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2023年5月16日(火)10時35分、予定より少し遅れて路頭の儀の行列スタート。建礼門前向かって右手(東側)の白いテントのところに上皇様ご夫妻がおられたようだ。後からのニュースで分かったのだが。<br /><br />行列は本列と斎王代列に大別され、本列は勅使を中心にした列で、斎王代列は女人列といわれ斎王代を中心にした列。総勢約511名、馬36頭、牛4頭、牛車2基の先頭から最後尾まで約1㎞に及ぶ行列は、まずは本列から。<br /><br />本列は4列で構成される。検非違使代・山城使代の第1列、御幣櫃・馬寮使・牛車の第2列、舞人・勅使の第3列、そして陪従・内蔵使の第4列。<br /><br />まずは第1列で、先頭は乗尻(のりじり)。行列を先導する騎馬隊で、左右各3騎。上賀茂神社の競馬会の騎手。競争相手のため、左方と右方で衣装が違う。左方が朱色で、右方が蓬色。<br /><br />続いて、行列の警備にあたる先払いの素襖(すおう)。素襖とは元々鎌倉時代以降の武士のフォーマルウェアだった直垂(ひたたれ)のひとつで、江戸時代には旗本の礼装になっていた。藍色の竜模様の衣と袴。江戸幕府より遣わされた警護役で、装束がそのまま役名となった。<br /><br />次は検非違使志(けびいしのさかん)。縹色(はなだいろ;淡い藍色)の武官の束帯(そくたい;公家男子の正装)である闕腋袍(けってきのほう)を着ている。警察・裁判を司る六位武官の役人で、舎人が引く馬に乗り、下役を率いて警備に当たる。弓矢を持つ調度掛従え、武装している(下の写真1)。<br /><br />看督長(かどのおさ)、火長(かちょう)、如木(にょぼく)、白丁(はくちょう)などに続いて明るく黄みを帯びた橙色の装束の検非違使尉(けびいしのじょう)(下の写真2)。検非違使庁の五位の武官で、警備の最高責任者。舎人の引く馬に乗り、朱ふつの縫腋袍(ほうえきのほう)を着ている。五位が薄朱を着た時代を踏襲している。<br /><br />次は山城使(やましろつかい)。濃赤色の縫腋袍、六尺の裾(きょ)。国司庁の次官・山城介(現在の京都府知事に相当)する五位の武官。賀茂の両社とも洛外になるので、山城の国司の管轄区域になるため督護の任に付く。舎人が馬の口を取り、前後に馬副がつく。あとに手振、童、雑色、取物舎人、白丁など従者が山城使の所用品を携えてゆく(下の写真3)。<br /><br />第2列に入る(下の写真4)。ひときわ艶やかな牛車(御所車)。勅使の乗る車で、藤の花などを軒に飾り、牛に引かせている。現在は勅使が乗ることはなく、行列の装飾となっているが、行列を典雅にしている。牛の引き綱を、淡紅の狩衣姿の牛童(うしわらわ)が取り、車方、大工職などの車役が、替え牛(下の写真5)とともに従う。<br /><br />下社二座、上社一座、合わせて三合の賀茂両社の神前に供える御幣物を納めた御幣櫃が白木の唐櫃に注連縄をかけ、白丁に運ばれてゆく。さらに内蔵寮史生(くらりょうのししょう)が続く。御幣物を司る内蔵寮の七位の文官。縹色(薄い藍色)の縫腋袍、二藍の裾、赤色の単。騎乗し両社に各1名が参向する。所用品を携えた雑色、白丁を従える。<br /><br />さらに馬寮使(めりょうつかい)。走馬を司る左馬允(さまのじょう)で、六位の武官。薄い藍色の装束で騎乗し、背中に矢を背負っているが、弓は調度掛に持たせている。<br /><br />第3列に入ると、騎乗した6人の舞人(まいうど)が登場。緋色の無地闕腋袍で、下襲(したがさね)、白平絹押箔袴(はくおしすりはかま)の舞装束に巻纓冠と絲鞋(しかい)。それぞれ雑色、舎人、白丁を従える。近衛府の五位の武官で、官位相当では従六位上の将監(しょうげん)に当たる。歌舞の堪能者で神事用の歌舞である東遊(あずまあそび)を舞う。東国の民間舞踊が平安時代から宮中や神社で行われるようになったもの。 <br /><br />そして天皇の使いで、行列中の最高位者である勅使。現在は勅使は路頭の儀に加わらず、四位近衛中将がこれを勤めるので、近衛使(このえづかい)とも云う。葵祭は本来、勅使が下鴨、上賀茂両神社で天皇の祭文を読み上げお供えを届けるのが目的なので、祭りの本当の主役は勅使と云える。<br /><br />黒の闕腋袍に表袴。武官だが天皇陛下の使いの代役なので巻纓冠でなく垂纓冠。当時の様式のとおり、右腰には銀製の魚袋を付し、左腰には金色の飾太刀を差す。騎乗する馬も飾り馬で、華麗な馬面を付け唐鞍(からくら)を乗せており、朧(くとり;御馬役人)が口を取る。舎人、居飼(いかい;鞍覆持)、手振が従う。<br /><br />勅使の後、随身、牽馬に風流傘と続いて第3列が終了。風流傘は行列に華を添えるもので、大きな傘に紺布を張り、錦の帽額総(もこうふさ)などを掛け渡した上に牡丹や杜若など季節の花(造花)を飾り付けている。袴に同じ造花をつけた取物舎人(とりものとねり)4人が2人ずつ交代で持つ。<br /><br />そして最終第4列。紫の柄入り装束で騎馬する7人の陪従(べいじゅう)から始まる。近衛府の五位の武官で、賀茂両神社の社頭の儀で雅楽を奏する。濃葡萄色の蛮絵文様の闕腋袍、紫裾濃の指貫、巻纓冠。7騎が各種楽器を携え、それぞれ雑色、舎人、白丁が従う。<br /><br />そして、勅使近衛使代の神前で奏上する御祭文を預り持つ内蔵使(くらづかい)。緋色の装束に御祭文の入った袋を肩から掛け、太刀を佩く。五位の文武兼官。職名は内蔵助(現在の財務副大臣)。馬副、白丁らが従う。<br /><br />そして再び風流傘。今度のは黄色。これが本列の結び。<br />https://www.facebook.com/media/set/?set=a.9571664172903521&amp;type=1&amp;l=223fe1adec<br /><br /><br />斎王代列に続く

葵祭 路頭の儀 本列(Main Group of the Procession,Aoi Festival,Kyoto,Japan)

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2023/05/16 - 2023/05/16

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旅行記グループ 葵祭

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ちふゆ

ちふゆさん

2023年5月16日(火)10時35分、予定より少し遅れて路頭の儀の行列スタート。建礼門前向かって右手(東側)の白いテントのところに上皇様ご夫妻がおられたようだ。後からのニュースで分かったのだが。

行列は本列と斎王代列に大別され、本列は勅使を中心にした列で、斎王代列は女人列といわれ斎王代を中心にした列。総勢約511名、馬36頭、牛4頭、牛車2基の先頭から最後尾まで約1㎞に及ぶ行列は、まずは本列から。

本列は4列で構成される。検非違使代・山城使代の第1列、御幣櫃・馬寮使・牛車の第2列、舞人・勅使の第3列、そして陪従・内蔵使の第4列。

まずは第1列で、先頭は乗尻(のりじり)。行列を先導する騎馬隊で、左右各3騎。上賀茂神社の競馬会の騎手。競争相手のため、左方と右方で衣装が違う。左方が朱色で、右方が蓬色。

続いて、行列の警備にあたる先払いの素襖(すおう)。素襖とは元々鎌倉時代以降の武士のフォーマルウェアだった直垂(ひたたれ)のひとつで、江戸時代には旗本の礼装になっていた。藍色の竜模様の衣と袴。江戸幕府より遣わされた警護役で、装束がそのまま役名となった。

次は検非違使志(けびいしのさかん)。縹色(はなだいろ;淡い藍色)の武官の束帯(そくたい;公家男子の正装)である闕腋袍(けってきのほう)を着ている。警察・裁判を司る六位武官の役人で、舎人が引く馬に乗り、下役を率いて警備に当たる。弓矢を持つ調度掛従え、武装している(下の写真1)。

看督長(かどのおさ)、火長(かちょう)、如木(にょぼく)、白丁(はくちょう)などに続いて明るく黄みを帯びた橙色の装束の検非違使尉(けびいしのじょう)(下の写真2)。検非違使庁の五位の武官で、警備の最高責任者。舎人の引く馬に乗り、朱ふつの縫腋袍(ほうえきのほう)を着ている。五位が薄朱を着た時代を踏襲している。

次は山城使(やましろつかい)。濃赤色の縫腋袍、六尺の裾(きょ)。国司庁の次官・山城介(現在の京都府知事に相当)する五位の武官。賀茂の両社とも洛外になるので、山城の国司の管轄区域になるため督護の任に付く。舎人が馬の口を取り、前後に馬副がつく。あとに手振、童、雑色、取物舎人、白丁など従者が山城使の所用品を携えてゆく(下の写真3)。

第2列に入る(下の写真4)。ひときわ艶やかな牛車(御所車)。勅使の乗る車で、藤の花などを軒に飾り、牛に引かせている。現在は勅使が乗ることはなく、行列の装飾となっているが、行列を典雅にしている。牛の引き綱を、淡紅の狩衣姿の牛童(うしわらわ)が取り、車方、大工職などの車役が、替え牛(下の写真5)とともに従う。

下社二座、上社一座、合わせて三合の賀茂両社の神前に供える御幣物を納めた御幣櫃が白木の唐櫃に注連縄をかけ、白丁に運ばれてゆく。さらに内蔵寮史生(くらりょうのししょう)が続く。御幣物を司る内蔵寮の七位の文官。縹色(薄い藍色)の縫腋袍、二藍の裾、赤色の単。騎乗し両社に各1名が参向する。所用品を携えた雑色、白丁を従える。

さらに馬寮使(めりょうつかい)。走馬を司る左馬允(さまのじょう)で、六位の武官。薄い藍色の装束で騎乗し、背中に矢を背負っているが、弓は調度掛に持たせている。

第3列に入ると、騎乗した6人の舞人(まいうど)が登場。緋色の無地闕腋袍で、下襲(したがさね)、白平絹押箔袴(はくおしすりはかま)の舞装束に巻纓冠と絲鞋(しかい)。それぞれ雑色、舎人、白丁を従える。近衛府の五位の武官で、官位相当では従六位上の将監(しょうげん)に当たる。歌舞の堪能者で神事用の歌舞である東遊(あずまあそび)を舞う。東国の民間舞踊が平安時代から宮中や神社で行われるようになったもの。

そして天皇の使いで、行列中の最高位者である勅使。現在は勅使は路頭の儀に加わらず、四位近衛中将がこれを勤めるので、近衛使(このえづかい)とも云う。葵祭は本来、勅使が下鴨、上賀茂両神社で天皇の祭文を読み上げお供えを届けるのが目的なので、祭りの本当の主役は勅使と云える。

黒の闕腋袍に表袴。武官だが天皇陛下の使いの代役なので巻纓冠でなく垂纓冠。当時の様式のとおり、右腰には銀製の魚袋を付し、左腰には金色の飾太刀を差す。騎乗する馬も飾り馬で、華麗な馬面を付け唐鞍(からくら)を乗せており、朧(くとり;御馬役人)が口を取る。舎人、居飼(いかい;鞍覆持)、手振が従う。

勅使の後、随身、牽馬に風流傘と続いて第3列が終了。風流傘は行列に華を添えるもので、大きな傘に紺布を張り、錦の帽額総(もこうふさ)などを掛け渡した上に牡丹や杜若など季節の花(造花)を飾り付けている。袴に同じ造花をつけた取物舎人(とりものとねり)4人が2人ずつ交代で持つ。

そして最終第4列。紫の柄入り装束で騎馬する7人の陪従(べいじゅう)から始まる。近衛府の五位の武官で、賀茂両神社の社頭の儀で雅楽を奏する。濃葡萄色の蛮絵文様の闕腋袍、紫裾濃の指貫、巻纓冠。7騎が各種楽器を携え、それぞれ雑色、舎人、白丁が従う。

そして、勅使近衛使代の神前で奏上する御祭文を預り持つ内蔵使(くらづかい)。緋色の装束に御祭文の入った袋を肩から掛け、太刀を佩く。五位の文武兼官。職名は内蔵助(現在の財務副大臣)。馬副、白丁らが従う。

そして再び風流傘。今度のは黄色。これが本列の結び。
https://www.facebook.com/media/set/?set=a.9571664172903521&type=1&l=223fe1adec


斎王代列に続く

  • 写真1 検非違使志を守る調度掛

    写真1 検非違使志を守る調度掛

  • 写真2 下役に続く検非違使尉

    写真2 下役に続く検非違使尉

  • 写真3 下役と山城使

    写真3 下役と山城使

  • 写真4 第2列

    写真4 第2列

  • 写真5 替え牛

    写真5 替え牛

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