2019/06/16 - 2019/06/20
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タヌキを連れた布袋(ほてい)さん
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「数々の保存食のなかでも,赤パプリカとトマト主体のペースト状の『リュテニツァ』は,万人受けする食品として絶大な人気を誇る。パンとリュテニツァとチーズさえあれば,おいしくて十分な栄養がとれる食事となるため,ブルガリア人の間では重宝されている。また,ブルガリア人ならば,老若男女問わず,誰でも一度はリュテニツァ作りの経験があると言ってよい。」
「社会主義時代には製品名もついていなかったリュテニツァだが,現在では,100以上のブランドによって製造・販売されている。ブランド名には,平凡な田舎暮らしを連想させるような地域名や,自家製品を彷彿させようとする古風な女性名,また『ブルガリアの伝統』,『おばあちゃんのリュテニツァ』といった名称が採用されている。」
「現在,リュテニツァはブルガリア固有の伝統とみなされており,地域や国家レベルでその『本来の味』を守るという動きがみられる。その一環として,リュテニツァの産地として有名なプロフディフ州パルヴォマイ地域の特産品は地理的表示保護の対象となり,2013年8月にEUに登録された。この出来事は,ブルガリアがリュテニツァの本場として認められたという意識につながり,国民に大きな喜びをもたらすこととなった。」
「しかしここで忘れてはならないことは,国民食や伝統食とみなされる料理は,多くの場合は外国からの材料や調理法の導入によって形成されたものであり,現時点で『伝統』として認識されるものも,歴史的事実からみればしばしば外来のものであるということである。」
「現在,国民食として親しまれているリュテニツァも,人とモノのグローバルな移動の影響を受けている。そもそも,リュテニツァ作りに欠かせないパプリカとトマトは,17世紀に新大陸への到達とともに欧州にもたらされ,ブルガリアにおいて広く普及したのは19世紀のことである。当初は,赤いトマトに関して毒性があるという迷信があったため,1920年くらいまではトマトの使用範囲は熟れる前の,青い状態の塩漬けに限定されていたという。」
「リュテニツァが今の形態で保存食として広まったのは社会主義時代であり,わずか50年前のことである。それまでは,冬の野菜不足を補うものとして,グリーントマトやカブ,ニンジンなどを塩漬けにして発酵させた『トゥルシア』やザワークラウトに似た『キセロ・ゼレ』がおもに作られていた。ブルガリアの民俗学研究によると,当時の冬の食卓は,本来ブルガリアで収穫できる野菜の塩漬け(キュウリ,キャベツ,カブなど)を中心に,ごく簡素なものであった。
しかし,1944年になると,ブルガリアは社会主義的近代化の路線を歩むことになり,新たな食品の生産・流通システムが整備されていった。そこで,賞味期限の長い瓶詰めの加工食品は,新鮮な野菜や果物よりも保存や再分配に適しており,配給しやすいことから技術的に進化し,新たなレシピが数多く開発されていった。」
「‥‥都市部で作られた瓶詰めの保存食は,農村で伝承された簡素なものではなく,近代的加工処理法を用いた多様なものであった。なぜなら,食品工場で働く女性たちが,そこで新しく開発された数多くの加工食品にヒントを得て,その調味料や具材の配分比を借用しながら,各家庭で自らがピクルスやペーストなどのさまざまな保存食を作るようになったからである。
現在,伝統食品として認識されているリュテニツァも,社会主義期の国営工場で,腐りかけのトマトやパプリカを余すことなく使い切るために,ペースト状にして瓶詰めの保存食へと姿を変えることとなった。その利便性やおいしさに気づいた女性労働者は,リュテニツァのレシピを家庭に持ち帰り,各自の嗜好や用途に合うように試行錯誤して再変換していったに違いない。結果的に,隣人との情報交換や農村出身地との往来によって,リュテニツァ作りという新たな伝統が徐々に全国に普及していき,国民の間で『瓶詰めの万能食』へと再認知されていったのである。さらに,瓶の蓋を閉める装置やパプリカを焼く器具『チュシコペク』などの自家製保存食用の便利なグッズの開発が進むにつれて,ブルガリアの保存食手作り文化が開花していき,食料不足の社会主義時代において人びとの生活を根底から支えていくことになった。」
「1989年の民主化以降,ブルガリアの『瓶詰め経済』は,国民の食生活の基盤としての重要な意味を失うことなく,今もなおGDPには表れない重要な役割を担っている。実際,計画経済から市場経済への移行期において,ハイパーインフレや通貨危機,教育と医療サービスの有料化など数多くの試練のなかで,『瓶詰め経済』の重要性がよりいっそう高まることとなった。」
マリア・ヨトヴァ「ブルガリアの保存食『リュテニツァ』―グローバル経済と『瓶詰め経済』の狭間で」(東京工業大学「ぐるなび」食の未来創成寄附講座監修・阿良田麻里子編『文化を食べる 文化を飲む グローカル化する世界の食とビジネス』(ドメス出版)収録)より
プロヴディフ逍遥その2
https://4travel.jp/travelogue/11644392
- 旅行の満足度
- 4.0
- 観光
- 4.5
- ホテル
- 4.0
- グルメ
- 3.5
- ショッピング
- 3.0
- 交通
- 4.0
- 同行者
- その他
- 一人あたり費用
- 25万円 - 30万円
- 交通手段
- 高速・路線バス 徒歩
- 旅行の手配内容
- 個別手配
-
ソフィアからプロヴディフまでバスで約2時間。
正午発のバスの切符を,当日の朝8時頃にツェントラルナ・アフトガーラ(中央バスステーション)の窓口で購入。9.50BGN。
(1BGN=約65円) -
バスは,鉄道のプロヴディフ中央駅前のバス停に到着した。
-
プロヴディフの宿は,プロヴディフ中央駅からそんなに離れていないところにあるアパートメントの一室を借りた。
-
新築の,引渡しが済んだばかりのような物件で,共用部分はまだ工事中で配線がむき出しのままだったりする。
調度品やキッチンはすべて新品のピカピカで申し分なし。 -
ヨーロッパなのでもちろん電気コンロなのだが,これまでの宿で見た旧式のセラミックヒーターではなく,最新式のラジエントヒーターであった。
外見は日本のIHクッキングヒーターとさして変わらないが,トッププレート自体が熱くなる点はセラミックヒーターと同じだ。
火力調整のつまみなどはなく,シンプルなタッチパネルがあるだけ。こういうものは「感覚的に」操作できるように作られているものだが,日本人とヨーロッパ人では「感覚」自体が異なるので,解読にはやや時間を要する。面白かったが。 -
さて,プロブディフの街を歩きまわる前に,プロヴィディフから出る方法を算段しておかなければならない。プロヴィディフからヴェリコ・タルノヴォへ向かうにはどうしたらいいのか。
まずアフトガーラ・ユク(南バスターミナル)へ行ってみるが,ここからタルノヴォ行きのバスは出ていなかった。
窓口で「どこへ行けばいいのか?」と訊いても,係員の女が居丈高に「ここじゃない!」と言って追い払おうとする。もちろん引かずに「アフトガーラ・セヴェル(北バスターミナル)か?」と何度も問いただすと,面倒くさそうに頷いている。
そこでアフトガーラ・セヴェルへ向かう。
市内バスの路線図は,おもなバス停に掲示されている。
バスの運賃は,乗車時に車掌へ現金で支払えばよいようだ。 -
バス停の近くに自動券売機を見つけたが,そのあとすぐにバスが来てしまったので操作してみる時間がなかった。
たぶん,時間制のチケット(1時間券とか24時間券とか)などはここで購入するのだろう。 -
アフトガーラ・セヴェル(北バスターミナル)方面へ行くバスは12番。
プロヴィディフ中央駅前のバス停から乗車する場合は,東向きのバスに乗ることになる。 -
バスの切符。
-
途中でマリツァМарица川を渡る。
-
アフトガーラ・セヴェル(北バスターミナル)に到着。
12番バスはアフトガーラ・セヴェルが終着ではないので,アフトガーラから200mほど離れたバス停(フィリポヴォ鉄道駅前Срещу гара филипово)にしか停まらない。だから事前に位置関係を把握しておいたほうがよいかも。
(バス停のGoogleマップ座標:42.165795,24.737482) -
アフトガーラの構内。
カフェ兼売店,待合室,切符売場などがある。
ブルガリアのコーヒー自販機には,このあと何度もお世話になった。 -
アフトガーラ・セヴェルのバス時刻表。
赤線より左が出発便,右が到着便の時刻。 -
ヴェリコ・タルノヴォ行きのマルシュルートカは日に2便(08:00,13:30)しかないようだ。思っていたより少ない。
さっそく切符を確保しようと窓口へ行くと,親切な老女が一生懸命に「当日発売しかない」と説明してくれる。
丁重に礼を述べてその場を辞した。 -
さて,今日は中途半端な時間になってしまった。スーパーマーケットを数軒巡って食料などを調達することにしよう。
-
レンガのごとき塊で売られている白チーズ。
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やや高級そうなキセロ・ムリャコ(ヨーグルト)。
左から,ヤギ,ヒツジ,乳牛,水牛の乳で作ったものが並んでいる。 -
乳製品にはこんなのもあった。
ブランド名の下に「カイマックКаймак」とあって,その下に「10%」と書かれている。
カイマック(クロテッドクリーム)の乳脂率が10%というのはちょっと考えられないので,よく読んでみると,これは「カイマック入りヨーグルト」というものであった。
カップに入ったヨーグルトの上から少量のカイマックを流し入れるとそれが層になり,最初のひと口がとてもクリーミーに感じられるということだろうか。
ヨーグルトの乳脂肪分はいくつかのバージョンがあり,2%,4%,6%という姉妹品があった。 -
これは初めて見た乳製品。「カタックКатък」と書いてある。
カタックは,ミルクを煮詰めてから自然発酵させて長期間熟成したもののようだが,↑を食べた限りでは「塩味のサワークリーム」という感じのものだった。
同系と思われる名前の乳製品が,広く中央アジアなどに分布している。 -
ブルガリアの鯖缶。
-
パックされたキフラ(コロネ)。メーカーは「クロワッサン」と称している。
ヨーロッパ人はこの手のものが大好き。 -
このスーパーではリュテニツァのほかに,ピンジュル,キョポオル,アイヴァルが揃い踏み。
下段の隅のほうにはマリザーノМалиджаноが写っている。メリジャノ・サラタのマケドニア版。 -
寿司なんぞも売っていたが,もちろん食べたくなるような代物ではなく(8.99BGN),パンを買う。
(1BGN=約65円)
これはパン売場のスライサーの動き↓(動画0分27秒)
https://youtu.be/H-t4r4jQTSI -
きれいにスライス完了。
-
ビールは,2リットルとかそれ以上のサイズのペットボトルで売られている。写真↑はシューメンスコ。
私はビールを「陽が明るい時間帯に飲むもの」と考えているので,レンタカーをしている間はあまり飲む機会はなかったが,ここからは遠慮なく飲むことができる。 -
ところがブルガリアもさる者,ビールどころかペットボトル(1.5L)入りのワインを繰り出してきた。
まるで醤油とみりんを積みあげているかのように見えるが,はたして味は決して悪くないワインだった。
1.5Lで5.49BGNだから,普通のワインボトルに換算すると一本180円弱ということになる。
ペットボトルに小さな紙片が貼ってあるのが分かるが↑,これにはブドウの品種名が記してあった。ブルガリアの固有種のようだった。
つまり,何でもかんでもブレンドして出荷しているという類のワインではないということだ。 -
ハルヴァが売っていたので,つい買ってしまった。
ハルヴァは中近東,シルクロード,旧ソ連圏,北アフリカ,北インドという広大な地域に分布する,ナッツなどの油脂をたっぷり含んだごく甘い菓子。
逆に,上記の地域以外ではほとんど見かけることはない。
ヌガーのようなもの,チョコレートっぽいもの,羊羹くらい柔らかなものなど地域によってさまざまな形状がある。
ウエハースに挟んであるもの↑は初めて食べるかもしれない。 -
醤油がたくさん売っていたので,
-
ひとつ買ってみる。
醤油と白ワインと砂糖があれば,何か和風の味つけの料理を作れそうだ。 -
そこでこの日はキッチンで米飯を炊いた。
米はセルディカ(セルディカは首都ソフィアの雅名)という品種だった。
(つづく)
プロヴディフ逍遥その2
https://4travel.jp/travelogue/11644392
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