2011/12/24 - 2011/12/24
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鯨の味噌汁さん
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12月24日。クリスマスイブの当日。
画家がリヤカー引っ張って、ゆっくりと、ワシの目の前を通り過ぎる。
これはこれはゴッホさんではないですか、と、オミヤゲに絵を買おうとするワシ。15ユーロくらいで売ってもらう。
安いではないか。
画集のオネダンではないか。
と、そこで目が覚める。
風の音。それに混じって、ヒトの集団が動いているらしい音がする。
この部屋は大通りに面していない。
その通りも、昨夜ホテルに戻ってきたときにはシンとしていた。
やはり、この石壁の奥に、ナニモノかが住み着いているのか。
なにしろ元修道院だもんナ。
まだ暗い。そっと窓を開けてみる。
すると、ゴーっという、空を渡る風の音。
昨日までとそのイキオイが全然違う。
どうやら本格的なミストラルがやってきたらしい。
- 同行者
- カップル・夫婦
- 一人あたり費用
- 10万円 - 15万円
- 交通手段
- 鉄道 徒歩
- 旅行の手配内容
- 個別手配
- 利用旅行会社
- エアトリ
PR
-
テレビをつけて、天気予報を確認すると。
プロヴァンスの天候は晴れ。最高予想気温11度。風速は時速60キロ、とある。
そして、ザワザワというヒトの気配。
お客さんの数は少ないはずなんだけどな。団体さんでも泊まったのかしら。
午前8時、ホテルを出ると、前の通りに大規模な市が立っていた。
「アルルの土曜市」ともいうべき催事にぶちあたったらしい。
野菜・果物・肉・サカナ・チーズ・お惣菜・香料・などなどの屋台が出ている。
きのうの夜は何もなかったのに、こりゃまたビックリである。
おまえらは墨俣の一夜城かよ。 -
通りの南は生鮮食料品、北は衣類雑貨に別れているらしい。
それにしてもすごい風だ。
衣類なんぞ、ハンガーごと飛ばされたり、倒れたりしている。
カフェの看板なんぞも、あちこちでバタバタと倒れている。
でも、その中を、地元の方々は、フツーに買い物をしているのであった。
どうやら「あーらきょうは風ネ」程度にしか思っていないらしい。 -
いかにもクリスマスらしく、ある屋台には、鶏の丸焼きがどどーん、と並んでいた。
そのお隣は肉屋で、調理前の鶏が「さきほどお肉になりました」という感じで、これまた大量に安置されている。
さらにすこし歩くと、箱詰めにされた鶏なども売られている。
で、その先に行くとタマゴだよ。
「鶏の一生」を10歩で体験できるのネ。
箱の中の鶏さんたちは「こっこっこっ」と鳴いているものの、やはり元気がない。
「私らこれから肉になります」と、すこしかなしそうな顔をしているのであった。
その中から、ムンズと奥様につかまれ、次々にお買い上げされていくのであった。 -
地図を頼りに古代劇場跡、競技場、浴場跡を見て歩く。
しかし、このミストラルの中、観光とゆうのもいかがなものか。
そもそも客がおらんがな。どこに行っても貸切ですがな。
午前中で観光終了。
この風がなければ、街中のカフェでのんびりコーシーなど飲んでいてもいいのだが。
「どないしましょ」
配偶者に尋ねると、彼女はぽつりと
「マルセイユへ」
と答える。
ワシのアタマの中で、突如フランス国歌が鳴り響く。
「そうだそうだ、ラ・マルセイユだ、めざせマルセイユ、祖国の子」 -
とゆうわけで、とっととアルル駅まで行き、最終目的地の町・マルセイユを目指すことにした。
アルルからマルセイユまでは、各駅停車で1時間。 -
ここはアラン・ドロンのギャング映画「ボルサリーノ」の舞台になった町である。
正編の最後で、相棒のJ.P.ベルモンドは殺され。
続編は、親友のカタキを果たすべく、アラン・ドロンが大暴れする。
ちょっとおしゃれで、続編は暗い報復の映画。
鯨は高校生のとき、この映画を封切館で見ている。
「仁義なき戦い広島死闘篇」のフランス版、という雰囲気であった。
よって鯨の頭の中は
「マルセイユ=フレンチマフィア」≒「広島=ヤクザ」
と整理された。わかりやすいアタマなのである。 -
が、港にたどり着くと。
やはりここも、立っていられないほどのミストラルなのであった。
おまけこの風、しっかりつべたい。散策どころではない。
鯨はデブなのであるが、ウッカリすると、アフリカまで飛ばされてしまいそうだ。
ホテルは「ビュー・ポート・ホテル・なんちゃら」とゆうのを、ネットで見つけ、予約していた。
ビュー・ポートであるから、当然、旧港が一望できるであろう。
配偶者にいう。
「港のホテルを予約してるから、とにかくそこに逃げ込もう」
「そうしましょう」
「ホテルの部屋で、ゆっくり、旧港の夕焼けを楽しもう」
「そうしましょう」 -
港に面したビルに「ビュー・ポート・ホテル・××」看板を見つける。
あなうれしや。ちゃんとテラスもついてる。
しかし近寄ってよく見ると「ビュー・ポート・ホテル」まではいっしょだが、ケツの名前が違うのであった。
で、隣のホテルを見ると、やっぱり「ビュー・ポート・ホテル」。
首をひねりながら、裏通りに回ってみると、またも「ビュー・ポート・ホテル」。
前後左右、タテヨコナナメ、全部ビュー・ポート・ホテルではないか。
「クイズ本物はどれだ、なんちって」
風の中でぼけをかます。むなしい。
で、よくよくガイドブックを見ると。
「ビュー・ポート・ホテル」は、地名なのだった。
「臨港ホテル地区」みたいなモンであろうか。
しばし歩き、裏通りに、予約したホテルの名前を発見する。
部屋に入り、窓からのぞいてみる。
窓から見えるのは隣のビルの壁であった。彼我の距離、1メートル。
「ビル壁」を旅のテーマにしている方にとっては、きっといいホテルに違いない。
が、「ホテルから旧港の夕焼けを高笑いしながら見る」という当初の計画の実行は困難となった。
配偶者もガッカリしている。
しかし、このまま部屋に引きこもっていたのでは、「熟年W不倫、不動産社長と秘書のおしのび旅行」と思われてしまうであろう。
ワシはかまわないが、配偶者が不憫である。
とゆうわけで、強風を突いて夕焼けの町へ出撃する。 -
町はクリスマスイブで、大勢の人出でにぎわっている。
しかし、いかんせん、ものすごいミストラルだ。
おばあさんが道で飛ばされて転んでる。マルセイユ名物、屋台の人形も飛んでいく。
せっかくここまで来たのであるから、ぜひともブイヤベースを食わなくてはいけない。
鯨は30年前、この町にきている。
オカネがなくて、夜行列車明けに到着し、町をひとまわりして、マクドナルドを食べておしまいだった記憶がある。
今夜こそは、ブイヤベースだブイヤベース。なにがなくともブイヤベース。ぜったいぜったいブイヤベース。
しかし、風を避け、内陸部へ歩いていくと、レストランらしきものは見当たらないのであった。
町の路地には、黒い革ジャン、ヒゲと眉の濃ゆい男たちであふれていた。
何しろ港町であるから、歴史的にアフリカや中東からの移民が多い。
うろうろ歩いていると、治安のよろしくない場所に紛れ込む恐れがある。
ワシは顔は凶相、性格は凶暴、言行は粗暴、と三拍子揃ったハゲデブのチューネンであるから、どちらかといえば「治安を悪くする」側のヒトなのだが、配偶者同伴となれば、そこは気を遣うべきであろう。 -
と、ゆうわけで、もと来た道を引き返す。
とぼとぼ歩いていると、「中華飯店」の看板が目に入る。
「ああ、あったかいラーメンでもいいな」
気弱になり、ついつい、配偶者にゆってしまう。
「ここまで来てなんでラーメンなの」
目がマジメに怒っている。
あすは帰国便に乗る。あさってになれば、ラーメンなんていつでも食えるのだ。
「すすすすすみません」
すぐに反省し、風に向かって歩き、港の通りをぐるりと回る。
「この角を曲がってなかったら、ホテルに帰ろう」 -
するとひとつ角を曲がると、レストランがみっちり連なった一帯に出た。
よかった、ラーメンにしなくてよかった。
感涙に咽びながら、レストランに走りこむ。
で、肝心のブイヤベースのお味ですが。
うんうん、フツーの煮魚スープです。それ以上でも以下でもない。
日本人は、サカナ食い民族なので、煮魚に対して、舌が厳しい。
お肉はご馳走、普段はサカナという民族だ。
しかも生・焼・煮・炙・干・揚・醸・蒸・練、全部ある。
が、ヨーロッパは逆で、「肉は日常食、サカナは高級食」の意識があるように見える。
ワシは日本人、しかもサカナのおいしいエチゴの産である。
よって、
「これならウチでも作れるな」
というのが実感であった。(ちなみに配偶者も、感想は同じ)
日本人はコンブだしだけで、白身ザカナを食べる民族だ。
タラチリなんて、フランス人が食ったら感動すると思う。
生ガキ(またかよ)、それにスープ。
ビールとワインで、ささやかにふたりで乾杯した。
あすにはTGVで、ドゴール空港へ。そしてそのまま日本へ帰るのだ。
レストランの仮設テントの上を、バタバタとミストラルが通り過ぎる。
けさ、突然、吹いてきた風。アルプスの雪のにおいをたっぷり含んだ風。
「いつ止むのかしらね」
配偶者が、ふと上を見ながらいう。
「あす、止んだら、港を歩こう」
「うん」
「止まなかったら、電車に乗ろう」
「うん」
最後の夜は、ミストラルに吹かれて終わった。
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この旅行記へのコメント (2)
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- captainfutureさん 2012/01/06 21:48:57
- 始まりましたね〜♪
- こんばんは。
おお〜!いよいよ鯨節、始まりましたね〜♪
今回も軽妙洒脱な話術を味わいながら一人PC前でくすくす笑いながら拝見していました。
iPhoneの翻訳機能ってスゴイんですね。私も買おうかしら。
>鯨的にはこれに
>・住民が景観の保護と維持に合意し、実行していること
>・景観が主人公ではなく、主人公は住民であり、それぞれの人生がその村で営まれていること
>・拝金主義ではないこと
>などの要素も付け加えたい。
いいですね〜。特に最後の拝金主義になってしまうと、がっかりしてしまいますよね。
>尾根道で軽く死にかける
うっかり走っていたって、やっぱりあるんですね〜。
ギリギリでも間に合って良かったです。
ゴッホのところ、鯨さんの思い入れが特にたっぷり入っていていろいろな描写が目に浮かんできました。
私でも知ってるこのアイリスの名画もここで生まれたんですね。
柿ですかね。フランスにもあるとは。
>「変われば変わるほどいよいよ同じ」
なるほど〜。
>30年前と同じ場所で、写真を撮った。
感慨もひとしおだったでしょうね〜。
その時出した手紙のお相手と一緒だと尚更・・・。
>「アイム・リーグオーナー」
すすすごいです!でも海外ではこれぐらいはカマサないと。
皆もきっと恐れ入ったことでしょう〜。
やっぱり洋犬より和犬がかわいいです。
悩まされた突風も「アルプスの雪のにおいをたっぷり含んだ風」といわれればすごくロマンチックな感じになって許せそうですね。
続編、楽しみにしております♪
- 鯨の味噌汁さん からの返信 2012/01/07 18:21:33
- RE: 始まりましたね〜♪
- captainfutureさん、
こげなあほあほ旅日記にいつもご訪問ありがとうございます。
現地四泊ですから、ホントの駆け足でございました。
いくつかの町を自分の足で歩いたものの、やっぱり短かかったなぁと。
ワシもこっそりそちらを拝読させていただいております。
いや告白します。実はほとんど愛読してます。
(以下、ホントはcaptainfutureさんの掲示板に書くべき内容なんですが、オヤヂのくせに内弁慶なのでこちらで書かせてくださいね)
どんな場所に行かれても、地元の方とばっちりコミュニケーションとられて、おうちの中まで招き入れられて、お茶までご馳走になって。
しかもよい写真をいっぱい撮っておられるますよねー。
今回のイランもすごいですよね。
ドンドンおうちのなかへ入れてもらってますもの。
ワシ、うらやましくてうらやましくて。
とてもマネできません。
魔法でも使ってるんでしょうか。
お写真を拝見するかぎり、captainfutureさん、明るくて端正でサワヤカ系ですから、凶相で凶悪で粗暴な汚物系チューネンのワシとは、ソコが違うのかなぁと、タメ息をついちょります。
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