2010/10/29 - 2010/10/29
57位(同エリア158件中)
さっくんさん
現在の一帯一路は崩壊寸前ですが、大昔のシルクロードの足跡を辿る旅は続きます。
トルファンを訪れました。今回の旅の中間点とも言えますが、それだけでは無くあらゆる意味で分岐点に建つ街それがトルファンです。どういう事か街を歩きながら紹介します。
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トルファンのベゼクリク千仏洞を訪れました。
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これまでの石窟動揺内部同様撮影禁止なので外観のみとなります。
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内部の絵は残念ながら余り保存状態は良いとは言えません。
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ムスリムにより破壊された絵もありますが、それ以上に、ヨーロッパの学者達が此処を探検し、遺跡保護と称してヨーロッパに持ち去り、挙げ句の果てに第二次世界大戦で焼失してしまったからです。なんと言う…。
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ただ、残された貴重な絵画を見れば、私が西域に足を踏み入れた事が犇々と伝わってきました。
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それは絵画に描かれた仏様の顔立ちがこれ迄の中華風の顔立ちと明らかに違う事です。仏様の顔立ちは正しくウイグルの人々の顔立ちでした。
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そう、此処トルファンは、ありとあらゆる意味で分岐点となる街なのです。トルファンから西へ行けば中華色は極端に薄まり、ウイグルの色が強まります。これまでの民族分布の分岐点とも言えるでしょう。
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高昌国遺跡を訪れました。ウイグル属のおじさんが曳く驢馬車に乗って遺跡を散策します。
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高昌国とは中国南北朝から唐代にこの地に繁栄したオアシス国家です。
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そんな古い時代に日干し煉瓦で築かれ、戦乱で荒廃し長い年月風雨に晒された遺跡なので、正直保存状態は劣悪です。
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なので此処の歴史に何も興味も無い人は、広大なスペースにボロボロの残骸が残るだけで退屈に感じるかもしれません。
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しかしこの国の歴史、いやそれ以上に玄奘三蔵の旅に思い入れのある私にとっては涙無くしては語れない遺跡でもあるのです。
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高昌国、この国は、玄奘三蔵の旅にとって最大のターニングポイントともなった国なのです。
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前にも書きましたが三蔵は唐を密出国してWantedな状態で此処まで旅を続けて来たのです。しかし高昌国を訪れるや否や、国王麴文泰から高僧が来たと熱烈大歓迎を受けました。
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その後玄奘に感嘆した麴文泰はあらゆる趣向を凝らして玄奘を高昌国に押し留めようと試みます。しかし鋼鉄の意思を持った旅人玄奘はガンダーラを目指す意思を貫きます。
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実は玄奘のこの行為は、当時は危険極まりない行為でもありました。国王の再三の頼みを断って出国したのです。王に対し不義理でもありますし、国にとっては叡知の流出でもあるのです。当時では命を狙われかねない状況だったのです。
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しかし高昌国の王、麴文泰はそんなチンケな男ではありませんでした。いやもしかすると麴文泰は玄奘の才能に惚れ込んでいたのかもしれません。麴文泰は屈強の男達を選りすぐり旅団を作り、ガンダーラ迄の通行証を書き、玄奘三蔵を高昌国のガンダーラへの正式な使節団の長として見送ったのです。
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物凄く漢(オトコ)のエピソードに思えませんか?これによって玄奘三蔵はお尋ね者の旅人から正式な使節団の隊長として旅をする事になったのです。そんな訳で、玄奘の旅にとって高昌国のあった此処トルファンは忘れ得ぬ分岐点となったのでした。
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しかし、この物語には後日談があるのです。
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玄奘三蔵がガンダーラ迄の旅を終え、経典を手に帰国の途についた時、麴文泰の約束を果たす為、感謝の意を伝える為、玄奘は高昌国に戻って来ました。
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しかし玄奘が見たものは、廃墟と化した高昌国だったのです。しかも高昌国を破壊したのは玄奘の母国、唐だったのです。
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玄奘はどんな想いで廃墟と化した高昌国を眺めたのでしょう?
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思わず杜甫の春望が脳裏に浮かびます、
国破れて山河あり
城春にして草木深し… -
そう言えばこの詩、玄奘が唐に帰国した約100年後、楊貴妃の時代に巻き起こった安禄山が起こした安史の乱で荒廃した唐の都、長安を嘆いた杜甫の歌でした。
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嗚呼今度は平家物語の冒頭が脳裏に浮かびます。
祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり
沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす -
殆ど残骸と言って良い高昌故城ですが、玄奘が説法した講堂等幾つかは修復が施されています。
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此処で玄奘が説法を行ったとされています。
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今ではこの風情ある驢馬車は引退して、電動カートに変わってしまっている様です。
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アスターナ古墳を訪問しました。
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高昌国の人々が眠っているそうです。
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男性は右、女性は左に埋葬されるのだそうです。それは生前も同様で、例えば結婚式も男性は右、女性は左に立ちます。
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お!何やら人だかりが見えて来ました。
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どうやらバザールが開かれている様です。
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イスラーム帽をかぶったウイグルの人々がシシャリク(串焼き)を焼いています。
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トルファンは民族分布の上でも分岐点と言えます。先に泊まった惇煌は未だ中華色が濃厚でしたが、此処ではウイグルの人々が、ウイグルの言葉を話し、ウイグルの食事を楽しんでいます。
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哈密瓜の屋台を見つけました。
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カットフルーツは衛生問題であまり推奨出来るものではありませんが、此処は心配御無用!切った側から売れてしまうので新鮮そのもの、味も格別です。
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トルファンのバザールは常設では無く、曜日で開催されるもの。上手くタイミングが合ってラッキーでした。
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火焔山を訪れました。山肌の色合いや刻まれた紋様、そしてこの地方の夏の酷暑具合からその名で呼ばれる事になりました。
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此処で西遊記の三蔵法師一向は火焔山の炎に阻まれ先に進めなくなってしまいます。
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そこで孫悟空は炎を消す事が出来る芭蕉扇を入手する為、鉄扇公主と相対する事になります。
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そこで繰り広げられる手に汗握る妖術全快の戦いは、西遊記でも大人気の見せ場となっています。
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この様な訳でトルファンは、西遊記に於ける三蔵法師一向にとっても分岐点となる場所となったのです。
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蘇公塔を訪れました。
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礼拝堂は中央アジアに多い多柱式のモスクです。
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多柱式は一度に多くの信者を収用しなければならないモスク建築で、ドームが開発される前に多用された建築様式で、その名の通り多くの柱で屋根を支えます。スペインのメスキータは多くの柱と言うデメリットをデザインで芸術に昇華させた多柱式モスクの傑作です。
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蘇公塔、即ちミナレットも中央アジア様式ですが、下部は非常に太いのが特徴です。
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いっぱい食べたラグメンの中で一番はこのトルファンのラグメンでした。
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元々ウイグルの土地ですし、ウイグル色がグッと濃くなるトルファンですが、国の政策もあり多くの漢民族が移住し、今となっては街の中心部はほぼ漢民族で占められ、ウイグル族は郊外に追いやられているのが現状です。
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中華式庭園もあります。
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漢民族の御老人達が太極拳を舞ってます。中国の微笑ましい光景ですが、シルクロードのイメージとは遠いかな?
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トルファン名産の葡萄です。此処で採れる葡萄で作った干し葡萄はシルクロードを代表する土産として有名で、今日ではワインも作られています。
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夕暮れの中にひっそりと建つモスク。
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トルファン最後に訪れたのは交河故城を訪れました。
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字の通り二つの川が合流する立地に残された都市遺跡です。
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歴史は先に見た高昌故城より古いですが、玄奘が高昌国を訪れた頃は、高昌国の拠点のひとつでした。高昌国が滅んだ後は西域の最高軍事機関である安西都護府が設置されました。
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特色は高昌故城の様に日干し煉瓦を積み上げて作られたのではなく、石窟寺院の様に掘り抜いて作られたと言う事です。
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石窟等の限られたスペースなら兎も角、これだけ広大なオープンスペースに掘り抜かれた遺跡は見た事が無いので製法を知った時は驚きました。
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遺跡の中でも保存状態が良く、独特な形状から解りやすいのは寺院建築です。
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掘り抜くと言う工法だった事からか、家屋の部屋は半地下に位置する家屋も多かった様ですが、暑さや寒さに対して半地下の方が都合が良かったのかもしれません。
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こうした構造の違いの影響もあるのか、高昌故城より保存状態は良好です。
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故城の両脇を流れる川沿いには木々が繁ります。
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水や緑に囲まれていて、克つ高台に位置するので、人が暮らすには適した地形だと思います。
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寺院地区へ向かいます。
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遺跡の核となる寺院跡に登りました。
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寺院から街を見下ろし当時の暮らしに想いを馳せてみました。
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雲の具合でしょうか?
幻想的な日没の風景です。 -
山火事ではありません。
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美しい余韻を残しながら日が暮れていきました。
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小さなモスクがありました。
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一般民家の葡萄棚です。
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アラブ同様絨毯の上で靴を脱いで寛ぐスタイルです。
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トルファン駅に到着です。
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寝台列車で夜食用にナンを買いに来ました。
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笑顔がとっても素敵なウイグルのイケメンさんが店員でした。
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トルファンは、昔も今も旅する者達にとって重要な分岐点でした。
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歴史的な交易路も此処で天山北路と天山南路に分かれます。
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現在の鉄道も、トルファンでウルムチ方面とカシュガル方面に分岐します。
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あらゆる意味で分岐点となったトルファンは見所も豊富にあって、私の旅にとっても思い出深い地になりました。
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此処で私の乗る列車は天山山脈を越え天山南路を進みます。
本日も御乗車ありがとうございます。
次はクチャに停車します。
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