前検査は不要になりましたけど、その分
燃油サーチャージが高くなりましたから秋に行かれたとしても
収支はさほど変わらなかったかもしれませんね。
(早くにチケットを購入していたなら別ですけど…)
ひらしまさんの旅行記でグランプラスの美しさを再認識し、
その歴史やギルドハウスの解説においても新たに知ることが
多々ありました。
「総督は月に向かって馬を走らせる。」とのコメントとお写真に
思わず唸ってしまいました。
詩人ひらしまさんの感性が煌いていて素晴らしいです☆彡
ギャルリー・サンチュベールのピエール・マルコリーニの店内、
素敵でしたでしょう? チョコも勿論格別の美味しさでしたね。
たしかに『コロナ、記録的円安、欧州の物価高騰、さらに
ロシア領空回避による長時間フライト』と条件的には難しい時期だったと
思いますが、ひらしまさんが自虐的に仰ってらしたように
「こんな時期に行く奴は馬鹿だ。」などとは決して思っておりませんので
ご安心くださいね(笑)
むしろ、幾多の困難を乗り越えてご旅行を敢行された行動力と勇気に
拍手喝采です!
私の拙旅行記が少しでも参考になりましたなら幸いです。
URLまで貼り付けて下さり、ありがとうございました。
朝晩随分と涼しくなりましたね。
体調管理にお気をつけて、お元気にお過ごし下さいませ。
sanabo
- ひらしまさん からの返信 2022/09/03 22:52:30
- ありがとうございました!!!
sanaboさん、こんばんは。
いつも温かいメッセージをありがとうございます。
sanaboさんの「秋色のベルギーひとり旅」を読んで、いつかベルギーに行こうと思ったところから始まった旅でした。
ヘントなんてそれまで名前も知らなかったのに、ぜひ歩いてみたいと思ったものでした。
それから4年、たくさんの紆余曲折を経て、ようやく行ってこられて今はホッとしています。
ありがとうございました。
オランダもベルギーも、僕が今まで行ったヨーロッパの国と違って王の国ではなくて、基本的に商工業者の町の連合体で王は神輿に過ぎなかったということが、あの華やかな街並みや広場とともに印象に深く刻まれました。
「こんな時期に行く奴は馬鹿だ」は正直な実感ですが、馬鹿な奴もいていいんでしょうね。
これですっきりして前に進める気がしています。
空模様は今ひとつですが、涼しくなって活動しやすくなりましたね。
お仕事に、旅の準備に、お元気にお過ごしください。
ひらしま
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