2021/06/06 - 2021/06/06
625位(同エリア16385件中)
ばねおさん
だいぶ以前に、『(邦題)サンジャックへの道』という映画があった。
内容はあらかた忘れてしまったが、信仰心など全く持ち合わせていない兄妹が、遺産相続の条件を満たすためにキリスト教の聖地サンティアゴへの巡礼の道を辿りながら様々な問題に出会うという話であったと思う。
原題は『 Saint Jacque...La Mecque 』ということなので、肝要な部分をずいぶん無視した邦題だなとは思うが、それはともかくとしてパリにもサンジャックへの道がある。
起点はサンジャックの塔で、パリ最古の道であるサンジャック通りRue Saint-Jacques を経てポルトオルレアンから市外に出るというもので、パリ市内の行程はせいぜい10km位だろう。
今どき、パリからサンジャックの道を辿ろうとする人がいるとも思われないが、サンジャックの塔近くまで用足しに来た機会に思い立ってその道筋を歩いてみた。
だいぶ大回りとはなるが、一応、住まいに帰る方向にもあたるので散歩道の延長のようなものだが、サンジャックへの道という意識で歩くと、あらたに見えてくるものもある。
そして何やら目に見えぬお導きがあったのか、さほど苦労もなくサンジャックに到達することができた。
- 旅行の満足度
- 5.0
- 交通手段
- 徒歩
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6月6日、本日の用足しは、市庁舎前のBHV。
ウイルス感染対策のため閉鎖されていたが、今はほぼ通常の営業に復している。 -
とはいえ、客足は鈍いようで、店内も至って閑散としていた。
上階のビュフェは、「店内飲食禁止」のためオープンには至っていないが、おそらく6月9日から再開となるはずだ。 -
BHVの用事を終えて、サンジャックの塔へ向かう。
信号待ちの自転車の多いこと。土曜日ということもあろうが、車の交通量よりも自転車やキックボード類の方が目立つ。
自動車の市内乗り入れ規制は段階的に進んでいて、いずれクラシカルな車を目にすることはなくなるのだろう。 -
やってきました、サンジャックの塔。
せっかくサンジャックへの道を行くのだから、出発はここにしないとね。
一度は塔の上まで登ってみたいと思っているのだが、まだ実現できていない。
上りはよいが、下りは膝にかなりの負担になりそうだ。 -
パスカルさんこんにちは、お久しぶりです。
お変わりありませんね。 -
パスカルさんに別れを告げ、シテ島へ。
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ノートルダム橋を行き交う人も意外に少ないね。
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橋上からコンシェルジェ方面
どんなに腕が悪くとも、誰が撮っても一枚の絵になる。 -
シテ島の鳥の市はなくなったが、座禅を組むカエルがいた。
別に鳥の市と関係はないのだが -
ノートルダム前の広場は、なぜか立ち入り禁止になっていた。
つい先ごろまでは聖堂近くまで行けたのに、何か修復工事の都合だろうか -
プティ・ポン橋 (Petit Pont) を渡り、道に埋め込まれたホタテ貝発見
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右手に見えてきたのは、ユトリロの画にもなったサン・セヴラン教会 ( LÉglise Saint-Séverin) 。
この教会にある15世紀の鐘がパリでは最古であるという。 -
ホタテ貝第2号
これを辿ればスペインに行ける
...きっと -
ちょっと教会の裏手に回って
というよりも、こちらが正面。
ステンドグラスが美しいが、今日はパス
何しろ道中が長いもので -
教会近くでは野天レストランが大賑わい。
テラスなんかなくてもいい
道にテーブルセッテイングすれば、たちどころに食事処の出来上がり
民族の違いが如実に出る場面だ -
これって何?誰?
最初に閃いたのは、ポランスキー監督の『J'accuse』(邦題は「アン・オフィサー・アンド・ア・スパイ」?)だが、自信はない
建物は老人用レジデンス ???
意味が分からん
あるいは意味はないのかも
知っている人がいたら教えてね -
サンジャック通りに戻り、サンジェルマン大通りとの交差地点
メトロの「クリュニー・ラ・ソルボンヌ (Cluny La Sorbonne)」駅が近い -
ホタテ貝第3号
ますます心強くなってきた
やはり、このままスぺインまで行けそうだ
あとは気持ち次第 -
カルチェラタンに入ったこのあたりから、来た道を振り返るとセーヌに向かって坂になっていることがよく分かる。
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1530年創設のコレージュ・ド・フランス (Collège de France)
ここが何であるかを一口で言えば、フランスにおける学問・教育の頂点に位置する学術機関。
この場所にはかって古代の公共浴場があったそうだ -
そもそもは、ソルボンヌ神学部の中世の権威主義に対抗する意図から発しているため自由で開かれた学問の場の象徴ともいえる。
各学問分野における最高の教授、いわばフランスの知の結晶を揃えながら、公開講座には一般の市民の誰もが聴講できる。
他の分野の教授も多数が聴講にきて、さまざまな論議をするような場面は日本ではなかなか考えにくい。 -
考えにくいことを考えることも、時には必要だ。
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パリ第1パンテオン・ソルボンヌ大学
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この界隈はフランスの高等教育機関が集合している。
途中で酔っぱらいの二人連れに声を掛けられた。
ひとりがもう一人を紹介して、こちらはプロフェッサーだという。
何のプロフェッサーかと聞いたら、利き酒の権威だという。
はいはい、さようなら。よい一日を -
世界最古の大学のひとつであるパンテオン・ソルボンヌ大学
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スフロ通り (Rue Soufflot) と交わるところ
パンテオンを左手に見て、その奥には サンテティエンヌ・デュ・モン教会 ( Saint-Étienne-du-Mon) ものぞいている。 -
サンジャック通りをさらに進むと、見えてきたのはパリ地理学研究所 (Institut de Géographie)
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建物は堂々として、古めかしい造りだが、さほど古い歴史があるわけではない。
パリ大学の機構上の一部となっているそうだ。 -
パリ地理学研究所と並ぶのはパリ海洋学研究所 (Institut Océanographique de Paris)
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公開講座の参加や内部の見学も可能なはずだが、現在は休止中の模様。
正面ファサード前には、なにやら見学者らしきひとたちが建物に見入っていた。 -
アベ・ド・レぺ通り (Rue de l'Abbé de l'Épée)との角に立つ、サン ジャック デュ オーパ教会 (L'Eglise Saint-Jacques du Haut Pas)
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かなり古くからの由来があるようだが、現在の教会は17世紀ころの建築
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サン ジャック デュ オーパ教会を過ぎ、少し先にあるのがスコラ・カントルム(Schola Cantorum)という中世の聖歌学校から発している音楽学校。
多くの音楽家が学んだが、エリック・サティもその一人。
日本人では高木東六の名前がある。 -
その先にあるのがヴァル・ド・グラース教会 (LÉglise du Val de Grâce de Paris)
パリで最も美しい伽藍だと評したひとは誰であったか。
モンマルトルの丘あたりからも、それと分かるランドマーク的な存在でもある。 -
こちらの写真は冬のものだが、手前の噴水 (Fontaine Place Alphonse Laveran) は、冬でも水の勢いは変わらずによく出ている。
お昼時には、あたりから学生が集まってきて昼食の場となっている。 -
ヴァル・ド・グラース教会の先を進むと、ポールロワイヤル大通り(Boulevard de Port Royal) との交差点が見える。
右手前方の交差点角にある青い門は旧ポールロワイヤル女子修道院パリ別院。
手前の赤色のカフェのある建物は、島崎藤村が暮らしていた下宿のあった建物だ。 -
ポールロワイヤル大通りとサンジャック通りの交差点角のこの建物4階に、1913年から16年にかけて藤村が暮らしていた下宿部屋がある。
初めは天文台のドームが見える部屋にいて、後に角部屋に移ってきた。
第一次大戦が勃発し、画家の正宗徳三郎らと数か月間疎開したリモージュの地には藤村の記念プレートがあるのに、3年近い時間を過ごし、パリの経験を書き留めたこの建物にその足跡を記すものがないのは、一日本人として寂しい思いがする。 -
藤村の下宿と筋向いの建物には、パリにきて住まい探しがうまくいかず、面識のない藤村を頼ってきた河上肇、竹田省の投宿先のホテルがある。こちらも4階だ。
藤村の下宿先も河上の安ホテルも、電灯もなく、暖房は豆炭、バケツで水を流す共同トイレなど、設備的には当時としてもずいぶんと貧弱なものであった。
のちに治安維持法で検挙された河上が、投獄中にパリの安ホテルの酷さとプチパンのおいしさをしみじみと思い出す一節が自叙伝に残っている。
こちらも一階はカフェになっていて、「三流四流どころのカフェ」と評されたが、50年近く経って藤村の足跡を研究にやってきた学者が、ここで一服しようとペリエを頼んだら30分近くも待たされたとのボヤキが著書に記されている。
三流四流どころは変わっていなかったらしい。
今はどうかと、試すひとがいたら、ぜひ経験談を聞かせてほしい。 -
ポールロワイヤル女子修道院は、今は産科病院の構内の一部となっていて、病院の事務部門で利用されている.
(写真は以前に撮ったもの) -
歴史的建造物に指定されているが、こちら側の未利用部分は傷みが激しい
立ち入り禁止になっている中庭ははっきりとは見えないが、垣間見える様子では多少の植栽があるだけで、これといった特徴はないようだ。 -
ポールロワイヤル女子修道院のあたりから道路名は変わり、フォーブール・サンジャック通り (Rue du Faubourg Saint-Jacques) となる。
フォーブール Faubourg は「郊外」の意で、昔は市外であったのであろう。
道を辿ると、史跡に指定されているオテルドゥマッサ (Hôtel de Massa) が右側にある。 -
Hôtel de Massa が何なのか知らなかったが、もともとはシャンゼリゼ通りにあったホテルのようで、ギャラリーラファイエットが手に入れて活用しようとしたが上手くいかず、こちらに移築され余生を送っているという次第。
現在は、教育機関として活用されている。 -
反対側にあるのは、サン・ジョセフ・ド・クルーニー姉妹会 (Sœurs de Saint Joseph de Cluny) の美しい礼拝堂。
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アラゴ通り (Boulevard Arago) と交わるところにある、オプセルヴァトワール・ド・パリ庭園 (Jardin de l'Observatoire de Paris)
花木の種類は多くないが、パリ天文台の静かで小さな緑地だ。 -
対面にあるのは、プロテスタント神学部(研究所)Institut Protestant de Théologie
-
少し進んで、小さな広場に出た。
その名もサンジャック広場 (Place Saint-Jacques)
左手にパリ天文台の白いドームが見える -
そして
ここで再びサンジャックの名前がついた通りに出た。
ただしこちらは大通 (Boulevard Saint-Jacques) -
そこにあるのは、メトロ6号線サン・ジャック駅 (Saint-Jacques)
決してここを目指してきたわけではないのだが、同名のよしみで一応ここを終着地としてサンジャックへの旅は完結。
サンジャックの塔で始まり、サンジャックの駅で終わる。
われながら感心するオチだ。
少し出来すぎたような嫌いがあるが、これは本当に奇跡に近い偶然だ。
途中でホタテ貝の道案内もなくなったが、少しは信仰心をもたせようとする神様の思し召しかも知れない。
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この旅行記へのコメント (4)
-
- mistralさん 2021/06/13 19:34:58
- サンジャック
- ばねおさん
見落としていた旅行記を見つけました。
サンジャックの塔から巡礼道を辿られたものです。
以前、シテ島からサンジャックの塔を目指して歩きました。
大した距離ではないのですが、
塔からニョキニョキと飛び出しているガーゴイルの姿なども含めて
遠目にも不思議な塔の存在は建物の間から際立って見えていました。
サンティアゴ・デ・コンポステーラまでの巡礼道の最後の100キロを
歩いた私としましたら起点のサンジャックの塔は見ておきたい、
できたら塔にも上りたいと思っていましたが
上れるのは限られた日のみ?だったようでした。
パスカルさんは塔に上り、実験をされたとか。
通りを歩くと帆立貝が埋め込まれていて、
まさにその道を辿るとコンポステーラまで行くことができる、
と書かれているのをどこかの本で読みましたが、
その折には帆立貝は探せずに断念しました。
その折には、巡礼道の別の起点のヴェズレーにも行った時でしたから
サンジャックの塔のそばまで行けた事はよかったのですが、
今回まさにばねおさんの旅行記で埋め込まれている帆立貝を拝見し
嬉しかったです。
mistral
- ばねおさん からの返信 2021/06/14 02:43:30
- RE: サンジャック
- mistralさん こんにちは
サンティアゴ・デ・コンポステーラまでの巡礼道の最後の100キロを歩かれた方からみれば、何だこりゃ、と思われるような僅かな道のりを辿り、メトロのサンジャック駅に出会ったのを幸い、ここを終着地とした、まことに不信心の極みのようなものでした。
> できたら塔にも上りたいと思っていましたが
> 上れるのは限られた日のみ?だったようでした。
サンジャックの塔は、6月−11月が登頂可能期間で、かつ、1時間おきのガイドツアーのみのようです。
> 通りを歩くと帆立貝が埋め込まれていて、
> まさにその道を辿るとコンポステーラまで行くことができる、
> と書かれているのをどこかの本で読みましたが、
> その折には帆立貝は探せずに断念しました。
サンジャック通りに入ると、足元にホタテ貝が見つかりますが、カルチェラタンを最後として出会うことはありませんでした。埋め込みの間隔も一定しているとは思われず、次のホタテ貝を探していると日が暮れてしまいそうです。
ジグソーパズルの一片がこれで埋まったとしたら幸いです。
ばねお
-
- ちーちゃんさん 2021/06/12 21:59:41
- その映画見ました。(^_^*)
- こんばんは♪
サンジャックへの道と言う映画、
私も見ました。
この映画で、海外にもお遍路さんの様な巡礼の道がある事を初めて知りました。
確か内容はコメディだったと記憶していますが、
疎遠になっている兄弟が、
その絆の大切さを思い出す内容で、
キリスト教への信仰心を感じました。
今回の旅行記でその事を、
思い出すことが出来ました。
やはり、パリは、映画にふさわしい街ですね。
憧れます♪( ´▽`)
- ばねおさん からの返信 2021/06/13 05:28:45
- RE: その映画見ました。(^_^*)
- ちーちゃんさん こんばんは
映画の内容をよくご記憶でしたね。
あの映画の出演者のジャン・ピエール・ダルサンという俳優がとても個性的で、だいたいがお笑いなのですが、時にシニカルな役も演じて妙な存在感があります。
巡礼といっても宗教によってスタイルはいろいろでしょうが、カトリックの3大聖地のひとつであるスペインのサンティアゴ・デ・コンポステーラ(サンジャック)へ行く巡礼路には無償の宿泊施設や食事の提供があり、巡礼者に奉仕する人々がそれらを支えているようです。
お遍路さんのように多くの寺を巡拝して回るのではなく、ひたすら一つの聖地を目指して行くわけですが、道中に巡礼者を接待する仕組みがある点は似ていますね。
もっともこうしたことに詳しい方からすれば、いやいやちょっと違うよと指摘されるかもしれませんが。
> やはり、パリは、映画にふさわしい街ですね。
たしかに、パリを舞台にした作品はとても多いですね。
ロケ地に実際に行ってみるだけでも、かなりの数になるかもしれません。
ばねお
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