1978/08/11 - 1978/08/19
514位(同エリア788件中)
おくさん
自転車の旅 山陰編(2)
自転車の旅3日目、舞鶴教会の畳の部屋で目覚める。
- 旅行の満足度
- 4.5
- 同行者
- 一人旅
- 一人あたり費用
- 3万円 - 5万円
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6時のミサに与ってから神父さんにお礼を言って7時に教会を出発する。お世話になったリグリアン・ホールの前でパチリ。リグリアンって何の意味なのかも知らずに当時からずっと名前だけは覚えていたけどどんな意味だったんだろう?と言うことで、ネットで何でも調べられる現代でやっとその意味を知る。リグリアンは英語で地理のことらしい。えーと、地理ホールじゃ変だから、地域のためのホールってことでいいんかな。それなら意味として辻褄が合う。40年以上も経ってやっと意味が分かったという間抜け。
朝食は途中でパンを買って手軽に済ます。ひと山越して、8時50分、日本三景のひとつ天の橋立に到着。えーと、天の橋立ってのは確か山の上から見下ろして全容を見ないことには話にならないらしいから、案内板に従って見物場所を探してみる。どうもこっからは湾を隔てた反対側にある山頂の公園から見ればいいらしいので、対岸の山頂を目指すことにする。
天の橋立というのは、宮津湾を狭い陸地が横切ってしまっている構造で、その天の橋立の中を歩くことも出来るらしい。来るまで知らなかったが、有名な天の橋立の中を歩けるとは記念になりめっけもんだ。 -
天の橋立のこっち側の端には、湾と外海を船が行き来できるように橋が回転するようになっていた。調度、運良く橋の回転が始まったので写真に撮っておく。ええモンが見られた。
良く写真で見る天橋立は、松だけが辛くも植わっているような凄く狭い所と思っていたが、実際に来てみると車が走ることもできそうな道が松林の中を続いている。勿論、車両は通行止めだから、通れるのは歩行者と私みたいな自転車だけだ。ラッキーラッキー。
意外に広い天の橋立は、松林は勿論、途中に海水浴場や曾我兄弟の記念碑まであり細長い公園のようだった。途中には小さな店まで商売している。天橋立の意外すぎる面を見られて良かった。 -
反対側にたどり着くと、山頂の公園まではリフトで往復できるようになっていて、それで上まで運んで貰うとやっと写真で見るのと同じ天の橋立の景色にお目にかかれる。
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石の台に乗って有名な股覗きなるものをやってみたが、どこがいいんだか分からない?この石の上に乗って股の間から顔を出すと平衡感覚が失われそうな危険を感じた。きっとバランスを崩して落っこちて怪我する観光客が年間何十人もいるに違いない。ちょっと危険だね、年寄りはやらない方が身のためだ。
11時過ぎ、天橋立を後に、焼けてきたアスファルトの上を走り出す。もうカンカン照りだ。1時間走り昼飯にする。暑いときには熱いカレーだ。かき氷もおまけにつける。食べる前には洗面所で顔を洗うのが習慣になっていて、備え付けのシャボネットや石鹸で首筋や腕をまくって肩の辺りまで洗うとかなりサッパリして気持ちがいい。引き替えにシャツが濡れるくらいは朝飯前だ。キチンとした洗面所が備わっている食堂ではやらない手はない。そしたらこの洗面所はよっぽどキチンとしているらしく、電気カミソリまで置いてある。何であるのか分からなかったが、チャンスに後ろ髪はないというのですぐさま借用してヒゲを剃っておく。カミソリも荷物になるから持ち歩かないことにしているのだ。いつもより更にサッパリした所で楽しいお昼にする。
それにしてもあの電気カミソリは客に使って貰うためにあそこにある訳ないだろな。きっと従業員が使って仕舞い忘れたんだろうと想像する。でもお陰で自分もヒゲが剃れたので幸運だった。 -
真夏の走行は暑い暑い。一時間も走ると茹だって嫌んなるから、どこか日陰はないかなーと捜しながらの走行となる。田舎の通りにあった古い学校の校舎脇に格好の日陰があったので休んでいくことにする。そしたらここは竹林を抜けてくる風の通り道になっていて大変とっても抜群に涼しい極上のお休み所だった。更に良いことに近くに水道まであるので水も補給できるし頭に被ることもできる。これ以上はないような最高の休憩場所だ。名所でもなんでもないが、あまりの好環境につい記念写真を撮っておく。こんないい所だとずっと居たくなってしまうが、そうもしてらんない。30分涼んででまたカンカン照りの中に戻る。
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4時半、兵庫県の看板を発見。寂しい田舎道の先に、小高い丘があって突然山登りが始まる。もの凄い急坂になっているので自転車を漕いで登るのは無理だ。ホントに凄い勾配で、一般道でこんな急勾配が許されるんだろうかと考え込んでしまいそうな急坂だった。半端な乗用車じゃ絶対に登り切れないと思う。
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5時、丸山川が日本海に注ぐ河口に掛かる大きな橋を渡り城之崎温泉街に入る。城之崎温泉は川が街の中を流れていて、その両側には柳が並び、それを旅館街が囲んでいるという、とてもしっとりとしたいかにも山陰といった風情のある温泉だった。夢千代日記に出てきそう。
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ここは外湯というのが有名で、旅館の泊まり客も入場券を貰って外の銭湯に入りに行くのだそうだ。私は旅館には泊まらないけど、7軒ある銭湯の内の地蔵湯というのに入ってみる。150円。ついでに洗濯もしちゃうので1時間ほど中に居座る。風呂上がりには懐かしいコーヒー牛乳。
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通りの自販機で缶ビールを買い、近くの水門の上に上がって湯上がりの晩酌と洒落込む。肴は持参のでんろく豆だ。心地よい川風で気持ちいい。とても気分が良いので1本じゃ足りなくなったので、酒屋にもう1本500mlを買いに走る。また水門の上に戻って飲み続ける。ついでにほろ酔い気分のまま、この上で泊まってしまえば世話ないのだが、寝てしまうにはまだ時間も早いので7時過ぎに水門を離れる。野宿の悲しさで、まだ人の行き交う時間帯には寝ることはできないのだ。
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薄暗くなった川沿いを海に向かって走っていく。但馬有料道路の料金所でお金を払おうとしたら自転車は無料とのこと。何かひどく得した気分になるが通行券は欲しかったな。しかしこの道はアップダウンが激しく、とんだ計算違いだったと気づく。地図上では道路は海岸線を走っているように見えたので、ちょっと甘く見ていた。こんな道じゃぁ次の町まで幾ら掛かるか予測が付かない。水門に泊まった方がよかったかなぁと悔やんでしまう。それでも一時間ほど走っていると、道路からちょっと入ったところに竹野という小さな駅があったので、ここに隣接したバス停で寝ることにする。駅は野宿者の強い味方。
本日の走行距離、130キロ。 -
自転車の旅4日目。8月14日、竹野駅でボーっと迎える朝。
5時に起床。一晩中蚊がうるさくて良く眠れんかった。駅の自販機でリンゴジュースを飲む。こんな田舎の小さな駅では立ち食いソバが有るわけないしあっても時間が早すぎる。まわりには店の一軒もないのでさっさと出発しよう。何もする事がないんだから涼しい朝の内に距離を稼いでおいた方がお得だ、その分、暑い日中に余分に休めるってものだ。
走り出して少しすると、朝もやの中、向こうの低い山から朝日が顔を覗かせてきた。幻想的ないいムードなので写真を撮っておく。でもこの手の写真はカメラも腕もイマイチどころではないので、実際に見たように撮れた試しがない。なので見せられるような写真が撮れませんでした。
小さな漁師町の、これまた小さな何でも屋で500ミリの牛乳パックと菓子パンを2個、それと肉の缶詰を仕入れて景色のいい所で朝飯にする。こういう食事が一番旅らしくて好きだ。おまけに安上がりだし。でも毎度毎度じゃやっぱり味気ないかな、菓子パンも牛乳も日本中どこで食べても同じ味だ。 -
どこでもそうだが、海岸沿いの道というのは小さな上り下りを休む間もないほど延々と繰り返している。この178号も同じで、登ったり下ったり、山の中に入ってったり海に出たりを繰り返しているので飽きることがない。と、突然目の前がパッと開けた。切り立った左右の崖の間が500メートルはあろうか、その間を繋ぐ大鉄橋が現れたのだ。その鉄橋の長い橋桁の向こうには水平線が見える。なんつう光景なんだろう、まるでシンドバッドの世界のようだ。鉄橋は地上からの高さだって、100mは有ろうかと思われるスケールの大きさに圧倒される。あっと驚く為五郎~(古っ)。
これが日本一の鉄道用鉄橋「余部鉄橋」だ。こんな凄い鉄橋を実際に電車が渡る光景が見たいもんだなーなんて思ってたら、何て運がいいんでしょう、右の崖から電車がコトコトと渡り始めた。マッチ箱のような電車が、おどおどしながらとんでもない高さの鉄橋を渡る光景は、何かとても恐ろしい物を見ている気がする(数年後、強風にあおられた電車が本当にこの鉄橋から落ちてしまったんだからホントに恐ろしい光景なのだ)。
まるで恐怖の綱渡りをするかのようにして渡り終えた電車は、左の崖の上で止まってしまった。おぃおぃまだそこは鉄橋の上で怖い所なんですけどー、今にも落っこちてしまいそうだよ。と思ったら、あんな所に駅があったのか。マッチ箱から黒ごまみたいな人間が出てきて乗り降りしているのがかすかに見える。いやはや凄いモンを見せて貰った。
田舎の国道を呑気に走っていると、前方に大渋滞の道路が見えてくる。地図によると、どうやら2日間走らせて貰った178号はここが終点らしい。交差点で国道9号に乗り換え、大渋滞の車の脇を小気味よく走り抜ける。ふふふーん、どんなもんだいな気分だ。 -
炎天下の午後1時、有名な鳥取砂丘に到着。車が渋滞している横をスイスイと通れるのはいいが、路面は焼けただれているので下からの熱気が凄い暑さだ。砂丘見物の場所にドライブインがあったので、そこに自転車を置いて徒歩で鳥取砂丘を見物しに行く。砂丘の入り口に何とラクダが居た。月の砂漠か!?一緒に撮影してナンボという商売らしいが、誰も客になり手がない。しらばっくれて砂丘をバックにラクダを撮ってみたいが、気が引けるので止めておく。
砂丘は駐車場から見渡すとそれ程でもなかったが、実際に中に入って歩き回ってみると大したスケールだった。一番海側に行ってみると、そこから先は崖っぷちになっていて100m位の高さでえぐり取られた砂の断崖がはるか彼方まで続いている。きっと鳥取砂丘と言う物は、強い海風に巻き上げられた砂が長い年月の間にこうして積み上がったんだろうなと想像した。(100mと言うのはさっきの余部鉄橋と同じで実際にはもっと少ないのだろけど見た感じが)
砂丘内にもでっかい丘があって、下から見上げるとゴクッと息を飲むような巨大な砂の崖になっている。あれが崩れると3階建てのビルくらいペロッと飲み込んでしまいそうだな。怖くて近くに行く気がしないぞ。
さっきの鉄橋もそうだし、山陰てのはシンドバッドの世界が多いような気がする。地元の群馬あたりには無い光景がいっぱい。やっぱりこういう観光地へ来たら、離れた所から眺めただけでハイ行きましたじゃなくて、実際に中に入ったり触ったりして体験しなくちゃ嘘だと実感する。 -
上の写真は何の変哲もない風景ですが、まるで高速道路に紛れ込んだような立派な道路だったので撮ってみました。でもあとで見ると何てことない写真でした。
その後も灼熱の太陽の下を西へ西へと走り続け、4時に遅い昼飯にする。毎回いい加減な時間に食事をとっているが、今回はチト度を超した遅さだ。でも、途中、果物の缶詰を食べたのでついダラダラと走り続けてしまった。その影響で夕飯は9時半。もう夕飯じゃなくて夜食だ。昼もラーメン、夜もラーメン。走っていると道筋にラーメン屋多し。
米子駅という道路標示があったので今夜の宿候補にどうかなと、国道を離れて駅の方へ曲がっていく。着いてみたらビルのような駅でとても人が寝られそうな駅ではない。こういう大きな駅は最終電車が出た途端に待合室の人間を追ん出す公算が大きいので、一夜の宿をと期待して待っていると馬鹿を見る。なので駅構内の様子も見ずに元来た9号へ引き返す。 -
11時半、閑静な場所に手頃な歩道橋があったので自転車ごと上り寝ることにする。この時間にわざわざ歩道橋を渡る人はいないだろう。持参の新聞紙を敷いた上に寝袋を並べておやすみなさい。
(写真は翌朝に撮ったものです)
本日の走行距離、116キロ
自転車の旅 山陰編(3)へ続く
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