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2020年11月18日(水)12時半過ぎ、寂光院から三千院に向かう。寂光院道を降りきってバス道を渡る。ただし、バス道と云ってもこの道をバスが走るのは年に1回のみ。マニアには有名な話なのだが、京都バスには年に1回しか走らない系統がある。大原から江文峠経由で鞍馬に抜ける95系統。「免許維持路線」として春分の日に片道のみ運行されている。で、この道はその95系統が通る道ではなく、その95系統のバスを高野車庫から大原バス停に回す時に通る道で、同じく春分の日に片道だけ運行される。今年(2021年)の春分の日にも運行されたとのこと。<br /><br />道を渡り、高野川に架かる歩行者専用の小さな橋(下の写真1)を渡ると大原リバーサイドカフェ来隣(きりん)と云う店がある(下の写真2)。大原の新鮮野菜をメインにしたカフェで、大原野菜のおばんざい・サラダがビュッフェスタイルで戴けるランチをと思っていたのだが、すごく混んでたのであっさりと諦めた。11時半の開店時でも列が出来てるそうだが、コロナ禍で観光客少ないのかと思ったら、そんなことはなかった。残念。<br /><br />来隣の前から緩やかな坂道を上り、京都バスの大原バスターミナルの先で国道367号を渡り、さらに進むと左手に三千院へ繋がる大原女の小径の上り口があるが、その手前にさわだと云う食堂があったので、ここで昼食。ごく普通の食堂だが、2階には喫茶店があり、その入口は大原女の小径に曲がったところにある。ゆばとろ丼900円とゆばあんかけそば980円をGo to eat食事券利用で戴く。十分にうまい。<br /><br />1時過ぎ、大原女の小径を上り始めるとすぐ左手にコスモス畑がある。タイミングが良かったようで、様々な色の花が満開。畑の前にここからしばらく上がった先にある志ば漬けの志ば久(下の写真3)が立てた立札があるので、どうやらここは紫蘇畑で借り入れ後にコスモスが植えられてるようだ。<br /><br />コスモス畑の先で右に曲がると、右手には呂川(りょせん)が流れる。呂川は、三千院を挟んだ南北を、東から西に流れる2本のうちの南側の川。北側の律川(りつせん)とあわせて「呂律川」と称される。大原は声明(しょうみょう)の発祥の地で、中国の伝統的な音階である呂旋法と律旋法にちなんで名付けられている。<br /><br />声明は仏教儀礼で用いられる、仏典に節をつけた仏教音楽の一つ。仏教が起こったインドで五明(ごみょう)の一つとして生まれ、中国から仏教伝来と共に日本に伝わった。日本音楽の源流とも云われる。呂旋法と律旋法は、舌がよく動かず言葉がはっきりしないことを意味する「呂律(ろれつ)が回らない」という言葉の語源にもなった。<br /><br />左手には店が軒を連ねる。古民家を改装した御食事処、オリジナル小物の店(下の写真4)、ぽん酢とドレッシングの専門店(下の写真5)、しそジュースの店、茶屋(下の写真6)、しば漬けの老舗など様々で見ているだけでも飽きない。<br /><br />「紙と織 山路」と云う小物の店の前、呂川に橋が架かり、「展望台」の案内がある。寄り道して坂道を上ると通称「大原の見晴らし台」とも呼ばれるところに出る。ここも志ば漬けの志ば久の畑で、様々なものが育てられている。春の菜の花撮影スポットとして有名。菜の花畑は昔は菜種油を搾るために大原一面に広がっていたが、現在は菜の花漬け用にわずかに栽培されているだけになった。<br /><br />展望台と云うことだけのことはあって、ここからは大原の棚田や集落、周りを囲む山並みを眺められる(下の写真7)。畑に隣接する森の中を辿って行くと椿地蔵がある。以前は惟喬親王に使えたといわれる大原の久保家に祀られていたもの。大きな椿の下で落椿に埋もれそうなと云うことで、いつしか椿地蔵と呼ばれるようになった。椿地蔵から降りて行って河童橋で呂川を渡ればちょうど志ば久本店の前に出る。<br /><br />再び呂川沿いを登って行くが、この辺りからの川の上の紅葉は本当に見事(表紙の写真や下の写真8)。<br /><br />一方の律川だが、こちらは三千院の前を北に横切った先の茅穂橋から上流、下流を眺めることが出来るが、こちらも紅葉が見事。赤い葉が川床に敷き詰められ、その上には黄色い葉っぱがキラキラ光っていた。なお、茅穂橋だがこれは北側の欄干にある名で、南側には未明橋とある。なぜこうなっているかは不明。<br />https://www.facebook.com/media/set/?set=a.4987733497963301&amp;type=1&amp;l=223fe1adec<br /><br />この三千院前の呂川から律川までの間は桜の馬場と呼ばれる。呂川側は三千院門跡の石碑が建つ四差路になっており、桜の馬場の反対側は国道367号の野村別れの交差点近くから国道と別れて上がって来る三千院道。呂川をさらにさかのぼり、三千院の奥に向けて東に進むと来迎院があるが、多分行ったことない。<br /><br />桜の馬場を北に進むと、右手、東側には城郭を思わせる三千院の石垣が続き、真ん中辺りに御殿門と呼ばれる山門がある。石垣は城廓の石積み技術などで名高い近江坂本の穴太衆(あのうしゅう)という石工が積んだもので、自然石を使った石組みは頑強でかつ美しく、時を経ても崩れないと云われている。<br /><br />反対側の西側には食べ物屋や漬物屋、土産物屋が立ち並んでいる。この通りの紅葉がこれまた素晴らしい。まさに息を呑む美しさ。ちなみに、律川を渡った先には勝林院、宝泉院、実光院などがあるが、この日は行ってない。来迎院含めて再訪したいものだ。<br /><br />律川に架かる茅穂橋の南側には鉈捨藪跡(下の写真9)。能の「敦盛」などで有名な源平時代の武将、熊谷直実(くまがいなおざね)が出家して帰依した法然上人が、天台僧顕真に大原勝林院に招かれて行った大原問答の際に、法然が敗れた時にはその法敵を討ち果たそうと袖に鉈を隠し持っていたが、法然に諭されてここに投げ捨てたと伝えられる。勝林院は茅穂橋の北側にある(下の写真10)。<br /><br />ちなみに法然上人は、この大原問答で高僧たちの質問に対して明確に応答し、浄土の宗義や念仏の功徳を説き、弥陀本願の深い妙旨を語ったことで一躍著名になった。<br />https://www.facebook.com/media/set/?set=a.4995768047159846&amp;type=1&amp;l=223fe1adec<br /><br /><br />三千院へ入るが、続く

京都 大原 呂律川(Ryosen & Ritsusen Rivers, Ohara, Kyoto, JP)

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2020/11/18 - 2020/11/18

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旅行記グループ 大原

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ちふゆ

ちふゆさん

2020年11月18日(水)12時半過ぎ、寂光院から三千院に向かう。寂光院道を降りきってバス道を渡る。ただし、バス道と云ってもこの道をバスが走るのは年に1回のみ。マニアには有名な話なのだが、京都バスには年に1回しか走らない系統がある。大原から江文峠経由で鞍馬に抜ける95系統。「免許維持路線」として春分の日に片道のみ運行されている。で、この道はその95系統が通る道ではなく、その95系統のバスを高野車庫から大原バス停に回す時に通る道で、同じく春分の日に片道だけ運行される。今年(2021年)の春分の日にも運行されたとのこと。

道を渡り、高野川に架かる歩行者専用の小さな橋(下の写真1)を渡ると大原リバーサイドカフェ来隣(きりん)と云う店がある(下の写真2)。大原の新鮮野菜をメインにしたカフェで、大原野菜のおばんざい・サラダがビュッフェスタイルで戴けるランチをと思っていたのだが、すごく混んでたのであっさりと諦めた。11時半の開店時でも列が出来てるそうだが、コロナ禍で観光客少ないのかと思ったら、そんなことはなかった。残念。

来隣の前から緩やかな坂道を上り、京都バスの大原バスターミナルの先で国道367号を渡り、さらに進むと左手に三千院へ繋がる大原女の小径の上り口があるが、その手前にさわだと云う食堂があったので、ここで昼食。ごく普通の食堂だが、2階には喫茶店があり、その入口は大原女の小径に曲がったところにある。ゆばとろ丼900円とゆばあんかけそば980円をGo to eat食事券利用で戴く。十分にうまい。

1時過ぎ、大原女の小径を上り始めるとすぐ左手にコスモス畑がある。タイミングが良かったようで、様々な色の花が満開。畑の前にここからしばらく上がった先にある志ば漬けの志ば久(下の写真3)が立てた立札があるので、どうやらここは紫蘇畑で借り入れ後にコスモスが植えられてるようだ。

コスモス畑の先で右に曲がると、右手には呂川(りょせん)が流れる。呂川は、三千院を挟んだ南北を、東から西に流れる2本のうちの南側の川。北側の律川(りつせん)とあわせて「呂律川」と称される。大原は声明(しょうみょう)の発祥の地で、中国の伝統的な音階である呂旋法と律旋法にちなんで名付けられている。

声明は仏教儀礼で用いられる、仏典に節をつけた仏教音楽の一つ。仏教が起こったインドで五明(ごみょう)の一つとして生まれ、中国から仏教伝来と共に日本に伝わった。日本音楽の源流とも云われる。呂旋法と律旋法は、舌がよく動かず言葉がはっきりしないことを意味する「呂律(ろれつ)が回らない」という言葉の語源にもなった。

左手には店が軒を連ねる。古民家を改装した御食事処、オリジナル小物の店(下の写真4)、ぽん酢とドレッシングの専門店(下の写真5)、しそジュースの店、茶屋(下の写真6)、しば漬けの老舗など様々で見ているだけでも飽きない。

「紙と織 山路」と云う小物の店の前、呂川に橋が架かり、「展望台」の案内がある。寄り道して坂道を上ると通称「大原の見晴らし台」とも呼ばれるところに出る。ここも志ば漬けの志ば久の畑で、様々なものが育てられている。春の菜の花撮影スポットとして有名。菜の花畑は昔は菜種油を搾るために大原一面に広がっていたが、現在は菜の花漬け用にわずかに栽培されているだけになった。

展望台と云うことだけのことはあって、ここからは大原の棚田や集落、周りを囲む山並みを眺められる(下の写真7)。畑に隣接する森の中を辿って行くと椿地蔵がある。以前は惟喬親王に使えたといわれる大原の久保家に祀られていたもの。大きな椿の下で落椿に埋もれそうなと云うことで、いつしか椿地蔵と呼ばれるようになった。椿地蔵から降りて行って河童橋で呂川を渡ればちょうど志ば久本店の前に出る。

再び呂川沿いを登って行くが、この辺りからの川の上の紅葉は本当に見事(表紙の写真や下の写真8)。

一方の律川だが、こちらは三千院の前を北に横切った先の茅穂橋から上流、下流を眺めることが出来るが、こちらも紅葉が見事。赤い葉が川床に敷き詰められ、その上には黄色い葉っぱがキラキラ光っていた。なお、茅穂橋だがこれは北側の欄干にある名で、南側には未明橋とある。なぜこうなっているかは不明。
https://www.facebook.com/media/set/?set=a.4987733497963301&type=1&l=223fe1adec

この三千院前の呂川から律川までの間は桜の馬場と呼ばれる。呂川側は三千院門跡の石碑が建つ四差路になっており、桜の馬場の反対側は国道367号の野村別れの交差点近くから国道と別れて上がって来る三千院道。呂川をさらにさかのぼり、三千院の奥に向けて東に進むと来迎院があるが、多分行ったことない。

桜の馬場を北に進むと、右手、東側には城郭を思わせる三千院の石垣が続き、真ん中辺りに御殿門と呼ばれる山門がある。石垣は城廓の石積み技術などで名高い近江坂本の穴太衆(あのうしゅう)という石工が積んだもので、自然石を使った石組みは頑強でかつ美しく、時を経ても崩れないと云われている。

反対側の西側には食べ物屋や漬物屋、土産物屋が立ち並んでいる。この通りの紅葉がこれまた素晴らしい。まさに息を呑む美しさ。ちなみに、律川を渡った先には勝林院、宝泉院、実光院などがあるが、この日は行ってない。来迎院含めて再訪したいものだ。

律川に架かる茅穂橋の南側には鉈捨藪跡(下の写真9)。能の「敦盛」などで有名な源平時代の武将、熊谷直実(くまがいなおざね)が出家して帰依した法然上人が、天台僧顕真に大原勝林院に招かれて行った大原問答の際に、法然が敗れた時にはその法敵を討ち果たそうと袖に鉈を隠し持っていたが、法然に諭されてここに投げ捨てたと伝えられる。勝林院は茅穂橋の北側にある(下の写真10)。

ちなみに法然上人は、この大原問答で高僧たちの質問に対して明確に応答し、浄土の宗義や念仏の功徳を説き、弥陀本願の深い妙旨を語ったことで一躍著名になった。
https://www.facebook.com/media/set/?set=a.4995768047159846&type=1&l=223fe1adec


三千院へ入るが、続く

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  • 写真1 高野川に架かる人道橋

    写真1 高野川に架かる人道橋

  • 写真2 大原リバーサイドカフェ来隣

    写真2 大原リバーサイドカフェ来隣

  • 写真3 志ば久

    写真3 志ば久

  • 写真4 オリジナル小物の店

    写真4 オリジナル小物の店

  • 写真5 ぽん酢とドレッシングの専門店

    写真5 ぽん酢とドレッシングの専門店

  • 写真6 呂川茶屋

    写真6 呂川茶屋

  • 写真7 大原の見晴らし台からの景色

    写真7 大原の見晴らし台からの景色

  • 写真8 紅葉の呂川

    写真8 紅葉の呂川

  • 写真9 鉈捨藪跡

    写真9 鉈捨藪跡

  • 写真10 突き当りが勝林院

    写真10 突き当りが勝林院

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