2015/05/03 - 2015/05/03
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モボ101さん
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北ドイツの主要都市ハノーファー。日本ではハノーバーとも呼ばれるこの街の郊外、ちょっと不便なところにあるハノーファートラム博物館。ドイツの各都市のみならず、ヨーロッパの周辺国のトラムが収集され、標準軌の車両の多くは動態保存車。博物館の開館日には広い構内と、外部の畑の中に延びる専用線を走る歴史的なトラムに乗車することができます。
日本では、広島電鉄がハノーファー市から寄贈され、現役で活躍中の2軸の路面電車238号がおなじみですが、ドイツ鉄道DBのハノーファー中央駅の前を横切るトラムは、このイメージとはほど遠い両運転台、両側ドアにステップ付きの高床3車体連節車の2本併結。
広電238号も一時期所属していたらしいトラム博物館が市の南東郊外にあり、3月末から10月末までの毎週日曜日に開館しているというので、2015年のゴールデンウイークに訪問することに。
- 旅行の満足度
- 4.0
- 観光
- 4.0
- 交通
- 4.0
- 同行者
- 一人旅
- 一人あたり費用
- 15万円 - 20万円
- 交通手段
- 鉄道 高速・路線バス
- 旅行の手配内容
- 個別手配
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トラム博物館のホームページに掲載されている行き方では、ハノーファー中央駅から1系統のトラムで Gleidingen まで行き390系統のバスに乗り換え Wehmingen 下車とあるものの、駅前にあるトラムの案内所でもらった路線図には、乗換駅も390系統のバス路線も載っていない。
もう一度案内所に戻って尋ねると、どうやら路線図の範囲外らしく6系統のトラムで Kronsberg まで行き、330系統のバスに乗り換える別のルートを教えてもらいます。6系統のトラムは地上の駅前電停ではなく、中央駅の先にあるUバーンの地下駅から乗車。 -
Kronsberg は路線図に掲載されているものの、バスを下りる停留所の Wehmingen は図の外なので運転士に言っておくようにとのこと。路線図の外は Umland(周辺の田園地帯)ゾーンとなるらしく、このゾーンまでの運賃の切符を買えば、1枚でトラムからバスに乗り継げます。
トラムはすぐに地上に出て専用軌道を快走し、15分弱で乗換駅に到着。 -
踏切のところにバス停を発見。330系統の時刻表を見ると、何と1時間間隔。それでも20分待ちで次のバスが来るのでやれやれ。日曜日のところに何か注釈が書いてあるので Google で翻訳すると、何名か以上で乗るときは事前の連絡が必要だとか。
時間どおりにバス停に横付けしたのは、フロントガラスの内部に系統番号の330と行き先を紙で表示したワゴン車。乗客の少ない日曜日はタクシー代行になるので乗車定員わずか8名。まとまった人数が乗るときは事前の連絡が必要な理由がわかりました。 -
運転士にトラム博物館に行きたいと伝えると、バス代行タクシーは野を越え森を抜けて15分。ここまで、乗客は私一人だけ。畑の中に住宅のまとまっているところで停まり、運転士が横の道を真っ直ぐ入っていけと教えてくれます。馬も通る桜並木の石畳。
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本当に、こんな道の先にトラム博物館があるのかと心配になったけど、畑の遙か向こうを走る1台の電車を発見。広島電鉄のハノーファー車とそっくりだ!
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バス停から5分程で赤煉瓦の博物館に到着。ハノーファートラム博物館は、300両以上の車両を保有していたドイツトラム博物館が破産したあとを受けて、1987年に設立したボランティアで運営する組織です。
旧西ドイツを中心に一部旧東ドイツや周辺国の各都市のトラムや事業用の車両を補修して50両余りを展示し、多くは動態保存として鉱山の跡地を活用した構内や、外部の畑の中の標準軌の線路を使って運行しているのだとか。 -
切符を買って入場すると、トラムファンや家族連れでそこそこ賑わっています。新しい車庫の屋根の下、外部につながる線路上に停まっている車両が動態保存車のようで、空いたスペースはこの日運転されている4両をはじめ、外に出ている車両の保管場所でしょう。
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博物館の入場料には動態保存車による運転の1回の乗車が含まれていて、2回目からは別途料金が必要とか。どれに乗ろうかなと見回して、一番古そうな黄色に決めます。
https://www.youtube.com/embed/o7PD9r272xs
乗車した黄色い2軸車は、西ベルリン市電の5964号でした。動態保存車の運転の様子を動画でご覧ください。 -
この日運行していた4両をご紹介します。大きな方向幕が特徴のオランダの首都アムステルダムの902号。1948年製で、日本の同時代、終戦直後の路面電車に比べるとずいぶんスマートです。3軸車で、動軸は前後の2軸、中央扉の下に車輪径の小さな付随軸を備えています。
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アムステルダムの902号の車内。
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2車体で2台車の連節車は、ブレーメンの3533号。同型の連接車を牽引するためか、240kWは路面電車としては大出力。
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1976年製と新しく、車内も近代的。
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黄色い2軸車は西ベルリン市電の5964号。正面が1枚窓のように見えますが、3枚に別れています。1924年製で、西ベルリンのトラム路線の廃止による1967年の廃車後はカールスルーエで再起し、1974年まで走ったとか。
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シートは革張りでしょうか、木のベンチが多いこの時代の車両の中で豪華版です。
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広島電鉄のハノーファー市電238号によく似た389号は、デュッセルドルフの2軸車。戦後に大量生産された西ドイツ2軸車の標準型で、広電と同じくメーカーはデュッセルドルフのデュワグ。こちらの方が1年新しい1951年製、ヘッドライトが1灯で、広電のハノーファー車の縦に2灯と異なっています。
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旧鉱山の施設だったのでしょうか、古い煉瓦造りの建物の中に馬車軌道の時代の客車が展示されています。メーターゲージの車両は、この幅の線路がないため、床に直接置かれています。静態保存でしょう。
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ハンブルクのメーターゲージの1号は1912年製。両側にオープンデッキがあるのに客室への出入り口は片側だけ。出力2馬力とあるので、二頭立てだったのでしょう。
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1号の車内はロングシート。窓は、上に持ち上げるように内側に開きます。こんな開け方初めて見ました。
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オープン車体でメーターゲージのハイデルベルク馬車軌道の客車6号は1891年製。こちらの方が大型ですが、同じく二頭立てのようです。
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南ドイツ、ロイトリンゲンのメーターゲージの2軸車、21号は1912年製で出力60kW。
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ロイトリンゲンの21号の車内は木製のボックスシート。
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クラシックなスタイル、フライブルクのメーターゲージの2軸車32号は1909年製。
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車内は木製のロングシート。
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ドイツやフランスと国境を接するスイスのバーゼル。メーターゲージの2軸車160号は1920年製。
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シートは木製ですが、車端部を除き転換式クロスシート。車内の屋根の形状がユニークですね。
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スイスヌーシャテルのクラシックなメーターゲージのボギー車、46号は1902年製。
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方向幕にマンハイムと表示した馬ヅラの電車は、マンハイムやハイデルベルクに路線を有するOEGの27号と28号の2両編成。1928年製の高床車で、ステップ付きのドアは車体中央に1個所だけ。
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板台車枠のユニークな台車を履いていますが、コイルバネの枕バネは後年の改造でしょうか。
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ここからは標準軌の車両で、多くが動態保存と思われます。青とグレーの2軸車469号は、1929年製のオランダアムステルダム市電で出力110kW。
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連結している2軸の付随車757号は1916年製。側窓は固定で、その上にベンチレータがあるだけ。夏の車内は熱がこもって暑そう。
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2軸の830号は1929年製のオランダデンハーグ市電で出力86kW。
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連結したボギー台車を履いた付随車756号も1929年製でほぼ同型です。
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756号の車内は、デッキ近くがロングシートの他は転換式のクロスシート。
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カッセルの2軸車、218号は1936年製で出力120kW。
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カッセルの2軸の付随車、511号は1941年製。
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赤と白に塗り分けた2軸の4037号は、オーストリアの首都ウイーン市電で、出力93kWの1928年製。同型車がウイーンのトラム博物館でも動態保存され、ウイーン市内を走っています。
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連結している狭窓の付随車は1604号は1910年製。
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上の付随車と側窓の配置がよく似たウイーンの2軸の電動車2625号は1921年製。
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一方、4037号によく似た広窓の2軸の付随車5325号は1929年製。
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2軸の付随車1023号と1033は、いずれも1929年製のハノーファー市電。
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こちらが1033号。1023号と同型のようです。
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塗り分けは異なっても、広電のハノーファー車と同型の車体。戦後西ドイツ2軸車の標準型、1948年のデュワグ製で出力120kW。
この100号は、スウェーデンの首都ストックホルムの南西にあるノルヒェーピングの市電で使われていたのだとか。西ドイツ以外でも走っていたのですね。でも、元をただせばドルトムント市電だったようで。 -
一方、戦後の東ドイツの標準的な2軸車はゴータカー。3011号は1969年製の東ベルリン市電で出力120kW。60年代末でもまだ2軸車を造っていたんですね。
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色を見ればわかるミュンヘン市電。2667号は1965年製の3軸車で、出力200kW。
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連結しているのは同型の付随車で1957年製の3408号。こちらもモーターは搭載していないが3軸車。
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334号は、西ドイツの首都だったボンの3軸車で1959年製。
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334号の運転室は独立。
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両側扉ですが片運転台で、最後尾はバスの後部席に似た車体幅いっぱいの座席。クッション付きのソファーのような座席は、進行方向が決まっているのにボックスシート。
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連結している付随車358号も同じ1959年製。
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赤と白の塗り分けに黒帯で、ウイーンのトラムかと思ったら地元のハノーファーでした。1951年製のボギー車でデュワグ製、出力200kW。
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片運転台で片側扉、車内はボックスシートでパイプ製の荷物棚も。
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デュッセルドルフのデュワグカー5103号は、両運転台なのに片側扉のボギー車。1955年製で、出力200kW。
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後部の運転席は、回送や入庫時に使うのでしょうか。
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トラムに乗って周遊中に、車庫から顔を出しているのを見かけた269号は、デュワグ製3車体連節車。2両の単車が短い浮き床式の車体を挟む駕籠かきタイプ。カッセルからオランダのアムステルダムを経てデンハーグに行き、再びドイツに里帰りしたようです。
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デュッセルドルフの2304号は1957年製。西ドイツ各都市やライセンス生産等でオーストリアでも活躍し、一世を風靡した2車体3台車の連接車GT6型。全面窓の傾斜した、これぞ西ドイツのデュワグカー。
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土佐電鉄から福井鉄道に移籍して動態保存されている、シュツットガルトの735号と同じ顔、GT4型といえはメーターゲージのシュツットガルトという中で、珍しい標準軌で両側扉、前後運転台で1961年製のGT4型。車体にはノインキルヒェンとありますが、フランクフルト南西のフランス国境に近いこの街のトラムは廃止されています。
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この日稼働中のアムステルダム902と同形の付随車968号は、傍らで休んでいます。同世代1949年製の3軸車。
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同じく稼働中のブレーメン3533号と同型で、同じ1976年製の2車体連節の付随車3733号も昼寝中。
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東西冷戦時代、西側のデュワグカーに対する東側の高性能車は、チェコスロバキアのタトラカー。旧共産圏に総数20,000以上供給した中で、丸いタトラのドイツ向けバージョンはT4。ベルリンとハノーファーの間に位置する、旧東ドイツのマグデブルク市電1008号は、1968年製で出力172kW。
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乗客の乗れない事業用の車両も何両かあります。6131号は、オーストリアの首都ウィーン、1914年製の2軸のトラムを1924年に、電動貨車に改造したようです。
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中央にパンタグラフを乗せた部屋のある緑の6051号も、ウィーンの電動貨車。1914年製の2軸のトラムを、1923年に無蓋電動貨車に改造したようです。出力81kW。
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2軸の電動貨車、ハノーファーの801号は1928年製で出力92kW。側窓は後年の改造でしょう。
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黄色い350号は北ドイツ、ハンブルクの北にあるバルト海に面した都市キールで、1900年製1100mmゲージのトラムを、1953年に改造したようで、ドイツ語を英語に翻訳するとドライビングスクールカーとなります。
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350号の運転席。
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車内には教室の机と椅子が並び、前方の壁面には黒板も。
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緑の2軸の凸型電気機関車100号は1900年製。デュッセルドルフに近いデュイスブルクで使われていたようです。
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ハンガリーの首都ブダペストの地下鉄1号線は、ヨーロッパ大陸初の地下鉄として世界遺産にも登録されています。その開業に合わせて1896年にハンガリーのガンツ社で造られたのがこの木造車12号。トンネルの天井が低いので、台車の上を運転席と客室の座席とし、中間の床を下げることで車内の高さを確保しています。現在の車両は、2車体3台車の鋼製連接車ですが、基本構造は同じです。
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運転室の直接制御器とハンドブレーキ。
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ブダペストの地下鉄1号線12号の車内。
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現存する世界最古の懸垂式モノレール、ヴッパータール空中鉄道56号。鉄のレールに鉄の車輪でぶら下がって走ります。1912年製で出力50kW。現行のヴッパータールの車両は、ボギー車2両の間に台車のない短い車体を挟む3車体連節車ですが、ここにある車両と同型車も動態保存されています。
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車体の天井に取り付ける台車が逆向きで置かれています。
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架線工事用のはしご車もあります。実際に、今でも架線のメンテナンスに使われているのかもしれません。
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これは何でしょうか。手作り感溢れる用途不明の車両もありました。
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大型の2軸台車が展示されています。日本で一般的なブリル21等の、設計が米国の台車とはずいぶん違います。説明が貼ってあるのですが、この博物館は全てドイツ語だけ。
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保存されている自動車を見かけたのは、この三輪トラック1台だけ。
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ハノーファートラム博物館では、ドイツトラム博物館から引き継いだのでしょうか、展示車両以外にも多くの車両があって、建物内に収容されたものや、シートをかけて線路上で保管されている車、長年放置されて荒れた状態のものまで、展示運転の車窓から見ることができます。
シュツットガルトのトラム博物館にハノーファーから引き取った車両として、20年間屋外に放置され、屋根が抜け落ちた付随車が展示されていました。ボランティアベースでの限界を感じます。 -
この他、屋内には模型やシミュレーターの施設もあったようですが、1時間に1本のバスの時刻になったので立ち寄れませんでした。路面電車ファンにとっては、充実した時間を過ごすことができる博物館です。
帰りに乗ったバス代行タクシーは、途中の停留所で積み残しが発生。バスと違って、定員以上に詰め込むことはできません。
ハノーファートラム博物館のホームページは、
http://www.tram-museum.de/
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