
2014/05/21 - 2014/05/21
4560位(同エリア16719件中)
さんしぇさん
セーヴル国立陶磁器美術館のピカソ展の後、従来の常設展を軽く覗こうと。
ところが、先回の反対から見て廻ったお陰か、見るものがかれこれ新鮮でした。
それと、先年より大日本印刷(株)のサポートの手が入って、日本語の解説板が
置かれたり、メディアによるビジュアル解説や、ヴァーチャル絵付け体験など
日本人への敷居が随分低くなりました。
・オランダ・ドイツ・イタリア・日本、各国の陶磁器を少しづつ
・仏国内の焼き物
・日本のハイテク大活躍
・セーヴル軟質磁器のレシピ
- 旅行の満足度
- 5.0
- 同行者
- 一人旅
- 交通手段
- 高速・路線バス 徒歩
-
そこではオランダのデルフト焼のあれこれてんこ盛り。
まずは、こちら大きな陶板は1717年 Roos工房の作。 -
茶葉入れ。
デルフトと言えば青い染付けですが、その青でもって中華風味の数々を。 -
お皿やスパイス入れ。
17世紀、東インド会社経由の輸入品だった中国磁器の品質や絵付けにデルフトの
陶工達が影響を受け、やがてデザインを模したものが現れたとの事。 -
鉄器・・、ではなくれっきとした焼き物、こんなデルフトもあるんですね。
これらは、gres グレと言われる?器 せっき。
高温で焼き締められて、火偏に石と言う漢字からしてぴったりな、硬質な焼き物ですね。
日本では、常滑焼(愛知)や万古焼(三重)など。 -
こちらは、オーソドックスなデルフトの絵柄。
祭壇でしょうか、中央にイエス様の絵付けがされて、これは珍しい。 -
一方で、多彩なこれもデルフト、後ろは蜀台、手前はバター入れ。
-
魚型のバター入れですと、何故にひらめ・・。
-
オランダを離れ、僅かですがドイツ、マイセン。
-
デルフトが、陶器なだけあって柔らかな風合いがあるのに比べて、こちらはれっきと
した磁器、かっちり締まった上に美しい色合いが乗って、より完成された印象でした。
マイセン磁器にもう少し触れますと。
西洋の磁器窯は、磁器用のカオリン土が出土するまでの200年、中国の白く美しい
磁器を輸入しつつ自国での生産を試行錯誤しました。
1710年ドイツ・ザクセン領内で取れる白い土を原料に白い磁器を作ることに成功。
新たな独占産業として、旧都マイセンにある場内に窯を設け、技法が外に漏れる事を
禁じて秘密保持に努めます。
因みに、マイセンを語るに外せない“ブルーオニオン”あれは玉ねぎではなく、ざくろとか。
お手本にした中国の絵柄にあるざくろが、西洋では未だ一般的でなかった為に手近なところで・・。 -
時代遡り、イタリアルネッサンスから。
聖母子 1394−1451 ジョヴァンニ・デッラ・ロッビアの作と伝えられたもの
ほうろう引きの大きな像。 -
聖母子 15世紀 トスカーナ (ルーヴルからの委託作品)
慈しみ深いマリア様。 -
「2人の天使」1460年頃 フローランス 門に備える燭台
美しい天使たちのお出迎え。 -
同じ15世紀に完成を見たマヨルカ(マジョルカ)焼を2点。
「セルギウス・パウルスの会話」
ニコラ・ダ・ウルビーノ(ウルビーノのニコラ)の制作で、この頃、伝説や歴史を皿などに描く“ア・イストリアート”を盛んに制作していました。
ここでは、新約聖書を題材に新たな信仰を場面を切り取っているとの事。 -
同じウルビーノ工房から。
「バッカスの巫女」
何か伝説からでしょうか、と〜っても?な絵柄です。 -
プシュケとアムル Carlo Ginori侯爵(1702−1757)の工房
マヨルカ焼全盛だったイタリアで、鉱物学に造詣のあったカルロ・ジノリ侯爵が開窯。
イタリア初の白磁を開発、後にリチャード社と合併して、今に知られるリチャード・ジノリと
なるもののやがて倒産、昨年グッチ社が買収したのだそうです。 -
中国韓国ほどではないものの、日本のものも何点か。
仏語表記が面白かったので書き出しました。(アクセント記号は略です。)
Bol a the(お茶のボール)抹茶茶碗 1944 山本出
火襷が美しいのは備前。
Recipient a eau froide(冷たい水の入れ物)水差し 1962 加藤豊久
ざっくり切り出したような大らかな志野焼。 -
続いて仏国内に目を向け、まずは陶器。
焼き上げる温度の低さから生まれる、どこか緩やかな大らかさがあって、日々生活をする場に
常に置くには、陶器が似つかわしいと言えるかもしれません。
1.玉ねぎ入れ、使い方が今一つ判らないこれ、わざわざ玉ねぎ用にこんな器が
在るほどの拘りが面白い。生産地はパリから10km南のSceaux ソー。
(クリュニー中世美術館からの委託作、17世紀の物が何故そこにあったかは不明。)
2.聖セバスチャン。ブルゴーニュ地方Nevers ネヴェール
3.深皿、スープを一匙掬う毎に現れる裸・・、面白すぎ。これもNevers。
このヌヴェール窯の意匠は、意表を付きやがてにんまり、が多いです。
4.中華柄の入れ物。
解説に柿右衛門にインスパイアされた、とあり、アジア繋がりの合体作。
それと、陶器ではなくこれが“軟質磁器”です。パリの北Chantilly シャンティイ。
中国のどこぞの賢人なのか、シリアスに顔を描く技術が追いつかず、すっとぼけた
オヤジの風合いには脱力です。 -
用途不明な“トリオ・で・行水”これ欲しい。
-
こちらセーヴルのお隣のSaint-Cloud窯。
軟質磁器と言われる、低い温度で焼き上げた土の陶器と石の磁器の中間の焼き物。
仏人は、硬く締めた磁器よりも、優しい風合いの軟質磁器や陶器をより好むのだとか。 -
パリのすぐ隣、Vincennes窯 かのヴァンセンヌの森を有する街。
実は、セーヴル焼はこのヴァンセンヌ窯がルーツ。
と言うのも、欧州磁器の雄のマイセンから陶工を招き、仏初めの1歩をしるしたのが
このヴァンセンヌ、上記シャンティイ窯と共にやがてセーヴルへの流れを作ります。
白で比べると良く判りますが、先ほどのサン・クルー窯よりも硬度が増して、細密な造作が
可能になって来ました。
下段は、チーズをこしらえる器とか。 -
これは、なあんだ?
一見同じ軟質陶器に見えるのですが、これが何と?器です。
仏最北部のEquihen窯にて。
答は最後。 -
トロンプルイユ、本来の意味は“だまし絵”、アスパラガスとくるみ。
先ほどの1、のSceaux窯の作。 -
スープ鉢 Strasbourg ストラスブール。
食卓にどんとイノシシの頭・・、ん〜、よく判らん趣味。 -
作家の作品を幾つか。
「ピレネーのジプシー」 アンリ・クロス 1881
静物が多い中、彫り物でない肖像が異色でした。 -
フォーヴィスム(野獣派)のRaoul Dufy デュフィの意匠を陶工が炊き上げたコラボ作品。
明るい色彩を扱うデュフィにしては随分シックな風合いで、とても惹かれました。 -
仏陶芸の祖パリシー氏の作品、題して「構造の要素」ですって。
飾り皿と言うよりは、陶芸技術のデモンストレーションだと思うのですが、果たして。 -
焼き物のブーケ、由来がわかりません。
緻密さが凄い。 -
進路を逆さに進んで、ここが常設展の入り口。
美術館創設者A・ブロンニャール氏に迎えられ、最新装置で遊んだのが、右の画像。
DNP(大日本印刷株式会社)が開発したこれは、絵付け体験の装置です。
絵柄や色を選択して自分の好みを液晶上に作ることが出来ます。
さて、当製陶所の由来に付いて簡単に触れますと。
このセーヴルという土地を選んだのは、誰在ろうルイ15世(1710-1774)の愛妾のかの
ポンパドゥール侯爵夫人(1721-1764)
ヴァンセンヌ窯で、マイセン仕込の磁器造りを実践した後、侯爵夫人の援助で1756年に
ここに移設され、1760年には王立窯へと。
後の革命で一旦閉窯されるものの、1824年、侯爵夫人の城館跡にアレクサンドル・
ブロンニャール(1770-1847)が、国立陶磁器美術館を設立。 -
10種類ほどの土のサンプルが並びます。
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社がバックアップして、以前には無かった日本語の解説パネルが置かれたり。
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軟質磁器の製作工程の解説などにも最新機器が貢献しています。
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ルーヴルとの共同プロジェクトなんですね。
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そのディスプレイから、キャプチャーを以下に切り出しさせて頂きました。
セーヴル焼の軟質磁器レシピ。
まずは、冒頭。
「何人もの芸術家や職人の手を経て生まれる軟質磁器の壺は、どのように作られるのでしょう。
その答えを知る為、ヴァンセンヌ=セーヴル製作所における型の考案者、ジャン=クロード
・デュプレシが創案したこの壺を見ていきましょう。」
1.水を張った樽
2.軟質磁器は、「フリット」と呼ばれるガラス粉の生地と、石灰質泥灰岩、水の混合物
から構成されています。
3.8−10ヶ月寝かせます。
4.型取り
5.へらで微調整 -
素地の配合サンプル。
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1・2.取っ手や高台は別に型を取り
3.小さな花は手で成型
4.陶土を水で溶いた泥漿で接着
5.スカラップで飾り、第1回目の焼成 1100〜1200℃。
この状態を「ビスキュイ 素焼き」と言います。
6.収縮して焼く前よりも小さくなった作品を「慣らし」て、触れても型崩れしない
までの乾燥させた後、注意深く研磨する。
7.釉薬は主にフォンテーヌブローの砂と一酸化鉛から構成。 -
釉薬。
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1.釉薬に浸し、再度焼成 900〜1000℃。
焼成する事でガラス化する釉薬が、作品を保護し光沢を与えます。
2.ここから絵付けの工程に。
毛長イタチの毛の太筆で背景となる青色を乗せます。ここで再度900℃焼成。
3.「自然な」描写の花や葉の装飾。
4.色絵の具は、金属の酸化物を石灰化したものに植物性樹脂(アラビアガム)を加えて
長い年月をかけて開発します。
5.花の絵付けに用いる絵の具は、耐熱性に応じて異なる温度で何度も繰り返し焼成。
6.焼成の間、釉薬は柔らかくなり、絵の具と同化する事によって、絵付け部分に
僅かな盛り上がりを与えます。
7.粉状の金を接着剤を使って筆で塗布します。金の焼成 700℃。
8.焼成後の金は光沢を失うので、瑪瑙を使ってこすり光沢を与えます。
それが「艶出し」です。 -
絵付け絵の具。
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こうして、形成から装飾まで少なくとも10人の職人、その他素地や釉薬、色や金粉を
用意する多くの人の手によって「デュプレシの壺」ができあがりました。 -
手造り感ありあり。
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当せーヴル工房のあれこれ。
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2階センタールームでは、林立する大型壺が壮観。
少なくとも“城”と名の付く処にしか置けないじゃなかろうか。 -
鮮やかな絵画、ではなくこちらなんと陶板。
ラファエロの聖母子像。 -
「Nature study」Louise Bourgeois(1911−2010)作
たくさんの乳房は豊穣のシンボルとか。
フォンテーヌブロー城の、アルテミス像に類似を感じます。 -
「松明台」
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当美術館のセンターを美しく飾っています。
さきほどの白い器のお答え。
何と、骨壷、なのでした。
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