2010/11/08 - 2010/11/21
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motogenさん
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理不尽でおぞましいイミグレを通過し、カンボジアに足を踏み入れました。
国境の丘の上から見えるココンの町は美しい。
町の中もそうあって欲しい。
親切で、貧しい旅行者からぼらない人々が住む町であって欲しい。
- 同行者
- 一人旅
- 交通手段
- 自転車 徒歩
-
イミグレからココンの町までは、想像していたより遠かった。
丘を下り、その先の海に架かる長い長い橋を渡って行く。
バイクはあい変わらずノコノコと走り、安心してカメラのシャッターを押せる。
このバイクのおじさん、いい人なのかも知れないと思いはじめる。 -
あれがココンの町らしい。
ここからだと、海の上に浮いているように見える。 -
橋を渡りきると、バイクのおじさんがしきりに話しかけてくる。
「ホテルに着いたら、その後はとこに行くんだ・・・?
いい所知ってるから、案内してやるよ・・・」
聞き取りにくい英語ではあるが、片言英語なので私には理解しやすい。 -
通行量が少ないがらんとした道路が続く。
太陽の光だけがじりじりと照りつける。
バイクおじさんの声が、何度も何度も繰り返される。
「ホテルについたら、いいとこ連れってやる・・・」
こいつ、お人よしの観光客だと思って、観光案内してぼる気だな。
いい人から危険人物に変わった。 -
賑やかな場所に近づいている。
すると、途中勝手に両替所に立ち寄って
「ここで両替しろ。」
旅行代理店の看板の前に止まって
「バスのチケットはここで買え。」
などと、そこに入って行きそうになるが、バイタクに連れて行かれるとその先々でぼられるに決まっている。
「あなたの英語、よく分からない・・」
分からないふりを続けのがベターだ。
もっとも運転手の話す英語は、本当に理解しにくい。 -
運転手に『リーチ・ココン・ホテル』と言ってはあるが、この運転手はどうも違うホテルに連れて行きたがっているようだ。
「リーチ・ココン・ホテル!! リーチ・ココン・ホテル!!」
バイクおじさんの耳もとで何度も叫び続ける。
ここで負けるわけにはいかない。 -
バイクが止まったのは市場の前だった。
えっ、こんな場所?
こんな薄汚いところにゲストハウスがあるの? -
バイクおじさんに連れて行かれたのは確かに『リーチ・ココン・ホテル』だった。
一度外に出て、看板を探して確かめた。
汚い建物だった。
フロントも、あるのかないのか分からないゲストハウスだ。 -
入り口にいた娘は、ろくに部屋を示すこともできず、ただ微笑んでいるだけだった。
バイクおじさんが勝手に部屋のキーを手に持つと、私を部屋に案内し、どうのこうのと説明する。
入り口にいた娘はうろうろするだけで、部屋の前で立ちつくしている。
「あんた、このホテルの人なの?」
私は怒りに満ちた口調でバイクおじさんにまくしたてた。
なんなんだ、カンボジアというのは。 -
2階の部屋は、シングルベッドが1つの部屋と、シングルベッドが2つある部屋の2種類だった。
ベッドが1つの部屋はファンで、2つある部屋にはエアコンがある。
どうせ1泊だ、ベッド1つの部屋で充分だと考えてそう言うと、10ドルだという。
ネット情報では150バーツ(6ドル)のはずなのに。 -
しかし、もうどうでもよくなるほど気持ちは疲れ切っていて、10ドル支払って部屋に荷物を運び入れることにした。
受付台帳(メモ用紙)に自分の名前とパスポート番号を記入しただけで、手続きは終わってしまった。
ところが部屋に戻るとキーが壊れていて、ガチャガチャやってもドアが開かない。
即刻ベッドが2つにエアコンのある部屋に移ることになったが、料金はそのままだった。 -
水は出たがお湯は出なかった。
湯沸しが故障している。
シャワーは暑い昼間のうちに済ませなくてはならない。
ふたのない便座、水槽に水をためて手動でウォシュレットするトイレ。
あるだけましか。
不服は言うまい。
ここはカンボジアなのだから。
と思ったら、エアコンもガーガーと音を立てるだけで、冷たい空気は出てこなかった。 -
部屋の前には卓球テーブルがドテン。
なぜこんな所に。
日本の温泉旅館か? -
入り口から外に出ると、目の前は市場。
市場から出るごみや埃が道路の脇にたまり、その一部がゲストハウスの中にも舞い散ってきそうだ。
汚いところは平気だったはずのなのに、この雰囲気に負けてげっそりしてくる。 -
何か食べるものはないか。
市場の中に入ってみると、灯りのない建物の中は薄暗く、市場独特の魚のにおいで食欲は急に減退する。
肉を売っているおばちゃんがにっこり笑う。
この生肉のかたまりじゃ、そのままでは食べれません。 -
手に入ったものを無造作に並べたようなみすぼらしい市場。
商品も少ない。
食べもの屋台はありません。
さらっと見ただけで、退散。
ボーダーとバイクおじさんとのせめぎあいで、もう気力が枯れています。 -
町の中心道路はしっかり舗装もされていて、すごく広い。
その広々している道路を走っているのはバイクと自転車で、ときたま車が通るだけだ。
道路を横切るにもなんの苦労もない。
ゲストハウスの周囲をぐるっと一回りし、飲み水や食料を探したが、それはらいったいど
こで売っているのだろうか。
雑貨屋が見つからない、コンビニが見つからない。
小ぎれいなブティックやレストランなどあろうはずがなく、ショッピングセンターなど夢物語。
路上にあるはずの屋台さえ見つからない。
今夜はどこで食べようか。 -
ネット情報はあまりあてになるものではない。
ゲストハウスにしても、情報とはまるで違っている。
市場や飯屋をはじめとする店が近くに集まっているというが、それはどこにあるのか。 -
ロータリー近くを歩いていると、『レンタルバイク&バイスクル』の小さな看板が目に入った。
『洋食あります』の案内板も横にある。
(もちろん英語で書いてある)
さっそくレンタル自転車を申し込むと、その店の主人は品の良い欧米人のおじさんだった。
ここはゲストハウスなんだと、部屋を見せてくれた。
清潔で快適な部屋に見えた。
エアコン、TVはもちろん、冷蔵庫まで備えてあって、400バーツだ。
中庭には小さなプールまである。
掃き溜めに鶴。
まさにそれだ。
明日はここに引っ越ししよう。
自転車を借りて勇んで外に飛び出した。 -
そのまま自転車にまたがり、郊外に向かって出発する。
ロータリーから東に伸びる道を進んでいく。
舗装は道路の中央だけ。
端っこには水溜りがあった。
道の両側には小汚い商店や民家が並んでいた。
店先のおばさんや子供たちが、通りすぎる私に好奇の眼差しを投げてくる。
水を買った。
1ドル札を出すと、お釣りはリエルでかえってきた。
頼りになるのはネットから取り出した地図と噂話。
私の頭のすみには『ブラックアジア』の世界がちらついている。
『ブラックアジア』はアジアの貧困世界をえがいたサイトだ。
芳醇な赤い大地、ほこりっぽい土の匂い、走り回る子供、香辛料の香りを放つ女性・・・
やくざまがいの警察官、社会から隠された差別村、人身売買、暴力、人々の笑顔・・・
危険を承知であてもなくアジアを彷徨っていたパックパッカーの記録だ。
アジアに魅了され、日本社会から脱落してしまった旅行記が、私の心に火をつける。
とても真似はできないが、その一端でも味わってみたい。
私は途方もない夢をみる。
表面的には穏やかで、波風たたない日本の生活に埋没していると、そんな気持ちが湧き上がってくるのです。 -
町から離れると立派な家がポツリポツリと建っていた。
こぎれいなホテルもある。
ナイトクラブらしき看板もあった。
こんな辺鄙な郊外に、ココンのお金持ちは住んでいるらしい。
遊びに来る人もいるらしい。
いったい誰が? -
道は途中から舗装が切れて、でこぼこの赤土の道に変わってしまった。
民家もなくなり、この先にはジャングルが続いている。
これがあこがれのカンボジアだと、勝手な判断で喜びながら、汗をしたたせながらペダルを漕いだ。 -
民家などないと思っていたのに、建設現場が現れた。
巨大な建物を作っていた。
小さな家屋もある。
でも人の姿は見えなかった。
空き家のようだ。
人だけ消えてしまったのか? -
もう少し進んでみよう。
謎の建設現場を通り越して、さらに東に東に・・・ -
南に入り込む細い道があった。
まさか地雷が埋まっているわけはないだろう。
盗賊もいそうにない。
まだ昼間だから。
目指すは、きっとこの先に違いない。 -
水溜り、でこぼこ穴を避けながらくねくねと進入していくと、荒れ果てた広場に散らばる数軒の小屋が目に入ってきた。
ここなんだろうか?
頼りない情報をもとにこんな所までやって来て、探しているのは『隠れ村』だ。
『ブラックアジア』の中に出てくる隠れ村。
カンボジアにも身分差別の賎民が作られていて、その人たちは迫害を受け、人里離れた山の中にひっそりと暮らしているという。
ブラックアジアの作者が愛しみ続けた村だ。
興味本位に近づくべきではないが、そっと覗いてみたいという気持ちに負けて、来てしまった。
こんな町に近い所にあるはずはないが、もしかしたらここもその隠れ村ではないのか。 -
立ち止まって注意深く様子を探る。
10軒ほどの小屋が散らばっている。
カンボジアの国旗がひらめいている小屋もある。
ここから奥には道はないらしい。 -
ある家の前に数人の住民がいた。
家族で食事の支度でもしているのか、私には目もくれない。
いや食事のしたくではなさそうだ。
祝い事の準備をしているようだ。
話しかけてみようとも思ったが、その勇気がなく、遠くから見ていた。 -
朽ちた柱、さびついたトタン屋根。
こちらの家は誰もいないようだ。
洗濯物が干してあり、ドアは開いている。
シーンとしている。 -
別の家の前には幼児が遊んでいた。
入り口には2人の女性がこっちを見ている。
「ハロー・・」
勇気をふりしぼって声をかけてみる。
女性はパジャマ姿だった。
町でもそうだったが、女性や子どもは昼間でもパジャマを着ている。
これがこちらの普段着のようだ。
「ハロー」と声が返ってきた。
間近で見ると女性の鼻筋とおでこには白い粉が塗ってあり、歳のころは20代後半に見える。
白い粉は木から作られた粉末で、日焼け防止に塗るのだそうだ。
家にはドアがないも同然で、中が丸見えだった。
しかし暗くて目が慣れないとはっきりしない。
分かったことは全てが土間だということ。
そこに木製の台があって、その上に汚いマットレス。
ハンモックも架かっている。
板張りの壁には吊るされた衣類やタオル。
ここに何人もの家族が住んでいるんだろう。
言葉も通じず、気まずさだけが大きくなって、おずおずと後退してしまった。
何を怖がっているんだ。 -
暑い。
こっちでは女の子が犬と遊んでいた。
「ハロー」
女の子は黙ったまま、じっとしている。
ここは『隠れ村』なのだろうか。
全く分からなかった。
分からないまま、帰ることにした。 -
入り江沿いにやって来ると、美味そうな匂いを放って屋台が並んでいた。
きれいなお姉さんが営業する屋台のテーブルには、二人の子供が座っている。
なんだ、屋台はあるじゃないか。
おっ、何を食べているんろう。
覗き込むと鶏の足とトサカ焼きを美味そうにかじっていた。
匂いは美味そうだが、ウロコと爪のある足は、見るだけでだめだ。
お姉さんに勧めをやんわり断って、子供たちの食べっぷりを眺めていた。 -
お姉さんと子供は笑っている。
この後どこの屋台にも、必ず鶏の足とトサカが並べられていて、私を困らせた。
意気地がない男である。
『ブラックアジア』に魅せられているとはお笑い種です。 -
ココン橋の見える場所まで走ってきた。
この橋ができる前は渡し舟の時代だったはず。
人の乗る小舟や、荷物を運搬する大型船が、両岸を行き交いしていたんだろうか。 -
桟橋の先っぽにいるのは魚釣りの家族なのか?
-
やはりそうだった。
お父さんと若くてきれいなお母さんが釣り糸をたれていた。
子どもが5人。
子どもはみんな男の子で、見るからにいたずらそうだ。 -
兄弟なのか、近所の子どもも混ざっているのか。
子どもはじっとしていられない。
立ったり座ったり、あっちこっちへふらふら歩いたり。
どたばた音をたてたりしたら魚が逃げてしまいますよ。 -
大きな子どもも小っこい子どもも、じゃれあうのが大好きなようだ。
じゃれあいが本気になってきた。
倒した相手に馬乗りになって転がり回っている。 -
小さな子供は負けてばかりいるが、それでも泣きもせずに、大きな子にぶつかっていく。
小さいくせに根性あるなあ。
大きな子も手加減しない。
おいっ、怪我するぞ。
親は止めもしない。 -
そうかと思うと、今度はクライミング。
-
コンテナのような箱にしがみついて岩山登りの練習?
ワイルドに遊ぶ道具はそこらじゅうに転がっている。
ゲーム機はなくても、遊ぶものはふんだんにある。 -
入り江に沿って南に走ると様相が変わってきた。
小さな川あってその橋の上から入り江を見ると、船が群れていた。 -
反対側を見ると、半分川の中に突き出した民家がぎっしり。
生活排水で川はにごり、泥沼のような悪臭が漂う。 -
ゲストハウスに帰り休んでいると、大粒の雨が道路や屋根の上で跳ね回っていた。
部屋の前の卓球場で、数人のカンボジア人がラケットを振り回している。
まずまずの腕前だが、卓球クラブの小学生には負けてしまうな。
雨は1時間ほどで嘘のようにやんだが、道路には大きな水たまりやぬかるみができ、濡れた道路は光を吸収して真っ黒になっていた。
日が沈みかけ、町全体に薄闇が広がっている。 -
食堂が見つかった。
昼間は閉まっていて、夕方になると開くようだ。
ぼそっと明かりが灯る大衆食堂で、パイナップルの煮物と肉料理、豆乳を注文すると、大皿にたっぷりの飯と料理が運ばれてきて、一人だけのカンボジア到着記念の夕食となった。
カンボジア料理は、辛くも酸っぱくもなく、日本人の口に合うまろやかな味だった。
ふと外を見ると、あのイタリアおじさんがとぼとぼと頼りなげに通り過ぎて行った。
ミニバンで一緒だった他の欧米人たちはどうしたんだろう。
ボーダーで別れた後、こんな狭い町なのにさっぱり見ていない。 -
食べ終わって驚いた。
この町はこんなに暗いのか。
道路脇の商店や民家からは漏れてくる灯はぼんやりと頼りなく、その場だけを照らしているだけで広い道路にまでは届かない。
バイクの灯がまぶしく移動していくが、明かりは黒い道路に吸収され、町の明るさにはなんら寄与しない。
道路の先を見ると、吸い込まれるような闇が広がっているだけで、一点の明かりもなかった。
水たまりとぬかるみだらけの悪路は、まともに歩ける状態ではなかった。
今夜はこのまま寝てしまおう。
ベッドの上の毛布をめくると、中に潜んでいた大きなゴキブリが逃げていった。
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この旅行記へのコメント (3)
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- trat baldさん 2015/12/24 09:02:34
- コ・コン(コン島)って本当は南に島が有るのよね。
- 天国と地獄が同居するカンボジアに辿り着きましたネ(^o^)
橋の架かっているのは陸地の方のココンなんだよね、ファラン達は島に移動したのかも知れない、、、、
- motogenさん からの返信 2015/12/25 17:16:17
- RE: コ・コン(コン島)って本当は南に島が有るのよね。
- ココンに島ってあったんですか。
全く知りませんでした。
今思うと、もっとココンに居れば良かったかと思います。
もう一度行ってみたいけど、あのボーダーを思い出すと行きたくありません。
今じゃ、1500バーツって言うかな。
20ドルが30ドルになったし。
ネシアもビザ不要になったそうですが、カンボジアはいつなるんでしょうか。
そうなればもっと観光客が増えると思うだけど。
- trat baldさん からの返信 2015/12/26 09:17:05
- motogenさんなら行ける!
- コ・コン程度ならハートレークかクロンヤイの渡し舟なら国境関係なしに往来しています、シアヌークビル辺りだとちょいヤバイかな?
> ココンに島ってあったんですか。
> 全く知りませんでした。
> 今思うと、もっとココンに居れば良かったかと思います。
> もう一度行ってみたいけど、あのボーダーを思い出すと行きたくありません。
> 今じゃ、1500バーツって言うかな。
> 20ドルが30ドルになったし。
> ネシアもビザ不要になったそうですが、カンボジアはいつなるんでしょうか。
> そうなればもっと観光客が増えると思うだけど。
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