2017/08/10 - 2017/08/11
4位(同エリア412件中)
エンリケさん
この旅行記スケジュールを元に
2017年の夏休み。
この年の夏は、どこか涼しいところに行こうとヨーロッパの北の方を検討。
航空券を検索していたところ、見つけたのは、お手頃価格のアムステルダム往復のチャイナエアラインの便。
オランダは2002年の南仏~バルセロナの旅で、トランジットに運河クルーズをしたくらいでまともに訪れたことはなかったし、英国離脱で揺れるEUの発祥地マーストリヒトに行ってみたかったこともあってこれに決定。
旅程を組んだところ、オランダの美術館や美しい景色巡りを中心に、ベルギー南部のワロン地方(リエージュ、ナミュール、ディナン)や、カール大帝ゆかりの地、ドイツのアーヘンも訪れる盛り沢山の旅に。
まずはオランダの事実上の首都、デン・ハーグの美術館巡りから旅行記を始めます。
<旅程表>
2017年
〇8月10日(木) 成田→台北→
〇8月11日(金) →アムステルダム→デン・ハーグ
→デルフト→デン・ハーグ
8月12日(土) デン・ハーグ→アイントホーフェン
→マーストリヒト
8月13日(日) マーストリヒト→リエージュ→ナミュール
→ディナン→ナミュール→リエージュ
→マーストリヒト
8月14日(月) マーストリヒト→アーヘン→アムステルダム
8月15日(火) アムステルダム→ザーンセ・スカンス
→アムステルダム
8月16日(水) アムステルダム→
8月17日(木) →台北→成田
- 旅行の満足度
- 5.0
- 観光
- 5.0
- ホテル
- 3.0
- 交通
- 5.0
- 同行者
- 一人旅
- 一人あたり費用
- 15万円 - 20万円
- 交通手段
- 鉄道 徒歩 飛行機
- 航空会社
- チャイナエアライン
- 旅行の手配内容
- 個別手配
-
2017年8月10日(木)
この年の夏休みはお盆休みを絡めてヨーロッパへ。
旅の始まりはいつもの成田空港。
今回は台北経由のチャイナエアライン(中華航空)利用のため、第二ターミナルからの出発となります。
酷暑のため移動するだけで汗びっしょりになるこの時期、近年日本を訪れる外国人が増大していることが、空港の体臭の濃さで分かりますね。 -
離陸時間は18時20分なのですが、逸る気持ちを抑えられず、空港へは15時30分と早く着き過ぎてしまったため、すし三崎丸で出発前の日本食。
やっぱり日本食は美味いわ~。 -
さて、今回利用するのは台湾のフラッグキャリア、チャイナエアライン。
海外旅行経験39回目にして初めての利用です。
購入は出発まで3か月を切った5月下旬、今はなきDeNAトラベル(現在はエアトリに社名変更)にて。
ネットで検索し、航空券代110,000円+燃油20,960円+空港施設使用料2,610円+取扱手数料5,400円=合計138,970円と、この時期にしては手頃な値段だったことから購入したものでした。 -
18時20分、台北桃園国際空港行きチャイナエアラインCI17便は、定刻通り成田空港第二ターミナルを離陸。
20時に機内食が提供されますが、いたってスタンダードな味です。 -
21時10分(時差マイナス1時間)、チャイナエアライン機は4時間弱で乗り継ぎ地の台北桃園国際空港に到着。
そういえば台湾にはこれまで2回行ったことがありますが、いずれも帰りは松山発だったため、桃園空港内で過ごすのは初めて。
どんなところかと思って空港内をうろうろしていると、噂に聞いていたこんなショップが。
親日と“カワイイ”好きの国民性でしょうかね(笑)。 -
日付が変わって8月11日(金)0時35分、アムステルダム行きチャイナエアラインCI73便は、台北桃園国際空港を離陸。
コースは中国上空を避けるように、日本海を通ってロシア上空を飛んでいきます。
台北まで行ったのにまた戻ってくるのかと、何だか無駄なことをした気分・・・。
しかし、中国上空を避けるのは政治的な問題かと思っていたら、帰路は普通に中国上空を飛んでいました・・・。
単に気流などの問題だったのでしょうか? -
2時、こんな真夜中なのに、食事の提供。
さすがに眠くて、全部食べ切れず残してしまいました・・・。 -
機内は眠らせたいんだか眠らせたくないんだか、こんな怪しい照明。
結局、あまり眠れずに、映画を鑑賞。
日本映画を探していて見つけたのが、miwaと坂口健太郎W主演の“君と100回目の恋”。
通常であれば、いいトシした男性が映画館に観に行くような映画ではないですが、実際観てみると、俳優の演技やmiwaのストーリーにマッチした歌詞の劇中歌も手伝って、これがなかなかの感動作。
わたしもループにハマってしまい、何度も繰り返し観ては泣いてしまいました・・・。 -
チャイナエアラインには泣ける映画を観させてもらって満足してしまい、もう家に帰ってもいいかなと思いましたが(笑)、旅行はこれからが本番。
機内での朝食が済んで7時30分(台北との時差マイナス6時間)、搭乗してから13時間が経過し、機体はいよいよ目的地のアムステルダムに近づいてきました。 -
7時50分、飛行機の窓からは、オランダっぽい低地帯と、オシャレな屋根の家々が。
オランダに来たな~という実感です。 -
そして機体は到着予定時間を20分ほどオーバーした8時、アムステルダム・スキポール空港に無事着陸。
降機するとすぐに、パスポートチェックの列。
シリア難民問題や近年英仏を中心に続発しているテロ事件を受け、空港のセキュリティチェックが厳しくなっていることをうかがわせます。
その後の入国審査でも、ヨーロッパでは珍しく渡航目的やどこから来たかを英語で聞かれますが、問題なく通過。
そんなこんなでも手続きは素早く、8時15分には空港と連結しているスキポール空港駅まで降りて来られました。スキポール空港 (AMS) 空港
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空港駅では自動券売機で第一の目的地、デン・ハーグ中央駅(Den Haag Centraal)までの切符を購入。
代金は9.3ユーロにカード使用手数料0.5ユーロが加算され、合計9.8ユーロ(当時は1ユーロ133円として約1,300円)。
空港からデン・ハーグまで30分程度なのに、やはりヨーロッパの北の方は物価が高い・・・。
ちなみに、切符の買い方や時刻表は、以下のHPを参照。
【ユアトリップ オランダ鉄道(NS:オランダ国鉄)のチケット予約・購入 徹底解説】
https://urtrip.jp/nederland_train_tickets/
【オランダ鉄道HP(時刻表あり)】
https://www.ns.nl/en -
そして8時27分、デン・ハーグ中央駅行きの列車に乗車。
スキポール空港は到着口から鉄道のホームまでの距離が近く、ここまで流れがスムーズ。
ちなみに現地の人々は皆長袖を着ていますが、こちらは気温が20℃以下と涼しく、早くも秋の気配が漂っています。スキポール駅 駅
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デン・ハーグまでの道中、車窓からの風景はこんな感じ。
ところどころに緑が広がるヨーロッパらしい景色ですね。 -
9時近くなり、デン・ハーグ中央駅に近づいてきました。
駅近くには近代的なビルが建っていますが、建物の形状が“THE オランダ”って感じ。 -
9時、デン・ハーグ中央駅に到着。
駅の天井はこれまたオランダらしいデザイン性あふれる造り。デンハーグ中央駅 駅
-
さて、まずはデン・ハーグの街を、予約したホテルのあるノールドアインデ宮殿近くの通りまで歩いて行きます。
・・・この時期のオランダは日中の気温が20℃前後で、散策には最適の季節。
美しい街並みも手伝って、街歩きが楽しいです。 -
まだ早朝の静かな商店街を通り抜けると・・・。
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青空を映したきれいな水面に、クラッシックなレンガ造りの建物が映える美しい池沿いのスポットに到達。
あれがオランダの立法、行政の中心、ビネンホフ(Binnenhof)。
早く見学したい思いでしたが、重い荷物を引きずっているため、ひとまず宿への道を急ぐことにします。 -
そして9時20分、ビネンホフの先、ノールドアインデ宮殿近くの運河沿いにあるこの日の宿、“ホテル・ルーム11”(Hotel Room 11)に到着。
Agodaで予約した1泊42.85ユーロ(約5,700円、都市税3.35ユーロ含む)の、2つ星ながらトイレ・バス共用の宿で、オランダの物価やビネンホフの近くという立地条件を考えれば、これでもかなりオトクな方。
1階はカフェ&バーとなっていて、ホテル部分は2・3階となっています。 -
まだチェックイン時間には早すぎたため、とりあえず荷物を1階のカフェ&バーにいた従業員の女性に預かってもらいます。
ちなみにこの女性、見た目パンク系のファッションで、話しかけたら怒られるかと思いましたが(笑)、話してみると丁寧で優しい感じ。
まさにオランダクオリティか(笑)。
写真は夕方チェックインした後の、3階にある部屋の様子。
きれいに掃除されていて、共用のバスルームで使うシャンプーやジェルも置いてありました。
部屋は運河沿いの通りに面しているため、夜は1階のバーから声が聞こえてきますが、深夜までには静かになり、眠れなくはない感じ。 -
さて、9時30分、荷物を預かってもらって身軽になったところで観光開始。
こちらはホテル前の運河の風景、アムステルダムでなくとも、オランダっぽい感じですね。 -
ロンドンのリージェント・ストリートのような、湾曲した商店又はオフィス街の道を進み・・・。
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再びビネンホフにやってきました。
先ほどはスマホでしたが、ちゃんとしたカメラでも水面に映える美しい景色をパチリ。ビネンホフ 城・宮殿
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10時、そのビネンホフの中へ。
中庭は入場無料で誰でも入れるようになっていて、先にやってきていた欧米系の観光客たちが記念撮影をしているところでした。
このビネンホフ、13世紀から17世紀にかけて造られたオランダの立法、行政の中心となる建物で、アーチの向こうに見えるのが、“騎士の館”(Ridderzaal)と呼ばれる現在の国会議事堂。
これらの建物群の中で最も古く、13世紀のホラント伯、フロリス5世(在位:1256-1296年)の居城がもとになっています。 -
中庭で写真を撮っていたところ、突然、背広を着た政治家らしき人と、カメラやマイクを構えたマスメディアらしき人々が現れ、観光客は皆注目。
こういう光景が見られるのも、オランダの政治・行政の中心地、デン・ハーグならではといったところか・・・。 -
ビネンホフの建物内部の見学はガイドツアーのみとのことで、今回は時間の都合で見送り。
以上でビネンホフの見学を終え、出口に向かうとこれまた立派な門。
この門を出ると・・・。 -
そう、デン・ハーグでいちばん訪れたかった場所、マウリッツハイス美術館(Mauritshuis)に。
オランダ絵画の巨匠、レンブラントやフェルメール、さらには、フランドルの画家、ルーベンスやヨルダーンスなどの名画を擁する、世界的にも有名な美術館です。
この美術館、もともとは17世紀のブラジル総督、オラニエ家のヨハン・マウリッツ侯(1604-1674年)の私邸として建てられ、ナポレオン戦争後のオランダ王国の時代の1822年に王立美術館として開館。
美術館としても、英国のナショナル・ギャラリー(1824年開館)などと並ぶ古い歴史を誇っているのですね。マウリッツハイス美術館 博物館・美術館・ギャラリー
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美術館の前にはフェルメールの“真珠の耳飾りの少女”を看板にしたこんな広告が。
フェルメールは日本だけではなく、世界的に人気のコンテンツのようですね。 -
入館料14ユーロ(約1,860円、常設展だけなのに高い・・・)を払って早速入場。
美術館内は、広さはそれほどでもありませんが、さすが元侯爵の住まいだけあって、豪勢な造り。
鮮やかな壁一面に名画がズラリと飾られています。 -
ここでいくつか名画をご紹介。
こちらは珍しいヤン・ブリューゲル(父)(Jan Brueghel Ⅰ、1568-1625年)とペーテル・ぺウル・ルーベンス(Peter Paul Rubens、1577-1640年)の合作で、“アダムとエヴァの堕落とエデンの園”(The Garden of Eden with the Fall of Men、1615年)。
2人ともフランドル地方のアントワープ(アントウェルペン)を拠点としていた画家ですが、まさか両巨匠の合作があるとは思いも寄りませんでした。
バロック絵画に詳しい方なら同意されると思いますが、ルーベンスが人物、ヤン・ブリューゲルが背景を手掛ければ、まさしく“鬼に金棒”ですね。 -
次はルーベンスの単独作品、“女性の肖像、おそらくクララ・フールマン”(Portrait of a Woman, possibly Clara Fourment(1593-1643年)、1630年)。
クララ・フールマンとはルーベンスの2人目の妻、エレーヌ・フールマンの姉で、クララの夫、ペーテル・ファン・ヘッケが、彼女の左側に同じような服を着て並んでいたものと推測されています。
【ギネスと雨の国アイルランド(1) ミュンヘンのアルテ・ピナコテークのルーベンス作“エレーヌ・フールマンの肖像”】
https://4travel.jp/travelogue/11056261#photo_link_40596151 -
続いてもルーベンス、“聖母被昇天のモデル”(“Modello” for the Assumption of the Virgin、1622-25年)。
どこかで見た絵だと思っていたら、アントワープのノートルダム大聖堂で見た“聖母被昇天”の祭壇画にそっくり。
【ベルギー・フランドル紀行(4) アントワープのノートルダム大聖堂の祭壇画“聖母被昇天”】
https://4travel.jp/travelogue/10454082#photo_link_18951179
この作品はノートルダム大聖堂の祭壇画作成のための“モデル”だったのですね。 -
次もルーベンス、“ろうそくを持つ老女と少年”(Old Woman and Boy with Candles、1616-1617年)。
製作年代からいってルーベンスの方が先か、ろうそくの炎とその影を巧みに使い、“夜の画家”と呼ばれたロレーヌ地方出身の名匠、ジョルジュ・ド・ラ・トゥール(1593-1652年)の作品と非常によく似ています。
【晩夏のアルザス・ロレーヌ(10) ナンシーのロレーヌ博物館のジョルジュ・ド・ラ・トゥール作“読書する聖ヒエロニムス”】
https://4travel.jp/travelogue/11289973#photo_link_50830675
ルーベンスはイタリア修行時代にカラヴァッジオ(1571-1610年)の作品から劇的な明暗の対比や写実的な技法の影響を受けたと言われていますが、それがまさに凝縮された作品。
彼はこの絵を売らずに手元に残しておいたそうで、それは、上記の技術が詰まったこの作品を、工房の弟子たち(ラ・トゥールも?)の教材として描いたためではないかと言われているそうです。
ちなみに老女と少年が持っているろうそくの長さは、それぞれの寿命の残り時間の長さを表すとか・・・そういわれて見ると、ちょっとコワい作品ですね。 -
次は美術館の入口にも看板として掲げられていた、同じ題名を持つ2つの作品を比較したコーナー。
ひとつは、フランドル地方アントワープの画家、ヤコブ・ヨルダーンス(Jacob Jordaens Ⅰ、1593-1678年)の、“オランダの格言”を題材にした作品、“大人が歌えば子供が笛吹く”(As the Old Sing, So Pipe the Young、1638年)。
こちらは題名そのままに、一家団欒している家族の楽しい雰囲気が感じられる作品となっています。
ただ、中央の女性がかぶっている羽帽子や、左側後方の男性が吹かしているバグパイプなど、見る人によっては堕落したイメージを与える要素が描かれているのだとか・・・。 -
もうひとつは、オランダ、ライデンの画家ヤン・ステーン(Jan Steen、1625/26-79年)が1665年に描いた、ヨルダーンスと同名の作品。
こちらの方は、ひとつの部屋に集まった人々が、大人から子どもまで、だらしない様子で飲酒したりパイプをふかしたりしていて、先のヨルダーンスの作品と違って堕落した感じに描かれています。
実は、題名となっているオランダの格言、“大人が歌えば子供が笛吹く”(As the Old Sing, So Pipe the Young)とは、“子供は年長者のまねをするから両親は言動に気をつけなければならない”という道徳的な教えを示したもの。
ステーンの方はこの格言の真の意味に則り、“親が酒を飲むと子どもはパイプをふかす”という享楽的な場面を描くことにより、鑑賞者に示唆を与えようとしたのだとのこと。
同じ格言をテーマにした絵画でも、ヨルダーンスのアプローチと違って、鑑賞者に直接、戒めを与えるような感じの絵に仕上がっているのが面白いところです。
【マウリッツハイス美術館HPによる絵画の紹介】
https://www.mauritshuis.nl/en/discover/exhibitions/steen-jordaens/ -
そんな詳しい解説がなされている作品群の鑑賞を続け、いよいよ次は・・・。
-
そう、ヨハネス・フェルメール(Johannes Vermeer、1632-75年)が自らの生まれ育った街を描いた風景画の傑作、“デルフトの眺望”(View of Delft、1660-1661年頃)。
陰っている雲や、その間から覗く青空の具合が、まるで生きている本当の空のようで、何ともたまりませんね。 -
高解像度にしてパチリ。
4トラベルのサイトレベルでは見た目は変わらないか・・・。
フランスの作家マルセル・プルースト(1871-1922年)は、その著書、“失われた時を求めて”の中で、登場人物のひとりにこの絵を鑑賞させているそうですが、プルースト本人も、1902年にマウリッツハイス美術館で、1921年にはパリのオランダ絵画展覧会でこの“デルフトの眺望”を観て、この作品を、“この世で最も美しい絵”と評したのだそうです。
【マウリッツハイス美術館HPによる絵画の紹介】
https://www.mauritshuis.nl/en/explore/the-collection/artworks/view-of-delft-92/ -
そして、“デルフトの眺望”の反対側には、フェルメールのあまりにも有名な作品、“真珠の耳飾りの少女(青いターバンの少女)”(Girl with a Pearl Earring、1665年頃)が。
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こちらも高解像度にしてパチリ。
この“フェルメールブルー”とも呼ばれる青いターバンを巻いた少女、フェルメールの娘であるマーリアという説もあるようですが、実在の人物ではなく、当時流行していた“トローニー”(Tronies、習作のため、誰とは特定されない人物の胸から上を描いた作品)と呼ばれるジャンルの作品であったとのこと。
そのために却って、“描かれている人物は誰か”という謎が深まり、より多くの人々を惹きつける作品になったと言えますね。 -
ちなみに“真珠の耳飾りの少女”の大きさはこんな感じ。
モナ・リザもそうですが、写真で見たときに実物よりも大きく見えように感じるのは、作品自身に込められたパワーのせいなのでしょう。 -
次はフェルメール作品の中で唯一現存する神話画、“ディアナとニンフたち”(Diana and her Nymphs、1653-54年)。
古代ローマの詩人、オウィディウス(BC43-17/18年)の“変身物語”に登場する“狩猟と月の女神”ディアナと、その侍女であるニンフたちを描いた作品です。
狩りに出た王子アクタイオンが、偶然、沐浴するディアナを目撃してしまい、女神の怒りに触れて鹿に変えられ、猟犬たちにかみ殺されてしまうという物語で、描かれているのはまさに事件の発端となる沐浴の直前のシーン。
この絵は1999年までは右上に青い空が見えていたのですが、修復の際、青空の部分からフェルメールの時代には存在しなかった絵の具の成分が発見され、後世の加筆ということで、取り除かれたとのこと。
結果、暗い絵になってしまいましたが、フェルメールという世界的なアーティストなだけに、とことんオリジナルを尊重するものなのですね。 -
マウリッツハイス美術館のフェルメールの作品は以上。
次はフェルメールと同時代のライデンの画家、ハブリエル・メツー(Gabriel Metsu、1629-1667年)の、“作曲をする若い女性”(A Young Woman Composing a Piece of Music、1662-63年)。
女性の優美な姿や、サンタクロースのような当時の流行りの(?)衣装が印象的な作品ですが、どこかで見た感じのする絵だなと思っていたら、この2年前に、ダブリンの国立美術館でも、フェルメールと並んで彼の作品を鑑賞していました。
【ギネスと雨の国アイルランド(9) ダブリン国立美術館のメツーの作品】
https://4travel.jp/travelogue/11099107#photo_link_42341768 -
ハーレムの画家、フランス・ハルス(Frans Hals、1582/83-1666年)の、“笑う少年”(Laughing Boy、1625年)。
昔、美術の教科書で見て印象に残っていた絵でしたが、まさかこんなところにあったとは。
また、“少女”でなく“少年”であったことも驚き。 -
そして、たくさんの人々が集まるこの部屋の中心にあるのは・・・。
-
レンブラント・ファン・レイン(Rembrandt van Rijn、1606-69年)の“テュルプ博士の解剖学講義”(The Anatomy Lesson of Dr. Nicolaes Tulp、1632年)。
さすが、地元オランダでもすごい人気です。 -
この美術館にはほかにもレンブラント絵画がたくさん。
こちらは“スザンナ”(Susanna、1636年)。
なぜ裸かというと、これは旧約聖書にあるユダヤ人の人妻スザンナの物語で、沐浴中に長老たちに誘惑されている場面を描いたものだから。
これだけだと分かりにくいので・・・。 -
こちらは2008年にベルリンの国立美術館(絵画館)を訪れた時に撮影した、レンブラントの“長老たちに脅かされるスザンナ”(Susanna and the Elders、1647年)。
これなら、誘惑する長老たちも描かれていて、絵画の意味も分かりやすいですね。
ちなみにスザンナは長老たちの誘惑を拒否し、怒った長老たちはスザンナを姦通罪で告発しますが、そこにあらわれた預言者ダニエルが、長老たちにスザンナはどこで姦通したのか問いただすと、長老たちはそれぞれ別の返事。
結局、長老たちの嘘はばれ、スザンナは罪を免れたという・・・。
【MUSEY~長老たちに脅かされるスザンナ】
https://www.musey.net/1465 -
続いてもレンブラント、“羽飾りのある帽子をかぶる男のトローニー”(“Tronie” of a Man with a Feathered Beret、1635-40年)。
こちらも“トローニー”なので、“真珠の耳飾りの少女”と同様に架空の人物を描いた作品ですが、昔、教科書か何かで見て以来、レンブラント本人とばかり思っていました・・・。
【マウリッツハイス美術館HPより絵画の紹介】
https://www.mauritshuis.nl/en/explore/the-collection/artworks/tronie-of-a-man-with-a-feathered-beret-149/ -
で、こちらはレンブラント本人の肖像画(Portrait of Rembrandt with a Gorget、1629年以降)。
上のトローニーよりも薄い顔ですね(笑)。 -
そしてこちらは80点近くあると言われているレンブラントの自画像の中でも最晩年のもの(Self-Portrait、1669年)。
確かに若いころの面影はありますが、彼は私生活においては妻や多くの子どもに先立たれるなど不幸だったようで、この肖像画からは、どこか諦念のようなものが感じられるところです。 -
最後はルネサンス期のドイツの画家、ルーカス・クラナッハ(Lucas Cranach Ⅰ、1472-1553年)の“聖母子”(Virgin and Child、1515-20年)。
時代的にはこれまで見てきたフランドルやオランダ絵画からはひと昔前のバリバリの宗教画で、この中にあると異色に感じられますね。
11時30分、以上でマウリッツハイス美術館での絵画鑑賞を終了。
そこそこじっくり観て、所要時間は1時間30分ほどでした。 -
さて、次はマウリッツハイス美術館とセットで入場できるという、ビネンホフと道路を挟んで向かいにある“ギャラリー・プリンス・ウィレムⅤ”(Gallery Prince Willem Ⅴ)へ。
オランダ王国初代国王ウィレム1世の父、オラニエ公ウィレム5世(在位:1751-1806年)が収集したフランドル絵画などを展示しているギャラリーですが、休憩時間中だったのか、この時はなぜか入れず。
仕方なく、記念撮影だけして次のスポットへの道を急ぐことにします。
ちなみに隣は中世の拷問器具や絵画などを展示している監獄博物館。
こちらは何となく想像できるので(笑)、時間の関係でパスさせていただきました。
それにしても、歩道には自転車があちこちに。
この後アムステルダムでも実感しましたが、やはりオランダは“自転車の国”ですね。監獄博物館 博物館・美術館・ギャラリー
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ビネンホフの周りには、赤やピンクのかわいらしい花々。
文字通り、オランダの美しい街並みに花を添えていますね。 -
12時、ビネンホフの北側、“ランゲ・フォールハウト宮殿”内に2002年にオープンしたという、だまし絵で有名なエッシャー(Maurits Cornelis Escher、1898-1972年)の美術館にやってきました。
【エッシャー美術館(日本語版)】
https://www.escherinhetpaleis.nl/?lang=jaエッシャー美術館 博物館・美術館・ギャラリー
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入館料9.5ユーロ(約1,270円)を払って見学開始。
この建物は、第3代オランダ国王ウィレム3世の王妃、エンマ(1858-1931年)の冬の宮殿だったところで、王宮の雰囲気をところどころに感じられるのも特徴となっています。 -
部屋を進んでいくと・・・なるほど、確かに宮殿ぽい感じはしますね。
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館内に飾られていたエッシャーの作品をご紹介。
“セングレア、マルタ”(Senglea, Malta、1935年 木版画)。
マルタ共和国のセングレアの街を描いた彼の初期の作品で、まだ“だまし絵”の要素はなく、普通の風景画のように見えますね。 -
その3年後の作品、“昼と夜”(Day and Night、1938年 木版画)。
ここで急に作風が一変、ジグソーパズルのような、トリッキーな絵に。 -
“空と水Ⅱ”(Sky and Water Ⅱ、1938年 木版画)。
こちらもジグソーパズルのような繰り返し模様が特徴となっていますね。
エッシャーはスペインを旅行した際、アルハンブラ宮殿の“二姉妹の間”の天井のようなモザイク模様に深い感銘を受けたようで、その影響からこんな世界観の作品が生み出されたと言われています。 -
こちらはエンマ王妃の居間(Sitting room)だったところ。
こんな空間の中にエッシャーの作品が並べられています。 -
さらに時代は進み、より複雑な作風になったのが、こちらの“相対性”(Relativity、1953年 リトグラフ)。
3つの引力が交差する奇妙な空間が描かれており、階段を昇り降りする人たちは、同じ建物内にいるように見えて、異なる世界にいるという・・・。 -
“凸面と凹面”(Convex and concave、1955年 リトグラフ)。
こちらも、どこがどうつながっているのか、見入ってしまう絵ですね。 -
こちらはドイツ語で“眺望”という意味の、“ベルヴェデーレ”(Belvedere、1958年 リトグラフ)という作品。
まさに“だまし絵”という感じで、教科書か何かで見たことのある絵ですね。 -
“上昇と下降”(Ascending and descending、1960年 リトグラフ)。
実際には造ることができないループ状の階段を、上り続ける人と下り続ける人が描かれています。 -
エッシャーの研究した、様々な模様もこんなふうに展示されています。
-
こちらは映像によるエッシャーの生涯の紹介。
平日ですが、そこそこ多くの人々がこの美術館を訪れていました。 -
13時30分、以上をもってエッシャー美術館での作品鑑賞を終了。
所要時間は1時間30分ほど。
規模は小さかったですが、見入ってしまう作品が多く、頭の刺激になりました。
さて、このあたりでデン・ハーグの観光を終え、次はフェルメールの生まれ育った昔ながらの雰囲気を残す街、デルフトを訪れます!
(オランダ旅行2日目後半~デルフト観光に続く。)
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この旅行記へのコメント (4)
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- sanhaoさん 2021/01/31 12:12:30
- 真珠の耳飾りの少女
- 一昨年、アムスまでは行ったのですが、ハーグにはよらず真珠の耳飾りの少女は見逃してしまい後悔しています。次回があるかどうか分かりませんが是非見たい絵画の筆頭です。
- エンリケさん からの返信 2021/02/07 18:59:01
- 何かの折に訪れてみてください。
- sanhaoさん
こんばんは。
デン・ハーグの旅行記にご訪問ありがとうございます。
sanhaoさんはヨーロッパのいろいろな国を旅行されているのですね。
オランダは日本から直行便もあるし、交通の便が非常によい国ですので、他の国を旅行するついでにぶらっと訪れることは十分可能だと思います。
“真珠の耳飾りの少女”、思ったよりも小さな絵でしたが、その画面からはパワーを感じました。
マウリッツハイス美術館、このほかにも、“デルフトの眺望”や“テュルプ博士の解剖学講義”など素晴らしい絵があるところですので、コロナ禍が明けましたらぜひ行ってみてください。
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- 川岸 町子さん 2020/09/03 22:05:49
- 真珠の耳飾りの少女
- エンリケさん、おばんでした(^-^)
表紙から街の美しさがスタートしましたね。
時折酷暑の中、旅をなさるエンリケさんですが(笑)、今回は涼やかな夏の欧州旅、安心いたしました。
水面に写る街並み、色を添えるゼラニウム(?)、絵になりますね。
ミーハーな私は、有名な「真珠の耳飾りの少女」を前にしたら、おぉ~っと感動しそうです(笑)
「真珠の耳飾り」よりも「青いターバン」の方が私には印象が強いですが、実際はいかがでしたか?
こうしてデンハーグの旅行記を拝見すると、海外に行き、街を歩くだけでなく、美術を観賞するのは、なんて豊かな気持ちになるのだろうと感じました。
目の前に広がる作品、その背景、作品が集まる空間。
旅先での貴重な時間なのですね。
今回も教科書に載っていた作品の記憶が書かれていて、さすが!と思いました。
次回のデルフトは、陶器で有名な街ですか?楽しみにしています。
町子
- エンリケさん からの返信 2020/09/06 23:23:32
- 美術館巡りの習慣
- 川岸 町子さん
こんばんは。オランダ旅行記にご訪問ありがとうございます。
もう3年前のものですが、コロナ禍で新規の旅行ができないので、忙しくて当時アップできなかったものを今さらながらアップしてみました。
オランダ、街並みもそうだし美術館もそうだし、美しいものがいっぱいの国でしたね。
> 「真珠の耳飾り」よりも「青いターバン」の方が私には印象が強いですが、実際はいかがでしたか?
“真珠の耳飾りの少女”は、正式名称こそそうですが、実際は“真珠の耳飾り”の方は気にならず、“フェルメールブルー”と呼ばれる青いターバンの方が印象的な作品でしたね。
> こうしてデンハーグの旅行記を拝見すると、海外に行き、街を歩くだけでなく、美術を観賞するのは、なんて豊かな気持ちになるのだろうと感じました。
かれこれ20年ほど海外旅行をしてきて、ヨーロッパに行くと、その街の美術館を訪れるのが、わたしにとって当たり前の習慣になってきていますね。
いろいろと刺激もあるのでこれからもこの習慣を続けていきたいですね。
そのためにはコロナ禍が早く収まってほしいものですけれども・・・。
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