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バリ島へ来た目的は、この島で一番高いアグン山に登ることで、それが出来なければ、2番目の山、バトウール山に登ることだった。<br /><br />山岳登山を専門とする毎日旅行会など、時々海外の登山ツアーを募集していて、このバリ島の二つの山、アグンとバトウールを二日がかりで同時に登るツアーなども組まれていて、以前の元気な状態だったら、こうしたツアーに参加した方が、個人で行くよりは安上がりに済むが、1点難点は、本当に登山だけを目的としたツアーで、バリ島に来て、さっと山に登り、登山が終わったら観光も何もなく、さっと帰国する旅程で、そんなスケジュールを見ていて、味気ないものを感じていた。<br /><br />今の足の状態で、どの程度の山が登れるか、又は諦めなければならないか、現地へ着いてから考えよう、という中途半端な思いで、このバトウール湖までやってきたら、案内人の有無をいわせぬ強引な売り込みに、つい同意してしまって、今朝はこのバトウール山1717mを登山する羽目になった。まあ、そうは言っても秘かに望んでいたことではあったが。<br /><br />街とか商店街とか一切ないこの湖畔の集落、夜8時ともなると電気も消えて、時々道路を通る車の音しか聞こえない全くの田舎であるが、日本の田舎で聞くようなカエルの鳴き声とか、虫の音すらも聞こえない全くの静寂の世界。勿論部屋にはテレビもないし、ラジオの備え付けもない。テレビ自体、この集落に果たして何軒設置されているかどうかだが、今日昼間通りを歩いた限りでは、テレビのある家を見ることはなかった。<br /><br />カンボジアとかラオスの貧しい国で、嘗ての日本の三種の神器ではないが、あばら家の、今にも崩れ落ちそうな陋屋の一番の部屋に、夕方部屋の電気も付けずに、白黒テレビの如何にも場違いなチカチカする白っぽい映像を、通りすがりに良く見かけたが、この湖畔の集落には、そうした光景にはお目にかかってはいなかった。周囲を山に囲まれ、この湖底の部落まで電波が届かないので、テレビが普及していないのか、それにしても携帯電話はどんな貧しい国でも津々浦々行きわたっていることを思うと、それも又ちぐはぐな感もしないではないが・・。<br /><br />周りが静か過ぎるのか、それとも明日の山行きで興奮しているのか、早々とベッドに横になってもなかなか寝付かれない。この村のテレビやら携帯やら、そんな益体も無い妄想が頭を支配し、睡眠に入れない。こんなことは珍しいことだ。何回もベッドを起きてはベランダに出て、深呼吸をし、真っ暗な湖を眺め、再び横になるが駄目だった。いつもは般若心経、方便本を呪文のように唱えていれば、こうした時でも自然に眠りに入るのだが、今日はどうもダメだ。お経を最後まで上げきれずに、考えが散ってしまう。これが最後の夜になる、とのメッセージとも思えないが・・。<br /><br />そうこうする内、午前3時、ドアをノックする音に飛び起き、ちょっと待ってくれるよう話す。直ぐに身支度し、荷物と言ったら、ウエストパック一つに昨日買った雨具を押し込み、清涼飲料は横のポケットにいれて部屋を出る。まあ、こんな状態で山へ行ってもガイドがいるから何とかしてくれるだろう、との軽い気持ちでバイクの後ろに乗って集合場所まで行く。<br /><br />登山口は、昨日やってきた湖の北側の温泉のある集落からで、今日の登山はガイド一人にドイツ人とスイス人と当方の3人。二人ともまだ若く、元気そうだ。60を越えた人間が日本の代表とは情けない。他に何組かパーテイが居たようだが、皆先に出発していて、我々4人は、真っ暗な中、ガイドの先導で登山道を登って行く。懐中電灯はガイドがそれぞれに貸してくれたので、助かった。<br /><br />ガイドの直ぐ後ろを歩き、ガイドに当方の体調を見守ってもらうようにして登って行ったが、まあまあ、皆さんの足を引っ張ることもなく、順調に高みに登って行く。1時間程歩いたところで、小休憩。森の中の開けた場所で、周囲は鬱蒼とした森林。こんな山に一人で登ったら、それこそ山の精霊に持って行かれそうな、物騒な雰囲気だった。<br /><br />この休憩場所には先行したパーテイも休んでいて、我々が到着すると同時に先に出立して行った。15分程休憩し、更なる高みに登る。更に30−40分程登ると森林帯は切れて、岩石の山道になる。霧雨様の細かい雨も降っているが、山道が濡れて歩きづらい、ということもない。頂上が見えるようで中々見えない。円錐形の山を殆ど直登に近い形で登って行く。<br /><br />周囲もやや明るさを増し、頂上付近が見えてきそうな、岩場で最後の休憩を取り、残り、15−20分を一気に登って、漸く頂上の平坦地に到着した。時に御前6時。4時前に麓の集落を出発してきたから、約2時間かけて登ったことになる。漸く極めたバトウールの山頂。何ものかに感謝したい気持ちでいっぱいだった。歳さえ考えなければ、誰れ彼と抱きたい気持でもあった。<br /><br />山頂の平坦部には昨夜からこの山に来て、キャンプしていた大学生の一団がいて、これから昇る太陽を眺め様と、皆東の方角、ロンボク島のある辺りを眺めていた。この山にかかる雨雲は既に足の下に漂っているが、もっと厚い雲がロンボク島周辺を覆っている。その雲を割るように、今まさに太陽が上がってくる。むくむくと、雲を分け除き、真っ赤に燃えた太陽が顔を出す。ワッと言う歓声が学生の間から発せられる。神々しい。この島に来て、この山に登り、茜色の太陽を拝む。なんと素晴らしいことだ。神に感謝したい気持ちも自然に芽生えるものだった。

バリ島の1週間(18)バトゥール山の夜明け。「ロンボク島の山」。

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2011/04/28 - 2011/05/06

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ちゃお

ちゃおさん

バリ島へ来た目的は、この島で一番高いアグン山に登ることで、それが出来なければ、2番目の山、バトウール山に登ることだった。

山岳登山を専門とする毎日旅行会など、時々海外の登山ツアーを募集していて、このバリ島の二つの山、アグンとバトウールを二日がかりで同時に登るツアーなども組まれていて、以前の元気な状態だったら、こうしたツアーに参加した方が、個人で行くよりは安上がりに済むが、1点難点は、本当に登山だけを目的としたツアーで、バリ島に来て、さっと山に登り、登山が終わったら観光も何もなく、さっと帰国する旅程で、そんなスケジュールを見ていて、味気ないものを感じていた。

今の足の状態で、どの程度の山が登れるか、又は諦めなければならないか、現地へ着いてから考えよう、という中途半端な思いで、このバトウール湖までやってきたら、案内人の有無をいわせぬ強引な売り込みに、つい同意してしまって、今朝はこのバトウール山1717mを登山する羽目になった。まあ、そうは言っても秘かに望んでいたことではあったが。

街とか商店街とか一切ないこの湖畔の集落、夜8時ともなると電気も消えて、時々道路を通る車の音しか聞こえない全くの田舎であるが、日本の田舎で聞くようなカエルの鳴き声とか、虫の音すらも聞こえない全くの静寂の世界。勿論部屋にはテレビもないし、ラジオの備え付けもない。テレビ自体、この集落に果たして何軒設置されているかどうかだが、今日昼間通りを歩いた限りでは、テレビのある家を見ることはなかった。

カンボジアとかラオスの貧しい国で、嘗ての日本の三種の神器ではないが、あばら家の、今にも崩れ落ちそうな陋屋の一番の部屋に、夕方部屋の電気も付けずに、白黒テレビの如何にも場違いなチカチカする白っぽい映像を、通りすがりに良く見かけたが、この湖畔の集落には、そうした光景にはお目にかかってはいなかった。周囲を山に囲まれ、この湖底の部落まで電波が届かないので、テレビが普及していないのか、それにしても携帯電話はどんな貧しい国でも津々浦々行きわたっていることを思うと、それも又ちぐはぐな感もしないではないが・・。

周りが静か過ぎるのか、それとも明日の山行きで興奮しているのか、早々とベッドに横になってもなかなか寝付かれない。この村のテレビやら携帯やら、そんな益体も無い妄想が頭を支配し、睡眠に入れない。こんなことは珍しいことだ。何回もベッドを起きてはベランダに出て、深呼吸をし、真っ暗な湖を眺め、再び横になるが駄目だった。いつもは般若心経、方便本を呪文のように唱えていれば、こうした時でも自然に眠りに入るのだが、今日はどうもダメだ。お経を最後まで上げきれずに、考えが散ってしまう。これが最後の夜になる、とのメッセージとも思えないが・・。

そうこうする内、午前3時、ドアをノックする音に飛び起き、ちょっと待ってくれるよう話す。直ぐに身支度し、荷物と言ったら、ウエストパック一つに昨日買った雨具を押し込み、清涼飲料は横のポケットにいれて部屋を出る。まあ、こんな状態で山へ行ってもガイドがいるから何とかしてくれるだろう、との軽い気持ちでバイクの後ろに乗って集合場所まで行く。

登山口は、昨日やってきた湖の北側の温泉のある集落からで、今日の登山はガイド一人にドイツ人とスイス人と当方の3人。二人ともまだ若く、元気そうだ。60を越えた人間が日本の代表とは情けない。他に何組かパーテイが居たようだが、皆先に出発していて、我々4人は、真っ暗な中、ガイドの先導で登山道を登って行く。懐中電灯はガイドがそれぞれに貸してくれたので、助かった。

ガイドの直ぐ後ろを歩き、ガイドに当方の体調を見守ってもらうようにして登って行ったが、まあまあ、皆さんの足を引っ張ることもなく、順調に高みに登って行く。1時間程歩いたところで、小休憩。森の中の開けた場所で、周囲は鬱蒼とした森林。こんな山に一人で登ったら、それこそ山の精霊に持って行かれそうな、物騒な雰囲気だった。

この休憩場所には先行したパーテイも休んでいて、我々が到着すると同時に先に出立して行った。15分程休憩し、更なる高みに登る。更に30−40分程登ると森林帯は切れて、岩石の山道になる。霧雨様の細かい雨も降っているが、山道が濡れて歩きづらい、ということもない。頂上が見えるようで中々見えない。円錐形の山を殆ど直登に近い形で登って行く。

周囲もやや明るさを増し、頂上付近が見えてきそうな、岩場で最後の休憩を取り、残り、15−20分を一気に登って、漸く頂上の平坦地に到着した。時に御前6時。4時前に麓の集落を出発してきたから、約2時間かけて登ったことになる。漸く極めたバトウールの山頂。何ものかに感謝したい気持ちでいっぱいだった。歳さえ考えなければ、誰れ彼と抱きたい気持でもあった。

山頂の平坦部には昨夜からこの山に来て、キャンプしていた大学生の一団がいて、これから昇る太陽を眺め様と、皆東の方角、ロンボク島のある辺りを眺めていた。この山にかかる雨雲は既に足の下に漂っているが、もっと厚い雲がロンボク島周辺を覆っている。その雲を割るように、今まさに太陽が上がってくる。むくむくと、雲を分け除き、真っ赤に燃えた太陽が顔を出す。ワッと言う歓声が学生の間から発せられる。神々しい。この島に来て、この山に登り、茜色の太陽を拝む。なんと素晴らしいことだ。神に感謝したい気持ちも自然に芽生えるものだった。

旅行の満足度
4.5

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  • 未明の3時、ホテルに迎いが来て、朝の暗い内に登山開始する。

    未明の3時、ホテルに迎いが来て、朝の暗い内に登山開始する。

  • 漸く到着したバトウール山頂。山頂には昨夜から泊まり込みの学生が十数人いた。

    漸く到着したバトウール山頂。山頂には昨夜から泊まり込みの学生が十数人いた。

  • 我々3人パーテイより先に登ってきた外人パーテイ。

    我々3人パーテイより先に登ってきた外人パーテイ。

  • 眼下のバトウール湖畔の集落の明かりがポツンポツンと見えている。

    眼下のバトウール湖畔の集落の明かりがポツンポツンと見えている。

  • いよいよご来光を待ち構える登頂者。

    いよいよご来光を待ち構える登頂者。

  • 厚雲の彼方、東の空が明るくなってくる。

    厚雲の彼方、東の空が明るくなってくる。

  • 厚雲を押し分け、今まさに太陽が顔を出す。

    厚雲を押し分け、今まさに太陽が顔を出す。

  • 黎明の朝、小雨も止んで、ご来光を眺めることができた。

    黎明の朝、小雨も止んで、ご来光を眺めることができた。

  • 日の出の横にロンボク島の高峰も見える。学生から「ロンボク、ロンボク」という感嘆の声も漏れる。

    日の出の横にロンボク島の高峰も見える。学生から「ロンボク、ロンボク」という感嘆の声も漏れる。

  • 対岸の島、ロンボク島にそびえるリンジャニ山。3726mで、インドネシアで3番目に高い山。

    対岸の島、ロンボク島にそびえるリンジャニ山。3726mで、インドネシアで3番目に高い山。

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