2019/07/06 - 2020/07/10
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タヌキを連れた布袋(ほてい)さん
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「街角の屋台で年中売られているスナックに,ムール貝の貝殻の中に香辛料で味付けしたピラウを詰めた,ミディエドルマスがある。盆の上に山積みにされて売られる。私には食中毒が怖いように思えるけれど,暑い夏でも,たいがい男たちが数人立ったまま,このミディエドルマスをおいしそうに食べている姿をよく見かけた。食べ方は簡単だ。まず,ムール貝の殻を開くと,中にシナモンやオールスパイスで味付けされたピラウが詰められている。それにレモンをぎゅっと絞り,開いた方の貝殻をはずしてスプーン代わりに使いながらピラウをすくって食べる。ふつう一つでは足りない。客は必要な数だけ食べた後,その分のお金を払って,さっさと立ち去る。
同じく季節にかかわらず街角で売られているものに,チキンとひよこ豆と米のピラウがある。ガラスケースの中には,ご飯とひよこ豆がそれぞれ盛り上げられ,その上に,裂いたチキンの胸肉がぎっちりと並んでいる。注文すると,売り子は,まずひよこ豆とご飯の山からそれぞれ適量をすくい,混ぜ合わせて皿に盛った後,その上に,チキンの胸肉を乗せてくれる。豆と米を一緒に炊く日本の豆ご飯とは異なり,ひよこ豆と米は別々に調理され,販売時に混ぜ合わされる。その方が見栄えがいいのか,あるいは,『ほら,きちんと両方を混ぜてますぜ』と言いたいのか。なぜあらかじめ均一に混ぜ合わせておかないのかは,わからない。ただ,いえるのは,この炒めた米をチキンスープで炊いたピラウの味が,じつに優しいことである。このピラウは,露店以外にもピラウ専門店でも買うことができる。私も,仕事で疲れて夕食を作る余力のない時など,そんなピラウ店のチキンピラウをよく買って帰った。」
「トルコの食文化を考えるとき,遊牧時代からオスマン帝国時代を経て今日へとつらなるトゥルク人の文化を代表するような固有の食文化への視点は欠かせない。しかし,もう一つ重要な視点がある。それは,現代のトルコ人が日常的に食べている食べ物を総体としてみつめる視点だ。現代のトルコ人たちは,これがトルコ料理だといわんばかりの羊肉料理や豆煮込み料理だけを食べているわけではない。コーラも飲めばスパゲッティも食べるのだから。とくに,今日のトルコの一般家庭の食文化を捉えようとするなら,この視点は欠かせない。
今を暮らすトルコの一般家庭の食生活の現場をみれば,そこでは,歴史的に培われてきた伝統的な食事だけでなく,グローバル化した今日の,とくに欧米の多国籍食品産業が提供するファストフードや周辺諸国からトルコに流れ込んでくる食材や料理などが雑多に混ざり合っている。そこには,都市化と産業化が急速に進行し変化が激しいトルコ社会の中で,日々を暮らす市井の人々の必要性によって形作られたリアルな食の風景がある。それは,書店の棚を飾る美装された料理書で紹介されるような『トルコ料理』などからははるかに隔たった食の風景だ。
トルコの社会でも,産業化に伴って都市への人口集中は急速に進み,ちょうど1970年代の日本がそうだったように,今日,都市人口は農村人口を超えた。都市では,事務系労働者が増大し,いわゆる中産階級化が急速に進み,女性の社会進出も著しい。それにつれて共働き世帯も増え,核家族化も進みつつある。専業主婦が朝からキッチンに籠もって,家族の食事づくりに専念するといった風景は,たしかに今も農村や地方の中小都市では,まだまだ多数派かもしれないが,しかし,イスタンブルなどに代表される発展の著しい大都市の都市生活者にとっては,もはや懐かしい昔話の領域に属する事柄である。このような変化によって,当然,食品工業が送り出してくるインスタント食品や半調理された食材,デリバリーサービスで家庭に届けられるピザなどのファストフードが続々と家庭に流れ込んでいる。とはいえ,今日の多くの先進国にみられるように,オーガニックな食材への関心や民族的な食文化への回帰意識の高まりも同時に顕著だ。トルコの家庭における食文化はまさに混沌とした変化の渦中にある。その状況に目を向けることなしに,現代を生きるトルコの人々の食生活のダイナミズムを捉えることはできないに違いない。」
井藤聖子著「トルコ料理の誘惑 私を虜にした食と文化」(現代企画室)より
- 旅行の満足度
- 4.0
- 観光
- 4.0
- ホテル
- 2.0
- グルメ
- 4.0
- ショッピング
- 4.0
- 交通
- 4.0
- 同行者
- その他
- 一人あたり費用
- 25万円 - 30万円
- 交通手段
- 鉄道 高速・路線バス 船 徒歩
- 航空会社
- シンガポール航空
- 旅行の手配内容
- 個別手配
PR
-
キシナウからイスタンブルへは空路で飛んだ。
「なんでバスじゃないの?近いのに」と突っ込まれそうだが,モルドバ航空(9U)のチケットがそこそこ安かったのだ。それに,保有機数がひと桁の「ナショナルフラッグ」に乗ってみるのも悪くない。 -
わずか1時間余りの飛行でイスタンブルの新空港に到着。久しぶりのトルコだ。
開港したばかりの新空港は,噂どおり,かなりの広さだった。感覚的にはKLIA2より広大だ。
トルコに入ると,Wikiやbooking.comが使えなくなったりするので注意が必要(2019年7月現在。今はどうなっているのか知らない)。 -
トルコリラの現金を引き出して(1TRY=約20円),自動券売機で「イスタンブルカルト」というトップアップ可能な市内共通ICカード乗車券を購入する。
たとえば100TRYを支払うと,カード手数料6TRYを差し引いた94TRY分の運賃がチャージされたイスタンブルカルトを手にすることになる。
「イスタンブルカルト」のいいところは,複数人での使用を予定していることだ。二人旅だろうが三人旅だろうが,一緒に行動するのならカードを1枚だけ購入すれば足りる。
悪いところは,リファンド(使用残額の返金)が事実上不可能だということだ。イスタンブルを出る前に,きれいに使い切ってしまわなければならない。 -
宿はガラタ塔の近くにとった。
空港バスでタクスィムTaksimまで行って,地下鉄に乗り換えることにしよう。
この日は渋滞が少なかったのか,新空港からタクスィムまで1時間あまりで到着した。 -
Merhaba(メルハバ)!
イスタンブルは,とりわけ”ネコフレンドリー”な街として知られている。
袋に入れたキャットフードを持ち歩き,その辺のネコたちに食べさせている市民の姿をよく見かける。 -
さて,翌日は,
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1875年に建設された地下ケーブルカー「トュネル」に乗って,ボスポラス海峡に面するカラキョイKaraköyの波止場へ行き,
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乗合いの船(ワプルVapurやモトルMotorと呼ばれる)に乗って,アジア側のユスキュダルを目指す。
船賃はイスタンブルカルトで支払う。 -
船を待つ間に,ついついスィミットに手を伸ばしてしまった。
あれれ,何だか湿気っている感じ‥‥。 -
やがて船が到着し,わらわらと乗り込む。
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船室はこんな感じ。
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船内には簡易な売店&カフェもある。
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ユスキュダルまで,わずか20分ほどの船旅である。
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実は,ユスキュダルへはシルケジやイェニカプからマルマライ(ヨーロッパ側とアジア側をボスポラス海峡海底トンネルで結ぶ鉄道線)に乗れば簡単に行けてしまうのだが,もしイスタンブルを旅で訪れたのなら,ここは絶対に船を利用することを勧める。この旅情を味わわないのは大変にもったいない。
まるで「渋滞」しているかのように見えるほど多くの船が行き交う海峡の風景↓(動画0分37秒)。船乗りたちの操船の腕前はかなりのものだろう。
https://youtu.be/OgeqsC48kjg -
短い船旅の間に,いくつかの歴史的建築物を通り過ぎる。遠くにはイスタンブルの高層ビル群が見えている。
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やがて船は減速し,ユスキュダルの波止場が見えてきた。
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ユスキュダルを代表する二つのジャーミイやいくつかの泉亭(セビルあるいはチェシュメ)が波止場のすぐ近くにあるのだが,
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この旅行記に出てくるのはもっぱら商店と市場である。
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パン&スイーツの店の店先。
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こちらは肉屋。日本の商店街にある精肉店に雰囲気がちょっと似ている。
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波止場から,ミフリマースルタンジャーミイ,イェニヴァリデジャーミイを通って南へ1kmほど歩くと,市場に行き当たった。
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地図を拡大する。目印になるのはガランティGaranti銀行ユスキュダル支店(Google座標:41.021317, 29.016089)で,その南側のエリアの路地が市場になっていた。
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最初は衣料品のエリアだったが,
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途中から青果市場になった。
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これまでのバルカン諸国の青果市場に並んでいたのと同じようなものが多くある一方,
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やはりトルコへ来ると,並んでいる青果の種類が明らかに豊富になる。
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トマトの赤色も微妙に違う。
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新鮮そうなトウモロコシ,
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その隣にあったのはアーティチョーク。
トルコでは可食部分をきれいに削ったものを売ってくれる。盥(たらい)に漬けているのは変色防止のためらしい。 -
見慣れない色のスイカや,
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こんなに可愛らしいオクラ,
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右はリンゴだが,左はまだ青いネクタリン?ところどころが赤く色づいてきているのが分かる。
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残念ながらこの画像には写っていないのだが,トルコでは,きれいに焼き目の筋を入れたグリーンオリーブを売っている。
どんなのかイメージが湧かないと思うので,興味があれば”grilled olives”で画像を検索してみてほしい。なかなか洒落ていて,家のグリルパンで作ってみたくなる。 -
モルドヴァに続き,トルコでもチェチル(中央アジアの三つ編みチーズ)を発見。
ところが,この店で見たものは三つ編みにされていないし,燻製タイプはないようだった。国が変われば品も変わる。 -
やがて市場は尽きた。
何か食べようと,波止場に近い魚市場のほうへ戻ることにする。 -
道すがら,クンピルを売る店に行き当たった。
クンピルはトルコ版のジャケットポテトで,最近イスタンブルの人気B級グルメとして目につくようになった。
この際,食べてみようか。海峡を挟んで向かい側にあるオルタキョイの名物らしいが,オルタキョイで食べるよりも安上がりかもしれない。 -
ジャケットポテトと異なるのは,クンピルはポテトの中身をいったん取り出し,チーズやバターと一緒によくマッシュしてから再びポテトの中へ戻すというところだ。さすがトルコ人は芸が細かい。
そして,明らかにジェラート用のものを流用して造ったようなショーケースに並ぶ,色とりどりのトッピング↑。これがクンピルを売る店のトレードマークになっている。 -
クンピルにせよジャケットポテトにせよ,日本で食べることはまず不可能な料理と言っていいだろう。
このサイズの馬鈴薯が日本で売られているのを見たことがないからだ(日本の普通サイズの5~6個ぶんはある)。 -
さて,続いてユスキュダルの魚市場の食堂。
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ここでは,定番のハムスィ・タワHamsi Tavaを食べる。
バルカンのドライブ中に,アルバニアや北マケドニアでタヴァ(=キャセロール)料理と出会ったが,トルコ料理で「タワ(タヴァ)」といえば揚げ物全般のことを指す。 -
そして,「旅先で貝類は食べない」という禁を破って,ミディエ・ドルマスMidye Dolmasıも注文した。もう旅も終わりに近いし,携帯している抗生剤はまるまる残っているのでよしとしよう。
ミディエ・ドルマスは,ムール貝の殻に貝の身と炒めた米を一緒に詰めて炊き上げたものだ。ムール貝の中に詰まった貝飯と考えてもらえばよい。殻の片方をとって,飯に少しレモンを絞り,とったほうの殻で旨味たっぷりの飯と貝の身を押し出して一気に口に入れる。
トルコで食べるものの中で,これを特に気に入っている。トルコ料理の世界では,これは「冷製の野菜料理」に分類される。 -
ハムスィ・タワは10TRY,ミディエ・ドルマスは1個2TRYだった。パンはフリー。
(1TRY=約20円) -
食後のお茶は,帰りのワプルの中でチャイ売りから買った。
往きに当たりをつけていたとおり,船上で景色を眺めながら啜るチャイは最高だった。
(つづく)
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