2007/11/25 - 2007/11/26
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motogenさん
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稲刈り3日目、午後には終了のめどがたちました。
夕方にはチェンライに戻れそうです。
この夜、ザックさんはメーサイで仕事があるようで、そのついでに車で送ってくれるそうです。
トゥックさんもバンコクに戻るため、バスターミナルまで同乗します。
戻る前に病院に寄って、お見舞いをしていくことになりました。
小さな町ですが、公営の病院がありました。
-
見舞った人はエイズだそうで、もう助からないとのこと。
痩せ細り衰弱しきっていて、声もよく出せません。
お姉さんだと言いますが、どこのお姉さんなのかよく分らず、あえて詮索することなく病院を出ました。 -
チェンライのバスターミナルまで連れてきてもらいました。
目の前がゲストハウスです。
ザックさんはこれからお仕事でメーサイへ、トウックさんは友だちと合流して、深夜バスでバンコクに帰ります。 -
今夜は1人きりの部屋で、のんびり過ごせます。
寂しくはなるけど、ほっとします。 -
町はまだロイカトンの熱気が残っていて・・
-
ナイトバザールも賑わっています。
久しぶりの外食を楽しみ、眠りについたばかりのことでした。
ドアをたたく音に目を覚ますと、バンコク行きのバスに乗ったはずのトゥックさんが、泣き顔をして立っています。
「姉さんが、近くの病院に運ばれてきたんだけど、亡くなって・・」
手続きを手伝ってほしい・・という彼女に応えて、病院にかけつけました。 -
病院ではお母さんが一人、しょんぼりと佇んでいました。
亡くなったのは家を継いでいる実の姉さんで、昼間見舞ったのはこの姉さんだったことに、初めて気づきました。
棺の手配や、運搬の手配をしながら2時間ほど待ちました。
その費用はもちろん私が支払いましたが、それほどの金額ではありませんでした。 -
棺を乗せたトラックに乗って、夜風を受けて走ります。
目の前に棺があり、その中に亡くなったばかりの人がいるなんて、夢をみているようです。
真っ暗な深夜の庭で、お爺さんと並んで待っていたのは、一人娘のペアちゃんでした。
お爺さんにかかえられていたペアちゃんでしたが、棺が降ろされるのを見た途端、ワッと泣き出しました。
私も目頭が熱くなり、涙があふれ出してしまいました。 -
うとうとまどろんだけの朝でした。
物音に気づいて窓から顔を出すと、ひっそり洗いものをしているペアちゃんが姿がありました。
その姿に胸が痛くなってしまいます。 -
近隣の人たちが集ってきました。
-
この家で、葬儀の準備に動けるのはトゥックさんのみです。
バンコク行きを延ばした彼女は、この朝はバイクに乗って駆け回っています。
真っ先に金貸しのお宅に出向き、田畑を担保に5万バーツ(15万円)を借りました。
この当時の田舎では、1万バーツあれば家族が1ヶ月暮らせる時代です。
返せるのかなあ・・と心配になります。 -
家に帰ると、棺はクーラー付きのものに替わっていました。
暑いタイにはこんなものがあったのです。 -
近所のおばさんが集ってきて、炊事の準備が始りました。
-
大きな鍋や釜、ガスコンロやポリ容器、大量の野菜や肉が運びこまれてくると、リーダーもなく、役割分担も決まっていないのに、作業はテキパキと進行していきます。
手馴れたものです。 -
石臼で唐がらしやニンニクをすりつぶし、味噌風の赤タレと混ぜているおばちゃん、
大きな骨つき肉の固まりを鉈のような包丁でぶった切っているおばちゃん、
巨大な鍋で野菜や肉を炒めているおばちゃん、
米を洗っているおばちゃん、大皿を並べているおばちゃん・・・
みんなお祭り騒ぎのように楽しそうです。 -
近寄って行くと、私を日本人と知っていて
「ほら、こうして料理してるんだよ・・」
「あんた、こんなもの、見たことあるかい・・?」
とばかりに、私に料理の手さばきを見せてくれます。
遠くにいるおばちゃんたちも手招きして、ぺちゃくちゃ話しかけてくれますが、早口で聞き取れません。 -
すると「つまみ食いをしてみろ」とばかりに、肉の破片や野菜の一部を私の口に入れて大笑いをします。
天真爛漫で、気の良いおばちゃんたちばかりです。
モテモテの私は気分軽やかになってきます。 -
それを面白そうに見ているお嬢ちゃんは、隣の家の末っ子です。
隣近所の人たちは、家族総出で集って来ているのです。 -
男たちは庭の樹木を切り倒し、枝をはらいのけ、邪魔な小屋は取り壊されました。
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そのできたスペースに、トラックで運び込まれたテントや机や椅子が設置されます。
椅子は300以上あります。
これらは地域の共同財産のようです。
500坪以上もある敷地に、大きな2棟のテントが張られ、裏庭にも調理用のテントが張られました。 -
裏庭では、まだ年端もいかない子どもが水を運んだり、
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ご飯を袋に詰めたりと、大人顔負けに働いています。
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家の中では葬儀の小道具が作られていました。
全て手作りで、今日の日本のように、葬儀屋や仕出し屋のサービス任せの世界ではありません。 -
当家族の出る幕もなく、近隣住民のあうんの呼吸によって事は進んでいきます。
地域そのものが巨大な家族集団みたいです。
農耕社会はこうだったのです。 -
夕方近くになると、遠くの親戚縁者や知り合いの人々が、続々と集ってきました。
-
こんな農作業の乗り物でやってきた家族もいます。
親戚関係のほとんどは農民です。 -
その客たちに料理が運ばれていきます。
料理といっても、油で揚げた豚肉、野菜の煮物、ソムタム、袋に入ったご飯(もち米)くらいのものです。
アルコール類はなく、飲み物は水です。 -
重要な親戚筋の客たちも、私を怪しんだり、警戒したり気をつかうことはなく、
「日本人なの? 一緒に食べよう・・」
などと、気安く相伴させてくれます。
肉は美味そうに見えるが、歯が折れそうに固く、手で割いてスルメを食べるようにシャブリつくしかありません。
ソムタムは私の口には合わず、野菜も少し食べると食欲が減退し、ご飯と肉を交互につまんでは口に運びました。 -
野良犬もたくさんうろついていますが、吼えたりうなったり、牙をむいたりなんかしません。
住民と同じで、気の良いものばかりです。 -
陽も落ちて、空の明るさがすっかりなくなった頃には、庭は来客で埋めつくされ、設置されたTVに映されるムエタイのVCDが人気を集めています。
テーブルには煎ったヒマワリの種が置いてあります。
それほど美味いものではありませんが、食べ始めるとやめられなくなりました。
裏庭や道沿いには赤い焚き火が燃え上がり、暖をとっている人たちもいます。 -
テントの一角に香典(?)を入れるガラスケースが置かれていましたが、それほど集まってはいません。
入れてくれた人のほとんどが20バーツ(60円)です。 -
棺の周囲には白い幕が張られ、花が飾られているだけで、きらびやかな祭壇などはありません。
至って質素です。 -
坊さんが4人がやってきました。
3人はまだ子供で、日本で言えば、コンビニ前で座り込んでいる、品行の良くない中高校生風の顔つきをしています。
お経が始まっても、横を向いたり身体をぐらつかせたり、ひそひそと私語をしていて、厳格な雰囲気などというものはさらさらありません。
驚いたのは、近隣の人たちがお経をそらんじていたことで、一緒に読経をしていたことでした。 -
テントの中は大賑わいです。
テントに入れなくて道路にまで人が集まっています。
その人たちも、一緒になってお経を唱えます。
-
お経が終わっても帰る人はなく、延々と通夜は続けられていましたが、部屋の片隅にじっとうずくまっているペアちゃんがいました。
それを見た叔母さんのイェンさんが、そっと付き添います。
お父さんは行方知れず、お母さんは亡くなって、頼りになるのは祖父母と叔母さんです。
しかし祖父母はもう歳で、これからはこの叔母さんが保護者となるんでしょう。
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この旅行記へのコメント (1)
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- trat baldさん 2017/08/25 15:36:15
- 生も死も仏様がお決めになる自然の摂理です。
- ある一線を越えて彼らの生活の中に入ると否応無く経験する出来事の一つですね、うれしい事も有りますが悲しい事の方が多いのがタイの現状だと思います。
彼女の成仏、そして身体を酷使して家族のために働いた疲れを極楽浄土で癒してくれる事を祈ります。
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