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《2023.March》あみんちゅぶらり東海歩く旅そのⅢ静岡~西伊豆観光前編~<br /><br />2日目の朝は目覚ましの音で目が覚めた。疲れが溜まっているのか、いつものように勢いで起きられない。おまけに外は雨、スイッチが入らない。とにかく着替えを済ませて食事に向かう。一階のレストランが食事場所となっているが、夜に見た車の多さの理由を知ることとなる。多くの宿泊客、様々な理由から多くの宿泊客とお食事処でバッティングすることはあるのだが、マスク着用が任意化されてからは初めてとなる。こういう場所だからかも知れないが、マスクを外している者が多い。バイキングの料理を取るトングは手袋をはめてということは徹底されてはいるものの、やはり連れと話をしながら料理を取る者も居るために良い気はしない。神経質になり過ぎだと言われるかも知れないが、感染防止のために約3年間マスク着用していたことを考えれば、政府が言ったからとて〝大丈夫〟と考えられないのは致し方ないことであろう。そんな環境ではいつものようにガッツリ食べたい気持ちはあれど、長居をしたくないことから〝適度〟にお腹が膨れればまあ良いか~という気持ちが勝り、お代わりなして席を立つ。<br /><br />一旦部屋に戻り荷物を作る。出発前にホテル外観の写真を撮りに行く。外は雨、おまけに結構降っている。そんな中で撮った写真は雨粒が写っているものもあった位だ。まあこの天候だとドライブ中心かな~と思いつつ部屋に戻り、階段や通路はなんとかならんのかと思いつつ荷物を車へと積み込んで出発する。<br /><br />夜はイルミネーション巡りと決まって入るが、昼間はノープランだ。取り敢えず近くのセブンイレブンに立ち寄ってひと息入れる。最初に土肥金山に行こうと考えていたが、最寄りにもう一ヶ所金山跡があるようなのでそちらを目指すことにした。龕附天正金鉱がその場所だ。観光地化された土肥金山に比べると地味な存在だが、ガイド付きの案内込みだということでポイントは高そうだ。駐車場に車を停めて事務所へと向かい、入山料800円を支払う。そのやり取りの中で〝お金かかりますが~〟的なことを言われてびっくりした。逆に当たり前でしょうと切り返したくなったが、無料の施設と勘違いしてくる者も居るのだろうかとこちらが気になった位であった。ガイドに付いてくれたのはかなりのお年のじいちゃんであった。腰が曲がってはいるが健脚で、足場が悪いのをものともせずに歩いて行く。元々この龕附天正金鉱は、他の金鉱のように〝鉱脈の枯渇〟で閉山した訳ではない。送風や排煙等物理的な理由により〝限界点〟とされた場所で掘削を止めたことが閉鉱の理由だそうだ。安土桃山時代から掘削が始まった金山は手堀で進められ、当時のノミの跡がくっきりと残っている。また残っているノミの跡が全て掘削のためではないということも興味深いところであった。<br /><br />坑道突き当たりには〝龕(がん)〟と呼ばれる場所で終わっている。龕とは仏像等を収めるずしのようなものを指す言葉だが、こちらの場合は金鉱を掘り進めるにあたり、多くの金銀の鉱脈を見つけるが、その場所が物理的な理由によって限界地点であったことと、それ以上掘り進めるのに祟りを恐れて、坑道一番奥の場所であるこの場所に龕を置いたことに起因する。すぐ隣の土肥金山は昭和時代に削岩機を用いて掘削していたようだが、龕附天正金鉱には昔のままのノミの跡が今日に残る。土肥金山と龕附天正金鉱のどちらが良いかという問いかけあるようだが実にナンセンスだと思う。龕附天正金鉱はそのままの状態を損ねないように手が加えられているに過ぎないものである。対して土肥金山は足元を舗装することにより誰でもが鉱山見学ができるようにしてあり、当時のものをジオラマで再現したり、掘削機の実物を展示したり等という〝博物館〟の如く作られている。見学して受ける印象は違うにしても、龕附天正金鉱に比べると土肥金山の方が幅広い年齢層が理解できる作りとなっているように私には思える。双方の違いを知るには実際に訪れてみて初めてわかることに違いない。そんな思いに駆られた龕附天正金鉱見学であった。<br /><br />見学を終え一旦車に戻ることにする。偉そうに龕附天正金鉱と土肥金山の違いを述べた私には、改めて土肥金山との違いを体験したく、すぐ近くの土肥金山も訪れることにする。土肥地区のナンバーワンの観光地だけあり、団体を含めて訪れている方の多さにちょっとびっくりする。アソビューで割引価格での事前購入の入場券を10%引きの900円で購入する。セコいかも知れないが、経費的なものは少しでも安くという習慣が身についてしまった。<br /><br />まず最初の中庭は特に何がある訳でもない。ただ桜の時期の週末に行われる〝ソメイヨシノライトアップ〟の会場になるばしょでもあり、たまたま訪れた3月25日がラッキーなことにその日に当てはまる。行程の進捗によっては立ち寄りたいと思いつつ歩いて行くが、金山坑道入口の上に連なる桜並木は、曇天で色はイマイチだが〝桜並木〟としての迫力は十分に持っていた。そして肝心の坑道内部であるが、掘削の時期によってエリアが分かれており、それぞれのエリアごとに当時の金を掘る様子が人形によってわかるようにされていた。故に大人ならばともかく子供にとってはわかりやすいものとなっており、龕附天正金鉱よりもビジュアル的にわかりやすいものとなっていた。順路も足元が舗装されているために歩き易く、脚力に自信がない方には寧ろお勧めではないかと私自身は感じたのであった。勿論土肥金山そのものは延長100km、深さ180m、面積37haに及ぶ広大なものであり、観光用に整備された行動はその一部にしか過ぎない。それでも時代の流れで掘削方法が変わったことなどは理解できるし、順路を歩くことだけで歴史の流れを体験できる施設であることには違いない。どちらが良いという訳ではなく、手軽さを取るかオリジナルを取るかというところではないかと私には思えた。<br /><br />ガイド付きではないため自分がどこまで知りたいかによって所要時間は変わると思う。私自身は〝時代の流れ〟を知りたかったのて凡そ30分程度で順路を通り抜けたが、それでも江戸時代に掘削が始まった時期から昭和40(1965)年の閉山に至るまでの掘削境内の変遷を知ることができて満足であった。<br /><br />坑道から出ると資料館である〝黄金館〟に向かうことになる。ここは世界最大の重さ250kgの〝金塊〟があることで知られている。令和5(2023)年4月25日の小売価格で言うならば1gあたり9,520円なので2,380,000,000円、つまり23億8,000万円となる。ジャンボ宝くじの前後賞合わせての当選金10億よりも高い・・・、庶民の私は瞬時に頭のメモリーがすっ飛んだ。金額も凄いのは確かだが、250kgは私4人分以上・・・そんな重さを素手で動かせる訳もない。虚しいだけの経験になるが実際に触ってみた。指に〝紙やすり〟を貼り付けておけば1g位は取れたのでは・・・なんて妄想を抱きながらその場所を離れるしかなかった。その隣には12.5kgの金塊があり、こちらは持ち上げる体験ができるようになっている。こちらは1億1900万円、米袋ひとつ+αであるが、盗難防止のために開けられている穴からは片手の前腕しか入れることができないようになっている。持ち上げられるかもと淡い期待を抱いたが、無理である。というよりも無理して力を入れて持ち上げようとすると手が攣ってしまう・・・。結局庶民には手の届かないものということで、悪いことは考えず素直にその場を立ち去る私であった。<br /><br />土肥金山にはその他〝砂金取り体験〟もできるようになっている。別料金が発生するが、子供達には人気のようである。ただ雑な性格の私には向かないのでスルーする。いつか夢の中でも良いから1kgの金塊が手元にある妄想を抱きながら・・・。<br /><br />最後にやって来たのが本館であり、食事やお土産物の購入等ができる場所となっている。地域振興券2,000円分があるのでお土産を購入した。売場へはリクエストがあった〝温泉まんじゅう〟、自宅へは〝金箔カステラ〟という定石のお土産品を選ぶのは、センスのない私らしい選択であった。<br /><br />そんな感じで土肥金山を周遊し車へと戻って来た。これからは南下ルートを辿るが、時間を見ながら走らないとまたイルミネーションに間に合わない可能性もあるために、時間を逆算しながら走ることにする。まず訪れた先は最福寺、曹洞宗のお寺だが〝サイフクジ〟と和名が付けられたしだれ桜の名所でもある。入口にはソメイヨシノが満開で期待が膨らむが、開花時期が少し遅いしだれ桜には少し早かったようだ。しかしつぼみはピンクで、開花すると白いピンポン球のような花が咲き、散る頃にはまたピンク色に戻るという〝変化〟は訪れた日でも確認することができ、その珍しさは目では確認することが出来た。残念ながら写真で切り取ると開花した花弁が曇天の空の色と同化してしまい、あまり映えていないことが残念であった。今回の伊豆旅では距離の読み間違いで訪れることが出来なかった場所があるために、再訪したいと考えている。伊豆エリアのイルミネーションは大抵3月末から8月迄行われている施設が多いので、それを調整しながらしだれ桜の開花に合わせて再訪したいと改めて感じた私であった。その他にもムラサキハナナがちょうど時期を迎えて咲いており、目立つ花ではないが境内一面に咲き乱れ、その存在感をアピールしていた。時間の都合で郷土歴史資料館である〝夢の実現堂〟にも立ち寄れなかったので、再訪を楽しみにしながら次の目的地を目指すことにした。<br /><br />走ること7分で到着したのは恋人岬。恋人岬というものは日本全国に存在するが、この西伊豆の恋人岬もそのひとつである。旧来より〝廻り崎〟という呼称で〝福太郎〟と〝およね〟伝説に纏わる〝恋人達の聖地〟となっており、その民話に基づく〝鐘〟を3回鳴らすと恋が叶うとされていた。その〝およね〟が立った場所とされる〝廻り崎〟の岬が昭和58(1983)年5月に〝恋人岬〟と改称され、その最先端にある3回鳴らす〝鐘〟が昭和59(1984)年10月に〝愛の鐘〟へと姿を変えて現在に至っている。また展望台から少し戻った場所にある姉妹提携記念の鐘 とめがね記念碑だが、この姉妹提携記念の鐘は〝金の鐘〟と呼ばれている。世界的に知られるグアムにある恋人岬と、土肥恋人岬が正式に姉妹提携を結んだことを祝して誕生した鐘であり、幸福をもたらす鐘とされている。ただ鳴らせば良い訳ではなく(1回目)自分の身を清め、(2回目)相手の心を呼び、(3回目)2人の愛を海に誓うの3ステップを踏まなければならない。それに加えて普段の行いが左右するという〝メガネ記念碑〟から富士山が望めること。この全てが叶うと恋も叶うと言われている。<br /><br />恋人岬駅名標と〝アイラブユー〟のハンドサインと共に写真を撮り、幸福地蔵尊に手を合わせ、ステラハウス横の〝恋愛願掛け絵馬〟を見ながら順路を歩いて行くと、〝手を繋ぐ道〟と称されるボードウォークのアップダウンを越えて先ずは展望台に辿り着く。そして愛の鐘〝ラブコールベル〟を鳴らしてから恋人像アモーレと写真を撮る。今来た道を戻り、途中姉妹提携記念の鐘 とめがね記念碑へと立ち寄り、3ステップを踏んで〝金の鐘〟を鳴らし、普段の行いを確かめるべく〝メガネ記念碑〟から富士山を眺め、ステラハウスで〝恋人宣言〟をする。今後のことをお互い確かめ合うことができるならば、有料の〝恋人宣言〟を宣言して、結婚式の際には祝電を頂くとまあ気の長くなるような過程を踏まなければならない。私のような飽き性で面倒くさがりには、こんなことを遂行できる自信もないしやる気もない。だからいつまで経っても独身のままだがそれも気楽で良いと思っている。そんな輩には〝ネタ作り〟にしかならない場所がここ恋人岬なのかも知れない。訪れたことでなにか変わるかとも思ってはいたが、やはり性分は変わることはなかった。まぁそれはそれで楽しめるならば訪れる価値はあるだろう。そんな思いを抱えながら雨で決して足場が良くない順路を往復して来た私であった。<br /><br />という訳でネタづくりのために訪れた恋人岬を後にして次の目的地を目指すことにする。途中セブンイレブン西伊豆賀茂店に立ち寄って一息入れ、昨日も訪れた黄金崎に到着した。<br /><br />ここは夕陽を浴びて岬全体が黄金色に輝く西伊豆の名所のひとつとして知られている。黄金色になる正体は、風化した安山岩が温泉水によって変質し黄褐色に変化した〝プロピライト〟と呼ばれる自然現象によるものだそうだ。昭和63(1988)年には静岡県の天然記念物指定を受けており、伊豆半島を代表するジオサイトとしても有名である。遊歩道や展望台、芝生の広場や休憩施設などが整備されており、富士プロピライト山と駿河湾の眺望も素晴らしいスポットである。また黄金崎海岸(根合海岸)は絶好のダイビングスポットでもあり、西風の吹かない限り一年中潜ることが出来、魚の種類が多くダイバーに人気のスポットにもなっている。海水浴場としての側面もあり、砂と小石が混ざった浜で透明度が高く磯遊びも楽しめる場所として、遊ぶに事欠かない観光地である。<br /><br />駐車場には展望台があり、天気さえ良ければ富士山を望むことができる。また一年を通して日没の場所や時間が凡そわかる案内板も置かれていた。その他にも三島由紀夫文学碑や航海王伊豆伊三郎像が建立され、休憩施設である〝こがねすと〟では西伊豆町ならではの自慢の逸品〝西伊豆自慢品〟が購入できる他、喫茶コーナーではケーキやソフトクリーム、西伊豆名産のところてんなどの軽食もとることができる等駐車場迄やって来るだけでも楽しめる場所となっている。<br /><br />また〝馬の頭〟そっくりの形をしている奇岩は〝馬ロック〟と呼ばれており、競馬の必勝祈願で立ち寄った方が大きく当てた等という噂もあり、こがねすとで販売されている〝馬ロック絵馬〟と共に〝競馬の神様〟として崇められているという。競馬をはじめ博打の類は勝てると思えない私には縁遠いもの。おまけにこの天気では夕陽は勿論プロピライトが夕陽に映える景色は期待できない。しかし来たからには一通り目を通したいという想いから、駐車場から一旦下がってから上る富士見の丘への遊歩道をてくてく歩く。どうやら奇岩群に手を加える量を最小限にしたためにこんなアップダウンのある遊歩道になったのだろうとは思うのだが、最近の運動不足の影響からかすぐに息が上がってしまう。それでもなんとか歩き切って富士見の丘へと到着する。天気が悪いので眺望はないが、ここであることに気付くこととなる。西伊豆の眺望を謳い文句にしている観光地に於ける展望台には〝富士見〟という名称が付けられている。日本全国でも〝富士見台〟とか〝富士見〟という地名があることから気にはしていなかったのだが、富士見=富士山が見えるという繋がりに気付いた私であった。<br /><br />そんな富士見の丘から雲が垂れ込む景色を眺めて下りてくる。帰りは道を変えて歩いてみたところ〝黄金神社〟なる鳥居と祠を見つけた。言い伝えによると、小石を拾ってお社に供えると願いごとが叶うらしい。小さなお願いならば聞いてもらえるかと、旅路の安全を祈念して参拝を済ませ、再び歩き始める。石切り場は築城石とも呼ばれる石を切り出して船で海を渡り、静岡の海岸で陸揚げされた後駿府城の石垣になったというものである。昭和に入ってからは道路工事やトンネル建設等に転用されたことから〝県道石〟と呼ばれたこともあるそうだ。<br /><br />今でも切り出した巨石が動いているようなdéjà vuを感じながら、駐車場へと戻って来た。三島由紀夫文学碑や伊豆伊三郎像等、地元所縁の記念碑の他に〝こがねすと〟と呼ばれる黄金崎公園休憩施設がある。西伊豆町ならではの自慢の逸品〝西伊豆自慢品〟が購入できるほか、喫茶コーナーではケーキやソフトクリーム、西伊豆名産のところてんなどの軽食もとることができる場所となっているようだ。お土産の類は一応購入しているので、時間の方を優先し先を急ぐことにした。<br /><br />しばらく進むと黄金崎駐車場が満杯の際に利用する〝根合駐車場〟がある。この時間では黄金崎公園駐車場が利用できるため、休憩に利用している者が多いようだ。この界隈も桜が綺麗に咲いており、斜面や道路沿いに咲く桜はなかなかの咲き具合を誇っている。昨晩訪れた場所もあるのだが、やはり明るい時と比較すると大きな違いを感じた。<br /><br />    《続く》

《2023.March》あみんちゅぶらり東海歩く旅そのⅢ静岡~西伊豆観光前編~

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2023/03/25 - 2023/03/25

54位(同エリア268件中)

たかちゃんティムちゃんはるおちゃん・ついでにおまけのまゆみはん。

たかちゃんティムちゃんはるおちゃん・ついでにおまけのまゆみはん。さん

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《2023.March》あみんちゅぶらり東海歩く旅そのⅢ静岡~西伊豆観光前編~

2日目の朝は目覚ましの音で目が覚めた。疲れが溜まっているのか、いつものように勢いで起きられない。おまけに外は雨、スイッチが入らない。とにかく着替えを済ませて食事に向かう。一階のレストランが食事場所となっているが、夜に見た車の多さの理由を知ることとなる。多くの宿泊客、様々な理由から多くの宿泊客とお食事処でバッティングすることはあるのだが、マスク着用が任意化されてからは初めてとなる。こういう場所だからかも知れないが、マスクを外している者が多い。バイキングの料理を取るトングは手袋をはめてということは徹底されてはいるものの、やはり連れと話をしながら料理を取る者も居るために良い気はしない。神経質になり過ぎだと言われるかも知れないが、感染防止のために約3年間マスク着用していたことを考えれば、政府が言ったからとて〝大丈夫〟と考えられないのは致し方ないことであろう。そんな環境ではいつものようにガッツリ食べたい気持ちはあれど、長居をしたくないことから〝適度〟にお腹が膨れればまあ良いか~という気持ちが勝り、お代わりなして席を立つ。

一旦部屋に戻り荷物を作る。出発前にホテル外観の写真を撮りに行く。外は雨、おまけに結構降っている。そんな中で撮った写真は雨粒が写っているものもあった位だ。まあこの天候だとドライブ中心かな~と思いつつ部屋に戻り、階段や通路はなんとかならんのかと思いつつ荷物を車へと積み込んで出発する。

夜はイルミネーション巡りと決まって入るが、昼間はノープランだ。取り敢えず近くのセブンイレブンに立ち寄ってひと息入れる。最初に土肥金山に行こうと考えていたが、最寄りにもう一ヶ所金山跡があるようなのでそちらを目指すことにした。龕附天正金鉱がその場所だ。観光地化された土肥金山に比べると地味な存在だが、ガイド付きの案内込みだということでポイントは高そうだ。駐車場に車を停めて事務所へと向かい、入山料800円を支払う。そのやり取りの中で〝お金かかりますが~〟的なことを言われてびっくりした。逆に当たり前でしょうと切り返したくなったが、無料の施設と勘違いしてくる者も居るのだろうかとこちらが気になった位であった。ガイドに付いてくれたのはかなりのお年のじいちゃんであった。腰が曲がってはいるが健脚で、足場が悪いのをものともせずに歩いて行く。元々この龕附天正金鉱は、他の金鉱のように〝鉱脈の枯渇〟で閉山した訳ではない。送風や排煙等物理的な理由により〝限界点〟とされた場所で掘削を止めたことが閉鉱の理由だそうだ。安土桃山時代から掘削が始まった金山は手堀で進められ、当時のノミの跡がくっきりと残っている。また残っているノミの跡が全て掘削のためではないということも興味深いところであった。

坑道突き当たりには〝龕(がん)〟と呼ばれる場所で終わっている。龕とは仏像等を収めるずしのようなものを指す言葉だが、こちらの場合は金鉱を掘り進めるにあたり、多くの金銀の鉱脈を見つけるが、その場所が物理的な理由によって限界地点であったことと、それ以上掘り進めるのに祟りを恐れて、坑道一番奥の場所であるこの場所に龕を置いたことに起因する。すぐ隣の土肥金山は昭和時代に削岩機を用いて掘削していたようだが、龕附天正金鉱には昔のままのノミの跡が今日に残る。土肥金山と龕附天正金鉱のどちらが良いかという問いかけあるようだが実にナンセンスだと思う。龕附天正金鉱はそのままの状態を損ねないように手が加えられているに過ぎないものである。対して土肥金山は足元を舗装することにより誰でもが鉱山見学ができるようにしてあり、当時のものをジオラマで再現したり、掘削機の実物を展示したり等という〝博物館〟の如く作られている。見学して受ける印象は違うにしても、龕附天正金鉱に比べると土肥金山の方が幅広い年齢層が理解できる作りとなっているように私には思える。双方の違いを知るには実際に訪れてみて初めてわかることに違いない。そんな思いに駆られた龕附天正金鉱見学であった。

見学を終え一旦車に戻ることにする。偉そうに龕附天正金鉱と土肥金山の違いを述べた私には、改めて土肥金山との違いを体験したく、すぐ近くの土肥金山も訪れることにする。土肥地区のナンバーワンの観光地だけあり、団体を含めて訪れている方の多さにちょっとびっくりする。アソビューで割引価格での事前購入の入場券を10%引きの900円で購入する。セコいかも知れないが、経費的なものは少しでも安くという習慣が身についてしまった。

まず最初の中庭は特に何がある訳でもない。ただ桜の時期の週末に行われる〝ソメイヨシノライトアップ〟の会場になるばしょでもあり、たまたま訪れた3月25日がラッキーなことにその日に当てはまる。行程の進捗によっては立ち寄りたいと思いつつ歩いて行くが、金山坑道入口の上に連なる桜並木は、曇天で色はイマイチだが〝桜並木〟としての迫力は十分に持っていた。そして肝心の坑道内部であるが、掘削の時期によってエリアが分かれており、それぞれのエリアごとに当時の金を掘る様子が人形によってわかるようにされていた。故に大人ならばともかく子供にとってはわかりやすいものとなっており、龕附天正金鉱よりもビジュアル的にわかりやすいものとなっていた。順路も足元が舗装されているために歩き易く、脚力に自信がない方には寧ろお勧めではないかと私自身は感じたのであった。勿論土肥金山そのものは延長100km、深さ180m、面積37haに及ぶ広大なものであり、観光用に整備された行動はその一部にしか過ぎない。それでも時代の流れで掘削方法が変わったことなどは理解できるし、順路を歩くことだけで歴史の流れを体験できる施設であることには違いない。どちらが良いという訳ではなく、手軽さを取るかオリジナルを取るかというところではないかと私には思えた。

ガイド付きではないため自分がどこまで知りたいかによって所要時間は変わると思う。私自身は〝時代の流れ〟を知りたかったのて凡そ30分程度で順路を通り抜けたが、それでも江戸時代に掘削が始まった時期から昭和40(1965)年の閉山に至るまでの掘削境内の変遷を知ることができて満足であった。

坑道から出ると資料館である〝黄金館〟に向かうことになる。ここは世界最大の重さ250kgの〝金塊〟があることで知られている。令和5(2023)年4月25日の小売価格で言うならば1gあたり9,520円なので2,380,000,000円、つまり23億8,000万円となる。ジャンボ宝くじの前後賞合わせての当選金10億よりも高い・・・、庶民の私は瞬時に頭のメモリーがすっ飛んだ。金額も凄いのは確かだが、250kgは私4人分以上・・・そんな重さを素手で動かせる訳もない。虚しいだけの経験になるが実際に触ってみた。指に〝紙やすり〟を貼り付けておけば1g位は取れたのでは・・・なんて妄想を抱きながらその場所を離れるしかなかった。その隣には12.5kgの金塊があり、こちらは持ち上げる体験ができるようになっている。こちらは1億1900万円、米袋ひとつ+αであるが、盗難防止のために開けられている穴からは片手の前腕しか入れることができないようになっている。持ち上げられるかもと淡い期待を抱いたが、無理である。というよりも無理して力を入れて持ち上げようとすると手が攣ってしまう・・・。結局庶民には手の届かないものということで、悪いことは考えず素直にその場を立ち去る私であった。

土肥金山にはその他〝砂金取り体験〟もできるようになっている。別料金が発生するが、子供達には人気のようである。ただ雑な性格の私には向かないのでスルーする。いつか夢の中でも良いから1kgの金塊が手元にある妄想を抱きながら・・・。

最後にやって来たのが本館であり、食事やお土産物の購入等ができる場所となっている。地域振興券2,000円分があるのでお土産を購入した。売場へはリクエストがあった〝温泉まんじゅう〟、自宅へは〝金箔カステラ〟という定石のお土産品を選ぶのは、センスのない私らしい選択であった。

そんな感じで土肥金山を周遊し車へと戻って来た。これからは南下ルートを辿るが、時間を見ながら走らないとまたイルミネーションに間に合わない可能性もあるために、時間を逆算しながら走ることにする。まず訪れた先は最福寺、曹洞宗のお寺だが〝サイフクジ〟と和名が付けられたしだれ桜の名所でもある。入口にはソメイヨシノが満開で期待が膨らむが、開花時期が少し遅いしだれ桜には少し早かったようだ。しかしつぼみはピンクで、開花すると白いピンポン球のような花が咲き、散る頃にはまたピンク色に戻るという〝変化〟は訪れた日でも確認することができ、その珍しさは目では確認することが出来た。残念ながら写真で切り取ると開花した花弁が曇天の空の色と同化してしまい、あまり映えていないことが残念であった。今回の伊豆旅では距離の読み間違いで訪れることが出来なかった場所があるために、再訪したいと考えている。伊豆エリアのイルミネーションは大抵3月末から8月迄行われている施設が多いので、それを調整しながらしだれ桜の開花に合わせて再訪したいと改めて感じた私であった。その他にもムラサキハナナがちょうど時期を迎えて咲いており、目立つ花ではないが境内一面に咲き乱れ、その存在感をアピールしていた。時間の都合で郷土歴史資料館である〝夢の実現堂〟にも立ち寄れなかったので、再訪を楽しみにしながら次の目的地を目指すことにした。

走ること7分で到着したのは恋人岬。恋人岬というものは日本全国に存在するが、この西伊豆の恋人岬もそのひとつである。旧来より〝廻り崎〟という呼称で〝福太郎〟と〝およね〟伝説に纏わる〝恋人達の聖地〟となっており、その民話に基づく〝鐘〟を3回鳴らすと恋が叶うとされていた。その〝およね〟が立った場所とされる〝廻り崎〟の岬が昭和58(1983)年5月に〝恋人岬〟と改称され、その最先端にある3回鳴らす〝鐘〟が昭和59(1984)年10月に〝愛の鐘〟へと姿を変えて現在に至っている。また展望台から少し戻った場所にある姉妹提携記念の鐘 とめがね記念碑だが、この姉妹提携記念の鐘は〝金の鐘〟と呼ばれている。世界的に知られるグアムにある恋人岬と、土肥恋人岬が正式に姉妹提携を結んだことを祝して誕生した鐘であり、幸福をもたらす鐘とされている。ただ鳴らせば良い訳ではなく(1回目)自分の身を清め、(2回目)相手の心を呼び、(3回目)2人の愛を海に誓うの3ステップを踏まなければならない。それに加えて普段の行いが左右するという〝メガネ記念碑〟から富士山が望めること。この全てが叶うと恋も叶うと言われている。

恋人岬駅名標と〝アイラブユー〟のハンドサインと共に写真を撮り、幸福地蔵尊に手を合わせ、ステラハウス横の〝恋愛願掛け絵馬〟を見ながら順路を歩いて行くと、〝手を繋ぐ道〟と称されるボードウォークのアップダウンを越えて先ずは展望台に辿り着く。そして愛の鐘〝ラブコールベル〟を鳴らしてから恋人像アモーレと写真を撮る。今来た道を戻り、途中姉妹提携記念の鐘 とめがね記念碑へと立ち寄り、3ステップを踏んで〝金の鐘〟を鳴らし、普段の行いを確かめるべく〝メガネ記念碑〟から富士山を眺め、ステラハウスで〝恋人宣言〟をする。今後のことをお互い確かめ合うことができるならば、有料の〝恋人宣言〟を宣言して、結婚式の際には祝電を頂くとまあ気の長くなるような過程を踏まなければならない。私のような飽き性で面倒くさがりには、こんなことを遂行できる自信もないしやる気もない。だからいつまで経っても独身のままだがそれも気楽で良いと思っている。そんな輩には〝ネタ作り〟にしかならない場所がここ恋人岬なのかも知れない。訪れたことでなにか変わるかとも思ってはいたが、やはり性分は変わることはなかった。まぁそれはそれで楽しめるならば訪れる価値はあるだろう。そんな思いを抱えながら雨で決して足場が良くない順路を往復して来た私であった。

という訳でネタづくりのために訪れた恋人岬を後にして次の目的地を目指すことにする。途中セブンイレブン西伊豆賀茂店に立ち寄って一息入れ、昨日も訪れた黄金崎に到着した。

ここは夕陽を浴びて岬全体が黄金色に輝く西伊豆の名所のひとつとして知られている。黄金色になる正体は、風化した安山岩が温泉水によって変質し黄褐色に変化した〝プロピライト〟と呼ばれる自然現象によるものだそうだ。昭和63(1988)年には静岡県の天然記念物指定を受けており、伊豆半島を代表するジオサイトとしても有名である。遊歩道や展望台、芝生の広場や休憩施設などが整備されており、富士プロピライト山と駿河湾の眺望も素晴らしいスポットである。また黄金崎海岸(根合海岸)は絶好のダイビングスポットでもあり、西風の吹かない限り一年中潜ることが出来、魚の種類が多くダイバーに人気のスポットにもなっている。海水浴場としての側面もあり、砂と小石が混ざった浜で透明度が高く磯遊びも楽しめる場所として、遊ぶに事欠かない観光地である。

駐車場には展望台があり、天気さえ良ければ富士山を望むことができる。また一年を通して日没の場所や時間が凡そわかる案内板も置かれていた。その他にも三島由紀夫文学碑や航海王伊豆伊三郎像が建立され、休憩施設である〝こがねすと〟では西伊豆町ならではの自慢の逸品〝西伊豆自慢品〟が購入できる他、喫茶コーナーではケーキやソフトクリーム、西伊豆名産のところてんなどの軽食もとることができる等駐車場迄やって来るだけでも楽しめる場所となっている。

また〝馬の頭〟そっくりの形をしている奇岩は〝馬ロック〟と呼ばれており、競馬の必勝祈願で立ち寄った方が大きく当てた等という噂もあり、こがねすとで販売されている〝馬ロック絵馬〟と共に〝競馬の神様〟として崇められているという。競馬をはじめ博打の類は勝てると思えない私には縁遠いもの。おまけにこの天気では夕陽は勿論プロピライトが夕陽に映える景色は期待できない。しかし来たからには一通り目を通したいという想いから、駐車場から一旦下がってから上る富士見の丘への遊歩道をてくてく歩く。どうやら奇岩群に手を加える量を最小限にしたためにこんなアップダウンのある遊歩道になったのだろうとは思うのだが、最近の運動不足の影響からかすぐに息が上がってしまう。それでもなんとか歩き切って富士見の丘へと到着する。天気が悪いので眺望はないが、ここであることに気付くこととなる。西伊豆の眺望を謳い文句にしている観光地に於ける展望台には〝富士見〟という名称が付けられている。日本全国でも〝富士見台〟とか〝富士見〟という地名があることから気にはしていなかったのだが、富士見=富士山が見えるという繋がりに気付いた私であった。

そんな富士見の丘から雲が垂れ込む景色を眺めて下りてくる。帰りは道を変えて歩いてみたところ〝黄金神社〟なる鳥居と祠を見つけた。言い伝えによると、小石を拾ってお社に供えると願いごとが叶うらしい。小さなお願いならば聞いてもらえるかと、旅路の安全を祈念して参拝を済ませ、再び歩き始める。石切り場は築城石とも呼ばれる石を切り出して船で海を渡り、静岡の海岸で陸揚げされた後駿府城の石垣になったというものである。昭和に入ってからは道路工事やトンネル建設等に転用されたことから〝県道石〟と呼ばれたこともあるそうだ。

今でも切り出した巨石が動いているようなdéjà vuを感じながら、駐車場へと戻って来た。三島由紀夫文学碑や伊豆伊三郎像等、地元所縁の記念碑の他に〝こがねすと〟と呼ばれる黄金崎公園休憩施設がある。西伊豆町ならではの自慢の逸品〝西伊豆自慢品〟が購入できるほか、喫茶コーナーではケーキやソフトクリーム、西伊豆名産のところてんなどの軽食もとることができる場所となっているようだ。お土産の類は一応購入しているので、時間の方を優先し先を急ぐことにした。

しばらく進むと黄金崎駐車場が満杯の際に利用する〝根合駐車場〟がある。この時間では黄金崎公園駐車場が利用できるため、休憩に利用している者が多いようだ。この界隈も桜が綺麗に咲いており、斜面や道路沿いに咲く桜はなかなかの咲き具合を誇っている。昨晩訪れた場所もあるのだが、やはり明るい時と比較すると大きな違いを感じた。

    《続く》

旅行の満足度
5.0
観光
5.0
ホテル
5.0
グルメ
5.0
ショッピング
5.0
交通
5.0
同行者
一人旅
一人あたり費用
3万円 - 5万円
交通手段
レンタカー 新幹線 JRローカル 自家用車 徒歩
旅行の手配内容
ツアー(添乗員同行なし)
利用旅行会社
JTB
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