ヴォーリズの足跡を尋ねて　　旧マッケンジー邸

2015/02/25 - 2015/02/25

私の大好きな建築家ウィリアム・メレル・ヴォーリズ
彼の日本に残した今も残る数多くの作品をを訪ねて日本全国を旅していますが、静岡にも旧マッケンジー邸という静岡茶の輸出に力を注いだ貿易商のマッケンジー氏が住んでいた邸宅があります。

私は今東海道を歩いていますが、静岡を歩いていた時尋ねてみようと思っていたのですが、海沿いにあるこちらの建物は、旧東海道からあまりに離れていたので見に行くことをあきらめました。
でも、見れなかったのが心残りで静岡を通過するたびにあの時無理してでも見ればよかった、そう思い続けていました。
今回偶然にも仕事で興津に行く機会があり、車だったので少し足を延ばして見てきました。

マッケンジー邸　建物概要
□ 所 在 地 　　 静岡市駿河区高松２８５２番地
□ 構　 　造 　　木造地上２階地下１階建塔屋付・洋瓦葺
□ 規　　 模 　　 敷地面積：3,134.66?　建築面積：282.10?　
　　　　　　　　　延床面積：555.66?
□ 設 計 者 　　 ウィリアム・Ｍ・ヴォーリズ
□ 登　　 録 　　 国登録有形文化財（平成９年１２月１２日登録）
　　　　　

エリア 静岡市（葵区・駿河区）(静岡)

• 旅行の満足度: 4.0
• 観光: 4.0

• 同行者: 一人旅
• 交通手段: 自家用車

興津での仕事を終えて、東海道ウォークの際に寄ることのできなかった世界遺産の構成遺産の一つ『三保の松原』にまずは寄り道

本来であれば駿河湾の海、三保の松原、その向こうにむえる富士山
それがイメージしていた姿のはずでしたが、この日はあいにく曇り空
富士山は無理かな・・・

予想通り見えるはずの位置に富士山の姿は無い
ガッカリ
もう一つ見れなかった久能山東照宮にも寄りたい
そう思ったものの次の打ち合わせが横浜で4時半からあったため、山の上にある東照宮はちょっと無理

ヴォーリズのマッケンジー邸なら車を飛ばせば何とかいける
20分足らずで旧マッケンジー邸に到着

隣接の駐車場に車を停めて門を通り抜けます。

ご夫妻はこの自宅をホマムと呼んでいたそうです。
ちなみにホマムとはアラビア語で『ぺガサス座』を意味しているほかにホスピタリティに近い意味もあるとか。

マッケンジー邸の間取りはこんな感じ。
１８０坪もある大豪邸です。

こちらがこのお屋敷の主、マッケンジーご夫妻

まずはお屋敷の主だったマッケンジーご夫妻を紹介

御主人のダンカン・Ｊ・マッケンジーさんはお茶の貿易商で大正７年に来日。
喘息の持病を持つ彼がこの場所を気に入って自宅を建てたのは昭和１５年のこと。

翌年、日米開戦により一時帰国し、ここに戻ったのは終戦３年後

ダンカン氏は静岡茶の輸出のパイオニア的な存在だったようで、戦前戦後に渡り日本茶の輸出拡大に大きく寄与したそうです。

３年後に喘息の持病が悪化してここで亡くなったそうですが、奥様のエミリーさんはその後もここにとどまり社会福祉に貢献し、社会福祉法人を設立し乳児院や保育園を経営し、その間静岡市の名誉市民の第１号にも選ばれたそうです。

昭和４７年に高齢のためアメリカに帰国するまでここに住んでいたそうです。
この三角の飾り棚は富士山をイメージしているとか。

白で統一されえたキッチン,
かなり広いです

調理台も２台並んでいます。
いったい何人の人が暮らしていたのがご夫妻だけでは広すぎます。

それでは次に、この家を設計した私の大好きな建築家、ウイリアム・メレル・ヴォーリズを紹介しましょう。

ヴォーリズが日本に来日したのは明治３８年　彼が２５歳の時でした。

YMCA本部から宣教のために日本に派遣され、八幡商業高等学校の英語教師として着任しました。

宣教師でもあった彼は英語教師の傍ら布教活動を熱心に行ったところ、学校側からそれを理由に解任されてしまいます。

そのまま日本に残った彼は子供の頃から目指していた建築家の道を歩き始めました。

翌年現在のヴォーリズ建築事務所のもととなる設計事務所を京都に開業します。

日本で彼が初めて手掛けた設計は今も近江八幡に残るＹＭＣＡ会館

その後の建築家としての実績はすごく、日本全国で１６００もの建物の設計を手がけており、現存する代表的な建物としては学校建築では関西学院大学、神戸女学院、同志社大学、明治学院大学のチャペル、大丸心斎橋店、御茶ノ水のヒルトップホテルなどがあります。

実業家としても活躍し、後に近江兄弟社となる会社を立ち上げ、メンソレータムの輸入販売、製造販売事業も手がけ、これにより大きな収入を得、青い目の近江商人とも呼ばれていたようです。

しかしヴォーリズは、こうして事業で得た利益を、キリスト教の伝道や医療、教育、福祉のためにあて、生涯私的財産を持つことはしなかったそうです。

ヴォーリスが建築分野で一定の成功をおさめた大正７(1918)年、日本国内に結核が大流行したそうです。

多くの人が結核で亡くなったようです。

それを見た彼は、結核患者のために、近江療養院を設立しました。

患者は全国各地から集まったそうです。

結核療養所は現在ヴォーリズ記念病院となっています。

教育の面では甲子園にも出場した近江兄弟学園を設立しています。

話がヴォーリズで横道にそれてしまいましたので、またマッケンジー邸の建物に戻しましょう。

こちらは搭屋の望楼部分
マッケンジー氏のお気に入りの天体観測スペースです。

２階のメインゲストルーム

２階のゲストルームのバスルーム

そしてこちらがもうひとつのゲストルーム

２階にある女中部屋　同じ部屋が２つ並んでいますので、住込みの使用人は２人いたんですね。

広いサニタリースペースの恥にあるトイレ
ちょっと広すぎて落ち着かないかも

洗面所の水栓金物が気になります

レバーのホットとコールドレトロな感じがいいですね

主寝室

天体観測が趣味だったというマッケンジー氏はこの搭屋のベンチに座って毎晩星空を眺めていたのでしょうね。

別棟のガレージは愛車も保管されています。
キャデラックでしょうかね

スパニッシュスタイルの外観は赤い西洋瓦の屋根にスタッコ仕上げ。
こうして仕事の合間にマッケンジー邸を見ることができて大満足でした。
夕方横浜で打ち合わせがあるので、そろそろ帰ります。