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1月4日、14日目。<br />寝ては覚め、寝ては覚めの長時間の機中泊だった。10時、機内でパンとチーズだけの朝食。<br />12時にハバロフスク空港着。再びホテル「インツーリスト」へ。<br />15時に近くの郷土史博物館を訪問。巨大な博物館で、見学できたのはマンモスの骨や極東ロシアのアジア系先住民の衣装などだった。また民家の軒先の飾り模様でその部族が解るという。<br /><br />その足で市街のデパートを見て歩く。イルクーツクでもモスクワでもそうだったが、商品の数も種類も少なく、質も悪いのが見て取れる。<br />特に近年日用品や食料品の不足が深刻だそうだ。時期がゴルバチョフのペレストロイカ政策と重なるので、彼はこの国では人気が無い。<br />モスクワ有数の食品専門店では、4面の陳列棚のうち、1面には瓶詰めのジャム類だけしか置かれていなかった。何も入っていない買い物袋を下げ、何も置かれていない陳列ケースをしょんぼり覗き込む老人も見かけた。<br /><br />一方外貨ショップには質の良いものが溢れている。だから市民は外貨を得ようと我々外国人に直接物を押し付けてくる。ロシア帽、マトリョーシカ、キャビアの缶詰、何と自国の国旗までも。また、「外貨をルーブルに両替しよう。」という誘いも良く受けた。<br />そして外貨と言えば、何といっても米ドルが最強だ。レニングラードのホテルで添乗員さんが警官たちに米ドルでお礼を渡していたのもうなづける。<br /><br />また店員がサービス精神に欠け不愛想なのも全国共通だ。客が寄ってくるとブスクレるのもいる始末。結局物を売ろうと売るまいと彼らの収入には変わりがないからだろう。<br />社会主義の裏を見た気がする。<br /><br />反面、外貨ショップの店員さんは皆美人で愛想も良い。身ぎれいで皆グラマーだ。<br />またロシアでは会計時にも店員さんは座ったままだ。そして彼女たちは必ずと言っていいほど薄着で更にブラウスの一番上のボタンをはずしている。当然豊かな胸の谷間のかなり深いところまで見えてしまう。<br />きっと要らないものまで買ってレジに並びなおす客もいるだろう。これも外貨獲得の一手段なのだろうか。<br /><br />19時にホテルで最後の晩餐を摂る。ペリメニ(水餃子)のつぼ焼きなどの珍しい料理が出た。<br />いよいよこの旅行最後の夜だ。部屋に戻り、昼に空港の売店で手に入れたトマトジュースでウォッカを割る。<br /><br />1月5日、15日目<最終日>。<br />朝食後某県職員のAさんとホテルの裏の展望台へ登る。真っ白に凍結したアムール川が朝日を受けて眼下に広がる。<br />今朝、幅2キロのこの川の渡河に挑戦した若い仲間は、零下30度の寒風に圧倒され、400メートルで引き返したそうだ。<br />それを思い出して川に降りてみたが、確かにこれまで経験したことのない寒さだ。おまけに私はホテルに手袋を忘れてきた。<br />その中で地元の中年男性10人ほどが氷に穴をあけて魚を釣っている。そばまで行って見たが全く歓迎されない。どうやら仕事をさぼっている様子だ、それとも食糧の自給なのだろうか。<br /><br />後で気づいたことだが、アムール川の対岸は中国領だ。もし渡河をやり遂げていたら、若者たちは密入国で捕まっていたかもしれない。ぞっとした。<br /><br />10時、ホテルを後にして帰国の途へ、バスでハバロフスク空港へ向かう。街角ではやはり鳩が丸くなって寒さに耐えている。<br />そして道路では大勢の男性が固く氷結した雪をスコップで取り除いている。<br /><br />この国ではこうした貴重な労働力が寒さのためにどれだけ費やされているのだろう。過酷な寒さは国力をロスさせ経済活動も停滞させる。現にこの街では人通りも車の往来も極端に少ない。<br />この厳しい自然環境はロシア人にとって否応なしに背負わされた十字架のようなものだ。<br />そして彼らは「ソヴィエト社会」というもう一つの十字架をも背負ってはいまいか。<br />私はふと思った。空っぽの買い物袋の老人も、帽子売りも、ブスクレる店員も、皆シベリアの寒風の中で丸くなっている「翔ばない鳩」なのではないかと。<br /><br />空港への途中、シベリア抑留日本人墓地へ参拝した。<br />質素な木柱の墓標が晴れ渡った空を見上げている。<br />ここは雪が深い。<br /><br />(古く拙い日記と写真に長い間お付き合いくださいまして誠にありがとうございました。)

シベリア鉄道の車窓から=35年前の真冬の冒険 ⑮<最終回> シベリアの翔ばない鳩

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1990/01/04 - 1990/01/05

130位(同エリア193件中)

2

5

かちかち山たぬ吉

かちかち山たぬ吉さん

1月4日、14日目。
寝ては覚め、寝ては覚めの長時間の機中泊だった。10時、機内でパンとチーズだけの朝食。
12時にハバロフスク空港着。再びホテル「インツーリスト」へ。
15時に近くの郷土史博物館を訪問。巨大な博物館で、見学できたのはマンモスの骨や極東ロシアのアジア系先住民の衣装などだった。また民家の軒先の飾り模様でその部族が解るという。

その足で市街のデパートを見て歩く。イルクーツクでもモスクワでもそうだったが、商品の数も種類も少なく、質も悪いのが見て取れる。
特に近年日用品や食料品の不足が深刻だそうだ。時期がゴルバチョフのペレストロイカ政策と重なるので、彼はこの国では人気が無い。
モスクワ有数の食品専門店では、4面の陳列棚のうち、1面には瓶詰めのジャム類だけしか置かれていなかった。何も入っていない買い物袋を下げ、何も置かれていない陳列ケースをしょんぼり覗き込む老人も見かけた。

一方外貨ショップには質の良いものが溢れている。だから市民は外貨を得ようと我々外国人に直接物を押し付けてくる。ロシア帽、マトリョーシカ、キャビアの缶詰、何と自国の国旗までも。また、「外貨をルーブルに両替しよう。」という誘いも良く受けた。
そして外貨と言えば、何といっても米ドルが最強だ。レニングラードのホテルで添乗員さんが警官たちに米ドルでお礼を渡していたのもうなづける。

また店員がサービス精神に欠け不愛想なのも全国共通だ。客が寄ってくるとブスクレるのもいる始末。結局物を売ろうと売るまいと彼らの収入には変わりがないからだろう。
社会主義の裏を見た気がする。

反面、外貨ショップの店員さんは皆美人で愛想も良い。身ぎれいで皆グラマーだ。
またロシアでは会計時にも店員さんは座ったままだ。そして彼女たちは必ずと言っていいほど薄着で更にブラウスの一番上のボタンをはずしている。当然豊かな胸の谷間のかなり深いところまで見えてしまう。
きっと要らないものまで買ってレジに並びなおす客もいるだろう。これも外貨獲得の一手段なのだろうか。

19時にホテルで最後の晩餐を摂る。ペリメニ(水餃子)のつぼ焼きなどの珍しい料理が出た。
いよいよこの旅行最後の夜だ。部屋に戻り、昼に空港の売店で手に入れたトマトジュースでウォッカを割る。

1月5日、15日目<最終日>。
朝食後某県職員のAさんとホテルの裏の展望台へ登る。真っ白に凍結したアムール川が朝日を受けて眼下に広がる。
今朝、幅2キロのこの川の渡河に挑戦した若い仲間は、零下30度の寒風に圧倒され、400メートルで引き返したそうだ。
それを思い出して川に降りてみたが、確かにこれまで経験したことのない寒さだ。おまけに私はホテルに手袋を忘れてきた。
その中で地元の中年男性10人ほどが氷に穴をあけて魚を釣っている。そばまで行って見たが全く歓迎されない。どうやら仕事をさぼっている様子だ、それとも食糧の自給なのだろうか。

後で気づいたことだが、アムール川の対岸は中国領だ。もし渡河をやり遂げていたら、若者たちは密入国で捕まっていたかもしれない。ぞっとした。

10時、ホテルを後にして帰国の途へ、バスでハバロフスク空港へ向かう。街角ではやはり鳩が丸くなって寒さに耐えている。
そして道路では大勢の男性が固く氷結した雪をスコップで取り除いている。

この国ではこうした貴重な労働力が寒さのためにどれだけ費やされているのだろう。過酷な寒さは国力をロスさせ経済活動も停滞させる。現にこの街では人通りも車の往来も極端に少ない。
この厳しい自然環境はロシア人にとって否応なしに背負わされた十字架のようなものだ。
そして彼らは「ソヴィエト社会」というもう一つの十字架をも背負ってはいまいか。
私はふと思った。空っぽの買い物袋の老人も、帽子売りも、ブスクレる店員も、皆シベリアの寒風の中で丸くなっている「翔ばない鳩」なのではないかと。

空港への途中、シベリア抑留日本人墓地へ参拝した。
質素な木柱の墓標が晴れ渡った空を見上げている。
ここは雪が深い。

(古く拙い日記と写真に長い間お付き合いくださいまして誠にありがとうございました。)

旅行の満足度
5.0
観光
4.0
ホテル
4.0
グルメ
4.0
交通
4.0
同行者
一人旅
一人あたり費用
30万円 - 50万円
交通手段
鉄道 観光バス 徒歩 飛行機
航空会社
アエロフロート・ロシア航空
旅行の手配内容
ツアー(添乗員同行あり)
6いいね!

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この旅行記へのコメント (2)

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  • Emmyさん 2024/12/31 23:17:26
    ありがとうございました!
    かちかち山たぬ吉さん

    ハバロフスクもとても懐かしいです。あのインツーリストホテルは私もお世話になりました。あの壷焼きのペレメニはホテルの名物です。美味しかったですよね~。

    シベリア旅行記完結、ご苦労様でした。旅行にご一緒した気分が味わえました。私も一生に一度はシベリア鉄道でモスクワまで行ってみたいです。

    どうぞ素敵な新年をお迎えください!

    Emmy

    かちかち山たぬ吉

    かちかち山たぬ吉さん からの返信 2024/12/31 23:45:28
    Re: ありがとうございました!
    Emmy 様
    はい、壷焼きのペレメニ、美味しかったです。
    出来れば寒い時期に是非シベリア鉄道で・・・。
    私は77歳になりますので、人様の迷惑にならないよう自重しておきます。

    どうぞ良い年をお迎えください。
    風邪などひかれませんように。
    かちかち山たぬ吉

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