【気の早いねぶた旅】洋館とフランス料理とねぷたの街・弘前

2022/07/08 - 2022/07/09

1981年、青森のねぶた祭りに行った。楽しかったなあ。
昼間は跳ね人としてみんなと手をつなぎリズムに乗って踊り狂う。
夜は原色の鮮やかな屋台を楽しむ。
そんな記憶を蘇らせたいと思った。
ほんとうは祭りの本番の時に行くべきなんだろうが、一足早く青森めぐり。
八戸、三沢、恐山、青森、弘前と回った。

最後は弘前。
弘前ねぷたばかりでなく、城下町かつ軍都であった半面、洋館や洋食などの西欧文明が日本的風土に溶け合っていることに興味があった。
当然フレンチレストランで〆ねばなるまい。

エリア 弘前(青森)

• 旅行の満足度: 5.0
• 観光: 5.0
• ホテル: 5.0
• グルメ: 5.0

• 同行者: カップル・夫婦（シニア）
• 旅行の手配内容: 個別手配

弘前駅に降り立つと駅前に『りんごの風』と題する若い男女の彫刻が飾られている。
たしかにふたりともりんごを手にしている。
そうか、このあたりはりんごの故郷だ。
「自然のみのりと収穫の喜びに沸く若い生命感」を表現しているらしい。

弘前駅 駅

駅舎の一角で弘前ねぷたの屋台を作る準備が進んでいる。
まだ、骨組みだけだ。

弘前駅 駅

路線バスに乗って今夜の泊りのドーミーイン弘前へ。

天然温泉　岩木桜の湯　ドーミーイン弘前 宿・ホテル

ビジネスホテルに泊まるときは、その街にドーミーインがあればそれを選ぶようにしている。最上階にある温泉に入るのが楽しみだ。

天然温泉　岩木桜の湯　ドーミーイン弘前 宿・ホテル

たっぷりのお湯で疲れを癒そう。
ここの泉質は筋肉痛、神経痛、冷え性に効能があるそうだからちょうどいい。

天然温泉　岩木桜の湯　ドーミーイン弘前 宿・ホテル

露天風呂。
日暮れ前のせいか、他に入浴客はいない。

天然温泉　岩木桜の湯　ドーミーイン弘前 宿・ホテル

夜に入っておなじみの夜鳴きそば。

天然温泉　岩木桜の湯　ドーミーイン弘前 宿・ホテル

昔懐かしい東京風支那そばの味。なぜか食べてしまう、

天然温泉　岩木桜の湯　ドーミーイン弘前 宿・ホテル

さて、夜が明けると今日が青森の旅の最終日。
天気も何とか持ちそうだ。

天然温泉　岩木桜の湯　ドーミーイン弘前 宿・ホテル

蓋つきの小鉢を選んで朝食。

天然温泉　岩木桜の湯　ドーミーイン弘前 宿・ホテル

ごはんは帆立を炊き込んでいる。
この旅ではよく帆立を食べたなあ。

天然温泉　岩木桜の湯　ドーミーイン弘前 宿・ホテル

以前、弘前市役所の隣にある第八師団長官舎を会場とした市役所の研修に参加したことがある。弘前には昔ながらの洋館がよく残っていることをその時知った。
まずは洋館を見てみよう。
市役所を目指すと、道を隔てた追手門広場に堂々とした洋館が聳えていた。
日露戦勝記念で建てられた旧弘前市立図書館だ。

旧弘前市立図書館 名所・史跡

旧弘前市立図書館の裏手に、明治から大正期に弘前市内に実存した建造物14棟を、10分の1の模型で再現している。

ミニチュア建造物群 名所・史跡

このミニチュア建造物群は入場無料。
第八師団の軍都であったにもかかわらず、弘前は大きな空襲を受けず、古い建物が残ったのだ。
一方、青森市はＢ２９爆撃機による空襲で市街地の８割を焼失し、壊滅的な被害を受けている。

ミニチュア建造物群 名所・史跡

旧弘前市立図書館は10分の１模型になると、こんなに縮んでしまう。

ミニチュア建造物群 名所・史跡

宮川呉服店は、津軽藩御用達の呉服商だったが、明治になって百貨店に転換。
大正期に入り、東北では初の鉄筋コンクリートの店舗を作った。
平成10年に廃業するまで、『かくは宮川』として存続していた。

ミニチュア建造物群 名所・史跡

日本基督教団弘前教会堂。

ミニチュア建造物群 名所・史跡

旧弘前郵便局

ミニチュア建造物群 名所・史跡

旧弘前市役所

ミニチュア建造物群 名所・史跡

旧制弘前高校講堂

ミニチュア建造物群 名所・史跡

弘前市公会堂

ミニチュア建造物群 名所・史跡

ミニチュア建造物群から、弘前城の方に進むと、
ミニチュアでも再現されていた第五十九国立銀行の本物があった。
この銀行は青森銀行に引き継がれたが、この建物も青森銀行記念館として公開されている。
この建物の設計施工を担当した堀江佐吉は、太宰治の生家である金木町の斜陽館も手掛けている。

青森銀行記念館 美術館・博物館

中央広場に鴎外の山椒大夫で知られる安寿と厨子王の像があった。
ふたりの父は平将門の子孫の岩城判官・平政道で奥州の津軽郡、岩城郡、信夫郡を領していたとされる。
岩城判官の本拠地が福島県の岩城（イワキ）か津軽の岩木（イワキ）か判然としないが、岩木山の岩木神社に安寿と厨子王の伝説が残っている。

弘前市民中央広場 公園・植物園

ミニチュアもあった日本基督教団弘前教会。
日本で7番目に古いプロテスタント教会とのこと。
フランスゴシック様式の白い外観が美しい。

弘前教会 寺・神社・教会

弘前教会の前にあったジュエリーショップ。
なんともすがすがしいたたずまいだ。
入口上の庇のアールがかわいい。

こちらはカトリックの教会。
明治6年の切支丹解禁を受け、明治8年に弘前基督教会が設立される。
当初は民家を教会代わりにしていたが、明治43年にできたのが優美な尖塔を備えたこの教会。

弘前カトリック教会 寺・神社・教会

中に入ってみると畳敷きの愛らしい教会だ。

弘前カトリック教会 寺・神社・教会

教壇は、アムステルダムの教会から昭和14年に移設したもの。

弘前カトリック教会 寺・神社・教会

その両側にマリア像と、

弘前カトリック教会 寺・神社・教会

ヨゼフ像。
イエスの両親がそろっている。

弘前カトリック教会 寺・神社・教会

たまたま教会音楽の練習でピアノを弾かれていた信者の方が、弘前とキリスト教についていろいろ教えてくれた。

弘前カトリック教会 寺・神社・教会

この教会の特徴の一つが、昭和59年に設置されたカラフルなステンドグラス。
よく見ると下から2番目のコマに津軽三味線らしきものが描かれている。
それだけじゃない同じコマの右上にあるのはリンゴだし、右下にはスキーとボールとミットだ。
顕微鏡が弘前とどうかかわるのかわからないが、このコマには弘前関係のグッズが描かれている。となれば、一番下のコマは岩木山だろうか。よくみると五重塔や天守閣もみつかった。つまり、弘前に根付いたキリスト教を讃えているのだ。

弘前カトリック教会 寺・神社・教会

このステンドグラスはイエスの生涯を描いているように見える。
下から受胎告知、イエス誕生と東方の三博士、マリアと赤子のイエスをあがめる人々。ゴルゴダの丘の十字架にかかるイエス。一番上はイエスの復活だろう。

弘前カトリック教会 寺・神社・教会

このステンドグラスは旧約聖書の創世記だろう。
上から二つ目の枠はアダムとイブの誕生で、その下は楽園の様子だ。
四つ目のコマで蛇にそそのかされたアダムとイブがリンゴを食べたことで楽園を追放される。
一番下のコマの真ん中は多分バベルの塔。
右にはノアの方舟とオリーブを咥えた鳩が描かれている。
左側はアダムとイブの子どものカインとアベルの物語。カインが弟のアベルを殺す場面だ。このステンドグラスには人類の堕落の物語が描かれている。
しかし、リンゴが罪深い果物になっていることを弘前の人はどう受け止めているのだろう。（笑）

弘前カトリック教会 寺・神社・教会

きっとこれはモーゼの十戒。
エジプトで奴隷にされていたユダヤ人を率いてカナンの地を目指す『出エジプト記』がテーマだ。
一番下にはエジプトを象徴するピラミッドと奴隷を表わす鉄の鎖がある。
一番上のコマでモーゼが持っているのは神から預かった十戒だろう。
それらの間に海の水が二つに割れて通路ができ、エジプトからの脱出を助けた神話が描かれている。

弘前カトリック教会 寺・神社・教会

いやあ、楽しめる教会だった。

弘前カトリック教会 寺・神社・教会

弘前城にやってきた。
重要文化財の三の丸東門から弘前公園に入る。

弘前公園 (弘前城) 公園・植物園

弘前城は現在石垣の大規模修繕中。
石垣が重量に耐え切れず膨らみ、うっかりすると崩落する危険があることから、本格的補強工事が進められている。

弘前公園 (弘前城) 公園・植物園

そのためには天守閣の下の地盤も強化する必要があるとして、高さ14.4メートル、総重量約400トンの3層からなる天守閣を持ち上げて、70メートル移動させるという日本でも稀な難工事を約3か月かけて成功させた。
天守閣がもとの位置に戻るのは2025年の予定。

弘前公園 (弘前城) 公園・植物園

二の丸と本丸を隔てる堀は緑が溢れていた。

弘前公園 (弘前城) 公園・植物園

木々の上からのぞいているのは、丑寅櫓だろうか。

弘前公園 (弘前城) 公園・植物園

環境省が認めた日本一太いソメイヨシノの樹。
一番太いところで幹の周囲は５ｍ７３cmあるらしい。

日本一太いソメイヨシノ 名所・史跡

弘前城を出て堀端の『津軽藩ねぷた村』へ。

津軽藩ねぷた村 美術館・博物館

中に入ると、来場者対象に太鼓を叩くレッスンをやっていた。
お客さんが少ないこともあって、思い切って叩いちゃった。

津軽藩ねぷた村 美術館・博物館

津軽ねぷたは太鼓状の骨組みの表面に絵を貼りこむ。
青森の立体に対し弘前は平面的。
表の絵を『鏡』と呼ぶが、勇壮な絵が好まれ、
中国の三国志や水滸伝、日本では戦記物の武将などが題材として選ばれる。

津軽藩ねぷた村 美術館・博物館

一方、裏側は『見送り絵』と呼ばれ、基本的には美人画が使われる。

津軽藩ねぷた村 美術館・博物館

青森市の大規模なねぶたに対し、弘前市の『ねぷた』は町内単位でやや小規模。
跳ね人もおらず、青森と比して幽玄的で地味な印象。

津軽藩ねぷた村 美術館・博物館

太鼓の前では津軽三味線が始まった。

津軽藩ねぷた村 美術館・博物館

弘前ねぷたに欠かせない『金魚ねぷた』。
祭りの期間には家の角々に掲げられる。

津軽藩ねぷた村 美術館・博物館

こっちは福助だ。

津軽藩ねぷた村 美術館・博物館

新聞社の仕事で弘前を訪れた棟方志功が、下書きせぬまま22分で描き上げた弘前流のねぷた。
見送り絵の天照大神は、僅か10分で描き終えたという。

津軽藩ねぷた村 美術館・博物館

津軽藩ねぷた村の見学を続けていくと、奥に津軽の伝統工芸を紹介し、実技も楽しめる『津軽蔵工房』があった。
ここではろくろを使ったこけしやこまの製作工程を実演し、手作り教室にも参加できる。

津軽藩ねぷた村 美術館・博物館

温湯温泉・大鰐温泉・弘前で伝えられてきた津軽系こけしは、ねぷたのデザインの影響を受け、アイヌ模様や津軽藩の家紋の牡丹、だるまのモチーフなど、他にない独自の模様を取り入れているという。

津軽藩ねぷた村 美術館・博物館

ここは津軽塗だ。
津軽塗の特徴は、堅牢で実用性に富んでいるらしい。

津軽藩ねぷた村 美術館・博物館

こぎん刺し。
江戸時代、津軽の農民たちは麻の着物しか着ることが許されなかった。津軽の厳しく長い冬を少しでも快適にやり過ごすため、保湿と補強のため 、麻布に木綿の糸で刺し子を施すようになり、やがて『津軽こぎん刺し』が生み出された。

津軽藩ねぷた村 美術館・博物館

帰りの電車は13時45分を予定している。
ゆっくり食事をしようと、11時45分にフレンチレストランのポルトブランに予約を入れておいた。

ポルトブラン グルメ・レストラン

弘前にはなぜかフレンチの名店が多い。
数あるフレンチレストランからポルトブランを選んだのは、ホテルから近いことと、メインの肉と魚がそれぞれハーフポーションで楽しめるブランがあること。
歳をとると美味しいものがほんの少しだけあればいい。

ポルトブラン グルメ・レストラン

最初の皿はサラダ。
上には天然鯛のリエットがのっており、帆立とサーモンも使われている。

ポルトブラン グルメ・レストラン

スープはカリフラワーの冷製クリームスープ。

ポルトブラン グルメ・レストラン

なかなかいいぞこの店は、本格フレンチの割には料金もリーズナブルで、家族経営のようだがサービスも行き届いている。

ポルトブラン グルメ・レストラン

肉と魚の両方をワンプレートで楽しめるコースだ。
皿の奥にある魚はアイナメのムニエル。
手前の肉は鳥もも肉をりんごソースで煮込んでいる。
リンゴを使うところが津軽流！
ソースは富士を主体としたジュースをベースに作っているそうだ。

ポルトブラン グルメ・レストラン

デザートはチョコレートケーキ、ココナツシャーベット、メロンのゼリーの盛り合わせで、これもおいしい。

ポルトブラン グルメ・レストラン

壁を見ると、ワインボトルのラベルが貼り込んであった。
シェフはフランスで修業したとのことだが、ワインも素敵なのかな？

ポルトブラン グルメ・レストラン

結果的にこのレストランは当たりだったようだ。
面白かった青森の旅の最後にふさわしいだろう。

ポルトブラン グルメ・レストラン