2020/11/18 - 2020/11/18
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ちふゆさん
2020年11月18日(水)11時半、寂光院へ到着。いつ以来やろう。アルバムを調べなければはっきりしたことは分からないが、多分学生時代以来のような気がする。40年以上前か。具体的に何を見たかとか全く覚えてない。
寂光院は天台宗の尼寺で、山号は清香山。寺伝では古墳時代の594年に聖徳太子が父・用明天皇の菩提を弔うために玉泉寺として開創したとされる。壇ノ浦の戦いで入水して亡くなった安徳天皇の母、建礼門院が隠棲したことで有名。江戸時代には豊臣秀頼や徳川家康が再興に手を尽くした。
2000年5月9日の未明に放火され、本堂を焼失し、本尊の木造地蔵菩薩立像なども焼損した。犯人は18リットルの灯油をぶちまけて火を付けたそうで、7年後に公訴時効が成立し、結局逮捕されなかったので、動機は不明。
初代住持は聖徳太子の御乳人であった玉照姫(たまてるひめ)で、その後、代々高貴な家門の姫君らが住持となり法燈を守り続けてきたと伝えられるが、史料がなく詳細が分からないため、阿波内侍(あわのないし)を第2代と位置づけている。崇徳天皇の寵愛をうけた女官で建礼門院に仕えていた。平安末期の1165年入寺。
その20年後の1185年に壇ノ浦の平家一族滅亡後も生き残った建礼門院が阿波内侍を頼って入寺。後に第3代住持となって当院で余生を送った。入寺翌年の1186年晩春に、2012年NHK大河ドラマ「平清盛」では松田翔太が演じた後白河法皇が建礼門院を訪ねてここを来た話は「祇園精舎の鐘の声」の有名な書き出しで始まる軍記物語、平家物語の灌頂巻で語られ、物語のテーマである「諸行無常」を象徴するエピソードとして人々に愛読された。
謡曲「大原御幸」はこの灌頂巻に題材をとり、大原に隠棲している建礼門院を訪ねた後白河法皇に女院が語る「六道語り」の物語で作者は不明。鞍馬街道から静原、江文峠を越えて大原を尋ねられた法皇に、女院は自分のたどってきた生涯を天上道、人間道、餓鬼道、修羅道、畜生道、地獄道の六道に例えて語ると云う話。
当初の本尊は、聖徳太子御作と伝えられる六万体地蔵尊であったが現存しない。像内に納入されていた願文より鎌倉時代の1229年に制作されたと推測される旧本尊の木造地蔵菩薩立像は、2000年の放火により焼損したが像内納入品ともども国の重文に継続して指定されており、境内奥の収蔵庫に安置されている。
入口の受付で1人600円の拝観料を払って拝観開始。平日のお昼前なのだが、結構人が多い。風情ある石階段を上がると山門の手前、右手に狐雲茶室がある。京都御所で行われた昭和天皇即位の御大典の際に用いられた部材が寂光院に下賜され、それを元に1931年(昭和6年)に開かれた茶室。茶室への入口(下の写真1)付近の紅葉が見事過ぎるほど凄い。
孤雲の名は、平安時代中期の天台宗の僧・文人の寂照の「笙歌遥かに聞こゆ孤雲の上、聖衆来迎す落日の前(楽の音や声が、遥かかなたひとつの雲の上に聞こえる。落日の前に極楽浄土の菩薩たちが迎えに来る)」の歌から取られており、謡曲「大原御幸」にこの歌の色紙が女院の粗末な御庵室の障子に諸経の要文とともに貼られているのを法皇がご覧になり涙にむせんだと云う話から来ている。
石段の上、江戸時代の建立と言われ、檜皮葺の屋根が特徴的で、赤や黄色の紅葉とのコンビネーションが美しすぎるくらいの山門を潜ると、正面に本堂。放火で焼失する前の本堂の内陣および柱は、飛鳥・藤原様式および平家物語当時の様式を改修の度ごとに残しながら後世に伝えられたもので、外陣は江戸初期の1603年に豊臣秀頼が片桐且元を工事奉行として修理させた桃山様式のものだった。
現在の本堂は5年掛けて2005年に落慶したもの。ヒノキ材で屋根は木柿葺、正面3間奥行3間で正面左右2間、側面1間は跳ね上げ式の蔀戸の内側障子戸で、古式通りに忠実に復元したもの。バックの赤や黄色の紅葉との姿は絵になり過ぎる。
山門入って右手の書院は放火で焼け落ちた本堂の代わりとなるよう2000年に建てられたもの。書院を通して見える真っ赤な紅葉は絵としか思えないような構図。素晴らしすぎる。書院前の手水鉢は秀頼が1601年に寄進したもので、銘が入っている。淀殿は幼くして亡くなった鶴松を弔い、秀頼の身を案じて寂光院の復興に尽力し、徳川家康も協力したと云われている。
書院と本堂の間に四方正面の池。周囲に回遊できる小径がつけられ、どの方向から見ても正面となるように、周りに植栽が施されている。背後の山腹に三段に分かれた小さな滝があり、そこから池に水が流れ込んでいる。
池の横で靴を脱いで本堂に上がる。新本尊像は美術院によって3年半をかけて制作され2005年に完成したもの。ヒノキ材の寄木造で、旧本尊の新造時の姿を忠実に模している。ご本尊の前に座って寂光院のご案内を聞かせて戴く。
本堂前の庭園は平家物語当時のままの姿をとどめているとされる。汀の池は心字池とも呼ばれるが、「大原御幸」で法皇が詠んだ歌「池水に汀の桜散り敷きて 波の花こそ盛なりけれ」から命名された。池の北西に今も「汀の桜」はある。この桜に寄り添うように千年姫小松があったのだが、2000年の放火火災で傷みがひどくなり2004年に枯死したので、幹の部分を残して伐採された。この松も「大原御幸」に登場している。池の周りの紅葉も見事!
庭園の西側の門を出て西側に進むと女院が隠棲していたと伝えられている庵跡がある。その右手奥には女院が使用したと伝えられる井戸(下の写真2)。庵跡を示す碑の前には可愛い合掌地蔵もある(下の写真3)。その奥には舜智殿と云う耐火構造の収蔵庫があり、旧本尊が安置されている(下の写真4)。2005年築で内部は非公開。この奥の庭園の苔はなかなか見事。
汀の池に戻って来ると南側の鐘楼へ。この江戸時代に建立された鐘楼には、「諸行無常の鐘」と称する梵鐘が懸かっているが、祇園精舎の鐘とは何の関係もない。鐘楼の南には松智鳳殿と称する2006年10月に開館した宝物殿(下の写真5)。平家物語ゆかりの文化財等を紹介しており、一角にはミュージアムショップも併設している。30分余りで久々の寂光院拝観終了。
https://www.facebook.com/media/set/?set=a.4987698754633442&type=1&l=223fe1adec
寂光院を出て、さらに道を奥、西に少し坂道を進むと左手に阿波内侍菩提へ上がる石段がある。ここに建礼門院に仕えた阿波の内侍のお墓がある。一番右が彼女の墓で、左に大納言佐局(だいなごんのすけのつぼね)、治部卿局(じぶのきょうのつぼね)、右京大夫と並び、奥に小侍従局(こじじゅうのつぼね)の墓。
折り返し、寂光院入口を過ぎると左(北)側に「高倉天皇皇后 徳子 大原西陵」の案内。鮮やかな紅葉に覆われたこの参道を上がると建礼門院陵。門院は鎌倉時代の1213年に死去され、ここに葬られた。陵墓はもともと境内にあったが、明治以降は宮内省(現・宮内庁)の管理下に移り、境内から切り離された。
寂光院道に戻り、落合の滝の先で府道108号線と別れ、左折して進む。この道は三千院と寂光院を結ぶ道で花の道とも呼ばれている。この季節は花より紅葉。突き当りを山裾沿いに東に折れて進むとすぐにおぼろの清水がある。門院が寂光院へ移ってきた際、この清水のあたりで日が暮れ、朧月夜によって自分の姿がこの水溜りに映り、そのやつれた姿を見て身の上を嘆いたという話が伝えられている。
https://www.facebook.com/media/set/?set=a.4987719507964700&type=1&l=223fe1adec
寂光院から三千院に向かうが、続く
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