2018/03/15 - 2018/03/22
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falcon38さん
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2018年3月16日、ルーアンに行こうとしたとき、サン・ラザールの地下鉄構内でマリー・カサットの展覧会が開かれることを知りました。
ポスターになっているのは、国立西洋美術館が「カサットもHOKUSAIに学んだ」としたあの絵です。
これは行ってみるしかありません!
最終回の今回は、再びパリの美術館よりレポートします。
- 交通手段
- 鉄道 徒歩
- 旅行の手配内容
- 個別手配
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Jacquemart-André美術館というところでやるみたいです。
調べると、パリの右岸のオスマン通り沿いにありました。 -
国立西洋美術館の図録は、「カサットの絵は北斎漫画に影響された」として両者の絵を並記しています。その解説を以下に引用します。「北斎の影響」についてはすべてが推測で、一切断定していない点にご注目下さい。
「彼女の浮世絵コレクションはそれ以前から始まっていて、北斎作品も所蔵していたが、絵本を持っていたかは不明である」
「画面の右に寄せられて肘を張った少女の奇妙な構図、丸々太った子を抱いた背を向ける母親は、(中略)カサットが『北斎漫画』などの絵本を知っていた事が推測される」
「彼女がドガの親しい友人であり、自ら《ルーヴル美術館絵画室のメアリー・カサット》のモデルであったことを考えれば、ドガの北斎の応用を知っていたはずで・・・」(文責:AM)
文責のAMは、国立西洋美術館の館長さんと同じイニシャルです。 -
これがカサットに影響したと、国立西洋美術館が主張する北斎漫画です。
どうか、コーヒー吹かないでくださいね(^_^;)
その根拠はやっぱり、
・カサットは北斎作品を所有し、北斎漫画を知っていたはず
・カサットには北斎を知っている友人(=ドガ)がいた
です。 -
こんなふうに言われたら、フランスの人たちはどう思うのでしょうか?
5日後の3月21日、カラーコピー持参で美術館を訪問しました。 -
美術館は人気があるのか、結構並んでいます。
-
「カサットの絵が北斎の影響を受けたかを知りたいのですが」と申し出たところ、「今日はわかる人がいないので、後日メールでお答えします」とのことでした。
写真は、私のコピーをコピーする係員です。 -
翌日、返事がありました。
「メアリー・カサットは北斎が亡くなった1849年には北斎と直接接触するにはあまりに若かったです。しかし日本の美術には興味を持っていたので、19世紀末にヨーロッパに出回っていた巨匠(=北斎)の多くの印刷物(版画)により彼の作品を確かに認識していました。」
この絵自体への言及は避けていますが、ある意味当然でしょう。 -
「北斎とジャポニスム」展は人気を博しました。
19世紀後半のフランスを中心にジャポニスムという潮流があり、モネやゴッホのように日本ラブを表明する画家もいる一方で、多くの芸術家達は「私は北斎の影響を受けました」と明確には語らないかもしれません。
確かに、そうした中でいろいろな調査・研究を行うことは、簡単なことではないでしょう。もしかしたらこの問題は、どんな研究者をもってしても確固たる証拠でこれ以上語る事は困難なのかもしれません。 -
しかしだからといって不十分な証拠のもとにジャポニスムとの関連をほのめかせば、当の芸術家たちにしてみれば、「えっ!そっ、そうなんすか?初耳です(*_*)」なんてことにはならないのでしょうか?
しかもジャポニスムとの関連を思わせぶりにほのめかすだけでなく、「推定なのか断定なのか」も曖昧にしたままに展示するのは危険です。
「キャッチコピーは断定、図録は推定」、つまり「総論は断定、各論は推定」では、善良な来館者を欺く二枚舌と言われても仕方ありません(>_<)
しかも総論では明らかに断定しており「日本の国立美術館がこう発信している」と取られてしまうわけですから、十分慎重に発言していただく必要があります。 -
話は大きく変わりますが、写真左は2017年3月に訪れたキプロスです。
アフロディーチが西風に吹かれてたどりついたという伝説の海岸です。
ボッチチェリの「ヴィーナスの誕生」の背景は、この海岸をモデルに描かれたのではないか?という都市伝説があります。
「ボッチチェリはキプロスに行ったことがある知人から情報を得て、この絵を描いたと推測される(^_^;)」と後から言うことは可能なのです。 -
「韓国起源説」という言葉で検索していただくとわかりますが、「柔道の起源は韓国だ」「サクラの起源は韓国だ」「ロケットの起源は韓国だ」みたいな主張があるそうです。これは一部の人が非公式に発言しているだけの笑い話的なものでしょうが、良識的な韓国の方々にとっては迷惑な話でしょう。
同様に「日本人はセザンヌのサント・ヴィクトワール山の連作の起源は北斎だと言ってるゼ」とフランス人に思われても、みんなが迷惑です。 -
今回のプチ取材では、国立西洋美術館の主張を否定も肯定もすることはできませんでした。
ただ、二人のフランス人美術館員の醒めた判断が印象的でした。
彼らは既知の事実の引用にとどめ、不確実な想像や拡大解釈はしません。
今回の展覧会の図録は複数の日本人研究者により執筆されていますが、きちんとした検証と国際的評価が求められるところです。
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旅行記グループ 「北斎とジャポニスム」展の衝撃
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