2019/12/11 - 2019/12/15
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タヌキを連れた布袋(ほてい)さん
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マラリアその他の感染症に汚染された地域を旅するときは,その予防対策が必須だ。
しかし現実には,正攻法で入念な予防対策をとろうとすると,理不尽ともいえる費用と労力がかかってしまう。
それをなんとか凌ごうとして,じたばたしたときの記録である。
バンコクで抗マラリア薬を入手する必要に迫られる人は限られるかもしれないが,私のように旅程上ここで手に入れておくと安心という人もいるだろうから記してみた次第だ。
【追記(速報版)】
(速報版なのであとで情報を修正する可能性がある。)
*ルワンダの市中の薬局ではメフロキン(予防薬)は売っていなかった(治療薬コアルテムは普通に売っている)。
*ウガンダの市中の薬局では,メフロキンは6錠50kUGX(約1500円)という高価だった。この旅行記に書いたとおりバンコクで入手するのが安価なのかも。
- 旅行の満足度
- 3.0
- 観光
- 3.0
- ホテル
- 2.5
- グルメ
- 3.5
- ショッピング
- 3.5
- 交通
- 3.0
- 同行者
- その他
- 交通手段
- 鉄道 タクシー 徒歩
- 航空会社
- ピーチ航空
- 旅行の手配内容
- 個別手配
PR
-
バンコクに着いたらすぐに,いつもお世話になっているサオワパー王妃記念研究所附属病院(通称:スネークファーム赤十字病院)へ向かった。
今回の旅行に際し,効力が切れている腸チフスと髄膜炎菌のワクチン接種を受け,抗マラリア薬(具体的にはラリアムLariam錠剤=メフロキン250mg)を入手するためだ。
同病院は,日本の長期旅行者の多くがお世話になる有名病院である。本来は,もちろんタイ国民のために設立されたものだろうが,ワクチン後進国ニッポンから押し寄せる(?)ワクチン難民をも広く受け入れて下さっている。
ちなみに,サオワパー王妃陛下はチュラーロンコーン大王(ラーマ5世)の御妃(きさき)さまである。そのお恵みに感謝し,その名を称えよう。 -
ここは一年ぶりくらいの受診だが,問診票の記載台のところに初診・再診の手順が張り出されていた。
この病院でワクチン接種を受ける手順については,すでに詳細な情報が多くの人の手により流布されていると思うので,ここでは割愛する。 -
医師との問診(英語で可)を終え,薬局でワクチンを購入する。
(※スネークファーム赤十字病院の会計は現金のみなので注意。)
値段は,腸チフスが550THB,髄膜炎菌が2500THB,同行者が受けた三種混合+ポリオの四種混合は700THBである。(1THB=約3.7円)
日本円に換算し,日本のワクチン料金と比較すると,
腸チフス(TYPHIM Vi) 約2000円(タイ)/ 7000~1万円(日本)
髄膜炎菌(Menactra) 約9300円(タイ)/ 1万9000円~2万5000円(日本)
四種混合 約2600円(タイ)/ 1万円前後(日本)
という感じになる。
四種混合については,今回購入したGSK(グラクソスミスクライン)社の「boostrix-polio」というワクチンが日本ではあまり使われていないようなので厳密な比較はできないが,腸チフスと髄膜炎菌ワクチンについては同一のワクチン製剤で比較している。
他のワクチン(A/B肝炎,狂犬病,黄熱病など)についても,同じような値段差だと考えてもらってよい。この病院のほうが高いのは帯状疱疹ワクチンくらいのものだ。
それだけではない。日本で接種すると,診察料(初診で3000円~),イエローカード発行手数料やら諸費用がかかる。
この病院の診察料は,50THB(185円)である。初診のみ,これに20THB(74円,初診登録料)が付加される。
接種した日に,すべてのワクチンについて接種証明(英文)を即時作成してくれる(証明冊子に追記していく方式)。これは無料である。 -
さて,ここから今回の本題である。
医師との問診のとき,マラリア汚染国へ渡航するので抗マラリア薬を購入したい旨を告げた。ところが医師の回答は「No stock」ということだった。
医師は,PCを叩くなどして在庫状況を調べてから回答したわけではなく,即答だった。だから,もしかしたらこの病院は現在,抗マラリア薬を取り扱っていないのかもしれないと感じた。
数年前はたしかに取り扱っていたのだが。
どうしたらいいか相談すると,医師は「マヒドンMahidol大学附属の熱帯病病院(Hospital for Tropical Diseases)へ行ってみれば?」と言う。 -
これについては少し伏線がある。
私は当初,バンコクなら抗マラリア薬がそこそこ簡単に手に入るものと高を括(くく)っていた。
もちろん「Boot’s」や「ツルハドラッグ」の店頭ですぐに入手できるとまでは考えていなかったが,しかるべき薬局へ行けば買えるだろうくらいに思っていた。タイでは国境地帯を中心に,年間1万人くらいマラリア患者が発生しているからだ。
そこで,事前にスクムウィット・ソイ99にある定宿の「Chan Cha La 99 Hostel」の管理人さん(タイ人)に「どこか手に入る薬局を知らないか」と連絡を入れておいた。
管理人さんは,親切にも知人の薬剤師などに問い合わせてくれたが,バンコクの市井の薬局では抗マラリア薬は入手できないということが分かった。もし薬剤師のツテを頼るとしても,仕入れになってしまうので,最少ロットであっても個人旅行者には多すぎることも判明した(約2年分)。
管理人さんの最終結論は,「Thai Travel Clinic というところへ行くといいらしい」ということだった。 -
そして,その「Thai Travel Clinic(タイ・トラベルクリニック)」は,医師が行くようにアドバイスをくれた「マヒドン大学附属・熱帯病病院」の一部局なのである。いきなり繋がってしまった。
現在,バンコクで抗マラリア薬を手に入れようとするならば,ここへ行くべきなのだろう。
この「タイ・トラベルクリニック」のウェブサイト↑は非常によくできている。
https://www.thaitravelclinic.com/
ワクチンの料金はすべて掲載されているし(Main MenuのServices in Travel Clinic→Vacctnation),サイトから診察予約も可能なようだ。サイトをざっと読めば,感染症に関する単語をだいたい網羅することもできる。
私はスネークファーム赤十字病院で抗マラリア薬を入手するつもりでいたので,タイ・トラベルクリニックの診察予約をしていないが,とにかく,接種が終わったらすぐに行ってみることにしよう。(トラベルクリニックのサイト中には事前の診察予約が”strongly recommended”と太字で記載されているので,私のような真似はできるだけしないでほしいが。) -
順番が回ってきたので,購入したワクチンを両腕に接種してもらう。
スネークファーム赤十字病院の看護師さんの注射はいつも神業のようで,針が刺さったことすら感じない。 -
接種後は約20~30分間病院で待機し,体調に変化がないか確認する。
-
そして,BTSに乗ってアヌサワリーチャイ駅へと急ぐ。
駅を降りて,大きなラウンドアバウトから西へ行く大通りの南側を歩く。 -
しばらく歩くと,マヒドン大学が現れる。(タイ語では,末尾のLはNの発音になる。)
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医学部では文句なしにタイのトップを誇る名門大学である。
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その先に,「熱帯病病院」の標識を見つけた。
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この付近には医療関係の施設が集中しているが,熱帯病病院の建物はすぐに見つかった。
-
一階に案内カウンターがあったので,「サオワパー王妃記念研究所の医師に紹介されてトラベルクリニックに来ました。予約はしていないのですが…」と言ってみた。
外来受付は15時までのようで,現在ちょうど15時。案内係の女性が関係部署に電話をしてくれ,何とか滑り込みで診察してもらえることになった。助かった。
一階で初診患者用の問診カードに記入して受付窓口に提出すると,診察券を発行してくれた。それを持って三階のトラベルクリニックへ行くようにと指示を受ける。 -
エレベーターで三階に上がるとこんなフロアがあり,
-
入って右手奥がトラベルクリニックだった。
ここでトラベルクリニックの初診用の問診カードへの記入を指示される。
これは受診理由や過去の予防接種歴などを全部書くもので,かなり時間がかかる。やっと書き終えたと思ったらカードには裏面があり,ややうんざりする。
しかし,すでにほかの患者の姿はなく,私はたぶん医師を待たせているのだろうから,一生懸命に書き上げる。
看護師さんに問診票を渡すと,すぐに診察室へ案内された。 -
医師からはまず,渡航国,渡航期間,滞在地が都市部かどうか,について尋ねられたので,「明日バンコクを発ち,インド2週間,そのあとアフリカ中部・東部に2か月滞在して日本へ戻る予定です。滞在地はすべて都市部です」と答えた。
すると医師は,「マラロンは高価だからラリアムがいいですね。今日から事前の服用を始めてください。アフリカを出て4週間は服用を続ける必要があります。14錠処方します。」と言った。
インドは汚染国扱いではなく,アフリカ中部・東部はすべて汚染国扱いにしてくれたということだ。事前服用2週間+滞在2か月(=8週間)+事後服用4週間できっちり14錠という計算だ。
滞在期間については自己申告ベースだが,処方する薬剤の量については厳格に取り扱っている印象だ。
そして服用上の注意(毎週同じ曜日・同じ時間に服用すること),精神病歴の有無(副作用でうつ状態になることがあるため)などを訊かれた。
診察が終了し,その場で処方箋を書いてくれた。 -
トラベルクリニックの看護師さんから渡された書類一式を持って,一階の会計の窓口へ。
-
この番号札を引いて待つ。
会計は,
初診登録料 20THB
診察料 50THB
加算診察料 200THB
の270THB(約1000円)と,
薬剤費 ラリアム(メフロキン250mg)1錠30THB(約110円)×14錠=420THB(約1540円)
であった。
会計が終わると,処方箋を薬局に提出して薬をもらう。
もうお察しのことと思うが,日本でメフロキン250mgの錠剤(メファキン)を買うと1錠1000~1500円くらいする。 -
まあ安いかわりと言っては何だが,貴重なラリアムはチャック付きポリ袋に入れて渡され,まるでラムネ菓子のように見える。
-
抗マラリア薬については以上。
以下は高血圧持ちの人向けの情報である。 -
知っている人には何でもないことだが,タイでは,抗高血圧薬(降圧剤)が普通の薬局で普通に購入できる。処方箋はいらない。
-
こういう,どこにでもあるチェーン店でも,
-
こんな薬剤師カウンターがある店舗で,薬剤師が在店している時なら購入することが可能だ。
薬剤師は優秀な人たちなので,英語は必ず通じる。
ただし,在庫不足・在庫切れのことは多々ある。その場合,店のほうで近くの系列店から在庫を融通してもらったり(届くまでしばらく待つことになる),自分で付近の数店を買い回ることになる。 -
もっとも安く手に入るのが,エナラプリル(Enalapril Maleate)。ACE阻害薬だ。
5mgの錠剤が,1シート10錠で15THB(1錠あたり約5.6円)。もちろんゾロ(ジェネリック)である。
20mgの錠剤もあるが,内容量が4倍なら値段も4倍になるというシンプルな設定。 -
アムロジピン(Amlodipine Besilate)は,5mgの錠剤が1シート10錠で25THB(1錠あたり約9.3円)。これはカルシウム拮抗薬といわれる種類の薬だ。
-
タイでは,錠剤はシート売りが基本なので,箱は開封されていることもままある。
-
だから,箱の中のシート数の確認は入念に。
どうして海外で抗高血圧薬(降圧剤)を買うようになったのかというと,日本の医院で,
私「来週から3か月ほど海外に出ますので,薬は3か月分+αを出してください」
医師「最近いろいろうるさくてねえ,1か月分しか出せないの」
私「でも必要ですから,お願いします」
医師「1か月分は出せますから。また来月きてくださいね」
私「いや,次に帰ってくるのは3か月後なんですが」
医師「最近いろいろうるさくてねえ…」
とかいうような会話をするのに飽きたからだ。 -
最後はロサルタン(Losartan Potassium)。ARBである。
これはゾロが出てから日が浅いせいか一番高価で,100mgの錠剤が1箱30錠295THB(1錠あたり約36.4円)。ロサルタンが高いのはどこの国でも同じだ(ゾロがない国もある)。
というわけで,以上が標題のクスリ情報であった。
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この旅行記へのコメント (4)
-
- しろさん 2020/07/28 10:29:35
- とても面白かったです。
- タヌキを連れた布袋(ほてい)さん初めまして!
私の拙い旅行記にいいねいただきありがとうございました。
こちらの旅行記、大変興味深く見させていただきました。
あまり感染病汚染国に行くことは少ないのですが、東南アジアは好きなので妻を連れて猿がいるところはよく行くので狂犬病などに気を付けているのですが、病気はあちらからやって来ることもあるので、言葉の通じないところで対策をどうしようかと長年考えておりました。
参考にさせていただきます。
- タヌキを連れた布袋(ほてい)さん からの返信 2020/07/29 07:39:44
- コメントありがとうございます
- しろ さま
コメントを頂きありがとうございました。タヌキを連れた布袋と申します。
「病気はあちらからやってくる」とおっしゃるのは本当にそのとおりだと思います。
いつ来るか分からない以上,常に用心を怠らずにいなかればなりません。かといってやりすぎは禁物で,「持続可能性」がないと途中で破綻します。今回のコロナ対策についてもまた然りですよね。お互いうまくやり過ごして,また旅に出ることに致しましょう。
今後ともよろしくお願い致します。
-
- マッコリさん 2019/12/20 20:29:51
- 興味深い旅行記でした
- こんばんわ
他の旅行記とは違い一風変わった旅行記でしたが大変興味深いです。
私も最近よく渡航をしますが風邪薬とかを購入する機会はあります。日本だと病院に受診してドクターが処方しないとでない薬とかもこの国だと買えまよね。
今後何かの機会で役にたつかも知れない情報でした。参考にしたいと思います。ありがとうございます。
- タヌキを連れた布袋(ほてい)さん からの返信 2019/12/20 22:01:08
- コメントありがとうございます
- マッコリさま
コメントを頂きありがとうございました。
日本赤十字社のウェブサイトによれば,マラリア汚染国は↓のとおりとなっています。マラリア感染リスクが「High」になっているのは,南米1か国,オセアニア2か国のほかはすべてアフリカです。
http://www.jrc.or.jp/donation/pdf/R1_mararia.pdf
上記のような国を訪れるときに,ちょっと思い出して頂けたら幸いです。
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