鎌倉西御門の法華堂跡（源頼朝墓）に隣接する山の麓に、大江広元の墓と伝わる供養塔があるが、こちらは江戸時代に長州藩によって建てられたものと考えられている。毛利季光（長州毛利氏の祖、大江広元の4男）の墓鶴岡八幡宮の西側の鶯ヶ谷に建てられ、大正10年（1921年）に大江広元墓横に移設されている。墓横に建つ「故正四位下陸奥守大江公碑」（大江広元）と「故藏入従五位下大江公碑」（毛利季光）は、いずれも文政6年（1823年）に建立された。墓も同時に建立されたのであろう。<br />　島津忠久（薩摩島津氏の祖、源頼朝の庶子とされる）の墓は江戸時代10代将軍徳川家治の頃（安永8年（1779年））にその子孫の島津重豪（しげひで）によって建立されたものだ。<br />　毛利季光、大江広元、島津忠久の3氏の墓が並び、平行する2本の参道のうち、広元の参道前に鳥居が立っているのを見つけた。薩長中心の明治政府では長州毛利氏や薩摩島津氏の先祖のお墓を荒らすことなどできないことであるから、鳥居は残るのも当然であろう。<br />　大江広元と島津忠久は鎌倉幕府草創期に頼朝を共に支えたことでお互いに同士意識があり、並んで墓が造られたようだ。そのときに大江広元の4男毛利季光（長州毛利氏の祖）の墓も鶴岡八幡宮の横に造られた。墓所への登り口にある石段の上の石燈籠には安政5年（1858年）と彫られ、相模国の海防の任で来ていた長州藩士が墓前を整備したとある。<br />　並んだこの墓を見ると江戸中期には毛利家と島津家は仲が良いことが伺える。幕末、蛤御門の変以降に不仲になっても最後は薩長同盟を結べた理由が垣間見られる。<br />　なお、法華堂跡の石碑によれば丘にある源頼朝の墓（多層塔）も安永8年（1779年）に島津重豪が建立したものだ。また、源頼朝の墓前にも石碑がある。墓横の石碑によれば忠久公墓所までの参道も安永8年（1779年）に重豪が整備したとある。さらに、島津忠久の墓前にも碑がある。わざわざ丘の上と下と墓前に4つも石碑を建てる重豪はよほど自分の名を残し、功績を誇りたいのか。　　　　<br />　これらの土地およそ9,9000m2が平成14年（2002年）に島津家当主修久氏と毛利家当主元敬氏から鎌倉市に寄付されている。<br />　明王院裏山の胡桃山にも大江広元の墓と伝わる五層塔がある。大江広元邸は胡桃山を下りた所にあったので、この場所に墓があるとしても不思議ではない。何度も行ったがまだこの五層塔は見ていない。<br />（表紙写真は大江広元の墓）

大江広元の墓と毛利季光の墓、島津忠久の墓

2いいね！

2008/06 - 2010/03

5303位(同エリア7080件中)

#歴史・芸術

ドクターキムルさん

　鎌倉西御門の法華堂跡（源頼朝墓）に隣接する山の麓に、大江広元の墓と伝わる供養塔があるが、こちらは江戸時代に長州藩によって建てられたものと考えられている。毛利季光（長州毛利氏の祖、大江広元の4男）の墓鶴岡八幡宮の西側の鶯ヶ谷に建てられ、大正10年（1921年）に大江広元墓横に移設されている。墓横に建つ「故正四位下陸奥守大江公碑」（大江広元）と「故藏入従五位下大江公碑」（毛利季光）は、いずれも文政6年（1823年）に建立された。墓も同時に建立されたのであろう。
　島津忠久（薩摩島津氏の祖、源頼朝の庶子とされる）の墓は江戸時代10代将軍徳川家治の頃（安永8年（1779年））にその子孫の島津重豪（しげひで）によって建立されたものだ。
　毛利季光、大江広元、島津忠久の3氏の墓が並び、平行する2本の参道のうち、広元の参道前に鳥居が立っているのを見つけた。薩長中心の明治政府では長州毛利氏や薩摩島津氏の先祖のお墓を荒らすことなどできないことであるから、鳥居は残るのも当然であろう。
　大江広元と島津忠久は鎌倉幕府草創期に頼朝を共に支えたことでお互いに同士意識があり、並んで墓が造られたようだ。そのときに大江広元の4男毛利季光（長州毛利氏の祖）の墓も鶴岡八幡宮の横に造られた。墓所への登り口にある石段の上の石燈籠には安政5年（1858年）と彫られ、相模国の海防の任で来ていた長州藩士が墓前を整備したとある。
　並んだこの墓を見ると江戸中期には毛利家と島津家は仲が良いことが伺える。幕末、蛤御門の変以降に不仲になっても最後は薩長同盟を結べた理由が垣間見られる。
　なお、法華堂跡の石碑によれば丘にある源頼朝の墓（多層塔）も安永8年（1779年）に島津重豪が建立したものだ。また、源頼朝の墓前にも石碑がある。墓横の石碑によれば忠久公墓所までの参道も安永8年（1779年）に重豪が整備したとある。さらに、島津忠久の墓前にも碑がある。わざわざ丘の上と下と墓前に4つも石碑を建てる重豪はよほど自分の名を残し、功績を誇りたいのか。　　　　
　これらの土地およそ9,9000m2が平成14年（2002年）に島津家当主修久氏と毛利家当主元敬氏から鎌倉市に寄付されている。
　明王院裏山の胡桃山にも大江広元の墓と伝わる五層塔がある。大江広元邸は胡桃山を下りた所にあったので、この場所に墓があるとしても不思議ではない。何度も行ったがまだこの五層塔は見ていない。
（表紙写真は大江広元の墓）

エリア

鎌倉(神奈川)

石燈籠の建つ石段。大江広元公墓登り口。この前に住む住民でもめったに大江広元公の墓には行かないそうだ。
石燈籠の建つ石段。
石段の上にも石燈籠。
石燈籠。安政5年（1858年）に長州が大江広元公墓に建立した。毛利家の家紋が彫られている。
石燈籠下の眺め。
大江広元の墓下の広場。建物跡であろう。
大江広元の墓参道に見える鳥居と島津忠久の墓参道。並んでいる。
鳥居。
鳥居。
鳥居横には三浦若狭守泰村他一統の墓。

三浦若狭守泰村他一統の墓。
大江広元の墓参道石段下の鳥居。
島津忠久の墓参道の石段。
大江広元の墓参道石段下の鳥居。
大江広元の墓参道石段下の鳥居。
大江広元の墓参道の石段。
大江広元の墓参道の石段。
大江広元の墓参道の石段。
大江広元の墓参道の石段。
大江広元の墓参道の石段。

大江広元の墓参道の石段。
島津忠久の墓参道石段。
「奉寄進」石碑。安永8年（1779年）2月建立。島津忠久の顕彰碑は建っていない。
島津忠久の墓。
島津忠久の墓。
「故藏入従五位下大江公碑」（文政六年（1823年））。毛利季光の顕彰碑。
「故藏入従五位下大江公碑」（文政六年（1823年））。毛利季光の顕彰碑。
毛利季光の墓。
毛利季光の墓。
「故正四位下陸奥守大江公碑」（文政6年（1823年））。大江広元の顕彰碑。

「故正四位下陸奥守大江公碑」（文政6年（1823年））。大江広元の顕彰碑。
大江広元の墓。左右に長州毛利家の祖の墓と薩摩島津家の祖の墓が並んでいる状況を見た長州藩士と薩摩藩士は特別の縁（えにし）を感じ、別に坂本竜馬がいなくても、供に結んで倒幕に突き進んだであろう。
「元祖島津豊後守忠久石塔道」石碑。頼朝多層塔（供養塔）横に建つ。