2019年1月新春の週末一泊一人宿泊記～福島県磐梯熱海温泉・失われた宿の記憶～

2019/01/05 - 2019/01/06

昨年2020年早々に始まったコロナ禍は、観光業界にも大きな打撃を与えました。
外国人旅行客の激減と、緊急事態宣言に伴う国内旅行の自粛で、日頃から経営的に苦しく、体力のないホテル・旅館は次々と破産・閉館に追い込まれて行きました。
そうしたホテル・旅館の中に、一昨年2019年1月の正月3ヶ日明け最初の週末に泊まった福島県郡山市の磐梯熱海温泉の旅館が含まれていました。
宿泊した時は旅館全体で宿泊客をおもてなししようとする姿勢が感じられて好評価だったのに、後日ネットニュースで昨年2020年7月に閉館したことを知り、意外で大変残念に思いました。
そして、何よりも宿泊当時そこで働かれていたスタッフの方達のその後を思い遣りました。
この旅行記は訪問当時に撮った写真とメモ、そして当時の記憶を基に作成しました。
現在は営業されていない旅館でご参考にはならないと思いますが、ご覧頂ければ幸いです。

エリア 磐梯熱海温泉(福島)

• 旅行の満足度: 4.0
• ホテル: 4.5

• 同行者: 一人旅
• 一人あたり費用: 3万円 - 5万円
• 交通手段: 新幹線 JRローカル 徒歩
• 旅行の手配内容: 個別手配

JR磐越西線に乗車して、磐梯熱海駅に着きました。
当時駅前は雪掻きをした雪もほとんど溶けてなくなっていました。
この旅は初めての東北方面の旅行で、雪が降り積もった冬の東北地方のイメージを想像していましたが、少し拍子抜けでした。
ここからさらに西の猪苗代・会津地方の方が冬の積雪量は多いそうです。

磐梯熱海駅 駅

磐梯熱海駅前には足湯があります。
訪問当時、2～3組の観光客の方々が足湯を楽しまれていました。
熱めの湯温の温泉が冷えた身体を温めてくれました。

磐梯熱海温泉 駅前足湯 温泉

駅前から左手の磐越西線沿いの道を歩くと、左側に『熱海ゆけむり緑地』があります。
屋根付きの遊歩道のある日本庭園です。
訪問当時池の水面は凍っていました。

ゆけむり緑地から見える東電丸守水力発電所です。
1921年（大正10年）に完成・稼動を開始した水力発電所は、猪苗代湖を水源として造られた安積疏水（あさかそすい）の水を利用して発電しています。

駅から真っ直ぐに宿泊先には向かわず、温泉街をぶらぶら散策しました。
写真はゆけむり緑地の近くにある旅館『紅葉館きらくや』さんです。

磐梯熱海温泉 紅葉館きらくや 宿・ホテル

旅館『萩姫の湯栄楽館』さんの玄関先には、源泉が湧いています。

磐梯熱海温泉 萩姫の湯 栄楽館 宿・ホテル

磐越西線の踏切を渡り、会津若松方面に向かって県道を歩きました。
左側に磐梯熱海温泉を代表する高級旅館『熱海荘』さんがあります。
名前だけ聞くと静岡県熱海にある旅館かと、勘違いしそうです。

熱海荘 宿・ホテル

熱海荘さんのお隣に、今回の旅で宿泊した『金蘭荘花山』さんがありました。
1990年代に建てられた客室が30室位の中規模のコンクリート造りの旅館でした。
建物は現在も残っているそうですが、今は営業されていません。

基本宿泊料金は当時、週末朝夕2食付き1人泊で2万円を切るお値段でした。

磐梯熱海温泉　金蘭荘花山 宿・ホテル

玄関に向かって両側に壁画が描かれていました。

磐梯熱海温泉　金蘭荘花山 宿・ホテル

玄関先に壁画の作者を紹介したボードがありました。
現在も新進気鋭の画家として活躍されている『フランキー・スィーヒ』さんです。
アメリカ人と日本人のハーフの方ですが、お母様は女優でタレントの水沢アキさんです。
当時もっと近くから壁画を撮影しておけば良かった、と今になって少し後悔しています。

磐梯熱海温泉　金蘭荘花山 宿・ホテル

2階の吹き抜けのエントランスロビーには、新年らしく大きな年賀の掛軸が吊るされていました。

磐梯熱海温泉　金蘭荘花山 宿・ホテル

チェックインの手続きを済ませて客室に案内されるまでの間、ロビーでおもてなしのお抹茶と茶菓子のゆべしを頂きました。

磐梯熱海温泉　金蘭荘花山 宿・ホテル

ご年配の女性のスタッフの方に客室までご案内して頂きました。
お部屋は『みやび館』3階の12.5畳の和室『nagoni/蔵（sou）』で、写真の通り和のデザインを取り入れた温かみのある落ち着いた雰囲気の客室でした。
美大の学生さんが室内をデザインされたそうです。
客室までご案内された方は、年齢や応対振りから考えると従業員の方ではなく旅館の大女将さんだったのかもしれません。
気さくで温かみのある対応で、こちらの気持ちもほっこりと和みました。

磐梯熱海温泉　金蘭荘花山 宿・ホテル

広縁の隅にはインスタント・コーヒーメーカーが置いてありました。
コーヒー好きには嬉しかったです。

磐梯熱海温泉　金蘭荘花山 宿・ホテル

客室は五百川に面していて、広縁の窓から少し雪が積もった渓谷を眺めることができました。

五百川渓谷 自然・景勝地

客室はウォシュレットトイレ・洗面所付きで、至って清潔でした。
洗面所のアメニティも一揃えありました。

磐梯熱海温泉　金蘭荘花山 宿・ホテル

クローゼットの中には着替えの浴衣とバスタオル等のアメニティの他に…

磐梯熱海温泉　金蘭荘花山 宿・ホテル

入浴の時に着替えを入れて持ち運びできるバスケットもありました。
これがあると特に女性の方は嬉しいですよね。

磐梯熱海温泉　金蘭荘花山 宿・ホテル

17時頃に夕食前の宿泊客で混雑する大浴場で一風呂浴びてから一旦客室に戻り、18時前に夕食会場に向かいました。
廊下のあちこちに花や絵画、オブジェが飾られていました。

磐梯熱海温泉　金蘭荘花山 宿・ホテル

館内はやや薄暗い中に照明が映える雰囲気でした。

磐梯熱海温泉　金蘭荘花山 宿・ホテル

普段はこじんまりとした家族経営的な旅館を選んで泊まる私には、いつもと違う新鮮な感じがしました。

磐梯熱海温泉　金蘭荘花山 宿・ホテル

2階の玄関・フロントの前の正月飾りを撮影しました。

磐梯熱海温泉　金蘭荘花山 宿・ホテル

食事会場の2階にある大広間で夕食を頂きました。

磐梯熱海温泉　金蘭荘花山 宿・ホテル

大広間の舞台の上にも、正月らしい大きな生花が飾られていました。

磐梯熱海温泉　金蘭荘花山 宿・ホテル

大広間は薄暗くなっていて、壁際に並べられた竹あかりの照明の光が美しく映えていました。
一人旅の場合大広間での夕食は気が引けますが、この暗さだとお隣の人の顔もわかりにくいので、この演出はありがたかったです。

磐梯熱海温泉　金蘭荘花山 宿・ホテル

夕食は『会席夕膳～愉楽（yuraku）～』というコースでした。
食前酒の梅酒です。

磐梯熱海温泉　金蘭荘花山 宿・ホテル

季節の前菜4点盛りです。
昆布巻が正月らしい一品でした。

磐梯熱海温泉　金蘭荘花山 宿・ホテル

お造り3種盛りです。

磐梯熱海温泉　金蘭荘花山 宿・ホテル

煮物の蟹饅頭です。

磐梯熱海温泉　金蘭荘花山 宿・ホテル

茶碗蒸しです。

磐梯熱海温泉　金蘭荘花山 宿・ホテル

地元産の麓山（はやま）高原豚の温しゃぶです。
会場食のメリットは、温かい料理は温かく冷たい料理は冷たいまま美味しく頂けることです。

磐梯熱海温泉　金蘭荘花山 宿・ホテル

石狩鍋です。

磐梯熱海温泉　金蘭荘花山 宿・ホテル

シメのあさり釜飯、味噌汁、香の物です。

磐梯熱海温泉　金蘭荘花山 宿・ホテル

デザートのカットフルーツです。
美味しいお料理、ごちそうさまでした。

磐梯熱海温泉　金蘭荘花山 宿・ホテル

夕食を頂いた後で、20時頃に2階のエントランスロビーで開催されていたCDコンサートに行ってみました。
窓際や壁際に並べられた竹のランタンに蝋燭のあかりが灯されていました。

磐梯熱海温泉　金蘭荘花山 宿・ホテル

CDコンサートの時は、スタッフの方がたくさんのランタンに一つ一つあかりを灯されていたそうです。
暗闇の中に浮かぶ竹あかりの光が幻想的でした。

磐梯熱海温泉　金蘭荘花山 宿・ホテル

お酒に弱いので頂きませんでしたが、当時グラスワインのサービスもされていました。

磐梯熱海温泉　金蘭荘花山 宿・ホテル

カップルの方達に喜ばれるような演出でした。

磐梯熱海温泉　金蘭荘花山 宿・ホテル

客室に戻りお酒の酔いを醒ましてから、寝る前にお風呂に入りました。
1階の大浴場の入口付近の湯上がり処のそばに、熱海湯泉神社の祭神をお祀りした祭壇がありました。

磐梯熱海温泉　金蘭荘花山 宿・ホテル

湯上がり処には、磐梯熱海地区の水道水として使われている『深沢川の名水』を頂けるコーナーがありました。

磐梯熱海温泉　金蘭荘花山 宿・ホテル

更衣室もよく清掃され、清潔感がありました。

磐梯熱海温泉　金蘭荘花山 宿・ホテル

客室数が30室クラスの旅館の大浴場だと、洗い場の数も多かったです。

磐梯熱海温泉　金蘭荘花山 宿・ホテル

浴槽もストレスフリーで10人以上入れる大きさでした。
湯温は41℃程の適温でした。

磐梯熱海温泉　金蘭荘花山 宿・ホテル

大浴場の奥に露天風呂に行く通路がありました。
通路の左側に幕が掛けられているのは、男女共用の湯上がり処付近から男湯が見えないようにするためです。

磐梯熱海温泉　金蘭荘花山 宿・ホテル

通路の先に露天風呂がありました。
夜の暗闇の中全体が撮影出来なかったのですが、庭園の池の中に造られた屋形船の形をした浴槽でした。

磐梯熱海温泉　金蘭荘花山 宿・ホテル

当時雪がしんしんと降っていて、夜は一段と冷え込んでいました。
湯温は内風呂より少し低めの40℃程で、寒い空気に当たりながら長めの入浴ができました。

磐梯熱海温泉　金蘭荘花山 宿・ホテル

旅館の源泉は郡山市営の混合泉で、ph9.2のアルカリ性の単純泉でした。
大浴場の規模から源泉掛け流しではなく循環ろ過でしたが、塩素臭は控えめで気にならない程度でした。

磐梯熱海温泉　金蘭荘花山 宿・ホテル

翌朝は6時頃に起床し、3階の客室の窓から外を眺めました。
雪は一晩降り続いたらしく、昨日よりもうっすらと積もっていました。

五百川渓谷 自然・景勝地

大浴場で朝風呂を楽しんでから、8時に昨晩の夕食と同じ大広間で朝食を頂きました。
朝食のメニューは手巻き寿司で、卓上の土鍋で炊いたご飯に寿司酢を混ぜて寿司飯を作り、具材と一緒に海苔に巻いて食べるようになっていました。
朝から面倒くさいと思われる場合は、普通のご飯のまま茶碗によそって頂いてもOKでした。
旅先の遊び心を大切にするおもてなしでした。
この後、9時30分過ぎにチェックアウトの手続きを済ませて、旅館の車でスタッフの方に磐梯熱海駅まで送って頂きました。

訪問当時に撮影した写真とメモ、当時の記憶をたどりながら旅行記にまとめてみましたが、まとめながらふと今も営業を続けられているのではないかと、錯覚を覚えました。
精一杯おもてなしをしようと頑張っておられた姿勢を当時感じただけに、残念な思いだけが残りました。

磐梯熱海温泉　金蘭荘花山 宿・ホテル