2025/03/05 - 2025/03/05
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Mr.noone specialさん
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キュンパスを使い内田百の「阿房列車」に倣って無為の往還をした記録。
完全版は以下ブログ参照。
https://aamns2021.livedoor.blog/archives/cat_440613.html
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乗車したはやぶさは営業キロ数178.4粁を52分で駆け通して盛岡に着く。東京から静岡とほぼ同じ距離が1時間を切って結ばれていることになるが、百閒はどう思うだろうかと想像する。近づくにつれて天気が回復し、改札を出てロータリーに廻ると快晴となり眩しい。青森であれほどあった雪はここではビル陰に縮こまって所在なさげにしている。
そうは言っても気温は摂氏六度だったから、風が吹けば寒い。そこのところを心得ていて、バスの運転手は終点で客が下りた後に車溜まりに引き籠ることなく、すぐに待ち客を車内に入れる。お陰で顔の強張りがすぐに解凍されて安堵した。 -
盛岡に来たから岩手山に挨拶しなければならない。幸い開運橋を通るので車窓を覗くとトラスが遮って邪魔をする。
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目線が上がる弊害にやきもきしたが、橋を渡り切った瞬間に御神体が望めて留飲を下げる。
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腹は然程減っていないが、上の橋までバスに乗って中河で中華そばを食べることにする。相変わらず磨き込まれて小ざっぱりとした店内は父祖伝来の和竿のような鈍い輝きを放っている。素っ気ないほどの中華そばはするりと胃に滑り込んで他を邪魔しない優しさがあるから、旅路にあって意地汚くあれもこれも食べたいという時に好都合な一椀だが、後味に聊か変調を来した様に感じた。昆布の加減を間違えただけであってほしいと願って店を後にする。
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歩いてすぐの大丸屋に寄る。盛岡で下車したのはここで和菓子を調達するのが主目的である。相変わらず上生菓子を豊富に揃えていて、桃の節句が近いのでひちぎりが置かれていたから逃さず買い求める。
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他に福梅など二三点の上生、それから銘品の誉れ高いすがの朝を買って帰る。
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大丸屋に次ぐ目的を達すべく内丸の喫茶パァクへ行く。冬だけ提供しているというホットケーキを食す機会を得たので立ち寄ることにした。程好く空いており、午後の気怠い空気も充満していて、寛ぐに如くはない。
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ホットケーキは二枚重ねたまま口に入れると、もそもそとしてきまりが悪い。一枚ずつ切って口に入れると穏やかで心温まる甘さが口に広がる。特筆すべき旨さではないかもしれないが、厳寒を乗り切る土地の人々の記憶に甘やかな暖かさを与え続けているのだから偉いものだと思う。
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まだ時間があるので近くのリーベにも寄る。こちらは御婦人達の歓声があちこちで上がり、少し忙しない。心を鎮める効を求めてシナモンミルクティーを注文する。果たして啜るごとに心の波が次第に治まり、終いには静かな湖面のようになる。この霊験あらたかな液体が一杯五百円也とはいかにも安い。
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そろそろ駅へ戻る頃合となった。道すがら後藤屋の胡麻餡どら焼きを買おうとカワトクへ足を運ぶ。目的ばかりで全然阿房列車とならず、百閒の苦虫を嚙みつぶしたような顔が脳裏にちらつく。高踏の途行きは慮外に険しい。途中吹きしぶった雪が残る城跡の石垣を見たが、あれに登るのと大差ないように思う。
地場の産品を揃えた一画を隈なく探すが見当たらない。見当たらなければ止むを得ないから、別の店の胡麻餡どら焼きで間に合わせることにする。
この一画には雫石の木立の中に店を構える風光舎の豆を売る出店があったが、閑散としていて寂しい。冷房が無く暑い店で、良い環境で珈琲を飲める時季が短いのが瑕疵だから、冷房設備を設置したら行こうと思っていたけど、次があるのかは判らない。カワトクも今春別館を閉めるというから最早刀折れ矢尽きたのかもしれず、こちらも次があるかは判らない。尤も自身が齢五十を過ぎて調子沈降著しく、次があるのか覚束ないものの最たるものだとも思う。何となく沈鬱な思考が垂れ込めて来たので、ここが引き際と感得して足早に歩廊へ上り、列車に乗った。
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