2025/02/16 - 2025/02/16
17位(同エリア2026件中)
旅猫さん
6日前に訪れ、少々心残りとなった八王子を再訪する。地図を忘れたことにより見逃した史跡などを巡りつつ、最後は、休みであった『桑都テラス』と『東京八王子酒造』に立ち寄り、地酒を味わう行程だ。
(2025.02.21 投稿)
- 旅行の満足度
- 3.5
- 観光
- 3.5
- グルメ
- 3.5
- 交通
- 3.5
- 同行者
- 一人旅
- 交通手段
- JR特急 JRローカル 徒歩
-
9時発の特急『あずさ9号』に乗り、新宿駅を出発。そして、八王子駅で降り、隣の西八王子駅へと向かう。乗り込んだのは、今なら無料で利用できるグリーン車である。一駅だけだが、快適であった。
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駅前のバス乗り場へ向かうと、歩道にマンホールではない何かが埋め込まれていた。よく見ると、八王子千人同心のタイル絵であった。千人同心が被っていた陣笠を象徴化したもののようだ。
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駅前から、9時58分発の楢原町行の西東京バスに乗り込む。
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そして、八王子市役所の前を通り、浅川に架かる鶴巻橋を渡ってすぐの鶴巻橋バス停で降りた。来た道を戻り、鶴巻橋を渡る。その途中に、彫刻家橋本次郎が作成した、八王子に因んだ銅像がいくつか立っていた。そのひとつが、『千人同心』である。
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橋の上からは、浅川の流れと奥多摩南部の山並みが見えている。
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『松姫』と言う像もあった。松姫は、武田信玄の四女で、武田氏が滅亡した際、八王子に落ち延びたことで知られている。前回、菩提寺である信松院を訪ね、姫のお墓に詣でている。
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橋を渡り切り、さらに南へ歩くと元本郷町となる。その一角に鎮座している多賀神社に参拝する。多賀神社は、八王子宿の西の鎮守である。境内は広く、樹々は葉を落とし、絵画のような風景である。かつて、この神社の例大祭は、『上の祭り』と呼ばれ、東の鎮守である八幡八雲神社の例大祭は、『下の祭り』と呼ばれていたそうだ。
多賀神社 寺・神社・教会
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拝殿には、小澤酒造場で醸されている『桑の都』の酒樽が置かれている。
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境内の一角には、織物業の方や織子が信仰した機守神社も鎮座していた。
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多賀神社から東へと歩いて行くと、善龍寺がある。ここは、天然理心流三代目増田蔵六の菩提寺である。増田家は、元武田氏家臣で、後に千人同心となっている。その墓は、とても小さなものであった。
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善龍寺から、甲州街道へと向かう。その途中に、大村屋と言う和菓子屋があったので、立ち寄ってみる。お店の方に話を訊けば、昭和6年創業とのこと。和菓子の人気が無くなり、多くの店が廃業して行くのが残念だと言う。和菓子屋も、酒蔵同様、年々数を減らしているのである。和菓子好きとしては、寂しい限りである。
大村屋 グルメ・レストラン
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甲州街道を東へと歩いて行く。再開発が進み、大きなビルばかりになってきているが、まだ、所々に個人経営の商店が残っている。ビルばかりの街並みは、風情が無く、つまらない。
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その再開発された区画の前に、石碑が立っていた。八王子宿のひとつである八日市宿の跡を示すものである。八王子宿は、十五もの宿場が連続する大きな宿場であったが、今は市街地化が進み、宿場の風情を感じる建物はほとんど残っていない。
旧甲州街道 八日市宿跡 名所・史跡
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そのすぐ先に、司馬遼太郎氏が八王子を訪ねた際に会われたKさんが女将をしていた老舗の履物屋があるのだが、廃業してしまったそうで、周囲も再開発されてしまっていた。隣にあった荒井呉服店だけは、建て替えられたものの、まだ残っていた。この呉服屋は、松任谷由実の実家でもある。
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八日市宿跡から北へ向かうと極楽寺がある。元は、大石定重により滝山城下に創建された寺で、八王子城落城後に、現在地に移転している。八王子空襲の際、奇跡的に焼け残り、遺体安置所などに使われたそうである。
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墓地には、北条氏照の家臣で、後に大久保長安に仕えた長田作左衛門の供養塔や墓などがあった。
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他にも、松姫と共に逃れて来た、信玄五男の仁科盛信の娘小督(玉田院)の墓や、千人同心組頭の塩野適斎の墓もあった。塩野適斎は、八王子や千人同心についての編年史である『桑都日記』を書いた人物である。
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続いて、妙薬寺に立ち寄る。ここには、かつてこの辺りを領していた武蔵七党のひとつ横山党の墓とされるものがある。江戸期に編集された『新編武蔵風土記稿』にも記載のあるものだが、墓と言うよりは供養塔のようである。ちなみに、この寺の辺りまでが、横山党の居館であったそうだ。
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その南側に、下の鎮守である八幡八雲神社が鎮座している。八王子の地主神である八幡神社と、北条氏照が八王子城に勧請した八雲神社が合祀されている。境内は、横山党の居館跡とされ、横山党の祖である横山義孝を祀る横山神社もあった。横山党は、小野篁を祖とする説もある。鎌倉時代初期の和田合戦に際し、義憤から和田氏側に与し、北条氏により滅ぼされている。なかなか熱い一族であったようだ。
八幡八雲神社 寺・神社・教会
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この後、月曜日が定休日であった『桑都テラス』に立ち寄ってみる。先日とは見違えるように装飾されている。
桑都テラス 名所・史跡
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中を覗くと、『角打ち九十九』と言う店が目に付いた。客は誰もいないようなので、入ってみることにした。
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とりあえず、お勧めだという『ちょい呑セット』を注文。お酒一杯に、日替わりの惣菜三点が付いて七百円であった。選べるお酒の中に、八王子の地酒『桑乃都』があったので、それをいただいた。
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追加で、蛸の刺身を注文。少々量が少ないが、悪くはない。
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二杯目には、『高尾天狗 純米吟醸』をいただく。こちらは、八王子産の米を使い、諏訪の『舞姫』で醸されたお酒である。
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肴には、『九十九の塩から揚』を注文。壁には、七十種類以上の料理が貼られていたのだが、残念ながら16時以降しか注文できないそうだ。それまでは、二十種ほどの軽い目の料理しかない。
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最後に、壁に貼ってあった新酒のワインをいただく。それは、サントリー登美の丘ワイナリーで醸された甲州種のワインであった。少々甘さを感じたものの、爽やか味わいで、なかなか美味しかった。
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『桑都テラス』から、すぐ近くの『東京八王子酒造』に移動。こちらも月曜日に立ち寄れなかった場所である。中はとても狭かったが、すべてこの場所で醸造しているそうである。ご好意で、二種類試飲させていただき、気に入った純米吟醸の『No.12』を二本購入した。すると、その場で瓶に詰め、封もしてくれた。まさに、蔵出しである。
東京八王子酒造 専門店
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ふと見ると、『酒蔵ジェラート』と言う張り紙がある。気になったので、それも追加で購入し、『桑都テラス』に戻りいただく。スプーンは、食べられるスプーンと言うもので、酒造りの過程で出る八王子産の米粉を使ったものだそうだ。良い企画だと思うが、少々脆いのが難点である。
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八王子駅へ戻る途中、行列の出来ている饅頭屋が目に付いた。『都まんじゅう』と言うもので、なかなか美味しそうな感じであったが、並ぶのも億劫なので、止めておく。八王子市民に愛されているようだ。
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八王子駅からは、すぐに来た中央特快のグリーン車に乗車。無料なので混んでいるかと思ったが、余裕で座ることが出来た。車内で、『大村屋』で購入したお菓子をいただく。『筬のひびき』は、苦手な粒餡であったが、『赤駒』の方は、白の漉し餡で、とても美味しかった。地図を忘れたおかげで、二回に分けることになってしまった八王子千人同心の残り香を見付ける旅も、これで終わりである。
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この旅行記へのコメント (2)
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- ポテのお散歩さん 2025/02/22 21:08:00
- 街道をゆく
- 旅猫さん こんばんは。
司馬遼太郎の『街道をゆく』は、あまりにも大作で
読む前から怯みました(^-^;
ですが、この大作があるおかげで 昔の日本を残す事が出来ますね。
海外では、モーツアルトが生まれた家とか 場所によってはもっと昔の建物が
今も現役で残っているし、ローマのように 地図が当時と大きく変わらない
国もありますね。
石造りの建築と違い、日本は木材建築なので 戦の度に燃えて灰になったり
天災で焼けてしまう事も。
地震国という辛さもあります。
石造りの建築ではないので、古い建築物を残すのは難しいですが
司馬遼太郎さんの様に、日本の歴史や文化に愛情を持って
書物として残して下さった事で、完全に忘れ去られる事は無いでしょうね。
街の面影が年々薄れて行くのは残念ですが、100年後も 第二・第三の
旅猫さんのような方が『街道をゆく』の本を持ちながら
当時の街の面影を辿って下さればいいですね(*^-^*)
ポテ
- 旅猫さん からの返信 2025/02/23 10:33:08
- RE: 街道をゆく
- ポテさん、こんにちは。
いつもありがとうございます。
『街道をゆく』は、40巻以上ありますからね。
興味のある地域だけで読むと言う手もあります。
私も、海外の部分は読んでいません。
ヨーロッパは、石の文化なので中世の街並みや遺跡が多く残り、歴史が日常に溶け込んでいますよね。
日本は、木と紙の文化なので、燃えやすい。。。
残っていた古い町並みも、空襲と建て替えで失われてしまいました。
観光地となっている場所は何とか残りますが、他はどんどん消え去っています。
司馬遼太郎氏や白洲正子氏のように、古代から歴史を見つめ、その痕跡を辿り、文章として残してくれることで、後世の人にも少しは繋がっていきますね。
ただ、お二人が訪れた場所も、すでに失われた風景が多いのが残念です。
白洲正子氏の名著『近江山河抄』は、50年前の書ですが、当時、すでに開発により失われていく風景や町並みを憂いています。
司馬遼太郎氏も、『街道をゆく』の中で、無秩序な開発による歴史的遺産の破壊を嘆いています。
同じく50年近く前の書ですが、今の日本の風景を見れば、さぞかし落胆されることでしょう。
私も、歴史を見つめ直すには、少々遅きに失した感があります。
二十年前であれば、もっと日本らしい町並みや景色に出会えたことでしょう。
今や、どこへ行っても街は同じ装いで、店はチェーン店ばかり。
つまらない世の中になったものです。
旅猫
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