2007/04/24 - 2007/05/08
343位(同エリア457件中)
ちゃおさん
「戦場に架ける橋」は既にご存知の通り、今から66年前の大東亜戦争時、当時の日本軍(南方総軍)がタイとビルマ(現マンミャー)との間に鉄道敷設工事を行い、近年「クワイ川マーチ」の題名で映画にもなった橋であるが、その難工事では多くの人命が失われ、別名「死の鉄道」(Death Railway)とも呼ばれている。
それは単純にクワイ川に橋を架けるというより、クワイ川の懸崖を削り、そこに橋を懸ける難工事であったが、工事の困難さに加え、衛生状態も悪く、英蘭豪を主軸とする連合軍捕虜、その他現地採用作業員等総計約6万人の内8700余命の犠牲の上に僅か1年弱の突貫工事で完成したものである。
朝タクシーでチャオプラヤー川を渡った先のバンコク・ノイ駅まで行くが、川向こうでもどこでも朝の渋滞は変わらない。近代化から取り残されたようなゴミゴミした古い町並みをようやく通り抜け駅に着くと、列車は今しも発車間際。
駅員も心得たもので、当方を日本人と認めると、列車の発車を待たせてくれている。外人は別料金の運賃で、一律100バーツ。その代わりタイ国鉄の発行した泰緬鉄道建設のガイドブックを配布してくれる。このブックには建設当時のセピア色をした写真も添付され、60数年前の実像が眼前に彷彿する。
そうそう、この鉄道の正式名称は「泰緬鉄道」で、それは取りも直さず、タイを表わす泰国とビルマを現す緬甸(ミャンマー)の最初の頭文字を採ったもので、戦前は国名をこの様に漢字表記していた。ビルマは英国植民地の呼び名で、日本陸軍は元からある名前のミャンマーの漢字表記の頭文字を採ったもので、ポーズだけは現地主義の体裁を取っていた。
ちなみにアメリカは亜米利加、この米の字を取って略して米国。中国語では米の部分が美に代わっているので、略して美国。バンコク市内で中国人商店の看板を良く見かけるが、その中で美國との表示があったらアメリカ製とかアメリカ輸入等のアメリカ関連と判断して間違いない。
上の例の英蘭豪の蘭は和蘭の省略名、オランダのことで、略して蘭印と言うとオランダ領インド、即ちインドネシアを指していた。尚、英印は本当のインドのこと、仏印は現在のインドシナ諸国のことである。英語表記が禁じられた戦前の学生は苦労したに違いない。
「泰緬」から始まって随分とあらぬ方向に脱線してしまったが、こうした戦前の漢字表記を見ていると、アジア諸国が如何に欧米列強に支配されていたかが自ずと理解でき、日本陸軍が八紘一宇の御旗の下、アジア植民地の解放を目指していた背景事情もある程度は理解できるものだった。
さてタイ国鉄はイギリス、日本と同じ様に狭軌で、いつバラバラになってもおかしく無いような古い車輌を今でも大事に使用しているが、この車輌がよもや戦前からのものとは思えないが、列車の中で車窓に広がる椰子の並木を眺めながら、戦前のこもごもを想起し、この鉄道建設に携わった当時の日本軍人、技術者、連合軍捕虜、タイ・マレーシア・中国人労働者、沿線住民、シンガポールの、当時昭南市と呼んでいたが、南方総軍本部の慌しさ、この鉄道の先、ビルマ・ミートチナでの白骨街道の悲劇、牟田口廉也、隷下師団・連隊総計3万2千名の死、無謀な戦い、ビルマの竪琴、それ等こもごもは列車の後方に流れ、今は平和な田園風景の中で一際背の高い椰子の林、北部地方では余り見られなかった椰子の揺らぎに現実に戻り、平和の有り難さを再認識した。
日本の兵隊さんもこの鉄道に乗り、今と同じ様に南国のシンボル・椰子の林を眺め、死との背中合わせの中、遠く故郷を思い、郷愁に駈られたに違いない。
単線で交互に車輌の交換をするため待ち合わせが多く、カンチャナブリまで4時間も掛かったが、長閑な田園風景と各駅でのタイ語表示の駅名案内に興味を覚え、苦労して読めた時などは学生に戻った時のような気分で嬉しさに浸り、時々車内販売に廻ってくる売り子につたないタイ語で話しかけ、「コーク」、「CocaCola」は世界共通のトレードマークであって、味も世界共通、冷房の付いていない車内ではより一層冷たく感じられ、悲喜こもごもの想念を乗せ列車は駅に着いた。多くの乗客がこの駅で降りたが、まだ半数は乗ったままである。
回ってきた車掌に聞くと、クワイ川はまだこの先で、このキップで終点のナムトク(大滝)まで行けるとのこと。列車は十数分カンチャナブリ駅に停車した後、再び動き出す。
ここから先が所謂アドベンチャー・トレイン。4輌編成の乗客はほぼ全員が観光客。タイ人の団体観光客も多い。駅を出ると直ぐに川に差し掛かり、鉄橋をゆっくり通過する。鉄橋の上を歩いている外人客もいて、鉄橋上の退避スペースにかたまって列車の通過を眺めている。
眼下には赤茶けた濁流。大半のタイの河川は平野部を流れているので流れは穏やかであるが、このクワイは山間部を流れ、今橋のかかるこの付近はやや峡谷になっていて、流れも速い。それでも河岸には観光客目当てのフローテイング・レストランとか、土産物屋の建物が椰子の木陰に並んでいる。如何にも観光地の風情。
更に進むと、峡谷の岩肌を削り取った、崖とのギリギリのスペースに架橋してあり、列車は揺れないようにゆっくり走る。手を伸ばして岩肌の感触を掴むことも出来る程のギリギリ。木製の橋の筋交いの1本でも折れたら、それこそ列車は50−60m下の濁流に真っ逆さま。
60数年前の技術でよくぞまあこんな難工事をしたものとあきれる。一体何人の作業員が足場を踏み外し、この濁流に飲み込まれて行ったのか、岩肌には60数年前の掘削の跡が残っていて、少し触ると当時のざわめきが伝わってくるようだった。
川を過ぎると列車は再び草原の中をゆっくりゆっくり前進する。小さな無人駅が幾つかあり、観光客の多くは下車し、駅前に待ち構えた観光バスに乗る移り、どこかへ走り去って行く。改めてガイドブックを調べると、ここにもサイの字の付いた駅名もある。「.miFp8」、「サイヨク」。
先日「サイガーム」を辞書で調べたら、「最も美しく均整の取れたガジュマル、バンヤントリー」と出ていた。そうするとこの駅は、良く茂る(ヨク)、ガジュマル(サイ)のある駅、という意味だろう。日本にも「青梅」「柿生」「美女木」などの駅名があり、自然の状景を駅名にするのは日本人もタイ人も、いや人間共通の慣わしかも知れない。
列車はようやく昼過ぎに終点のナムトク(ohe9d)に到着。このナムは川を意味する「メー・ナム」のナムと同じで、水のこと。トクは、雨が降るの「フォン・トク」のトク、降る(落ちる)意味で、二つ合わせて、「水が降る(落ちる)」、即ち「滝」のことである。
駅から更に5−6人乗りのミニバスに乗り換え、約10分、山懐に囲まれたナムトクに到着する。ナムトク前は大きな駐車場を兼ねた広場になっているが、今はオフシーズンなのか駐車している車も少ない。広場の前に2−3軒の食堂と5−6軒の土産物屋があり、その内の比較的清潔そうな食堂に入り、写真で選んだ地元料理を食べる。いや地元料理と言っても、バンコクの食堂で食べると同じ様な炒め物ではあったが。
高さ30−40mの幅広の滝は樹林の中にあり、一帯は自然公園として綺麗に整備されている。クワイ鉄橋(建設当時は木橋)を見学に来る観光客は多いが、ここまでやってくる人は少なく、公園の中に人影は少ない。山の端で海抜もあり、木陰になっていて気持ちが良い。浅い滝つぼでは何人かの子供達、親子連れもいて、水遊びをしている。自然の中での沐浴。ルノワールの世界。
水に触れると、メコンのよりは冷たく、新鮮であった。
今は平和が戻り、親子・家族ともども水浴びに興ずる。この平和をいつまでも大切にしたい。
< ナムトク(ohe9d・大滝)に 親子の遊ぶ 平和なり >
広場の土産物屋では大きなナベで何か揚げ物を揚げている。見たところケンピの様な感じで、つまむと正しく芋ケンピ。3山100バーツで少し嵩張るがタイ語サークルの皆さんには喜ばれるに違いない。
30分置きにやってくるローカルバスを待ち、一旦カンチャナブリまで出て、そこで高速バスに乗り換えてバンコクに帰る。カンチャナブリは三鷹の留学生ガム君の出身地で、立ち寄ってみたい気もあったが時間がない。途中のナコン・パトムには世界最大の仏塔があり、最初に仏教が伝来した町、それは紀元前150年のことと伝えられているが、これも又次の機会に取っておこう。
列車で来た時は無人駅に近いところが多く、駅前も閑散としていたが、帰りのバスは人口の多い場所を選んで走っていて、国道沿いはどこも人で溢れている。タイ人の大らかさ、今日もまた入れ替わり立ち代りの切符切り。途中で止めて客を乗せ、途中で止めて下ろしたり。人々が生きている。今に生きている。
今日もまた夕方のラッシュに引っ掛かってしまったが、もうすることは無い。ゆっくりホテルに戻るだけだ。チャオプラヤーを渡り、王宮前広場を横断し、首都高速に乗り、6時ホテルに帰館する。タイ最後の一日、心に残るエクスカーション、いい一日だった。Dee Chai.
夜、夕食を兼ねて中華街に出る。果物のお土産は中華街に限る。いろんな種類の果物が売られていて、マンゴー、パパイヤ、ランプータン、タマリンド、等々を買う。後は明日帰国するだけだ。
リュックに入らなければ手提げで持ち帰ることも出来る。中華街の中ほど、1軒のレストランに入り、今次タイ旅行の最終〆めを行う。よくよく見ると今年のお正月にも来た店だ。マスターは気が付いていないかも知れないが、日本人がタイのバンコクの中華街で中華料理を食べている。ビールのチャーンも美味しい。あと1本追加しよう。
サヌーク マーク! lo6d ,kd ! 旅は面白い! 世界は広い!
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