武蔵岩槻　小田原北条氏没落に伴い関東転封した家康より江戸城防衛の重要拠点である岩槻城主に封じられた清廉潔白の譜代高力清長の墓所『浄安寺』散歩

2018/01/08 - 2018/01/08

快楽山浄安寺（じょうあんじ、埼玉県さいたま市岩槻区本町）は天正１８年（１５９０）５月小田原城の開城に先立ち秀吉軍の包囲を受けた岩槻城は陥落、同年６月関東入部の徳川家康は拠点の江戸を守るべく有力重臣を関東周辺の要衛地に配置、その中で交通の要である岩槻に封じられた高力清長（こうりき・きよなが、１５３０～１６０８）の菩提寺です。

高力氏は鎌倉御家人であった熊谷直実を遠祖とし、清長の祖父である重長が三河国高力郷に居住していた頃から高力氏と称し、家康の祖父にあたる松平清康に仕える譜代中の譜代で、清長も幼い時から家康に仕え駿府人質時代にも近習として家康と労苦を共にしたこともあります。

清長は永禄６年（１５６３）に起きた三河一向一揆を鎮圧の際、寺院の仏像・絵巻などの宝物を破損することなく各寺院に返却したことから『仏高力』と呼ばれるほどの人物で、清長が岩槻城主時代には戦乱で荒廃した地域の社寺の復興にも尽力しています。

また２万石で岩槻に封ぜられた支配地の外に浦和郷に１万石を預けられた清長は当該土地に対し自らの裁量を控え、専任代官を配して経営させ当地で得られた収穫米の全量を幕府蔵に納入するなどの清廉潔白の士でもあります。

然しながら後継には恵まれず、清長ともども家康を支えて三方ヶ原の戦い、長篠の戦い、小牧・長久手の戦い等で数々の戦功を収めた嫡男正長（まさなが、１５５８～１５９９）を病気で失い、翌年慶長５年（１６００）関ヶ原合戦後に隠居し嫡孫の忠房（ただふさ、１５８４～１６５５）に家督を譲ることになります。


清長の墓石群の傍らに建っている説明板には下記のような説明が記されています。

「　岩槻市指定文化財
　高力清長・竹の局・徳松丸の墓及び供養塔

　　指定年月日　　　昭和６０年９月３日
　　種　　　別　　　記念物（史跡）
　　所　在　地　　　岩槻市本町５－１１－４６
　　所有（管理）者　浄安寺

岩槻城主高力清長（こうりき・きよなが）の墓

高力氏は、武蔵武士熊谷直実の後裔と伝え、三河国（現愛知県）高力郷に住し、高力を姓とした。清長は父祖以来徳川氏に従い武功を挙げ、また清廉潔白の士であったため、家康の信任は厚かった。天正１８年（１５９０）家康の関東入国の際には、江戸城防衛の重要拠点とされる岩槻城主に封じられた。入封後の清長は、領民の帰住と掌握に努め、寺社の保護や市の奨励を図り、領内の安定に努力するなど、岩槻発展の基を作った。


徳松丸・竹の局墓及び供養塔

徳松丸は、徳川家康の六男松平忠輝の子息である。父家康は、伊達政宗の娘五郎八姫を妻とし、とかく粗暴の振舞が多いため、大御所家康や将軍秀忠の勘気に触れて、改易、蟄居を命じられた。忠輝は妻との間に子がなく、徳松丸は側室竹の局の子であったが、父の改易に伴い、母子は岩槻城主阿部重次に預けられた。寛永９年（１６３３）４月１３日、母の竹の局（見相院）は卒し、続いて同年５月２７日徳松丸も没し、共に浄安寺に葬られた。徳松丸の法名は朝生院殿珠晴光空大禅定門と号した。」

エリア 岩槻(埼玉)

• 交通手段: JRローカル 私鉄

浄安寺・寺門

寺門に建つ石標

「快楽山　浄安寺」と刻された石標が認められます。

揮毫者紹介

石柱の側面には揮毫した人物の名が刻されています。

浄安寺・山門

この山門は岩槻城大構の出入口に設置された木戸門の一つとして田中口木戸門が移築されたものと言われています。

浄安寺・寺額

山門に掲示されている扁額には微かに「快楽山」の山号が記されています。

浄安寺・参道

浄安寺・本堂

浄安寺・本堂前面上部の彫刻

浄安寺・境内

本堂から山門方向を捉えます。

浄安寺文化財・案内板

岩槻藩主高力清長墓石

高力清長墓石（近景）

墓石群と説明板

高力清長の他家康の六男松平忠輝（まつだいら・ただてる）の側室とその子の墓についても説明がなされています。

高力清長・竹の局・徳松丸の墓及び供養塔案内板

児玉南柯（こだま・なんか、１７４６～１８３０）墓所

岩槻藩主大岡氏に仕えた儒学者で、二代忠喜の小姓を経て江戸藩邸にて勤務、２５歳の時私塾の遷喬館（せんきょうかん、後に藩校となる）を創設し、人材育成に寄与した人物です。

児玉南柯石碑

児玉南柯説明板