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「難民と移民に対する東欧の人々の冷淡な反応は,欧州のリーダーが大量の移民をウィンウィンのうまい話として述べるのを耳にして,多くの者が感じる裏切りの感覚にも根差すものである。オックスフォード大学の経済学者ポール・コリアー(Paul Collier)は,著書Exodus(引用者註:松本裕訳「エクソダス 移民は世界をどう変えつつあるか」,みすず書房)において,貧困国から西欧への人々の移動は,移民に利益をもたらし,また全体として,受け入れる社会の利益である一方で,移民を受け入れた社会の下層階級の人々と,とりわけ彼らの子どもたちがより良い生活を送る機会に悪影響を及ぼしうることを明らかにする。移民から生じる悪影響をリベラルが認めようとしないため,今日,民主主義体制下の多くの国々の政治生活を震撼させている反エスタブリッシュメント(また,とりわけ反主流メディア)の反発が引き起こされた。<br /> 奇妙なことに,人口動態上のパニックは,難民に対する東欧の反応を形成する要因として,最も論じられていないものの一つである。しかし,これは重大な要因である。中東欧の最近の歴史において,国民と国家は不運にも徐々に消滅しつつある。過去25年間で,ブルガリア人の約10%が外国で生活し働くために国を離れた。国際連合の予測によれば,ブルガリアの人口は,2050年までに約27%縮小する。『民族消滅』への警鐘が,東欧の多くの小国に見られる。彼らにとって,移民の到来は歴史から自分たちの民族が消えてしまうことの兆しであり,高齢化する欧州は移民を必要とするという通俗的な主張は,自身の存在への憂鬱な感覚を強くするのみである。何十年もの間ひとりも子どもが生まれていない過疎の村で,地元の老人が難民の定住に抗議する場面をテレビで見ると,双方の立場の人間,つまり難民と,さらには自分たちの世界が消えうせていくのを目撃している高齢の孤独な人々に打ちひしがれる。100年後にブルガリア語の詩がわかる人は残っているのだろうか。」<br />「国境を閉鎖すべきという中欧の人々の要求は,1989年の国境開放後に起こった,地域からの流出の影響に対する遅まきながらの反応でもある。よく知られたジョークで,三人のブルガリア人男性が日本の着物姿で帯刀し,ソフィアの通りを歩いている,というものがある。『お前たちは何者だ,何が望みか?』と困惑した群衆が尋ねる。『われわれは七人の侍である。この国をよりよくしたい』『しかしなぜ三人しかいない?』『われわれ三人のみがとどまったからだ。残りは外国にいる』。公式の統計によれば,2011年に210万人のブルガリア人が国外に住んでいた。この数字は,700万をわずかに超える人口の国にとっては極めて大きい。」<br />「‥‥多数の人々の流出――その大部分は25歳から50歳である――は,ブルガリアの経済と政治を劇的に損ねた。民主的(デモクラティック)な革命として1989年に始まった出来事は,人口動態上(デモグラフィック)の反革命運動になった。IMFは,人々の流出が現在の比率で継続するとすれば,中欧,東欧と東南欧は,2015年から2030年の間に,予想されるGDPの9%ほどを失うと計算した。こうした地域の企業は専門性を有する労働力の不足を絶えず嘆いている。東欧の医療制度においては,十分に訓練された看護師が奪われている。看護師は賃金の低い母国の病院で専門職に従事するよりも,ロンドンで〔家政婦として〕一つの家庭に仕え,何倍もの収入を得ることを望むのである。ブルガリアの最も優秀な学生の大多数は,ブルガリアの大学に申請さえしない。したがって,ブルガリアの大学は能力と大志を奪われている。ブルガリア人の留学生は,ドイツでは中国人の留学生に次いで二番目に多い。さらに国を離れた人びとのほとんどが帰国を計画するものの,帰国は,言うは易く行うは難しである。(中略)『出ていくこと』があまりにも一般的であるというまさにその事実により,戻ることは魅力のない選択肢となる。『負け組』のみが戻ろうとする,という屈折した感覚がある。<br /> 近年,ブルガリア人がどうして相応しくない人々により統治される傾向にあるのかを考える場合,大量の人口流出が原因なのではないかと問わなければならない。国を離れることを決めた人々は,離れた国の改革について全く考えていない。彼は,他者の人生ではなく,自分の人生の運命を変えることに関心を持つ。2013年にブルガリアで起こった大規模な反政府抗議デモは,国境開放のパラドクスをうまく捉えていた。街頭の抗議者は,『われわれは国を離れたくない』と叫んでいたのである。しかし,実際には出国した者もいた。というのはブルガリアをドイツのように機能させるよりも,ドイツに行くほうが簡単だからである。」<br />  イワン・クラステフ著/庄司克宏監訳「アフター・ヨーロッパ――ポピュリズムという妖怪にどう向きあうか」(岩波書店)より<br /><br />プロヴディフ逍遥その1<br />https://4travel.jp/travelogue/11644383

ソフィア逍遥(2019年6月ブルガリア)

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2019/06/16 - 2019/06/20

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タヌキを連れた布袋(ほてい)

タヌキを連れた布袋(ほてい)さん

「難民と移民に対する東欧の人々の冷淡な反応は,欧州のリーダーが大量の移民をウィンウィンのうまい話として述べるのを耳にして,多くの者が感じる裏切りの感覚にも根差すものである。オックスフォード大学の経済学者ポール・コリアー(Paul Collier)は,著書Exodus(引用者註:松本裕訳「エクソダス 移民は世界をどう変えつつあるか」,みすず書房)において,貧困国から西欧への人々の移動は,移民に利益をもたらし,また全体として,受け入れる社会の利益である一方で,移民を受け入れた社会の下層階級の人々と,とりわけ彼らの子どもたちがより良い生活を送る機会に悪影響を及ぼしうることを明らかにする。移民から生じる悪影響をリベラルが認めようとしないため,今日,民主主義体制下の多くの国々の政治生活を震撼させている反エスタブリッシュメント(また,とりわけ反主流メディア)の反発が引き起こされた。
 奇妙なことに,人口動態上のパニックは,難民に対する東欧の反応を形成する要因として,最も論じられていないものの一つである。しかし,これは重大な要因である。中東欧の最近の歴史において,国民と国家は不運にも徐々に消滅しつつある。過去25年間で,ブルガリア人の約10%が外国で生活し働くために国を離れた。国際連合の予測によれば,ブルガリアの人口は,2050年までに約27%縮小する。『民族消滅』への警鐘が,東欧の多くの小国に見られる。彼らにとって,移民の到来は歴史から自分たちの民族が消えてしまうことの兆しであり,高齢化する欧州は移民を必要とするという通俗的な主張は,自身の存在への憂鬱な感覚を強くするのみである。何十年もの間ひとりも子どもが生まれていない過疎の村で,地元の老人が難民の定住に抗議する場面をテレビで見ると,双方の立場の人間,つまり難民と,さらには自分たちの世界が消えうせていくのを目撃している高齢の孤独な人々に打ちひしがれる。100年後にブルガリア語の詩がわかる人は残っているのだろうか。」
「国境を閉鎖すべきという中欧の人々の要求は,1989年の国境開放後に起こった,地域からの流出の影響に対する遅まきながらの反応でもある。よく知られたジョークで,三人のブルガリア人男性が日本の着物姿で帯刀し,ソフィアの通りを歩いている,というものがある。『お前たちは何者だ,何が望みか?』と困惑した群衆が尋ねる。『われわれは七人の侍である。この国をよりよくしたい』『しかしなぜ三人しかいない?』『われわれ三人のみがとどまったからだ。残りは外国にいる』。公式の統計によれば,2011年に210万人のブルガリア人が国外に住んでいた。この数字は,700万をわずかに超える人口の国にとっては極めて大きい。」
「‥‥多数の人々の流出――その大部分は25歳から50歳である――は,ブルガリアの経済と政治を劇的に損ねた。民主的(デモクラティック)な革命として1989年に始まった出来事は,人口動態上(デモグラフィック)の反革命運動になった。IMFは,人々の流出が現在の比率で継続するとすれば,中欧,東欧と東南欧は,2015年から2030年の間に,予想されるGDPの9%ほどを失うと計算した。こうした地域の企業は専門性を有する労働力の不足を絶えず嘆いている。東欧の医療制度においては,十分に訓練された看護師が奪われている。看護師は賃金の低い母国の病院で専門職に従事するよりも,ロンドンで〔家政婦として〕一つの家庭に仕え,何倍もの収入を得ることを望むのである。ブルガリアの最も優秀な学生の大多数は,ブルガリアの大学に申請さえしない。したがって,ブルガリアの大学は能力と大志を奪われている。ブルガリア人の留学生は,ドイツでは中国人の留学生に次いで二番目に多い。さらに国を離れた人びとのほとんどが帰国を計画するものの,帰国は,言うは易く行うは難しである。(中略)『出ていくこと』があまりにも一般的であるというまさにその事実により,戻ることは魅力のない選択肢となる。『負け組』のみが戻ろうとする,という屈折した感覚がある。
 近年,ブルガリア人がどうして相応しくない人々により統治される傾向にあるのかを考える場合,大量の人口流出が原因なのではないかと問わなければならない。国を離れることを決めた人々は,離れた国の改革について全く考えていない。彼は,他者の人生ではなく,自分の人生の運命を変えることに関心を持つ。2013年にブルガリアで起こった大規模な反政府抗議デモは,国境開放のパラドクスをうまく捉えていた。街頭の抗議者は,『われわれは国を離れたくない』と叫んでいたのである。しかし,実際には出国した者もいた。というのはブルガリアをドイツのように機能させるよりも,ドイツに行くほうが簡単だからである。」
  イワン・クラステフ著/庄司克宏監訳「アフター・ヨーロッパ――ポピュリズムという妖怪にどう向きあうか」(岩波書店)より

プロヴディフ逍遥その1
https://4travel.jp/travelogue/11644383

旅行の満足度
3.5
観光
3.5
ホテル
3.5
グルメ
3.0
ショッピング
3.0
交通
3.5
同行者
その他
一人あたり費用
25万円 - 30万円
交通手段
鉄道 高速・路線バス 徒歩
旅行の手配内容
個別手配

PR

  • スコピエを出たバスは,予定から一時間半遅れてソフィアのツェントラルナ・アフトガーラ(中央バスステーション)に到着した。

    スコピエを出たバスは,予定から一時間半遅れてソフィアのツェントラルナ・アフトガーラ(中央バスステーション)に到着した。

  • アフトガーラは真新しくてきれいなのだが,中にある両替所は計算書(レシート)を寄越さず,ごまかす気満々。<br /><br />ブルガリアの旅は喧嘩で始まった。

    アフトガーラは真新しくてきれいなのだが,中にある両替所は計算書(レシート)を寄越さず,ごまかす気満々。

    ブルガリアの旅は喧嘩で始まった。

  • ツェントラルナ・アフトガーラはソフィア中心街から少しだけ離れたところにあるので,周辺にATMは少ない。<br /><br />最寄りの分かりやすいATMは鉄道駅の構内にある。

    ツェントラルナ・アフトガーラはソフィア中心街から少しだけ離れたところにあるので,周辺にATMは少ない。

    最寄りの分かりやすいATMは鉄道駅の構内にある。

  • アフトガーラ近くの宿に荷物を放り込んで,

    アフトガーラ近くの宿に荷物を放り込んで,

  • さっそく街歩きをはじめる。

    さっそく街歩きをはじめる。

  • 他のバルカン諸国と同様に,ソフィアでもカジノが目につく。<br /><br />しかし,たいした数ではない。たぶんバルカンのどこの国の人でも,日本へ来て,街のいたるところで見る「パチンコ店」がすべて公認の賭博場だということを知ったら驚愕するに違いない。

    他のバルカン諸国と同様に,ソフィアでもカジノが目につく。

    しかし,たいした数ではない。たぶんバルカンのどこの国の人でも,日本へ来て,街のいたるところで見る「パチンコ店」がすべて公認の賭博場だということを知ったら驚愕するに違いない。

  • さて,まずは腹ごしらえだ。繁華街の周辺をうろつく。

    さて,まずは腹ごしらえだ。繁華街の周辺をうろつく。

  • 中華料理を出す店を何軒か見かけた。<br /><br />参考までに,このテイクアウト専門店のメニューの概要は次のとおり。数値はいずれも400gあたりの価格で単位はレヴァ(1BGN=約65円)。<br /><br />テイクアウトだから客の中心は地元民だろう。ブルガリア人がどんな中華料理を好むのかを知る手がかりになるかもしれない。<br /><br />もやしサラダ  3.20<br />野菜サラダ  2.80<br />野菜スパゲティ(炒麺)  2.40  <br />鶏肉スパゲティ(炒麺)  3.20<br />野菜炒飯  2.40<br />鶏肉炒飯  3.20(カレー味も同額)<br />野菜炒め(馬鈴薯,きのこ,野菜) 3.20<br />野菜のパン粉揚げ 3.20<br />鶏肉野菜炒め各種(タケノコ,きのこなど)  4.00<br />鶏レバー野菜炒め 4.00<br />宮保鶏丁(鶏肉のピーナッツ炒め)  4.00<br />糖醋鶏塊(鶏肉の甘酢あんかけ)  4.00

    中華料理を出す店を何軒か見かけた。

    参考までに,このテイクアウト専門店のメニューの概要は次のとおり。数値はいずれも400gあたりの価格で単位はレヴァ(1BGN=約65円)。

    テイクアウトだから客の中心は地元民だろう。ブルガリア人がどんな中華料理を好むのかを知る手がかりになるかもしれない。

    もやしサラダ 3.20
    野菜サラダ 2.80
    野菜スパゲティ(炒麺) 2.40
    鶏肉スパゲティ(炒麺) 3.20
    野菜炒飯 2.40
    鶏肉炒飯 3.20(カレー味も同額)
    野菜炒め(馬鈴薯,きのこ,野菜) 3.20
    野菜のパン粉揚げ 3.20
    鶏肉野菜炒め各種(タケノコ,きのこなど) 4.00
    鶏レバー野菜炒め 4.00
    宮保鶏丁(鶏肉のピーナッツ炒め) 4.00
    糖醋鶏塊(鶏肉の甘酢あんかけ) 4.00

  • こちらの店は見事につぶれていた。

    こちらの店は見事につぶれていた。

  • 結局,小さなスカラСкара(グリル)の店でプリェスカヴィツァを買って,店の裏にあるベンチで食べることにした。<br /><br />食べながら思い出した。プリェスカヴィツァってセルビア料理じゃないか。ソフィアで食べてどうすんだ‥‥。毎日同じようなものばかり食べていて,つい脇が甘くなってしまった。

    結局,小さなスカラСкара(グリル)の店でプリェスカヴィツァを買って,店の裏にあるベンチで食べることにした。

    食べながら思い出した。プリェスカヴィツァってセルビア料理じゃないか。ソフィアで食べてどうすんだ‥‥。毎日同じようなものばかり食べていて,つい脇が甘くなってしまった。

  • とはいえプリェスカヴィツァはとても旨い。満足。<br /><br />普段は決して入ることのないこの店↑も,

    とはいえプリェスカヴィツァはとても旨い。満足。

    普段は決して入ることのないこの店↑も,

  • キリル文字で書かれているとなぜか旨そうな印象になってしまうのは,ひとえにプリェスカヴィツァのせいだと思う。<br /><br />ところで,以前の旅行記でキリル文字の「理不尽さ」を書いたことがあるのだが(「バルカンドライブ2200km」その14,キリル文字の「т」は筆記体で「m」になるという話),この看板にはそれとは異なる例が現れている。ブルガリア語では「Д(ラテン文字のD)」の小文字は「g」に変身してしまうのだ(ロシア語の筆記体でも同様)。<br />「何でそうなるんだ!?」と詰め寄りたくなる。初心者への手ひどい仕打ちだ。<br />このような理不尽に使用されてしまった「g」だが,それではキリル文字で「Г(ラテン文字のG)」の小文字(ないし筆記体)はどうなるのかという心配が生じてくる。実は,「Г」の小文字は「s」の左右を逆さにした文字になるのである(たぶん文字化けするのでここには打てない)。勘弁してほしい‥‥「s」の左右対称,すごく書きにくい‥‥(指でやってみてほしい)。<br /><br />それはともかく,この看板↑の四文字目に大文字Дを使っていないのに気づいた。原文で大文字を使っていても,ここは小文字にするのが一般的なルールのようだ。<br />また,アポストロフィが省略されているのを見て「そういえばロシア(ブルガリア)語ではアポストロフィは出てこないな‥‥」と思い出したりする。

    キリル文字で書かれているとなぜか旨そうな印象になってしまうのは,ひとえにプリェスカヴィツァのせいだと思う。

    ところで,以前の旅行記でキリル文字の「理不尽さ」を書いたことがあるのだが(「バルカンドライブ2200km」その14,キリル文字の「т」は筆記体で「m」になるという話),この看板にはそれとは異なる例が現れている。ブルガリア語では「Д(ラテン文字のD)」の小文字は「g」に変身してしまうのだ(ロシア語の筆記体でも同様)。
    「何でそうなるんだ!?」と詰め寄りたくなる。初心者への手ひどい仕打ちだ。
    このような理不尽に使用されてしまった「g」だが,それではキリル文字で「Г(ラテン文字のG)」の小文字(ないし筆記体)はどうなるのかという心配が生じてくる。実は,「Г」の小文字は「s」の左右を逆さにした文字になるのである(たぶん文字化けするのでここには打てない)。勘弁してほしい‥‥「s」の左右対称,すごく書きにくい‥‥(指でやってみてほしい)。

    それはともかく,この看板↑の四文字目に大文字Дを使っていないのに気づいた。原文で大文字を使っていても,ここは小文字にするのが一般的なルールのようだ。
    また,アポストロフィが省略されているのを見て「そういえばロシア(ブルガリア)語ではアポストロフィは出てこないな‥‥」と思い出したりする。

  • そのあとは,

    そのあとは,

  • 地下鉄に乗ってみたりした。<br /><br />ソフィアの地下鉄の切符は,時間制とかではなく乗車一回ごとに買うシステム。運賃は距離に関係なく一律1.60BGNなのでシンプルで分かりやすい。<br /><br />乗車時に切符のバーコード(わりと珍しいのでは。普通はQRコード?)を改札口のセンサーに読ませ,降車時は何もしなくてよい。<br /><br />(1BGN=約65円)

    地下鉄に乗ってみたりした。

    ソフィアの地下鉄の切符は,時間制とかではなく乗車一回ごとに買うシステム。運賃は距離に関係なく一律1.60BGNなのでシンプルで分かりやすい。

    乗車時に切符のバーコード(わりと珍しいのでは。普通はQRコード?)を改札口のセンサーに読ませ,降車時は何もしなくてよい。

    (1BGN=約65円)

  • とある売店で買ったボザ。はったい粉の甘酒である。<br /><br />これは甘いのでグイグイ飲むというわけにはいかないが,これの甘くないタイプのものはとても好きだ。<br />キルギスで毎日飲んでいた「ジャルマ」(「ショロ」とか「マクシム」とも呼ばれる。ショロは製造メーカーの会社名で,マクシムはブランド名だったと思う)がそれだ。ヨーグルトのようなさわやかな酸味と塩味が魅力。<br />専門の屋台が街じゅうに出ていて,どんどんと汗が干上がっていくキルギスの夏で水分補給の命綱だった。<br /><br />バルカンにジャルマのような「甘くない」タイプのものがあるのかどうかは,まだ知らない。<br />

    とある売店で買ったボザ。はったい粉の甘酒である。

    これは甘いのでグイグイ飲むというわけにはいかないが,これの甘くないタイプのものはとても好きだ。
    キルギスで毎日飲んでいた「ジャルマ」(「ショロ」とか「マクシム」とも呼ばれる。ショロは製造メーカーの会社名で,マクシムはブランド名だったと思う)がそれだ。ヨーグルトのようなさわやかな酸味と塩味が魅力。
    専門の屋台が街じゅうに出ていて,どんどんと汗が干上がっていくキルギスの夏で水分補給の命綱だった。

    バルカンにジャルマのような「甘くない」タイプのものがあるのかどうかは,まだ知らない。

  • 青果店には,

    青果店には,

  • おなじみの面々が顔を揃えていた。<br /><br />

    おなじみの面々が顔を揃えていた。

  • オーストリアの大手スーパーマーケットチェーン「BILLA」に入ってみる。<br />

    オーストリアの大手スーパーマーケットチェーン「BILLA」に入ってみる。

  • 店内で野菜スプレッドの売場を探し,見つけた。<br /><br />商品棚では,これまでバルカンドライブの途上にセルビアやその周辺国で見た「アイヴァルAjvar」が鳴りをひそめ,代わりに「リュテニツァЛютеница」が場所を占めていた。<br /><br />旧ユーゴスラヴィア諸国とブルガリアでは,「アイヴァル」か「ニュテニツァ」かで明確な違いがあるようだ。<br /><br />(1BGN=約65円)

    店内で野菜スプレッドの売場を探し,見つけた。

    商品棚では,これまでバルカンドライブの途上にセルビアやその周辺国で見た「アイヴァルAjvar」が鳴りをひそめ,代わりに「リュテニツァЛютеница」が場所を占めていた。

    旧ユーゴスラヴィア諸国とブルガリアでは,「アイヴァル」か「ニュテニツァ」かで明確な違いがあるようだ。

    (1BGN=約65円)

  • 面白いのは,ブルガリアのスーパーには,少数ながらアイヴァルも並んでいるということだ。逆にセルビアのスーパーでは,リュテニツァは売っていなかったように思う。<br />このスーパーには,同系の野菜スプレッドであるザクスカZacuscă(ルーマニア)やピンジュルПинџур(マケドニア)がないのに,アイヴァル(輸入品なのでリュテニツァより高価)だけは売られていた。どういうわけだろう。<br /><br />私のようなよそ者には,アイヴァルとリュテニツァの違いを明快に説明するのは難しい。<br />どちらの瓶詰め製品にもたくさんの銘柄があるのだが,食べてみた限りで感じた点は次のとおり。<br />・アイヴァルは,材料の大半は赤パプリカで,少しナスや唐辛子も入る。トマトは基本的に入らない。瓶詰め製品には辛いものは少なく,ほぼマイルド。「辛口」と謳っていても大して辛くない。<br />・リュテニツァは,赤パプリカのほかにナス・トマト・ニンジンなどが材料になる。ただし,色はアイヴァルと同じような濃いオレンジ色に仕上げている。「リュテニツァ」は「辛いもの」というほどの意味にもかかわらず,味はマイルド。とくに子供向けの製品は「肉なしミートソース」という感じの甘口になっていた。<br />・リュテニツァに較べて,アイヴァルのほうが野菜の粒つぶ感が残っている製品が多かった印象。リュテニツァは総じてなめらか。<br />・両者とも塩味はほとんど感じないので,パンに塗ったり肉料理に添えるのにはよいが,米飯のお供にはならない。どちらもカイマック(クロテッドクリーム)や白チーズとすぐれた相乗効果を発揮する。<br /><br />(1BGN=約65円)

    面白いのは,ブルガリアのスーパーには,少数ながらアイヴァルも並んでいるということだ。逆にセルビアのスーパーでは,リュテニツァは売っていなかったように思う。
    このスーパーには,同系の野菜スプレッドであるザクスカZacuscă(ルーマニア)やピンジュルПинџур(マケドニア)がないのに,アイヴァル(輸入品なのでリュテニツァより高価)だけは売られていた。どういうわけだろう。

    私のようなよそ者には,アイヴァルとリュテニツァの違いを明快に説明するのは難しい。
    どちらの瓶詰め製品にもたくさんの銘柄があるのだが,食べてみた限りで感じた点は次のとおり。
    ・アイヴァルは,材料の大半は赤パプリカで,少しナスや唐辛子も入る。トマトは基本的に入らない。瓶詰め製品には辛いものは少なく,ほぼマイルド。「辛口」と謳っていても大して辛くない。
    ・リュテニツァは,赤パプリカのほかにナス・トマト・ニンジンなどが材料になる。ただし,色はアイヴァルと同じような濃いオレンジ色に仕上げている。「リュテニツァ」は「辛いもの」というほどの意味にもかかわらず,味はマイルド。とくに子供向けの製品は「肉なしミートソース」という感じの甘口になっていた。
    ・リュテニツァに較べて,アイヴァルのほうが野菜の粒つぶ感が残っている製品が多かった印象。リュテニツァは総じてなめらか。
    ・両者とも塩味はほとんど感じないので,パンに塗ったり肉料理に添えるのにはよいが,米飯のお供にはならない。どちらもカイマック(クロテッドクリーム)や白チーズとすぐれた相乗効果を発揮する。

    (1BGN=約65円)

  • そしてデリカでは,キョポオルКьопоолу(キョに強勢)にも出会った。<br /><br />(1BGN=約65円)

    そしてデリカでは,キョポオルКьопоолу(キョに強勢)にも出会った。

    (1BGN=約65円)

  • キョポオルは,焼きナスと少しのパプリカやトマトなどをレリッシュにしたものである。<br /><br />ここまでの文脈から考えると,このキョポオルは,アイヴァルないしリュテニツァの材料を,ナスの割合を大幅に増やして作ったバージョンなのかな,ということになりそうなものだ。<br /><br />ところが,たぶんそうではない。<br /><br />焼きナスの皮を除いてレリッシュないしペーストにする料理というのは,地中海の沿岸部から中東にまたがる広い地域に分布している。隣国ギリシャにも,キョポオルに似た「メリジャノサラタ」というものがある。トルコにもある。上記の地域の至るところにある。<br />フムスのようにしっかりペーストにしたものは「ババガヌーシュ」と呼ばれ,レバノン料理店で最初に食べる一皿となるだろう。<br /><br />だからキョポオルは,社会主義時代に旧東側諸国で広まった野菜スプレッドの兄弟たちとは系統が違うと思う。キョポオルは,アイヴァルの兄弟ではなくて,メリジャノサラタの兄弟というべきであろう。<br /><br />ただし,旧東側諸国の野菜スプレッドは比較的歴史が浅いといっても,その起源がどこかにあるはずだ。もしそれを遡っていき,いつかキョポオルと線がつながるのなら,キョポオルとアイヴァルは,兄弟でなくても従兄弟(いとこ)くらいの関係にはあるのかもしれない。<br /><br /><br />プロヴディフ逍遥その1<br />https://4travel.jp/travelogue/11644383

    キョポオルは,焼きナスと少しのパプリカやトマトなどをレリッシュにしたものである。

    ここまでの文脈から考えると,このキョポオルは,アイヴァルないしリュテニツァの材料を,ナスの割合を大幅に増やして作ったバージョンなのかな,ということになりそうなものだ。

    ところが,たぶんそうではない。

    焼きナスの皮を除いてレリッシュないしペーストにする料理というのは,地中海の沿岸部から中東にまたがる広い地域に分布している。隣国ギリシャにも,キョポオルに似た「メリジャノサラタ」というものがある。トルコにもある。上記の地域の至るところにある。
    フムスのようにしっかりペーストにしたものは「ババガヌーシュ」と呼ばれ,レバノン料理店で最初に食べる一皿となるだろう。

    だからキョポオルは,社会主義時代に旧東側諸国で広まった野菜スプレッドの兄弟たちとは系統が違うと思う。キョポオルは,アイヴァルの兄弟ではなくて,メリジャノサラタの兄弟というべきであろう。

    ただし,旧東側諸国の野菜スプレッドは比較的歴史が浅いといっても,その起源がどこかにあるはずだ。もしそれを遡っていき,いつかキョポオルと線がつながるのなら,キョポオルとアイヴァルは,兄弟でなくても従兄弟(いとこ)くらいの関係にはあるのかもしれない。


    プロヴディフ逍遥その1
    https://4travel.jp/travelogue/11644383

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