12月27日、6日目。8時にイランスカヤ駅に到着、まだ暗い。トレーナー（パジャマ）のままデッキから駅舎を撮ろうとしたがさすがに寒い。車掌さんが指で「マイナス24度」と教えてくれた。<br /><br />ロシア号の車内は、各車両にある石炭を使った暖房設備によってプラス25度位に保たれている。Tシャツ1枚でも過ごせるほどだが、逆に外はマイナス25度前後なので完璧な防寒服が要る。<br />つまり列車からホームに降り立つには、何と50度の温度差を克服しなければならない。<br />いったい私たちはこの旅行でシャツから防寒コートへの早変わりを何回演じて来たことだろう。<br />物好きと言われても仕方がない。<br /><br />暖房に石炭を使うには理由がある。電気による暖房に頼っていては、万一の送電事故や脱線時に皆凍死するからだ。針葉樹林や雪原を走るシベリア鉄道にはなかなか救援の手も届かないだろう。<br /><br />今度の車掌さんは若いイケメンだ。<br />日本語に興味があるようで、通路に貼ってある私たちのスケジュール表を覗き込んでは「この字は何、あの字は何」と片言の英語で尋ねて来る。某省勤務のT嬢が熱心にそれに答える。彼女はわずかながらロシア語も話す。噂によると彼氏と同棲中だそうだ。6日目ともなるとそういった情報も流れて来る。<br /><br />12時、クラスノヤルスク駅着。この地名に聞き覚えがあるのはミサイル基地があるからだ。<br />だがそんな緊張感はまるで感じさせない。<br /><br />パガトール駅で再び列車の窓を拭く。<br />誰が考え付いたのだろうか今度は凍り付かないように水でなくウオッカを使う。確かにウオッカは冷凍庫の中でも凍らない。<br />そして、車窓から少しでもきれいな景色を楽しみたい、良い写真を撮りたいという執念はとうとう肩車まで登場させた。<br />心配そうに見守るマリーナさんと添乗員さん。足元は固く氷結しているのでこけたらアウトだ。<br /><br />かのT嬢が駅の「マガジン」で電話帳サイズのケーキを買い込んできた。「マガジン」はパンなどの食品を売る店、「キオスク」は雑貨を売る店だそうだ。<br />私もお裾分けいただいたが、大味であまりおいしくなかった。<br /><br />18時マリインスク駅、大阪の鉄道マニアの二人が列車の前で代わる代わるカメラに収まっている。<br />すると車掌さんが「ロシア号」と書かれたプレートを列車から外し、彼らに抱えさせ写真を撮らせているではないか。いささかサービス過剰だ。<br /><br />20時、その車掌さんが列車にはないはずのウオッカを引っ下げて私たちのコンパーメントをそっと訪問。<br />しばし歓談して飲むがさすがに強い。40度のウオッカをストレートで一気にあおる。<br />日本酒を勧めたが、「弱くて物足りない」と贅沢を言う。<br />24歳で独身、月収220ルーブルというから年の割には高給取りだ。<br />電子ライターや版画風のカレンダーをプレゼント、大変喜んで「見つかったらクビだよ」と首を切る真似をする。ジェスチャーこそ国際共通語だ。<br />ちなみにソ連ではカレンダーが不足気味のため、休日の異なる外国のものでも喜ばれるそうだ。<br /><br />ルーブルの話が出たので書いておくが、それ以外にカペイカという通貨もあって100カペイカが１ルーブル。補助通貨的な存在だ。（最後の画像の右下が50カペイカコイン）<br />日本にも戦前は「円」の他に「銭」という通貨単位があった。<br /><br />実は鉄道マニアの二人は、後日この車掌さんからロシア号のペナント（三角旗）を手に入れていた。どうも裏取引臭い。<br /><br />この日車窓には粉雪に煙る広野が続き、遠くには寒村が現れては消え、消えては現れた。<br />いったい彼らはこの厳冬の地で何を生業としているのだろう。

シベリア鉄道の車窓から＝35年前の真冬の冒険 ⑦　若くてイケメンな車掌さん

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1989/12/27 - 1990/01/05

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#鉄道

かちかち山たぬ吉さん

12月27日、6日目。8時にイランスカヤ駅に到着、まだ暗い。トレーナー（パジャマ）のままデッキから駅舎を撮ろうとしたがさすがに寒い。車掌さんが指で「マイナス24度」と教えてくれた。

ロシア号の車内は、各車両にある石炭を使った暖房設備によってプラス25度位に保たれている。Tシャツ1枚でも過ごせるほどだが、逆に外はマイナス25度前後なので完璧な防寒服が要る。
つまり列車からホームに降り立つには、何と50度の温度差を克服しなければならない。
いったい私たちはこの旅行でシャツから防寒コートへの早変わりを何回演じて来たことだろう。
物好きと言われても仕方がない。

暖房に石炭を使うには理由がある。電気による暖房に頼っていては、万一の送電事故や脱線時に皆凍死するからだ。針葉樹林や雪原を走るシベリア鉄道にはなかなか救援の手も届かないだろう。

今度の車掌さんは若いイケメンだ。
日本語に興味があるようで、通路に貼ってある私たちのスケジュール表を覗き込んでは「この字は何、あの字は何」と片言の英語で尋ねて来る。某省勤務のT嬢が熱心にそれに答える。彼女はわずかながらロシア語も話す。噂によると彼氏と同棲中だそうだ。6日目ともなるとそういった情報も流れて来る。

12時、クラスノヤルスク駅着。この地名に聞き覚えがあるのはミサイル基地があるからだ。
だがそんな緊張感はまるで感じさせない。

パガトール駅で再び列車の窓を拭く。
誰が考え付いたのだろうか今度は凍り付かないように水でなくウオッカを使う。確かにウオッカは冷凍庫の中でも凍らない。
そして、車窓から少しでもきれいな景色を楽しみたい、良い写真を撮りたいという執念はとうとう肩車まで登場させた。
心配そうに見守るマリーナさんと添乗員さん。足元は固く氷結しているのでこけたらアウトだ。

かのT嬢が駅の「マガジン」で電話帳サイズのケーキを買い込んできた。「マガジン」はパンなどの食品を売る店、「キオスク」は雑貨を売る店だそうだ。
私もお裾分けいただいたが、大味であまりおいしくなかった。

18時マリインスク駅、大阪の鉄道マニアの二人が列車の前で代わる代わるカメラに収まっている。
すると車掌さんが「ロシア号」と書かれたプレートを列車から外し、彼らに抱えさせ写真を撮らせているではないか。いささかサービス過剰だ。

20時、その車掌さんが列車にはないはずのウオッカを引っ下げて私たちのコンパーメントをそっと訪問。
しばし歓談して飲むがさすがに強い。40度のウオッカをストレートで一気にあおる。
日本酒を勧めたが、「弱くて物足りない」と贅沢を言う。
24歳で独身、月収220ルーブルというから年の割には高給取りだ。
電子ライターや版画風のカレンダーをプレゼント、大変喜んで「見つかったらクビだよ」と首を切る真似をする。ジェスチャーこそ国際共通語だ。
ちなみにソ連ではカレンダーが不足気味のため、休日の異なる外国のものでも喜ばれるそうだ。

ルーブルの話が出たので書いておくが、それ以外にカペイカという通貨もあって100カペイカが１ルーブル。補助通貨的な存在だ。（最後の画像の右下が50カペイカコイン）
日本にも戦前は「円」の他に「銭」という通貨単位があった。

実は鉄道マニアの二人は、後日この車掌さんからロシア号のペナント（三角旗）を手に入れていた。どうも裏取引臭い。

この日車窓には粉雪に煙る広野が続き、遠くには寒村が現れては消え、消えては現れた。
いったい彼らはこの厳冬の地で何を生業としているのだろう。

エリア

シベリア(ロシア)

旅行の満足度: 5.0

観光: 4.0

ホテル: 4.0

グルメ: 4.0

交通: 4.0

同行者: 一人旅

一人あたり費用: 30万円 - 50万円

交通手段: 鉄道観光バス徒歩飛行機

航空会社: アエロフロート・ロシア航空

旅行の手配内容: ツアー（添乗員同行あり）

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この旅行記へのコメント（3）

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ももであさん 2024/12/22 18:31:56

角度は正常

かちかち山たぬ吉さん

フォローいただきありがとうございます。

いやいや。絶対にバカデカイと思います!!!
ぬいぐるみを抱くぬいぐるみの可愛らしいこと♪

かちかち山たぬ吉さんからの返信 2024/12/22 20:19:11

Re: 角度は正常

実はK-1選手も避けて通るほどの大男なんです＾＾。

ももであさんからの返信 2024/12/22 20:26:31

ガリバー旅行記

> 実はK-1選手も避けて通るほどの大男なんです＾＾。

なるほど。ガリバー旅行記というわけですね♪

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