2025/05/02 - 2025/05/02
-位(同エリア17257件中)
mitsuさん
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*:.。神々が祝福する、壮大な王宮歴史絵巻の旅へ.☆.。.:*
今回の舞台は、ルーヴル美術館のリシュリュー翼3階(15~18世紀のフランス・北方絵画エリア)です。
前回の温かな日常を描いた作品からスタートし、全31枚の写真とともに、フランス宮廷の壮麗な大作や、巨匠ルーベンスが手がけた圧倒的な大連作を贅沢に巡る、とってもドラマチックなルートです。
18世紀ドイツ絵画の静かなお部屋からスタート。
ギリシャ神話の女神になりきった貴族の美しい肖像画に迎えられて、新しい美の探訪へとはずむ心で足を踏み入れます。
前半(壮大な歴史とルネサンスの至宝): アントワーヌ・カロンの演劇的な大作『三頭政治下の虐殺』の迫力に圧倒され、さらに進むと、教科書でもおなじみの国家の至宝『フランス国王フランソワ1世の肖像』の、極限まで細かい金刺繍の美しさに思わず見惚れてしまいます。
後半(巨匠ルーベンスが描く、女王の華麗なドラマ): 旅の後半はいよいよ、はるか奥まで巨大な絵画が並ぶ、息をのむほど美しい『メディシスのギャラリー』へ。
最高神ユピテルや海の妖精たちが総出で王妃マリーの人生を祝福する、ダイナミックな名作群をじっくりと堪能します。
クライマックス(悲劇を乗り越える、女王の決意): 物語は佳境を迎え、王の崩御という悲劇を乗り越えて最高権力者として力強く立ち上がる王妃を描いた『アンリ4世の神格化~』を通り抜け、最後は未来の新国王の輝かしい船出を描いた『ルイ13世の多数』で、今回の一連の展示室巡りを晴れやかに締めくくります。
全体の大まかな行程は以下になります。
今日は,★☆★です (^^)/
4/13(日) 成田⇒ドバイ⇒
4/14(月) ⇒アムステルダム フォーレンダム観光
4/15(火) アムステルダム,ホールン,エダム観光
4/16(水) アムステルダム国立美術館,市内観光
4/17(木) ギートホルン観光
4/18(金) キューケンホフ観光
4/19(土) ザーンセ・スカンス観光⇒ロッテルダムへ移動
4/20(日) デハール城,ユトレヒト観光
4/21(月) キンデルダイク,デルフト観光
4/22(火) ハーグ観光
4/23(水) プラハへ移動とプチ観光
4/24(木) プラハ観光+コンサート
4/25(金) プラハ観光+コンサート
4/26(土) プラハ観光
4/27(日) プラハ観光
4/28(月) プラハ観光
4/29(火) チェスキー・クルムロフへ移動⇒観光
4/30(水) チェスキー・クルムロフ⇒プラハへ移動
5/1(木) パリへ移動,観光
★☆★5/2(金) パリ観光
5/3(土) ヴェルサイユ宮殿観光
5/4(日) パリ観光
5/5(月) 体調不良により観光無し
5/6(火) 体調不良により観光無し
5/7(水) パリ観光
5/8(木) シャルトルへ移動・観光
5/9(金) パリ観光
5/10(土) パリ観光
5/11(日) パリ観光
5/12(月) ベルノンへ移動・観光,パリ観光
5/13(火) パリ観光
5/14(水) パリ観光後⇒ドバイへ移動
5/15(木) ドバイ観光⇒成田へ向けて出発
5/16(金) 成田着
- 旅行の満足度
- 5.0
- 観光
- 5.0
- 同行者
- カップル・夫婦(シニア)
- 交通手段
- 徒歩
- 旅行の手配内容
- 個別手配
-
1 前回の旅は、幻想的な『愛の葬列』で一区切りを迎えましたが、ここから再び新たな名画の旅をスタートいたします。
こちらは、フランス・マニエリスム高名な名作が並ぶリシュリュー翼3階の「ルーム823」に掛けられています。
アントワーヌ・カロンによる非常に力強く、また歴史の重みを感じさせる大作『三頭政治下の虐殺』です。
古代ローマ時代の紀元前43年、マルクス・アントニウス、オクタウィウス、レピドゥスの3人(第二次三頭政治)によって、反対派の市民たちが次々と処刑されていく凄惨な歴史の一場面を描いた作品です。
画面の中央奥にはコロッセウムや、左手には凱旋門のような古代ローマを象徴する壮麗な建造物が、画家のイマジネーション豊かなパノラマ的な構図で配置されています。
その広大な広場の中で、無数の兵士や犠牲者たちのドラマが演劇の舞台さながらに同時多発的に描き込まれており、息をのむような緊迫感があります。
実はこの絵が描かれた1566年当時、フランス国内ではカトリックとプロテスタントが激しく争う「宗教戦争」の真っ只中でした。
カロンは古代ローマの悲劇を借りることで、自分が生きる時代の生々しい内乱への悲しみと風刺を、この格調高い1枚の中に静かに、しかし鋭く込められているのだそうです。 -
2 作者不詳のフォンテーヌブロー派の画家による『慈愛』
キリスト教におけるもっとも重要な美徳の一つである「慈愛」を、一人の美しい女性と彼女を囲むたくさんの無垢な子供たちの姿で表現した、非常に格調高い寓意画です。
中央に凛と佇む女性は、乳幼児を優しく抱きかかえながら、周囲に集まる子供たちに惜しみない愛情を注いでいます。
手前の左下をよく見ると、ぐっすりと眠りに落ちている可愛らしい子供の姿もあり、守られている安心感がリアルに伝わってきます。
この作品で特に目を引くのは、登場人物たちの細長く、しなやかに引き伸ばされたような美しいポーズです。
これは当時イタリアから伝わり、フランス宮廷で大流行したマニエリスム様式の典型的な特徴です。
ただの家族の風景ではなく、神聖な愛の尊さを、優雅な美の表現ですっきりとまとめ上げた気品溢れる素晴らしい1枚です。 -
3 フォンテーヌブロー派の画家による『ル・コンセール』
神話の世界のようなのどかな自然の中で、美しい女性たちやキューピッド、そして男性たちが一堂に会し、思い思いに楽器を奏でたり歌を歌ったりしている優雅な音楽会の場面です。
手前で大胆に身をよじるようにして座る女性たちの、しなやかで細長く引き伸ばされたような肉体美やポーズは、この時代のフランス宮廷で大流行したマニエリスム様式の大きな特徴です。
よく見ると、奥では男性がリュートのような弦楽器を奏でており、その音色に合わせるように女性たちが手元で楽譜を広げ、静かに歌を口ずさんでいるような、そんな心地よい静けさと芸術への高い関心がすっきりと表現されています。
全体に漂う淡く上品な色彩と、登場人物たちの洗練されたポーズが美しく調和しており、当時の宮廷貴族たちが愛した高貴で優雅な趣味の世界をそのまま映し出したかのようです。 -
4 フォンテーヌブロー派の画家による『化粧するヴィーナス』
湯浴みを終えた愛と美の女神ヴィーナスが、手にした鏡に姿を映しながら、静かに身繕いをしている神話の場面です。
クジャクの羽のような美しいカーテンが、彼女たちの陶器のように白く艶やかな肌の美しさを一層際立たせています。 -
5 フォンテーヌブロー派 『香炉を持つ女性の肖像』
豪華な楕円形の額縁の中に、透き通るような薄いヴェールをまとった美しい女性が佇んでいます。
彼女が手元に大切そうに捧げ持っているのは、精緻な彫刻が施された黄金の香炉です。当時のフランス王宮の優雅な生活習慣や、高貴な香りの文化を、神話的な美しさの中に静かに映し出しています。 -
6 ニコロ・デッラバーテによる『スキピオの自制』
古代ローマの英雄である大スキピオにまつわる、高潔な美徳の物語を描いた有名な歴史画です。
戦いに勝利したスキピオは、美しい敵国の娘を捕虜として献上されます。しかし、彼女に愛する婚約者がいることを知ると、自制心をもって彼女を一切傷つけることなく婚約者の元へ送り出しました。さらに、両親から贈られた身代金までをも、そのまま結婚祝いとして二人に与えています。
画面の左上に腰掛けるスキピオ(黄色い衣服の男性)が、手前に佇む美しい娘と、その足元で感謝の祈りを捧げる婚約者や両親に向けて、寛大な身振りをしている場面が描かれています。
娘の透き通るような白い肌や、登場人物たちの細長くしなやかなプロポーションは、まさにフォンテーヌブロー派の画家らしい優美なマニエリスム様式の特徴をきれいに表しています。
力強い権力や欲望よりも、美徳と理性を重んじた古代の英雄の清廉なエピソードが、すっきりと品格高くまとめられた素晴らしい1枚です。 -
7 16世紀末のフランスの画家による『亡き夫マウスロスの遺灰を飲むアルテミシア』
古代カリヤの王妃アルテミシアが、深く愛していた亡き夫マウスロス王の死を悼み、その遺灰を自らの身体に納めて「生きた墓標」となるために、香料とともに飲み干したという非常に高潔で強い愛の伝説を描いた歴史画です。
画面中央では、白いヴェールをまとった王妃アルテミシアが椅子に腰掛け、手元に差し出された遺灰の杯をまさに仰ごうとしています。
その周囲では、豪華な衣装をまとった廷臣や神官たちが、厳かな面持ちでその劇的な儀式を見守っています。
左右に配された古典的な彫刻の柱が、マニエリスム期らしい演劇的な舞台の額縁のような効果を生み出し、画面全体に重厚な格式を与えています。
実は、フランス・ルネサンス期においてこの「アルテミシア」の物語は、若くして夫である国王ヘンリー2世を亡くし、生涯にわたって黒い喪服をまといながら摂政としてフランスを支え続けた王妃カトリーヌ・ド・メディシスの姿を重ね合わせるための、非常に重要な「政治的アレゴリー」でもありました。
単なる古代の悲劇の描写にとどまらず、当時のフランス宮廷の権威と、激動の時代を生き抜いた王妃の深い哀悼の意がすっきりと美しくちりばめられた、気品に満ちた素晴らしい1枚です。 -
8 フォンテーヌブロー派の画家(トサ・ド・リヴェラに帰属など諸説あり)による『ヴェルトゥムヌスとポモナ』
ギリシャ・ローマ神話に登場する「果物の女神ポモナ」と、彼女に恋をした「季節と変形の神ヴェルトゥムヌス」のユニークな恋物語を描いた作品です。
果樹園の管理に熱心で、男性をまったく寄せ付けない頑ななポモナに近づくため、ヴェルトゥムヌスは知恵を絞り、なんと「お婆さん」の姿に変装して彼女の元を訪れます。
画面左側をよく見ると、頭巾をかぶった変装姿の彼が、ポモナに向けて熱心に愛の尊さを語りかけている場面が、非常に細密に描写されています。
中央に座るポモナの、透き通るような白い肌としなやかなプロポーションは、まさにフォンテーヌブロー派の画家が好んだ上品なマニエリスム様式そのものです。右下の机のくぼみには、小さな子供の顔をかたどった可愛らしい彫刻の噴水が描かれており、物語の中に隠された「愛の成就」のメッセージをすっきりと引き立てています。
美しい神話のドラマを借りて、当時の宮廷貴族たちが愛した洗練された駆け引きや、どこか怪しげでロマンチックな世界観を品格高く表現した、見ごたえのある素晴らしい1枚です。 -
9 イタリア出身でフランス宮廷でも大活躍した巨匠、ニコロ・デッラバーテによる『穀物の脱穀(あるいは、麦の初穂の収穫)』
神話の時代を思わせるのどかな農村を舞台に、当時の人々が一生懸命に農作業(脱穀)に励んでいる、風俗画と風景画が美しく融合した見応えのある1枚です。
画面の左側には、立派な納屋の前に干し草や穀物を山積みにした大きな荷馬車が停まっており、人々がせっせと荷下ろしをしています。
中央では、風の力を利用して穀物ともみ殻を選別する「唐箕(とうみ)」のような作業に没頭する農民たちの姿が、実に生き生きと細密に描き込まれています。
右側にはどっしりとした水車小屋が配置され、遠くには美しい川の流れと、うっすらと霞む山並みのパノラマ的な風景が広がり、画面に心地よい奥行きを与えています。
実はこの作品は、ローマの詩人ヴァージルが書いた、農業の営みや大自然の素晴らしさを讃える古典詩『農耕詩』の世界観をもとに描かれたものとされています。
当時のフランスの王族や貴族たちが憧れた「素朴で豊かな田園生活のロマン」を、イタリア仕込みの洗練された色彩とすっきりとした気品ある構図でまとめ上げた、非常に格式の高い素晴らしい風景画です。 -
10 ジャン・クザン(子)による唯一確証のある貴重な油彩画の傑作『最後の審判)』
新約聖書のクライマックスである、世界の終わりにキリストがすべての人間を裁き、天国に昇る者と地獄に落ちる者とに分ける緊迫した場面が描かれています。
画面の上部には、雲の間からまばゆい聖なる光とともに現れたキリストが堂々と君臨し、周囲には無数の天使たちが舞い踊っています。
これに対して画面の下部では、審判を下された地獄の住人たちや、混沌とした現世のパノラマ的な大群衆劇が、うねるような肉体描写で画面いっぱいにひしめき合っています。
左手には古代ローマ風の壮麗な円形建築(が配置され、カロンの作風とも重なるような演劇の舞台のようなドラマチックな構図がすっきりと美しく組み立てられています。
実はこの絵の中に描かれている「青い地球を囲む勲章の紐」や天使が掲げる王冠は、当時のフランス国王アンリ3世への敬意と政治的なメッセージが隠されていることでも知られています。
イタリアのマニエリスム様式と北方の緻密な技巧が見事に融合した、お部屋の中でもひときわ圧倒的な存在感を放つ素晴らしい大作です。 -
11 フランス・ルネサンス期を代表する宮廷画家ジャン・クルーエによる、あまりにも有名な歴史的傑作『フランス国王フランソワ1世の肖像』
実はこちらの作品を前にして、展示室の雰囲気が一気に変わりました。これまでの中庭に面した光の入る大きな部屋から、少し奥まった重厚な展示室、リシュリュー翼3階の「ルーム822(16世紀フランス肖像画の部屋)」へと移動しています。
ルネサンスの熱烈な保護者であり、あのレオナルド・ダ・ヴィンチをフランスへ招いたことでも知られる偉大な王、フランソワ1世の堂々たる姿が描かれています。
まず目を奪われるのは、王が身にまとっている衣装の驚くべき豪華さです。
上品な光沢を放つ白いサテンの生地に、黒のベルベットによる縦縞、そして肩まわりを飾る極限まで細密な金の刺繍が、実物の持つただならぬ気品を物語っています。
首からは、彼が創設した「聖ミカエル騎士団」の立派な金の勲章の首飾りが下げられており、手元で剣の柄をそっと握りしめる仕草からは、絶対的な権力者としての威厳がすっきりと伝わってきます。
背景に敷き詰められた深みのある赤いタペストリーには、フランス王家の紋章である「百合の紋章」と、フランソワ1世個人のシンボルであった「サラマンダー(火トカゲ)」の意匠が美しく織り込まれています。
北方絵画のようなリアルな細密描写と、イタリア仕込みの壮麗な気品が完璧に融合した、まさにフランス国家の至宝と呼ぶにふさわしい最高に見ごたえのある1枚です。 -
12 ジャン・マルセル 『聖三位一体(キリストの哀悼)』
部屋はフランス初期ルネサンスの貴重な宗教画が集まる「ルーム821」へと移っています。
十字架から降ろされたばかりのキリストの亡骸を、慈愛に満ちた表情の神が後ろから優しく抱きかかえています。
暗い背景の中に浮かび上がる厳かな色彩が、静けさの中に深い信仰の尊さを伝えてくれる素晴らしい祭壇画です。 -
13 コリン・デ・コテルによる『悲しみの三人のマリア)』
部屋は初期フランドルの至宝が集まる「ルーム813」へと差し掛かっています。
キリストの死を悼み、深い悲しみに暮れる三人のマリアが美しく収められています。
手前で跪くマグダラのマリアが身につけている重厚な衣装のひだや、極限まで細密な金糸の織物の輝きには、この時代ならではの超絶的な職人技が光っています。 -
14 ジェラール・ダヴィドによる至高の名作『カナの婚礼』
新約聖書に登場する、キリストが最初に奇跡を起こした「カナの婚礼」の祝宴の場面が描かれています。
祝いの席でワインが足りなくなってしまった際、キリストが仕えの者に命じて、水瓶に入った「ただの水」を「極上のワイン」へと変えたというあまりにも有名なエピソードです。
画面の左奥に座るキリストが静かに指を立てて奇跡の祝福を与え、その手前では仕えの者たちが大きな水瓶から熱心にワインを注ぎ分けています。
テーブルを囲む新郎新婦や聖母マリア、そして周囲の列席者たちの表情はどれも大変穏やかで、画面全体に気品ある静けさが漂っています。
特筆すべきは、画面の左端で手を合わせ、この聖なる奇跡の場面を特等席で見守るように跪いている男女の姿です。
彼らはこの絵画を注文して教会へ寄進した「寄進者(ジャン・デ・トンプールとその妻)」であり、当時のフランドル絵画らしい、信仰心と現実の肖像をすっきりと融合させた大変知的な構成になっています。
背景に描かれた当時のブルージュの美しい街並みや壮麗な建築のパースペクティブも見事で、北方の細密技巧の粋を尽くした大作です。 -
15 同じく初期フランドル絵画を代表する、ハンス・メムリンクの周辺の画家(「ジャック・フロランのマスター」など諸説あり)による『聖ジャックと聖ドミニクスに付き添われる聖母子と寄進者とその家族』
画面の中央には、豪華な赤いマントを羽織った聖母マリアが玉座に腰掛け、膝の上の幼子キリストを優しく抱いています。
この作品の見どころは、聖母の左右に大集結している大勢の登場人物たちです。
左側には聖ジャックに導かれた男性陣の家族が、右側には聖ドミニクスに導かれた女性陣の家族が、それぞれ厳かな面持ちで手を合わせ、聖母子へ祈りを捧げています。
これらはこの絵画を注文したブルージュの高名な商人ジャック・フロランとその大家族の実在の肖像です。
背後の上品な織物の文様や、左右の窓から遠くに見える美しいフランドルの街並みと自然のパースペクティブが見事で、当時の人々の温かな息づかいと深い信仰心がすっきりとリアルに伝わってきます。 -
16 バロック絵画の最高峰であり「王の画家」と称えられた巨匠、ピーテル・パウル・ルーベンスによる歴史的名作『マリー・ド・メディシスの運命』
こちらの作品を前にして、展示室が再びドラマチックに変わりました。これまで並んでいた初期フランドルの敬虔な宗教画の並びを抜けると、はるか奥まで巨大な絵画が整然と並ぶ、ルーヴルが誇るもっとも壮麗な大展示室の一つ、リシュリュー翼3階の「ルーム801(メディシスのギャラリー)」へと移動しています。
この部屋を埋め尽くす24枚の巨大な連作は、フランス国王アンリ4世の王妃であったマリー・ド・メディシスが、自身の波乱に満ちた生涯を後世に誇示するためにルーベンスに注文した、世界的に名高い記念碑的なコレクションです。
その壮大な物語の「記念すべき第1作目」となるのが、マリーがこの世に誕生する前の天界の様子を描いたこちらの作品です。
画面の上部では、ギリシャ・ローマ神話の最高神であるユピテル(ゼウス)と、その妻であるユノ(ヘラ)の神聖な夫婦が、雲の上に仲睦まじく寄り添いながら優しく下界を見守っています。
彼らの足元では、人間の生死や運命を司る「運命の三女神(パルカ)」たちが、これから生まれてくるマリーのために、美しく輝く運命の糸をせっせと紡いでいる場面が描かれています。
通常の神話では、三女神のうちの1人が「人間の寿命を尽きさせるために糸をハサミで断ち切る」役割を持っていますが、この絵の中にはハサミを持つ女神はどこにも描かれていません。
これはルーベンスによる大変知的な演出で、「王太后マリーの運命は神々によって特別に祝福されており、その名声は決して途切れることなく永遠に不滅である」という、最大級の賛辞と宮廷的な暗号がすっきりとちりばめられているのです。
バロック絵画らしい豊満で躍動感あふれる肉体美と、劇的な光の表現が縦長の美しい画面に見事に凝縮されており、これから始まる壮大な女王の歴史のプロローグにふさわしい、圧倒的な格調高さを放つ素晴らしい1枚です。 -
17 連作の第2作目、『マリー・ド・メディシスの誕生(1573年4月26日、フィレンツェ)』
後にフランス王妃となるマリー・ド・メディシスが、イタリアのフィレンツェでこの世に生を受けた記念すべき瞬間を、ルーベンス特有の壮大な神話の世界を借りて描き出した見事な大作です。
画面の左側では、豊穣の女神(あるいはフィレンツェを象徴する女神)が、生まれたばかりの愛らしい赤ん坊(マリー)を優しく両腕に抱きかかえています。
その頭上では、天から舞い降りた美しい光の神が、幸運の象徴である「豊穣の角」から色鮮やかな花々を惜しみなく注ぎ、未来の王妃の誕生を心から祝福しています。
画面の右下に大胆に横たわっているのは、フィレンツェを流れるアルノ川の擬人化(川の神)です。
大きな水瓶から清らかな水を流しながら、この偉大な誕生の瞬間を静かに見守っています。
暗い背景の中から、神々に祝福された赤ん坊のまばゆい肌と、躍動感あふれる神々の肉体美がドラマチックに照らし出されており、ただの歴史的な記録画にとどまらない、バロック美術ならではのまばゆい気品と迫力にすっかり圧倒される素晴らしい1枚です。 -
18 連作の第3作目、『マリー・ド・メディシスの教育』
未来のフランス王妃にふさわしい、最高峰の教養を身につけていく少女時代のマリーの姿を、神々の知恵を借りて表現した非常に知的な大作です。
画面の左側で、熱心に書物を広げてマリーに読み書きを教えているのは、知恵と学問の女神ミネルヴァ(アテナ)です。
そのすぐ横では、音楽の神アポロンがヴィオラ・ダ・ガンバを奏でて芸術の素養を授けており、上空からは伝令の神メルクリウスが舞い降りて、巧みな「弁論術(話し方の技術)」を授けようとしています。
そして画面の右側には、美と優雅さを司る「三美神」が並んで佇み、マリーへ誰もが魅了されるような気品と美しさを手渡しています。
床に無造作に置かれたパレットや彫刻、本などは、彼女がマスターした数々の学問をすっきりと物語っています。
神々が総出で一人の少女を一流の王妃へと育て上げていく様子が、バロックらしい柔らかな光と気品ある色彩でまとめられた、王家の誇りがひしひしと伝わってくる素晴らしい1枚です。 -
19 連作の第4作目、数ある作品の中でもひときわロマンチックで名高い傑作『マリー・ド・メディシスの肖像画の贈呈(アンリ4世、マリーの肖像画を受け取る)』
フランス国王アンリ4世が、まだ見ぬ婚約者マリー・ド・メディシスの肖像画を初めて手渡され、そのあまりの美しさに心を奪われている劇的な瞬間が描かれています。
画面の中央では、愛の神キューピッドと婚姻の神ヒュメナイオスが、マリーの美しい肖像画を大切そうに掲げて王に見せています。
鎧をまとい、杖を手に持ったアンリ4世は、戦いの最中であったにもかかわらず、思わず肖像画に釘付けになり、うっとりと見入っています。
王のすぐ後ろには、フランス国家を擬人化した女性(青いマントの女性)が優しく寄り添い、「この結婚こそがフランスに繁栄をもたらします」と、王の背中を後押しするように囁いています。
上空の雲の上からは、最高神ユピテル(ゼウス)と王妃ユノ(ヘラ)が仲睦まじく手を握り合いながら、この世紀の婚姻を心から祝福しています。
ユノの足元にいる美しいクジャクのつがいや、下の方で王のヘルメットや盾をおもちゃにして遊んでいる小さな天使たちの姿は、激しい戦争の時代が終わり、愛と平和の時代がやってくることをすっきりと物語っています。
政治的な政略結婚という現実の歴史を、神話の壮大なラブストーリーへと見事に昇華させた、ルーベンスの宮廷画家としての類まれな知性と超絶的な技巧が光る、最高に見ごたえのある素晴らしい1枚です。 -
20 連作の第5作目、歴史的にも非常に重要な場面を描いた『代理結婚式(フィレンツェ公会議席上のアンリ4世とマリー・ド・メディシスの結婚式)』
1600年10月5日、フィレンツェの大聖堂で執り行われた世紀の結婚式の情景が描かれています。
タイトルにある「代理結婚式」の通り、新郎であるフランス国王アンリ4世は、国家の激務のためこの式典に出席することができませんでした。
そのため、マリーの叔父であるトスカーナ大公フェルディナンド1世が王の代理を務め、マリーの指に結婚指輪をそっとはめている大変興味深い瞬間です。
画面中央では、枢機卿が二人の手を厳かに引き合わせ、神聖な誓いを見守っています。
左側に佇む新婦マリーは、極限まで細密に描き込まれた純白のサテン地にきらびやかな金の刺繍、そして大粒の真珠をちりばめた豪華絢爛な婚礼衣装を身にまとっており、その圧倒的な気品に目を奪われます。
彼女の長いドレスの裾を、松明を手にした小さな愛の神(ヒュメナイオス)が大切そうに支えているのも、ルーベンスらしい神話的な美しい演出です。
背景の祭壇の上には、キリストの亡骸を抱く大理石の「ピエタ像」が堂々とそびえ立ち、この婚姻の神聖さをすっきりと裏付けています。
手前の足元には、忠誠の象徴である可愛らしい小さな猟犬が描かれており、画面に温かみのある彩りを添えています。
多忙な王の不在という現実の変則的な歴史を、まるで壮大な古典劇の一幕であるかのように格調高く、そして華やかにまとめ上げた、バロック美術の真髄を感じさせる素晴らしい大作です。 -
21 連作の第6作目、この巨大なギャラリーの中でも一、二を争うほど華やかで名高い大傑作『マルセイユ上陸(マルセイユ港に到着したマリー・ド・メディシス)』
故郷イタリアを離れ、ついにフランスの土を踏んだ新婦マリー・ド・メディシスの輝かしい歓喜の瞬間を描いた作品です。
画面中央では、豪華な婚礼衣装をまとったマリーが、船から架けられた歩み板を渡って堂々と上陸しています。
彼女を迎えるのは、フランス王家の象徴である「百合の紋章」がちりばめられた青いマントを羽織った、フランス国家を擬人化した人物です。
上空では、勝利と名声を告げる女神ファマが、2本のトランペットを同時に吹き鳴らしながら彼女の到来を大々的に祝福しています。
そして、この作品の最大の「主役」とも言えるのが、画面下部で激しくうねる海の世界です。
海の最高神ネプトゥヌス(ポセイドン)が三叉の矛を手に持ち、荒ぶる波と船をしっかりと抑え込んでいます。
そのすぐ傍らでは、ルーベンス特有の非常に豊満で健やかな肉体美を持つ「海の妖精」が水しぶきを上げながら現れ、無事にマリーの船を港へと導いた喜びをダイナミックに表現しています。
彼女たちの艶やかな肌と、滴る水のリアルな質感描写には息をのむばかりです。
歴史的な「港への到着」という出来事を、天界と海界の神々が総出で歓喜する壮大なスペクタクルへと昇華させた、バロック美術の華麗なエネルギーがこれ以上ないほどすっきりと凝縮された最高の名作です。 -
22 連作の第7作目、『リヨンにおけるアンリ4世とマリー・ド・メディシスの対面』
1600年12月9日、フランスのリヨンでついに新郎アンリ4世と新婦マリーが初めて直接対面し、正式に夫婦としての契りを交わした、歴史的な喜びの瞬間を描いた大作です。
ルーベンスはこの二人の熱烈な結婚を、なんとギリシャ・ローマ神話の最高神夫婦である「ユピテル(ゼウス)」と「ユノ(ヘラ)」の姿にそのまま重ね合わせて表現しています。
画面上部の雲の上では、逞しい肉体を持つユピテル(アンリ4世)が、寄り添うユノ(マリー)の手を優しく握りしめ、二人の頭上には婚姻を司る神や、輝く「愛の星」が浮かんで祝福しています。
ユピテルの足元にいる鋭い鷲や、ユノの左側に佇む美しいクジャクのつがいは、それぞれの神のシンボルであり、王たちの絶対的な権威をすっきりと物語っています。
画面の下部を覗き込むと、リヨンの街の象徴である「2頭の雄ライオン」が引く豪華な黄金の戦車が配置されています。
戦車の上には、この結婚によって誕生する幸福な家庭を予感させるように、松明を手にした小さな愛の神たちが無邪気にライオンにまたがっており、画面に華やかな彩りを添えています。
現実の宮廷の結婚を、天界の最高神たちの婚姻という極限のドラマへと見事に高めた、バロック絵画ならではの豊満な美と格調高さが同居する素晴らしい1枚です。 -
23 ルーベンス 『ルイ13世の誕生』
続いて視線が向かったのは、連作の第8作目『ルイ13世の誕生』です。
王妃マリー・ド・メディシスが、後の国王となる待望の第一子を無事に出産した記念すべき瞬間を描いた大作です。
画面中央で穏やかに体を預けるマリーの横では、生まれたばかりの元気な赤ん坊が大切そうに抱きかかえられています。
神々の祝福をバロック美術ならではのまばゆい色彩で包み込んだ、非常に格式の高い1枚です。 -
24 ルーベンス 『摂政の委任』
続いて視線が向かったのは、連作の第9作目『摂政の委任』です。
国王アンリ4世が戦争へ出陣するにあたり、留守中の国政を王妃マリーに託す厳かな場面が描かれています。
最高権力を象徴する「黄金の地球儀」を渡す王と、それを受け止める黒いドレス姿のマリー。
二人の間に立つ幼い王太子ルイの姿が、未来の王位の正当性をすっきりと物語る、ドラマチックな緊張感に満ちた素晴らしい大作です。 -
25 連作の第10作目、マリーの生涯における最大の栄光の瞬間を描いた横長の大作『マリー・ド・メディシスの戴冠式』
1610年5月13日、パリのサン=ドニ大聖堂において、マリーが正式にフランス王妃としての戴冠を認められた、歴史的にも最高格式を誇る壮大な儀式の情景が描かれています。
画面の中央奥では、きらびやかな王冠を授けられ、感極まったように跪くマリーの姿があります。
その頭上からは、天から舞い降りた二人の美しい女神が、祝福の光とともに名誉と富の象徴である「黄金のコイン」を惜しみなく降らせ、この聖なる戴冠を讃えています。
右側には赤い法衣をまとった枢機卿たちが厳かに佇み、儀式の神聖さをすっきりと裏付けています。
左側を覗き込むと、豪華な衣装を身にまとった大勢の宮廷貴族や廷臣たちがパノラマのように細密に描き込まれており、まるで自分が大聖堂の特等席で歴史の瞬間に立ち会っているかのような、息をのむほどの臨場感があります。
足元にさりげなく描かれた2頭の犬たちの姿も、バロック絵画らしい現実の温かみを添える知的なアクセントになっています。
夫であるアンリ4世が暗殺されるわずか前日に行われたこの戴冠式は、マリーにとって自身の権力の正当性を証明するもっとも重要な記録であり、ルーベンスの類まれな色彩とダイナミックな構図の粋を尽くした、文句なしの最高傑作です。 -
26 連作の第11作目、悲劇と政治の大きなうねりを描いた横長の大作『アンリ4世の神格化とマリー・ド・メディシスの摂政宣言』
1610年5月14日、戴冠式のわずか翌日に狂信的な暴漢によって暗殺されてしまった国王アンリ4世の「死」と、残された王妃マリーが国の最高権力者として立ち上がる劇的な歴史の瞬間が描かれています。
画面の左側では、暗殺されたアンリ4世が、ローマの衣服をまといながら天界へと引き上げられ、最高神ユピテル(ゼウス)らによって「神」として迎え入れられている様子が、光とともにドラマチックに表現されています。
足元では、王の死を悲しむ人々や、不気味にうねる蛇のような「悪徳や嫉妬」が、バロック絵画らしい強烈な明暗のコントラストの中に描き込まれています。
画面の右側へと視線を移すと、深い喪服に身を包んで玉座に座るマリー・ド・メディシスの姿があります。
彼女の前では、フランス国家を擬人化した人物や、忠実な廷臣たちが跪き、国家の最高権力を意味する「黄金の地球儀」や舵をそっと手渡して、彼女が新しい支配者となったことをすっきりと宣言しています。
中央で頭を抱えて悲しむ白い衣服の女性の姿も、突然の悲劇のリアルな緊迫感をより一層引き立てています。
最愛の夫を失うという未曾有の悲劇を、天界の神話と国家の正当な権力継承という壮大な物語へと見事に昇華させた、ルーベンスの宮廷画家としての類まれな知性と筆力が光る、最高に見ごたえのある素晴らしい1枚です。 -
27 連作の第12作目、『神々の評議会』
続いて視線が向かったのは、連作の第12作目『神々の評議会』です。
マリーが摂政としてフランスを治めていた時代、いかに彼女が平和を保っていたかを、オリンポスの神々を大集結させて表現した非常に知的な作品です。
雲の上で議論を交わす神々と、下界の不和を追い払おうとする力強い身振りが、バロック美術らしいダイナミックなコントラストで描かれています。 -
28 ルーベンス 『ユーリヒの勝利』
マリー・ド・メディシスが摂政としてフランス軍を指揮し、要衝ユーリヒの町を鮮やかに奪還した、彼女の生涯で唯一の勝利を描いた大作です。
画面中央では、豪華な羽飾りのついたヘルメットをかぶったマリーが、気高い白馬にまたがって堂々と佇んでいます。フランス王家の象徴である「百合の紋章」が美しく刺繍された衣装をまとい、手元には指揮杖が握られています。最高司令官としての圧倒的な威厳がリアルに伝わってくる姿です。
彼女の頭上からは、天から舞い降りた大きな翼を持つ「勝利の女神」が、月桂冠を授けようと両手を広げています。左側に優しく寄り添う女性は「寛大」の象徴で、その足元には強さを表すライオンも描かれています。右奥の背景には、激しい戦いが繰り広げられた城塞と、進軍する無数の兵士たちが細かく描写されています。
マリー自身は実際の戦場には赴いていないという現実の歴史を、まるで神話の英雄の凱旋であるかのように華やかに仕立て上げました。ルーベンスの類まれな演出力が光る、見ごたえのある素晴らしい1枚です。 -
29 連作の第14作目、大国同士の結びつきを描いた『王女たちの交換(あるいは、アンヌ・ドートリッシュとエリザベート・ド・フランスの交換)』
1615年11月9日、フランスとスペインの国境であるビダソア川のアンダイエ付近において執り行われた、歴史的なダブル政略結婚の瞬間を描いた作品です。
マリー・ド・メディシスが仕掛けたこの外交政策により、フランス国王ルイ13世の妃となるスペイン王女アンヌ・ドートリッシュと、スペイン国王フェリペ4世の妃となるフランス王女エリザベートの二人が、国境の川の上で厳かに「交換」されている場面です。
画面中央では、婚礼衣装をまとった二人の王女が優しく手を取り合っています。
左側の王女(エリザベート)をエスコートしているのは、兜をかぶりマントを羽織ったフランス国家の擬人化であり、右側の王女(アンヌ)を優しく迎え入れているのは、同じく兜をかぶったスペイン国家の擬人化です。
彼女たちの頭上を覗き込むと、天界の雲の間から無数の愛らしい小さな天使たちが舞い降りて、神聖な祝福の光とともに色鮮やかな花々を惜しみなく降らせており、両国の平和と繁栄をすっきりと表現しています。
画面の下部には、国境の川を象徴する「川の神」や、大きな貝殻を吹き鳴らす海の住人たちがダイナミックに描かれており、画面に瑞々しい臨場感を添えています。
大国同士の複雑な政治的駆け引きという現実の歴史を、天界と自然界の祝福に満ちた壮大な美の儀式へと見事に昇華させた、ルーベンスの宮廷画家としての高い知性と洗練された色彩感覚が光る素晴らしい大作です。 -
30 連作の第15作目、マリーの政治的な理想がこれ以上ないほど雄弁に描かれた大作『マリー・ド・メディシスの幸福な統治』
マリーが摂政としてフランスを支配していた時代に、いかに国が豊かで、正義と平和に満ちあふれていたかを、数々の神々を散りばめて表現した非常に知的な寓意画です。
画面中央の、フランス王家の「百合の紋章」が描かれた豪華な衣服をまとって玉座に腰掛けているのが王妃マリーです。
彼女は右手に「正義の天秤」を掲げ、左手には「権力の象徴である地球儀」を携え、絶対的な統治者としての威厳をすっきりと漂わせています。
マリーの右側には、剣を手にした正義の女神や、月桂冠を授けようとする勝利の女神が優しく寄り添っています。
画面の下部には、彼女の善政によって守られた平和を謳歌するように、小さな愛らしい天使たちが無邪気に踊っています。
さらにその足元を覗き込むと、平和を脅かす存在である「嫉妬や不和、悪徳」を象徴する不気味な人物たちが、光に追いやられるように地面にねじ伏せられており、画面全体にバロック美術らしい劇的なドラマ性を与えています。
現実の宮廷での複雑な権力争いや苦難の歴史を、すべてをねじ伏せる完璧な「黄金時代」の神話へと見事に昇華させた、ルーベンスの類まれな筆力と演出力の粋を尽くした、今回の旅の締めくくりにふさわしい素晴らしい最高の大作でした。 -
31 連作の第16作目『ルイ13世の多数(アンリ4世とマリー・ド・メディシスの摂政の終焉)』
1614年10月20日、マリーの息子であるルイ13世が13歳となり、当時の法に則って成人に達した歴史的な瞬間を描いた作品です。
これは同時に、母マリーによる摂政政治が公式に終わりを告げ、息子の新国王へ国家の全権が引き継がれるという、極めて厳かな政治の転換点でもありました。
画面の左側では、豪華な船の舵(かじ)をそっと握りしめた若き新国王ルイ13世が堂々と佇んでいます。
そのすぐ隣には、これまで国を支えてきた母親のマリーが優しく寄り添い、息子へ国家という名の大きな船のコントロールを厳かに手渡しています。
船を力強く漕ぎ進めているのは、盾を携えた「力、正義、宗教、調和」などの国家の美徳を象徴する女神たちです。
上空では、大きな翼を持つ女神が、これからのフランスの航海が順風満帆であることを約束するように、まばゆい光とともに高く帆を掲げています。
波立つ現実の複雑な政権交代のドラマを、神々と美徳に守られた輝かしい国家の船出へと見事に昇華させた、ルーベンスの類まれな演出力が光ってます。
つづき
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