関東「有料指定席」のりくらべ【番外】～小田急ロマンスカー「GSE」編～

2019/08/10 - 2019/08/10

　古くから有料特急を走らせている小田急電鉄。増加傾向の近距離利用と、観光向け列車の両立に以前から苦心しているようでもあり、それをいかに工夫して乗り越えているかも魅力であると感じます。
　近年関東で増えている「有料指定席」とは違う「私鉄有料特急」の老舗、小田急の最新型ロマンスカーに乗り試してきました。

エリア 小田原(神奈川)

• 旅行の満足度: 4.5
• 交通: 4.5

• 同行者: 友人
• 一人あたり費用: 1万円未満
• 交通手段: 私鉄

　沼津のお父さん宅最寄りのJR片浜駅から、上り普通電車に乗車。

片浜駅 駅

　沼津では、朝晩限定の貴重な東京方面直通電車に乗り換えです。
　グリーン車連結列車も沼津ではイレギュラーなはずですが、さすがはお盆前、沼津発車時点で席が半分以上埋まる盛況になりました。

沼津駅 駅

　沼津はJR東海エリアとはいえ、普通グリーン車の料金体験は首都圏と同じ。週末はホリデー料金となり、プチ贅沢といえる金額で利用できます。
　わざわざ紙の乗車券を買ったのは、JR東海と東日本の境界をまたぐ区間になり、ICカードが利用できないから。流動も大きいだけに、何とかならないのかな。

　２階のグリーン車から眺める相模湾は、爽快。

相模湾 自然・景勝地

　おかげで朝から疲れもなく、ゆったりと小田原へ。ここで小田急線に乗り換えです。
　始発の箱根湯本から乗りたい…というか、箱根の温泉帰りにでも乗りたいロマンスカーですが、今回は忙しい「所用」の合間。小田原～新宿間で乗り試します。

小田原駅 駅

　さすがは有料特急の老舗。指定券は気軽に、自動券売機で購入できます。空き状況や車種も、分かりやすいです。
　直後のはこね２号、次発のはこね４号ともに空席があるように見えて、「町田まで」の注釈入り。４号の町田発までは１時間以上あるのに、もう町田～新宿間の指定券は売り切れなんですね。

　小田急小田原駅は、ホーム全体を覆う大きな三角屋根が特徴的。ヨーロッパの駅みたいです。

　４車種が共演する小田急ロマンスカー。車体色に合わせた乗車位置案内が、これまた分かりやすいです。

　指定券は、ホーム上でも購入可能です。ちょうど特急が来るな、ちょっと疲れてるし…なんて衝動買いを誘います。

　今はネットで買えるチケットレス指定券もあるので、より気軽に使えます。町田発の指定券も、お出かけの予定がある人が、家から予約しているのかも。

　小田原駅に、箱根湯本始発の「はこね２号」が堂々入場。窓の大きさと、くっきり見通せる客室内部に目が行きます。外観の赤もつややかで、華やかさが周囲の空気をも変えてしまういで立ちです。

小田急ロマンスカー 乗り物

　早朝の観光地始発の列車ということで、小田原発車時点ではガラガラ。車内観察にはもってこいです。
　窓の大きさは室内からでもよく分かり、席に座れば景色の中を飛んでいるよう。巻き上げ式カーテンのレールはワイヤになっていて、景色を邪魔しません。

　先頭の展望席まで一体になった先頭車両は、解放感抜群。展望席が取れなくても、ぜひ先頭の車両を抑えたい列車です。

　僕は展望席を数週間前に抑えましたが(笑)、それでも３列目、最後に空いていた１席でした。観光利用っぽい人なんていないのに、「せっかくロマンスカーに乗る予定があるなら」と早めに予約する人が多いんですね。この展望、確かに日常の移動がときめくひと時に化けます。

　最後尾からの展望もご覧の通り。先頭車がだめな時でも、こちらを押さえておきたいものです。

　眺望に優れ、間接照明もいい雰囲気の車内。
　ただ、華やかな朱色の座席が窓側を向いていた2005年デビューのVSEに比べると、やや「普通の特急」にブレたようにも感じます。グループ用のボックスシートもなくなり、リクライニングシートが並ぶだけの車内になってしまいました。

　デッキも今風ながら、オーソドックスな雰囲気に。VSEでは石調タイルや重厚な木目調の壁紙、天窓などが設けられ、デザイナーズマンションのエントランスのようでした。
　GSEも、そんじゃそこらのリゾート列車とは比較できないほどよくできた列車です。GSEを「普通の特急にぶれた」と言わしめるVSEは、それだけ素晴らしい列車なんだと思います。

　10年前にVSEに乗った時には「走る喫茶室」のサービスが健在で、シートまでデリバリーされたグラスのお茶を傾け、豪華なお弁当に舌鼓を打ったもんでした。
　2016年に「走る喫茶室」は廃止になり、GSEも通常の車内販売になったのは残念。車内販売が存続しているだけ、立派ではあるんですけど。

小田急ロマンスカー車内販売 ロマンスカー事業グループ グルメ・レストラン

　早朝の上り「はこね」ではその車内販売すらなく、自販機が頼りです。VSEの方が良かったとはいっても10年前の記憶と比較してであり、「走る喫茶室」の加点分は差し引いて考えないと。

　すれ違う列車はいろとりどり。青色のMSEに…

　白い列車は、お気に入りのVSE。

　登戸からは、昨年（2018年）に完成した小田急悲願の複々線区間になります。立派な４本の線路が並び、GSEも飛ばすのかと思いきや、ずいぶんゆったりした走り。休日とはいえ朝の９時台、線路容量は複々線をもってしてもいっぱいいっぱいのようです。
　最速列車では１時間を切る小田原～新宿間を、「はこね２号」は１時間17分かけて走ります。

　でもこんな風景は、鉄道ファンならずともわくわくさせられるのでは？

　代々木上原で地下鉄線を分け、複線に戻って新宿へ。

　特急専用ホームに、堂々の入場です。夏休み真っ只中とあって、注目度は抜群。展望席に座っていると、なんだか気恥ずかしくなるようでした。

ロマンスカーカフェ グルメ・レストラン

　GSEは2018年3月のデビューからすでに１年以上が経過するのに、すごい人気です。
　とりあえずは通勤用の車両で走り始めるという西鉄の有料特急も、いずれこんな華のある新車を入れてはくれないかなと思い巡らせたのでした。箱根ほどではないけど、柳川という観光地へのアプローチなのだし。

　新宿駅にも「こんどのロマンスカー特急券売り場」があり、気軽な利用を促します。発車まであと６分しかないのにキャンセルが出た次の箱根行きも、あっという間に売れてしまいました。

新宿駅 駅

　自動でクルリと座席の向きが変われば…

　列車名も「スーパーはこね７号」に変わり、箱根への観光客を誘います。

　どなたも、素敵な夏の１日を。いってらっしゃい！