新境地を求めてカンボジア　その１　お先真っ暗

2010/11/08 - 2010/11/21

　帰国途中、タイ・スワナ空港に向かうバスの中、偶然ながら隣に座ったのは日本人だった。
　男前のエリート会社員に見えたが、話してみるとラフな旅をしているバックパッカーだった。
　「最近のタイはだめだ。」と言う。
　どこもかも擦れてしまって、物価だけが高くなっていると嘆く。
　タイは諦めて、新境地を開拓してるんだとも言う。
　「どこか、いいとこ、ありませんか？」
　と聞くと・・・無言。
　しばらくして「カンボジアの南部かな・・」とぼそり。
　「今日は、そこから帰ってきたところだよ・・・」

　観光客を卒業し、アジアにはまってしまった人の多くは、自分のお気に入りの場所はめったに他人に漏らさない。
　たくさんの日本人が押しかけて、物価を高騰させ、観光地化されてしまうと恐れているのか？
　独り占めにして、一人でご満悦に浸りたいのか？
　私に教えてもたいした影響はないのに・・と気分を悪くするが、こういう人は他人から聞きだすだけ、ネットで情報を引き出すだけで、自分からは何も発信しない。

　でもこの人、ちょっとばかり親切で、カンボジア南部と教えてくれたことに感謝。
　それを頼りに出掛けてみよう。
　カンボジア南部といえば、シアヌークビルだろうか？

エリア バンコク(タイ)

• 同行者: その他
• 航空会社: タイ国際航空

　中部国際空港、タイ航空午後便（夕方）で出発。
　21時過ぎ、バンコク・スワナ空港に降り立った。
　入国手続きをしていると22時となっていた。
　目指すはカンボジアのシアヌークビル。
　 （画像は出発する中部国際空港）

　一番安く行ける方法は研究済み。
　空港のバスターミナルから、トラート行きのバスが出ている。
　出発は朝の６時半。
　トラートからソンテオに乗り換えて、海沿いのハートレックのイミグレを超えればカンボジアだ。
　その日のうちに通過できるだろう。
　そしたら国境近くのココンの町に泊まり、バスに乗ってシアヌークへ。
　そんな青写真が出来上がっている。
　お金のない私は、色々とない頭をしぼるのです。

　普通ならば町に出てホテルに泊まり、早朝再び空港に戻って来るか、空港ホテルに泊まるのだろう。
　が、私は絶対にそんなことはしない。
　空港で仮眠するのだ。
　『電波少年』の『猿岩石・アジア無銭旅行』に憧れて海外旅行を始めた私には、そんな贅沢なことは許されない。
　快適さをお金で買おうとするのは堕落でしかない。
　見ろ。
　あんなに若い女の娘だってバックを抱えて寝ているではないか。　　
　と粋がってはみるが雑音と明日への不安で熟睡できない。
　うとうとするとすぐに目が覚めてしまう。
　目の前のベンチでは、タイ人の若い女性が毛布をかぶって気持ち良さそうに眠っている。
　なんと逞しいこと。

スワンナプーム国際空港 (BKK) 空港

　5時半。
　バスの出発までにはまだ時間はあるが、そろそろバスターミナルに行ってみようか。
　そう決断して空港の外に出てみる。
　ひんやりした外界の風が寝不足の身体を目覚めさせる。
　空はまだ暗く、街灯の灯やタクシーの前照灯が妙にまぶしい。
　やってきたシャトルバスに乗り込んで走っているうちに、東の空がうっすらとしらみ始めてきた。

　ターミナルのチケット売り場はまだオープンしていなかった。
　そんな早朝でもバスやミニバスが数分おきに到着し、シャトルバスに乗り換えて空港に向かっていく人たちがいる。
　空港職員だ。

　６時を過ぎ、チケット売り場がオープンした。
　急いでトラート行きのチケットを申し込む。
　すると少し待てと言われ、すんなりと話が通じない。
　言葉が充分に伝わらないことで私は不安になってくる。

　「今日は、ここのトラート行きのバスは出ません。
　あそこのトラート行きのチケットを買ってください・・・」
　しばらく待たされた後、そんなことを言われて指さす方向を見ると、ミニバスの臨時チケット売り場が開設されていた。
　黒板を見ると、トラート行き出発は７:30になっている。
　予定のバスよりも１時間も遅くなるが、チケットはすんなりと買えて胸をなで下ろす。
　そうか、トラートに行く人が少ないので、大型バスがミニバスに変更になったのだな。

　そう思いながら他の客たちと一緒にベンチで待つこと１時間。
　その間、コ・チャンに行く人のミニバスは出発し、ラヨン行きのミニバスも出発して行った。
　残りは私一人。
　待つことに飽いてきた時、チケットを売っていた女性に手招きされた。
　「すみません。今日はトラート行きのミニバスは中止です。
　料金はお返しします。」
　「えっ！！じゃあ、どうすればいいの？」
　心臓がぱくぱくと異常な鼓動を繰り返す。

　どうすればいいんだ。
　昨夜から待っていた時間は、全くの無駄だったのか・・・
　トラートって、誰も行かない、ものすごくマイナーな町だったのか・・・
　タイでは公共交通といえども、簡単に発着がとりやめになってしまうのか・・・
　私の頭の中はこんがらがって、正常には思考できない状態だった。
　衝動的にチケット売り場に戻ると、パタヤ行きのチケットを買っていた。
　少しはトラートに近づけるか。
　出発は９時。

　バスを待ちながら落ち着いて考える。
　バンコクからトラートに行く人はいるはずで、そのバスはエカマイから出ているんだ。
　エカマイに行く方が良かったか。
　でも今さらエカマイに行ったとしても、トラート行きの時刻も分からないし、チケットが買える保証もないし、夕方着くことになったら大変だ。
　パタヤ行きを選んだことを悔やむまいと思うことにした。
　もうどうにでもなれ・・
　日にちはたっぷりある・・・
　そうは思ってみるものの、考え抜いたつもりの計画がこんなにも簡単に御破算になったことに、この先の不運を感じ、なんともいえない思いが溜まってくるのだった。
　情けない気分で沈み込んでいる。

この旅行記へのコメント （2）

• trat baldさん 2015/12/20 08:17:21

  全然普通だし(^o^)

  知識(情報)は旅人にとって宝物だよね、エカマイのチュートチャイを知っていれば１時間おきの座席指定バス(トイレ付き)が250B=714円で行けたけど、、、、
  僕が最初にトラートを訪れたのは'07年だから空港ターミナルはもう少しマトモだった、客が居ないと直ぐに撤収はASEANの常だね。

  motogenさん からの返信 2015/12/20 10:23:06

  RE: 全然普通だし(^o^)

  　私はまだまだ初心者、特にこのカンボジアの頃は、わずかな出来事に一喜一憂。
  　知らない土地に出かけるだけで、とてつもない興奮をしていました。
  　でも、この頃が懐かしいです。
  　しだいに旅がまんねり化し、惰性で行っているような気持ちにもなりましたが、みなさんの冒険や、びっくりするような旅のスタイルを知って、またやる気になってきています。
  　刺激って大切ですね。