2015/04/25 - 2015/04/25
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montsaintmichelさん
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山手幹線にある兵庫県庁のすぐ南、下山手通り沿いに近世フランス・ルネッサンス様式の雰囲気を漂わせる洋館が目に入ります。今を遡ること113年前の1902(明治35)年、文部省の建築家として数々の名建築に携わってきた山口半六氏の設計により、4代目兵庫県本庁舎として建造された洋館です。この設計の依頼がきた1899(明治32)年、山口氏はすでに第一線を退き、舞子に療養のために滞在していたそうです。病身をおして設計に取り組んだ山口氏ですが、残念ながら竣工を待たずに他界してしまいます。その遺志を継ぎ、山口氏の下で指揮を執っていた秋吉金徳氏が陣頭指揮を執り、3年間の工事期間を経て見事完成させました。
現在は、「兵庫県公館」として迎賓館と県政資料館の機能を併せ持ち、「美しい兵庫」のシンボルとして親しまれ、毎週土曜日には迎賓館の一般開放もしています。また、毎年GW期間中は特別に一般開放されています。
館内には小磯良平作『KOBE, THE AMERICAN HARBOUR(神戸・メリケン波止場)』とその25倍のスケールの西陣織タペストリーの他、東山魁夷ら県所縁の芸術家の作品が多数展示されていますので芸術鑑賞の趣も味わうことができます。
兵庫県庁のHPです。
http://web.pref.hyogo.jp/ac01/ac01_000000026.html
- 旅行の満足度
- 5.0
- 観光
- 5.0
- 同行者
- カップル・夫婦
- 交通手段
- 私鉄 徒歩
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兵庫県公館(旧兵庫県本庁舎) 国登録有形文化財
1902(明治35)年に地上3階、地下2階建ての4代目兵庫県本庁舎として竣工し、永きに亘って兵庫県政の歩みを刻んできた、現存する県庁舎の中では数少ない明治期に建てられた煉瓦造の庁舎です。
下山手通り沿いの北面の雄姿です。 -
北面
戦災で内部を焼失したものの外壁は残され、修復後は県南庁舎として使用されてきました。1985年に煉瓦壁を鉄筋コンクリートで補強・改装して兵庫公館として整備して今日に至っています。 -
正門
設計者は、明治時代を代表する建築家の文部技官 山口半六氏。山口氏は、明治政府発足まもない時期にフランスへ留学し、日本の明治近代建築を最も早くから担った建築家として、特に学校建築の分野で力を発揮しました。そしてこの旧兵庫県本庁舎は、病のため第一線を退いて舞子で療養中に設計依頼を快諾した作品です。竣工時は、東洋最大の海運市場を有する神戸港の繁栄を映した日本最大級の庁舎と称されました。
山口氏は建設途上に肺結核が悪化し、竣工を待たずに1900(明治33)年に42歳の生涯を閉じています。それから100年以上もの間、山口氏が設計した建物は使われ、愛され続けてきたのです。 -
正門
古典主義の第1世代のフランス派を代表する建築家は、片山東熊氏と山口半六氏の2人と言われています。第1世代のセンスについては、藤森照信著『日本の近代建築』には、「一番上手いのは妻木頼黄(つまき よりなか)と山口半六で、その中間が片山東熊。辰野金吾は上手とはいえない」とあります。あくまでも個人的な主観による評価とはいえ、近代建築の巨頭の一角に山口半六氏を加えているのは興味深いところです。フランス仕込みの作風は、辰野金吾氏などの英国系が主流であった往時の日本の建築界では異端的な存在だったことは確かです。山口氏については、森まゆみ著『明治東京畸人傳』にも取り上げられていますので、興味があれば手にしてみてください。 -
正面玄関
基底部はラスティカ積み、1階はアーチ窓を連ね、2階は弓形ぺディメントが載る窓をリズミカルに連続させた、中庭を中心とする回廊式の壮麗なフランス・ルネッサンス様式です。中庭があり、それを取り囲むような造りになっているのがこの様式の特徴です。
正面ファサードは、下からアーチ門、2階に3連のアーチ窓と4角窓を配しています。窓はコリント式の角柱(片蓋柱)4本で構成するオーダーで囲んでいます。アーチ窓の上にも小オーダーを配し、4角窓を囲っています。
軒上には大きなペディメントが載り、この後方には優美な丸みを持つ曲面マンサードと呼ばれるドーム型屋根が載せられています。こうした表現からネオ・バロックと言えなくもないのですが、バロック特有のメダリオンなどの装飾は少なく、フランス・ルネッサンス様式と言われています。丸いメダリオンは、目立たないようにペディメントの中に配置されています。
前庭には、ルピナスなどの花々が咲き、とても絵になる景観です。 -
正面玄関 車寄せ
アーチの右側に掲げられた旗は、セルリアンブルーをバックに、波の形をデザインした「兵」の字を白く抜いた県旗です。
阪神間では、兵庫県公館は、陣内・藤原両家の披露宴の申し入れを断ったという武勇伝でも有名です。理由は、600人程度しか収容できないことや個人目的にはそぐわないこと、警備がし難いなどを挙げたそうです。公館としては全国区進出の絶好の機会を逃したことになりましたが、兵庫県民としては妥当な判断だったと思っています。
ふたりが結婚式を挙げた生田神社では経済効果は結構大きかったようですが、その分離婚騒動で随分水を差されたようです。とすれば、公館の判断は正しかったということになりそうです。さすがに結婚の先までは読み切れていなかったのでしょうが…。 -
エントランス
玄関扉も格調高くとてもシックです。
毎週土曜日はこのように一般開放されています。また、ボランティアの方々が主だった部屋に配されており、詳しい説明をしていただけます。 -
エントランス 三浦啓子作「くすのき」
重厚な扉に圧倒されずに横を確かめてください。
玄関アーチと扉の間に嵌められた、緑色のグラデーションが美しいステンドグラスです。
両サイド共に同じ作品です。
因みに、楠(くすのき)は兵庫県の県樹になっています。 -
1階 エレベータホール
インジケータが時計式デザインになっているクラシックなエレベータです。
入口でパンフレットと展示美術品一覧(マップ)をいただいたら、エレベータで3階へ上がります。 -
3階 ロビー
エレベータの扉が開くと同時に目にする厳かな光景です。
南向きの3連窓から、前庭の木漏れ日が優しい光を投げかけています。
天井が高く広い空間ですので、別世界に迷い込んだような気になります。 -
3階 ロビー
ふと見上げれば、華麗なアール・ヌーヴォー風のシャンデリアが足元を照らしています。 -
3階ロビー
右の壁面には、小磯良平画伯の作品『KOBE, THE AMERICAN HARBOUR』が原作の25倍の大きさの西陣織タペストリーとして再現してあります。縦糸が麻、横糸が絹になっており、制作には約100日かかったそうです。原作は、同じ階の知事室にあります。
このタペストリーは撮影OKです。
左の壁面には、東山魁夷画伯の作品「フィヨルド」が掲げられています。 -
3階 応接室
3連窓とカーテンがいい雰囲気です。
どの部屋にも歴代兵庫県文化賞受賞者の絵画や彫刻、陶芸作品が展示してあり、これら芸術作品の鑑賞も館内めぐりの愉しみのひとつです。 -
3階 特別室C
正面の窓の間には、伊藤慶之助作「バラ」が掛けられています。
ボランティアの方によると、部屋や調度品を撮影するのはOKのようです。このように部屋を写して美術作品が写り込むのもOKだそうです。つまり、美術作品を間近で撮影しなければOKということです。 -
3階 知事室
こちらは、知事の執務室だった部屋です。
明治の兵庫県知事というと初代の伊藤博文を思い浮かべてしまいますが、伊藤知事が務めた時期の兵庫県庁は旧兵庫陣屋(尼崎藩の役所で、和田岬付近にありました)に設けられており、この執務室を使うことはありませんでした。
左の壁に掛けられているのが小磯良平作『KOBE, THE AMERICAN HARBOUR』の原画です。 -
3階 知事室
天井のデザインも凝っています。他の部屋とはグレードが異なっています。 -
3階 知事室
豪華な暖炉が置かれています。
手前の摺りガラスは、兵庫県の県花のノジギクが描かれているので、往時の物ではないように思います。県花が選定されたのは1954年のことです。
暖炉の上の写真楯には、『KOBE, THE AMERICAN HARBOUR』を制作中の小磯良平画伯が写っています。 -
3階 特別室D
右側には辻愛造作「安乗」、左側には別所博資作「パリ(セーヌ)」が掛けられています。 -
3階 第一会議室
1階にある大会議室の次に大きな会議室です。
シャンデリアはエレベータホールにあったものと同じです。
今日は楕円テーブルは置かれていませんでした。レセプションでもあるのでしょうか? -
3階 屋上庭園
フランス・ルネッサンス様式の特徴がこの空中庭園です。
2階部分の屋根がパティオになっており、その上に芝生が敷かれ、周囲には花壇があり、中央にはビーナスの誕生を彷彿とさせる巨大なシャコ貝をあしらった噴水があります。このシャコ貝は幅1m近くあり、パラオからの贈答品だそうです。現在はワシントン条約で持ち出しが禁止となっているため貴重なものです。 -
3階 屋上庭園
フランス・ルネサンス様式特有の優美な丸みを帯びた曲面マンサードと呼ばれるドーム型屋根です。
現在は南面にしかありませんが、創建当時は南北両方にあったそうです。 -
3階 屋上庭園
こちらが現在の北面のマンサードです。
丸みを帯びていない分、物足りない感じがします。 -
3階 廊下
こうした白亜の回廊が巡らされています。 -
3階 第二会議室
豪華な内装と厳かな雰囲気で、ドラマに登場する大企業の会議室に迷い込んだような気がします。
威風堂々とした長い楕円のテーブルには30人が一堂に会せます。
第一会議室もそうでしたが、端から端までかなり距離があるので、声が通るのか心配になってしまいます。 -
3階 第二会議室
アール・ヌーヴォー風のお洒落なシャンデリアです。 -
3階 特別室B
貴賓室の隣にある特別室です。
正面にかけられている書は、安東聖空作「橋」です。
右端のデスク上にある陶芸品は、市野雅彦作「開」です。 -
3階 貴賓室
この迎賓館の顔とも言える、主に皇室などの賓客を迎える貴賓室です。
ドア越しに覗くことはできますが、内部へは立入禁止となっています。
重厚な洋風の内装がほとんどの中、貴賓室だけは壁を含めて総欅(けやき)造の純和風の内装が施されています。
2015年1月17日に行われた阪神淡路大震災20年追悼式典に来神された天皇・皇后両陛下は、ご宿泊はホテルでしたが、開会前にこの部屋でご休憩されたそうです。 -
3階 貴賓室
窓ガラスは、もちろん防弾ガラスだそうです。
貴賓室の絨毯にも「のじぎく」があしらわれていますが、皇族の方が来られた時に踏まれても失礼が無いようにと花は横を向いた柄にしてあります。
右側に掛けられている絵画は、水越松南作「誰知明月」です。
写真には写っていませんが、左端にある陶芸品は、永澤永信(4代目)作「湖愁」です。 -
3階 貴賓室
天井の造りは、色彩こそ異なりますが、基本形は知事室と同じです。 -
1階 大会議室
階段で1階に下り、南玄関ホールの脇にある御影石の階段を10段ほど降りると600人を収容できる大会議室があります。
見上げれば美しく可愛らしいシャンデリアが輝いています。これは兵庫県の県花「のじぎく」をデザインしたものです。「のじぎく」の意匠は、シャンデリアだけでなく足元の絨毯にも使われています。貴賓室の絵柄とは異なり、正面を向いています。
阪神淡路大震災20年追悼式典はここで行われました。 -
1階 大会議室へのエントランスとなる白御影石製の大階段です。
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1階 大会議室
「のじぎく」を象った可憐なシャンデリアです。
フロアの全電球の数は約1400灯あるらしいです。LEDでないと電球を交換するのも大変です。 -
2階 展示室
一般開放は16:00までですので、ここから先は駆け足で回ります。
兵庫県のマスコット「はばタン」です。
2006年度までは、第61回国民体育大会「のじぎく兵庫国体」、第6回全国障害者スポーツ大会「のじぎく兵庫大会」のマスコットとして、両大会をPRしました。
それ以降は、県政をPRするマスコットとして、さらに「兵庫の元気」を全国に発信するマスコットとしてがんばっています。 -
2階 展示室
「のじぎく」を持った「はばタン」です。
黄色くて可愛らしい様子から「ひよこ」と勘違いされるのですが、実はフェニックス(不死鳥)をデザインしたものです。
阪神淡路大震災から復興する兵庫の姿を象徴したマスコットです。
着ぐるみもいるそうですが、兵庫県人ながら今までお目にかかったことはありません。 -
2階 展示室
竣工当時の精巧な模型です。つい見とれてしまいます。 -
2階 展示室
正面ファサードは忠実に復元されているようです。 -
2階 展示室
模型の横にはベンチのようなものが置かれ、そこに靴のまま上がって撮影ができます。靴を脱ごうとしたら、ボランティアの方が「靴のまま上がってください」と言われました。
さて、真ん中にある庭園に注目していただきたいのですが、中庭が3階ではなく2階にあります。復元する際に大ホールが必要となったため、中庭の下になる1階を大ホールとし、庭園を3階に押し上げたのだそうです。
忠実に復元するのではなく、実用的な改修が行われていたと言うことです。時代の変化に対応できないものが自然淘汰される運命なのは、世の常ですから…。 -
2階 展示室
手前が北面になります。 -
正門
厳めしい鉄格子や守衛室などが明治の時代を偲ばせます。
明治時代の建築に早い段階で関心を寄せていた分離派の建築家 瀧澤眞弓氏は、過去に、この旧兵庫県本庁舎が明治・大正期の秀作として列せられないままにあることを大変嘆いておられたことを付け加えておきます。
その甲斐あってか、2003年に国登録有形文化財になっています。
2011年放映の松本成長サスペンス『砂の器』のロケ地ともなりました。
前衛劇団の女優、リエ子(吉田羊)の死体の第一発見者は同じ劇団員の宮田(山口馬木也)でした。宮田に確かめたいことがあったため、今西(小林薫)と吉村 (玉木宏)は、和賀英良(佐々木蔵之介)が新曲を発表するコンサートホールへと足を運びます。そのコンサートホールとして登場したのが、兵庫県公館です。
また、今夏公開の映画『HERO』では、東京都内麻布駅付近ネウストリア公国大使館という設定でロケ地となっています。お楽しみに!
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。恥も外聞もなく、備忘録も兼ねて徒然に旅行記を認めてしまいました。当方の経験や情報が皆さんの旅行の参考になれば幸甚です。どこか見知らぬ旅先で、見知らぬ貴方とすれ違えることに心ときめかせております。
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