2021/11/12 - 2021/11/13
180位(同エリア972件中)
まつじゅんさん
- まつじゅんさんTOP
- 旅行記571冊
- クチコミ1107件
- Q&A回答61件
- 686,579アクセス
- フォロワー151人
この旅行記のスケジュール
2021/11/12
この旅行記スケジュールを元に
兵庫県民割でおでかけ(その1)帰宅途中の寄り道編です。
神戸ベイシェラトン ホテル&タワーズで、優雅なひとときを過ごし、朝スパに浸かりながら「このまま帰ると昼前には自宅に着いてしまうなぁ」と考え、午前中は六甲アイランド周辺で過ごし、ホテルビュッフェでランチ後、少し酒蔵巡りをして、「ヨドコウ迎賓館」を見学する事といたしました。
兵庫県民割でおでかけ(その1)優雅なひととき編↓
https://4travel.jp/travelogue/11724284
兵庫県民割でおでかけ(その1)美術館から酒蔵巡り編↓
https://4travel.jp/travelogue/11732568
この旅行の少し前(2022年9月)に「新美の巨人たち」というTV番組で、内田有紀さんが訪れていたのを見て、就職して間もない頃に見せて貰った時の印象とは全く変わっていて、凄く整備されて美しい姿に驚き、一度見てみたいと思っていました。
魚崎郷の造り酒屋 櫻正宗の八代目当主 山邑太左衛門氏の別邸としてフランク・ロイド・ライトの設計による個人住宅で、当時の酒蔵当主の財力や文化水準の高さを感じさせる建物だと思います。
- 旅行の満足度
- 5.0
- 観光
- 5.0
- 同行者
- カップル・夫婦(シニア)
- 一人あたり費用
- 1万円未満
- 交通手段
- 自家用車 徒歩
PR
-
現在は「ヨドコウ迎賓館」となっていますが、元は灘五郷の老舗造り酒屋、櫻正宗の八代目当主が別邸として芦屋市街を一望できる高台にある住宅です。
設計者:フランク・ロイド・ライト
施工:女良工務店
建築主:八代目 山邑太左衛門
構造形式:RC造、地上4階建
敷地面積:5,228.1 m?
建築面積:359.1 m?
延床面積:542.4 m?
設計着手:1918年
着工:1923年
竣工:1924年ヨドコウ迎賓館(旧山邑家住宅) 名所・史跡
-
設計開始は1918年との事ですが、ライトは1922年に帰国しているので、実際の建築はライトの元で帝国ホテルの建設にも携わっていた、遠藤新氏と南信氏の手によるものです。
遠藤新氏は、自由学園や甲子園ホテル等の設計にも携わっていて、ライトに心酔した建築家の一人です。
歴史としては、1918年ライトによる基本設計終了、1924年完成、山邑家の別邸として使用開始。
1935年には実業家 天木繁二郎氏の所有となり、別荘、事務所として使用、終戦後GHQにより接収、進駐軍の社交場となる。
1947年に㈱淀川製鋼所の所有となり、社長公邸として使用し、接客の場として利用された事から、迎賓館と呼ばれるようになる。
1959年には貸家となり、アメリカ人が居住。
1971年 ㈱淀川製鋼所独身寮、1974年に重要文化財指定。
1989年 ヨドコウ迎賓館として一般公開開始。 -
ライトが設計を引き受けた経緯は、山邑太左衛門氏の娘婿であった政治家 星島二郎氏が、遠藤新氏と大学時代からの友人であったことから、遠藤新氏を通じて山邑太左衛門氏にライトを紹介したと考えられているようです。
ライトは、帝国ホテルの工事で細部への拘りから工事費が高騰し、結果的に解雇されているように、財力が無いと設計を依頼する事すら出来なかったと思いますので、凄い財力だったのだろうと思います。 -
ライトが日本で設計した住宅建築として、ほぼ完全な形で現存する唯一の作品であると言われています。
その事から1974年に、大正時代以降の建造物として初めて、かつ鉄筋コンクリート建造物としても初めて国の重要文化財に指定されています。 -
1989年から淀川製鋼所迎賓館(ヨドコウ迎賓館)として一般公開されていますが、仕事が建築ですので、当時のヨドコウの担当者?(記憶があいまいですが…。)から改修前に見学会の案内を頂き、見学させて頂いた記憶が幽かにあります。
その時は、今の面影とは違っていて、失礼ながら古くて薄汚れた建物、と言う印象でした。 -
ライトは落水荘に代表されるように、敷地に対する建物配置が絶妙な建築家だと思います。
この建物でも、芦屋川が海に向かってまっすぐに行く寸前の折れた丘に、階段状に建物が建っていて、建設当時より格段に住宅が増えたと思える現在でも、芦屋市街や大阪湾を一望できるようになっています。
エントランスから建物全体を眺めながら導かれるアプローチや、迷路状ですがリズムを感じる各階の室配置や、室内外の細かいディテールに、ライトの建築手法が反映されているように思います。 -
帝国ホテルと同じように、細かい彫刻・装飾がされた大谷石を内、外装に多用されています。
左右対称の厳格なデザイン、大谷石、幾何学的な装飾にどこか船をイメージさせるデザインは、一目見ただけでライトの建築と解りますね。
TVで、バルコニーの突端で内田有紀さんが両手を広げたとき、船の先端という印象を受けました。 -
建築模型が展示されていました。
敷地の使い方や、建物の開き方等、良く解ります。
船のような長細い形に設計されているて、見ていて面白いですね。
新宿の建築模型カフェで見た、落水荘とは似ていて非なるライトの唯一無二の思想が感じられます。↓
https://4travel.jp/travelogue/11716323 -
建物として見るのなら、こちらの模型の方が解りやすいですね。
ライトは、「形態と機能は1つである」として、「有機的建築」という理論を提唱していました。
「建物はバランスよく、環境と一体になるべきだ。」という考えで、こちらも建築界の巨塔、ル・コルビュジエの「住宅は住むための機械」という考えと正反対ですね。
ただ、ライト建築は敷地全体を眺めて、その素晴らしさが解る事も多いように思います。 -
いよいよ建物内部に入ります。
ここからは私の忘備録として、一寸マニアックな表現が多いので、興味のない方はサラーっと写真を流して見てください。
写真は部屋毎では無く、パーツや関連ディテールで分けています。
部屋の壁面には、作り付けの飾り棚、置台、窓には装飾の「飾り銅板」があります。
また、壁の上部には小窓が設けられ、ドアで閉鎖できるようになっています。
ここからの光が、独特の雰囲気を醸し出しています。 -
普通作り付けの家具というと、クローゼットのように用途は収納第一と思いますが、ライトは収納だけではなく「物を飾る」スペースをデザインしている事が多い気がします。
応接室の物入れの上部を利用した飾り棚や、石材も花瓶等の置き台になるように考えられています。 -
ライトの人生は波乱万丈だったようです。
施主の奥さんとの不倫や、家族が惨殺されたという事件もあったようです。
また、アメリカ屈指の浮世絵コレクターという一面も持ち合わせながら、「日本の影響など受けて無い」と言い張ったり、人間的にはどうなんだろう、という感じもしますが、それが天才のなす技という事でしょうか。 -
ライトは、建材にも拘りがあったようで、作り付けの棚にはマホガニーを使用しています。
木造建築では檜、松の木目を活かす考えですが、ライトは装飾に適さないと考えていたようで、「黄金の木」「赤い黄金」の異名を持つ、希少で高級な木材であるマホガニー(センダン科マホガニー属)で装飾材を構成しています。
上部に設けられた窓は、日本の湿度の高さを意識して設けた通風孔で、ライトの日本の気候風土に根差したデザイン、設計思想が具現化されたものと思いますが、一説では、ライト建築は多雨多湿という日本の気候には配慮が不足しているという声もあります。
西洋の「石の文化」の材料を多用している事から、その様に思われている気がしますが…。 -
ライトがマホガニーを好んだ理由は何か、推測でしかありませんが、木目を目立た差ない事では無いでしょうか。
木造建築における、杉、松、桧のような木目は、装飾効果を損なうものに思えたのかもしれません。
また、1枚板の扉を作るという拘りがあり、日本の木材では規格化され寸法採りができなかった事も挙げられています。
何故、ライトは1枚板の扉に拘ったのか、機能性や見た目の変化を優先して加工された合板にはない、天然木ならではの重厚な趣きや樹木本来の自然な素材感を室内に取り入れたかった、という事ではないでしょうか。
一枚板の扉は、確かに重厚感がありますからね。 -
学校時代に学んだ、「プレーリーハウス」は、ライトが確立させた思想で、水平線の強調によりシカゴ周辺に広がる草原の風景を現したものと言われます。
水平線により建築と自然との融合・調和を図る事により、内外の空間の連続性、建築と家具のデザインの統一性も目指したデザインですが、ライト建築の根底には、その地方ならではの特徴を取り入れ、風土を生かそう、という想いが感じられます。 -
この建物には、3階に3室の畳敷きの部屋があります。
当初のライトの設計には無かったようでが、施主の強い要望を現場を引き継いだ遠藤新氏が、ライト建築の思想で実現した部屋となっています。
和室という概念の論議はありますが、飾り銅板を使用した欄間が印象的な部屋です。
植物の葉をモチーフとした飾り銅板から入る光を取り入れ、木漏れ日をイメージした演出はライトの自然との共生という考えを具現化されたものと思います。
銅板は緑青により錆を上手に利用し、緑に近づける等、細部への拘りを感じる空間です。 -
廊下にも、作り付けの収納家具が多くあります。
この建物には至るところに作り付けの家具があり、室内設計では物入れ、棚等はもちろん、長椅子までも作り付けとすることで、統一感のある空間構成を目指しています。
また、3階から4階へ上がる階段の壁は、土壁になっていて、竹で編んだ枠組みに土を塗っていくという日本の木造建築の手法を取り入れています。
全体的には、殆どコンクリートが使用されていますが、室内の壁に所々土壁を使用するという遊び心でしょうか。 -
3階家族寝室には、竣工90周年を記念して復元された竣工当時の机と椅子が展示されています。
館内には、竣工当時の家具は残されてはいません。
ただ、竣工時の建物には、建物に合わせ設計されたという家具が置かれていたという記録が残っています。
ライト、遠藤新氏、南信氏の考えは、家具は暮らし方を形にした室内空間を構成する大きな要素ということで、家具の復元により竣工時に意図された室内空間を復元する事が出来るのかなと思います。
机と椅子には、装飾も多く施されています。 -
食堂は特に装飾性が強い造りとなっていて、正方形に近い平面に、暖炉を中心とした左右対称のデザインとなっています。
西洋文化では、食堂は一家団欒の場というよりは、むしろ厳格な儀式の場という認識もあるようで、壁面にしつらえられた木製の装飾は、構造上の役割は無いようですが、端正で厳粛な雰囲気を醸し出しています。
天井は中央部が最も高い四角錘になっていて、三角形の小窓がアクセントと換気、昼は光を取り入れ、夜は星空を眺めるという、特別な空間を醸し出しています。 -
幾何学的造形のマジシャンと呼ばれるライトらしいデザインが、2階応接室中央にある机と椅子です。
三角形を基調とした幾何学的造形となっていますが、ライトの作品ではないようです。 -
花瓶や壺、照明器具等を置くための箇所が、随所にしつらえられています。
室内を装飾することによって生活に潤いを演出し、心豊かに暮らして欲しいという願いが感じられる空間です。 -
3階にある使用人室、洗面所、トイレ等の水廻りです。
窓枠、水栓もデザインされていますね。 -
重要文化財のライトの住宅ですが、フランク・ロイド・ライトの20世紀建築作品群は世界遺産に指定されていますが、推薦書には、将来の拡張登録候補として6件の建築物が記載されており、その中には旧山邑邸(現ヨドコウ迎賓館)も含まれています。
登録には、ライトの「有機的建築」は浮世絵や折り紙、自然と人間の共生といった日本文化の影響をうけていることは知られていますが、ライト作品と日本文化との関係の証明が登録の要件となるようです。
また、日本では特に登録後の観光客増加対策が必要で、この辺りは高級住宅街でもあり、閑静な住環境と観光公害の対策が必要と思います。 -
2時間ほどかけて、ゆっくりと建物を見せて貰いました。
建築の奥深さと素晴らしさを体験できた、貴重な時間を過ごす事が出来ました。
芦屋駅からヨドコウ迎賓館へ続く坂道は「ライト坂」と命名されていますが、命名者は「甲子園ホテル物語」の著者でもある、武庫川女子大学生活環境学部 生活環境学科の三宅正弘准教授です。
甲子園ホテルは、ライトの弟子とも言われる、遠藤新氏設計による空間デザイン(ライト式建築)と、林愛作支配人の構想が結実した日本のホテルの魁で、現在武庫川女子大建築学科の校舎となっています。
COVID-19が終息し、見学が再開されたら是非訪れたいと思います。
今回、これまで。
利用規約に違反している投稿は、報告する事ができます。
コメントを投稿する前に
十分に確認の上、ご投稿ください。 コメントの内容は攻撃的ではなく、相手の気持ちに寄り添ったものになっていますか?
サイト共通ガイドライン(利用上のお願い)報道機関・マスメディアの方へ 画像提供などに関するお問い合わせは、専用のお問い合わせフォームからお願いいたします。
この旅行で行ったスポット
西宮・芦屋(兵庫) の旅行記
旅の計画・記録
マイルに交換できるフォートラベルポイントが貯まる
フォートラベルポイントって?
0
24