1972/10/13 - 1972/10/13
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ソフィさん
1961年10月13日(金)続
私が住人となったスペイン館は、規律の厳しさで名高い。
門限も厳しくて、夜半12時を過ぎると玄関に鍵が掛けられてしまう。
12時以降に帰ると、灯りを落とした広い玄関ホールの奥には受付があり、呼び出しベルを鳴らすと、眠っていた当直のおじいさんがやおらカウンター裏にニョッコリと顔を出して確認後、電気鎖錠を開けてくれる。
私は日本からやって来た客の相手をするものだから、連日午前様で、当直のおじさんから直ぐに覚えられてしまう。
このおじさんは60歳半ばを過ぎているのだろうか。
コロコロした体型で、見るからに人懐こそうだが、若者には厳しくて恐れられている。
まさに厳しさで鳴らすスペイン館の、玄関の守りにぴったりなのだ。
私の帰館したときは眠そうではあるが、いつもニコニコと笑みを絶やさない。
一度も文句を言わずに、鎖錠を開け、ホールに灯りをつけてくれる。
私はその都度感謝の気持を述べ、タバコを一本勧めることにしていた。
そのうちタバコに火をつけて差し上げるようになり、しばらくの立ち話が習慣となる。
その彼は肉親の身寄りがなく、毎晩私と話すことを楽しみにしている様子が見えてきた。
私も彼との話が、一日のフィナーレに欠かせぬ楽しみになって来る。
実に好人物で、帰館の足が重かった以前が、嘘のようだ。
彼の名はミュノス。
カタロニア生まれで、そのことを誇りにしている。
カタロニアは、かつてアラゴン王国として文化が栄え、バルセロナを中心とするこの地域は今なおスペイン国内で自治色が強く、カタロニア語を話し、独自の文化を誇っている。
ピカソやガウディなど、世界的な芸術家も輩出している。
信仰が深く、若くしてローマ法王の護衛兵を志願し、定年まで勤め上げた。
護衛兵時代の華やかな服装を着た若かりし頃の写真が、今も彼の人生の誇りを支えている。
地中海に面した南仏、ラングドック・ルーシオンにあるセートに数室の別荘を持っており、その家賃収入が彼の小遣いである。
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