なぜ旅に出るんだろう？　ましてやフィリピンの山岳地帯なんかへ（その１５） タムアン村に不法侵入？

2017/05/19 - 2017/05/19

　バナウェイの見どころは、棚田の拡がる村のようだ。
　アリヤンさんの旅行記を参考に、まずは近くのタムアン村だ。
　バナウマでは最高級の「バナウエ・ホテル」の下にあるらしい。

エリア ルソン島(フィリピン)

• 同行者: 一人旅
• 交通手段: 徒歩

　この坂道は、テラスビュー・レストランを探して歩いた道だ。
　南に向かっているのに、頭の中のコンパスは北を指している。
　何ともおかしな気分だ。
　およそ１km歩いた先に、、、
　「HALL OF JUSTICE」と書かれた建物が見えた。
　裁判所？　

　その手前に、昨日探して見つからなかった、『テラスビュー・レストラン』があるではないか。
　こんな所にあったのか！
　ここまで来るのに１０分はかかっている。
　アリヤンさんは毎日こんな遠い場所まで通ったのか・・・
　労を惜しまない気力に驚いた。

　その先にはヘリポートがあり、、、

　オハヤミ社のバスターミナルがあった。
　マニラからやって来ているバスが、たくさん停まっている。

　『バナウェイ・ホテル』を探しているのだが、どこにも見つからない。
　かなりの距離を歩いたのに、どういうことだ？
　このままでは、寂しい山奥に進んでいくだけだ。

　戻ることにした。
　途中の子どもにバナウェイ・ホテルを聞くと、
　「あっちだ！」と指差すのは町の方向だった。

　『HALL OF JUSTICE』まで戻ってくると、「Banaue Notel」の案内板が出ていた。
　道路に接して大きな高級ホテルがある、と思っていたのが間違いだった。

　ホテルはこの奥に隠れていたのだ。

　ホテルらしからぬホテルだった。
　外観はまるで学校だ。
　入っていくのがためらわれる。
　玄関先からレセプションの様子が見えたが、足早に、隠れるように、さっと通り過ぎた。

バナウエ ホテル ホテル

　この柵の奥にタムアン村への入口があるらしい。
　村の人たちは、ここを通って生活しているんだろうか・・？
　ホテルの人は、怪しい侵入者をどう思っているんだろう・・？

　目だたないように歩いていくと、、
　アリヤンさんの言うとおり、イフガオ族の伝統家屋があった。
　

　はしごを登って中ものぞく。
　たいした物は置いてない。

　村はこの崖の下にあるらしい。
　湿り気のある階段を一歩一歩降りていくと、、

　民家の屋根が見えてきた。
　タムアン村だ。

　屋根の数から言えば、村というよりちっぽけな集落だ。
　日本の村という概念からはおかしいが、ベトナムのサパを見てきた私は、そんなものだと思うだけだ。

　村に入口というものはなく、道もなく、民家の軒下や裏庭を伝い歩きして移動するしかない。
　窓や扉は開放されていて、プライバシーやセキュリティーというものはない。
　まさに不法侵入だ。

　本当にこんなことをしていて良いのか？
　しかし得体の知れない私が歩き回り、家の中をのぞいても、誰もとがめない。
　私は空気のようなものらしい。
　「ハロー・・」
　空気ではいけないので、挨拶はしておく。

　家屋は山肌に張り付いていて、集落は複数の段状となっている。
　ところが家屋の並び方はカオスそのもので、どこを通れば下の段に行けるのか、困ってしまう。

　「ここ、通っても、いい？」
　「ライステラス、どこ？」
　遊んでいる子どもに聞いてみる。
　その指差す先は、
　「こんな所、通っていいの？」　と思える、生活排水の流れる洗濯場だったりする。

　男の子たちは、木工遊びに夢中になっていた。
　恥ずかしがり屋で、無口な少年たちだ。
　何を作っているのかと、見ていると、、、

　小刀でけずっているこの子の作品が完成に近い。
　こけしのような形をしているが、こけしではない。
　「これは、何？」
　すると、はんこを押すような仕草をした。

　まさか、はんこではあるまい。
　遊びなのか、売り物にする民芸品を作っているのか・・・？
　この子たちには英語が通じないようだった。

　一番下の段にある家屋まで降りてきた。

　棚田に降りていく石段がある。
　毎日降る雨で、ツルツルしている。

　足を滑らさないよう下りて行くと、、

　植えられたばかりの稲が青々と光っていた。

　細いあぜ道を歩いてみる。
　女房にも味わせたいこの気持ちの良さ。
　風の香り、
　田の音・・・
　
　

　しかしバランスを崩せば泥沼の中だ。
　両手を広げ、かかしのようになって歩いていくと、、

　対岸の山から、ガイドに引き連れられた一団が現れた。

　観光客に出会ったことが嬉しくて、その後に付いて別の坂道を通って村に戻った。

　そこにいた子どもの一人は、スマホを手にしてゲームをしている。

　周りの子どもは、うらやましそうだ。
　スマホは小型で安物ではあるが、子どもまでがスマホで遊ぶとは・・・・
　ちょっとがっかり。

　駒で遊ぶ子どももいた。
　自作らしいへんてこな形をした駒だが、地面にたたきつけると、自立してブンブンと回っている。
　「ナイス！　ナイス！」
　と誉めると、調子にのって幾度となく私に見せびらかした。

　竹馬で遊ぶ子どももいた。
　竹馬と言っても、竹ではなく木の棒で作ってある。
　考えてみれば、これらは昔の日本の遊びではないか。
　もしかしたら、駒も竹馬も日本独自の文化ではなく、アジア共通の文化なのかも？

　タムアン村を後にして、息を切らして長い石段を登った。
　登り切った場所に、バナウェイ・ホテルの真っ青なプールがあった。
　昼間でも涼しいこの高地に、プールは必要ないと思うのだが。

　裁判所（？）の広場は市場になっていた。

　市場は安いだろうと、マンゴーとミカンとバナナを買ったが、それど安くはなかった。
　おまけにつり銭が少なかった。
　夕方から雨となった。
　この７日間、雨の降らない日は一日もない。