2021/04/01 - 2021/10/31
504位(同エリア8479件中)
ばねおさん
「ラ・リュシュ(La Ruche )」は、蜜蜂の巣の意味。
パリ15区のジョルジュ・ブラッサンス公園の横手に、芸術家の作業場兼住居がぎっしりと詰め込まれたラ・リュシュと呼ばれる集合アトリエがある。
ギュスターヴ・エッフェル設計の八角形の建物「ロトンド」がシンボル的存在で、20世紀初めからシャガールやフェルナン・レジェをはじめとする多くの芸術家がここに制作拠点を置き、現在も活動は続いている。
「ジョルジュ・ブラッサンス公園」は、馬市場、食肉処理場であった跡地を、古い市場構造の一部を保存しつつ、8ヘクタールの土地を変化に富んだ公園として再生したもので、いかにも普段着のパリらしい時間が過ごせる場所である。
公園名に冠せられたジョルジュ・ブラッサンスは日本ではあまり知名度が高くないが、フランスでは絶大な人気を誇り、誰もが知っている詩人、歌手といってよい。今年(2021年)は生誕100年となり、10月には記念のイベントが行われるなどした。
- 交通手段
- 徒歩
- 旅行の手配内容
- 個別手配
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モンパルナス駅からは徒歩20分ほどの距離にあるジョルジュ・ブラッサンス公園。
アクセス方法はいくつもあるが、これはブランシオン通り(Rue Brancion)を辿って公園東角に出たところ。
この写真とほぼ同じ構図を、佐伯祐三が1925年の作品『ブランシオン通り』に描いている。
公園となったのは1984年なので、まだ馬市場であった頃の絵なのだが、描かれた風景は今とあまり変わっていない。 -
旧馬市場側に残っている門 Portail Abattoirs
上部中央に馬首が掲げられている。
公園には、市場であった当時の施設や構造物の一部が保存されていて、現在もうまく活用されている。 -
構内に入ると、大きなモモ肉を肩に担いでいる姿の銅像がある。
食肉市場なればのモニュメントだ。 -
1975年に食肉解体市場が閉鎖された後、1984年に公園に生まれ変わったので、歴史は浅いが、樹木や植栽は豊かで、周辺住民の憩いの場となっている。
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平坦な庭園とは異なり、起伏もあって、林あり、せせらぎあり、ロッククライミングの壁ありで、なかなか変化にも富んでいる。
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花の季節には、いろいろな野花が一面に咲いて目を楽しませてくれる。
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時には、香りを確かめるのも良し。
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小さいながらもバラ園もある。
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パリ市内に5ヶ所ある葡萄畑のひとつがここにある。
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秋にボランティアによって収穫されたブドウは、ワインに醸造されてオークションにかけられる。
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葡萄畑の近くには、色とりどりの蜜蜂の巣箱が行儀よく並んでいる。
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夏の終わりから秋にかけて巣箱の近くには、ハチに注意の表示が出て、あまり近寄らないようにとロープが張られる。
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秋が深まると多くの木々の葉が黄色になり、同時に落葉となるが、この頃の風情が一段と好きなのはやはり日本人ゆえだろうか
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公園の中央にはシンボル的な存在の時計台がある。
その前の広場は何年も前から整備が進められていて、やがて大きな池が出来上がる見込みだが、工事は遅々として進んでいない。 -
池の完成を誰よりも待ち望んでいるのが、こちらのカップル。
時々、工事の進み具合を見にやってくるのだが、フェンスに囲まれた未完成の池には近づけない。 -
普段は上にあるアヒルのプールのような小さな池で我慢をしている。
実際に居るのは鴨だが、自分はここを「アヒルが池」と勝手に命名している。 -
こちらもブラッサンス公園のシンボル的な存在
耳が長いのでロバさんだろうか。
荷車には季節の花が積まれ、御者台には子供が座ることができる。
但し、動くことはない。 -
動いてくれるのはこちら。
園内周遊のポニーの発着場。
あらためて料金表を見てみたら、回数券もあった。
むしろ回数券を購入して、乗馬ごとにチケットを渡すというのが一般的なのかも知れない。 -
パリの大きな公園には必ずといってよいほど用意されている、ポニーに乗った園内お散歩。但し子供のみ。
ここは長短の二つのコースがあって、保護者が付き添って歩く。
メリーゴーランドの木馬と並んで幼い頃から馬に親しむ文化が伝統としてある、と言えるのかも知れない。 -
もっとも最近のメリーゴーランドは木馬に代わってスーパーカーや宇宙船が登場しているので、回転木馬という言葉はそぐわなくなってきた。
ここのメリーゴーランドには、ブラッサンスおじさんの顔があるけれど、子供にはどうかな? -
紹介が遅くなったことをお詫びしなければならないが、こちらがジョルジュ・ブラッサンス Georges Charles Brassens(1921年10月22日-1981年10月29日)。
この近くに住んでいた彼は14区、15区との縁が深く、その名が公園名となることに何の違和感もないが、胸像の表情は何やら恥ずかしげにも見える。
トラムT3に乗ると、彼の曲が流れている。 -
ところで、ジョルジュ・ブラッサンスの名はフランスでは(おそらく)誰もが知っている人気の存在だが、日本での知名度は高いとは思えない。
この場を借りて、一口解説をすると、
ショーを行うようなエンターテテイメントではなく、反権力、反体制を貫いた詩人、歌手で独特の弾き語りのようなスタイルは、ジョルジュ・ムスタキやセルジュ・ゲンズブールにも影響を与えた。これで分かるかな? -
公園の一角にある、これも定番の人形劇のマリオネット
パリの公園ってどうしてこんなにいろいろな楽しみが用意されているのだろう。 -
以前、ヴォジラールに住んでいた頃に、よく通って利用した石造りの卓球台。
パリには多くの公園に石造りの卓球台が置かれているが、年齢を問わず気軽にできるので、休日には利用者でほとんど埋まっている。 -
かっての馬の取引場は、ほぼそのままの形で保存されている。
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連屋根付きの取引場跡はかなり広大なスペースだ。
雨天でも開催できるので、土日にはここに古本市が立つ。 -
規模としては大きく、パリ市の観光ガイドにも紹介されている。
美術書などは神田の古書店街に比べると、ずいぶん安いように思う。 -
旧馬市場の近く、ブランシオン通り沿いに、屋根の上に馬の像が立つ店がある。
かっては周辺に多くの馬肉店があったというので、おそらくその名残りであろう。 -
現在、馬はマスク着用の姿だが、建物は昔ながらの佇まいを残している。
この店は佐伯祐三も別の作品で描いているとも聞くが、作品をまだ確かめていないので断定はできない。 -
今では、マックス・ポワラーヌ(Max Poilâne)というパン屋。
比較的よく知られている「ポワラーヌ」というパン屋を創業した人の長男の店で、リヨンにも店を出している。
ポワラーヌと品揃えが違うのは、こちらはバゲット、サンドイッチ、調理パンの類があることだろうか。 -
この店のモットーは、「良きパン、良き人生かな」というもので、包み紙にも原料の生産からパンに至るまで色々描かれていてなかなか素晴らしい。
但し、残念ながらお味の方はイマイチ。いくつか試したが、自分としては、ここのパンはあまり評価できない。 -
「ポワラーヌ」とは、かなり因縁が絡んだことになっている。
創業者の末子が経営しているポワラーヌとは商標を巡って争い、裁判に発展した。まさに骨肉の争いである。
末子はヘリコプター事故で亡くなり、その娘が裁判を引き継ぎ争っていたが、どうやらすでに結着はついたようだ。 -
こちらがポワラーヌ(Poilane)
どちらもスーパーに並んでいるので、わざわざ店に行かずとも入手できるが。数量を指定して購入するにはやはり店頭でないと出来ない。
ただ両店の品を同時に並べている例は見たことがないので、店によってどちらかが選ばれている気がする。 -
旧馬市場の先、公園の南端には、パリの外周を鉄道が通っていた頃の駅舎が残っていて、今は劇場として活用されている。
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ブランシオン通りから見下ろすと、駅舎の下には廃線路の一部が見える。
眼下の部分は未だであるが、この近くまでは遊歩道として開放されている。
このプチ・サンチュールと呼ばれるパリをぐるりと回る環状鉄道線の跡地は、順次整備されつつあり、それぞれの場所の変化があって回って歩くとなかなか楽しい。
昔の駅舎も多く残されていて、いずれも劇場やレストランなどに仕立てられて利用されている。 -
こちらはモリヨン通り(Rue des Morillons)に面する公園の正門側
左右に立派な牛のブロンズ像がある。 -
馬市場とは分けて、こちらは牛の専用口であったという理解でよいのかどうか
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その正門前にあるカフェのひとつ、「プチ・ゴリラ Le Petit Gorille」。
ブラッサンスのあだ名はゴリラであったそうな。
で、あだ名の由来は代表作のひとつであるシャンソン「ゴリラLe Gorille」からと言われているが、作品を抜きにしても本人の風貌がやや似ていなくもない。 -
店頭には子供を背負った親子のゴリラ像がいつも置かれている。
ブラッサンスの「ゴリラに気をつけろ!」という風変わりで過激な歌詞には、死刑廃止へのメッセージが込められているということだが、自分の理解力ではなかなかそこまで到達しない。 -
ブラッサンス公園の西側、ダンツイッグ通り(Rue de Dantzig)を南に進むと、三角州の突端のような位置に場末感たっぷりのカフェ「Le DANTZIG 」がある。
この脇から、パサージュ・ド・ダンツイッグ(Passage de Dantzig)に道は枝分かれして、ラ・リュシュは探すまでもなくすでに目前にある。 -
ラ・リュシュの手前には目印ともなる、建物の由来や歴史を解説する碑文が建っている。
要約すると、「1900年の終わりに売りに出された万博のワインパビリオンを購入したアルフレッド・ブーシェは1902年にここにパビリオンを再構築し、周囲にも建物を配置して140の芸術のワークショップを作り上げた。それらを安い家賃で画家や彫刻家に提供し、レジェ、シャガール、ザッキン、スーチン、アーキベンコなどがここに入り、ブーシェは彼らを彼の蜂と呼んで、このパビリオンは蜜蜂の巣と名付けられた」 -
ラ・リュシュの正面の門が開いたのは見たことがない。
このように一年の大半を蔦に覆われれていて、ここから内部の様子が見えるのは蔦の枯れ落ちた1月~3月頃だろう。 -
正門横には、ここを建設した彫刻家アルフレッド・ブシェー Alfred Boucher(1850-1934)の足跡が記されたプレートと歴史的建造物の標章が掲げられている。
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門柱脇の風化した彫像。
ここに創作の場を設けたひとの数はかなりあるだろうが、正確には分かっていない。
最初の頃の居住者として挙げられているのは、レジェ、シャガール、スーティン、ザッキン、キスリング、アレクサンダー・アーキペンコ、ミシェル・キコイーヌ、ピンクス・クレメーニュ、ジャック・リプチッツそしてもちろんアルフレッド・ブーシェで、このあたりまでは資料を突き合わせると間違いなさそうである。
その他にも多くの名が登場するのだが、判然としない。 -
今は入場が厳しく制限されているが、仮に中に入っても、周囲が立て込んでいるので全景は捉えにくい。予備知識がなければ、建物が八角形などとはまるで認識できない。
じつは、これと同じものが日本にある。
エッフェルの設計図を基に再現したコピーで、山梨県長坂町(清春)にあり、こちらは周囲が開けているので全体のフォルムがよくわかる。ただ、自分が最後に訪れたのは20年も前なので、多少は変化しているかもしれない。 -
あとは、僅かな隙間からロトンドの屋根の上の塔が、かろうじて見えるだけ。
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現在は一般公開がされていないので、中に立ち入ることはできない。
唯一の手段は、不定期に開催されるギャラリーの展示を見学がてら、中庭を覗かせてもらう程度で、こちらがその出入り扉。 -
中に入るとこうなるが、こだけでは建物として特段見るべきものはない。
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ギャラリーの窓から覗くと中庭は近くに見えるが、ギャラリーで作品展をしているここの住人も、他人に説明できるほど詳しく歴史を知っている訳ではないようだ。
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ロトンド玄関両側のオブジェなどは、いずれもパリ万博での展示品であるとされている。
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インドネシア館で飾られていたものとか、その由来はまちまちのようだが、破損した状態のままのものもある。
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1960年代の終わり頃、アルフレッド・ブーシェの相続人は、不動産開発業者にラ・リュシュを売り渡すことにした。これに対して、シャガールを筆頭に反対運動が起きてこれを阻止し、今では財団によって管理運営されている。
この時の運動が功を奏していなかったら、シテ・ファルギエールと同じ運命をたどっていただろう。 -
パサージュ・ド・ダンツイッグから上を見上げると、鍵屋の看板のようなものが建物の横にぶる下がっているのが見える。風化して今にも落ちてきそうだ。
このカギは何を意味しているのだろうか。
ギャラリーの主はそう言われて、初めて気がついたという程度の認識である。
いずれ、何であるかを突き止めてみたい。
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この旅行記へのコメント (2)
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- yunさん 2021/11/09 23:00:23
- 公園の効用
- 大人も子供もウエルカム、パリの公園は懐が大き目。
日本の大半の公園は、子供が遊ぶイメージで設置され
大人が憩うにはなんとも殺風景な事多し。
東京:井の頭公園などは趣がパリと似ている気がすれど、東京各区にある訳でなし。
我が家の近隣には自然が残っていますが、リュックに忍ばせたコーヒーをベンチで飲みたいと願っても、ブラッサンス公園のような場所が無い…。
ジョルジュ・ブラッサンスの歌声をYou Tubeで聴いてみました。渋い声でした。
ロバさんと、マリオネット小屋、古本市に出会えましたがそこで力尽きました。
ミツバチ箱、Le Petit Gorilleすら到達できず。ラ・リュシュと共に次回のお楽しみといたしました。
T3に何度も乗車したのに、曲を認識できておらずダメダメだ。
ポワラーヌとマックス・ポワラーヌの件も、初めて知りました。
骨肉の商標争い、これは世界共通なんですね。
現時点で、私のひいきはLa Fabrique aux Gourmandisesです。感謝♪
パリの公園はどこも魅力的で、NO1は決められそうにありません。
本日、ポワラーヌで購入の小麦粉でパンを焼き、見事に失敗したyunより
- ばねおさん からの返信 2021/11/10 19:28:01
- RE: 公園の効用
- yunさん こんにちは
日本で街中の公園というと、つい「児童公園」を思い浮かべてしまいますが、そうしたところに大人が長居していたら、変な目で見られること必至ですね。
横浜には西洋式公園の第一号という「山手公園」があり、このあたりから従来の日本庭園とは異なる様式の公園が各所に出来始めて、すでにそれなりの時を経ているわけですが、やはり基本的な生活スタイルの違いは公園の在りよう、過ごし方にも顕著に出ていると今さらながら思います。
> ジョルジュ・ブラッサンスの歌声をYou Tubeで聴いてみました。渋い声でした。
そうですね、高らかに歌い上げるのではなく、自作の詩を語るように曲に乗せるようなイメージと言えるでしょうか。
> ロバさんと、マリオネット小屋、古本市に出会えましたがそこで力尽きました。
> ミツバチ箱、Le Petit Gorilleすら到達できず。ラ・リュシュと共に次回のお楽しみといたしました。
> T3に何度も乗車したのに、曲を認識できておらずダメダメだ。
これはもう無理からぬことで、私などは何度も通っているので、その都度の小さな発見をただ積み重ねただけですから
> ポワラーヌとマックス・ポワラーヌの件も、初めて知りました。
> 骨肉の商標争い、これは世界共通なんですね。
> 現時点で、私のひいきはLa Fabrique aux Gourmandisesです。感謝♪
ピシャールが潰れて以来、ピシャールの先にある15区のパン屋激戦区(勝手にそう思っているだけですが)に足を向けています。バゲット、ヴィエノワズリー、ケーキ類の全てに良しとする店はなかなかありません。
Fabrique aux Gourmandisesは、バゲットの焼き込みが自分にはやや不足ですが、ケーキ類も甘すぎず優しい価格で文句ないですね。
> 本日、ポワラーヌで購入の小麦粉でパンを焼き、見事に失敗
恐らく、ポワラーヌの小麦粉が日本の風土に合わなかった、ということでしょう。
いつもいつも、しがない「旅行記」にお付き合いいただいてありがとうございます。
ばねお
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