【気の早いねぶた旅】荒寥たる霊場 恐山

2022/07/07 - 2022/07/07

1981年、青森のねぶた祭りに行った。楽しかったなあ。昼間は跳ね人としてみんなと手をつなぎリズムに乗って踊り狂う。
夜は原色の鮮やかな屋台を楽しむ。
そんな記憶を蘇らせたいと思った。
ほんとうは祭りの本番の時に行くべきなんだろうが、一足早く青森めぐり。八戸、三沢、恐山、青森、弘前と回った。

二日目はイタコの口寄せで知られる恐山だ。

エリア 下北半島(青森)

• 旅行の満足度: 5.0
• 観光: 5.0

• 同行者: カップル・夫婦（シニア）
• 交通手段: 高速・路線バス JRローカル
• 旅行の手配内容: 個別手配

9時50分。三沢駅から快速しもきたに乗る。
青い森鉄道から大湊線に乗り入れ下北半島につづく電車。

三沢駅 駅

終点大湊の一つ手前の下北駅で下車。
駅前のコインロッカーにキャリーケースを預け、バスで恐山を目指す。
通常の路線バスなのだが、恐山を目指す参拝客や観光客が多いのだろう。
テープで恐山をガイドする音声が流れる。

下北駅 駅

バスは恐山の手前、冷水（ひやみず）で一時停止。
運転手が湧き水で清めてくることを勧めてくれた。
ここは俗界と霊界の境界といわれ、この冷水で手を洗い、口をゆすぎ、霊場恐山へ入るのが習わしとなっているという。
なお、この冷水は１杯飲めば10年、2杯飲めば20年、3杯飲めば死ぬまで若返る不老水とテープのガイドが言っていた。

冷水 名所・史跡

むつの市街地からずっと続いていた杉の植生は少なくなくなり、恐山の地域にはヒバの原生林が広がっている。
その境界が冷水にあるとされ、若い世代からはパワースポットとみなされているようだ。

冷水 名所・史跡

恐山に到着。
・・・。
何もない。
そして視界を遮る霧。
異界感が半端ない。

恐山 自然・景勝地

一般には恐山というが、これは山号で、寺号は菩提寺という。
この総門の先が恐山菩提寺の境内だ。
その先に霞んで見えるのが山門。

恐山 自然・景勝地

石畳が山門に続いている。
山門の手前の左側に無漏館がある。

恐山 自然・景勝地

無漏館は参詣者の休憩所だが、イタコの口寄せもここで行われる。
イタコとは霊能を持った女性で、死者の魂に憑依し、死者に代わってメッセージを伝えてくれる。
この日はひとりのイタコが弁当を使っていた。
口寄せは4000円でやってくれるらしい。

恐山 自然・景勝地

山門の前に、幼くして亡くなった子の供養なのか、水子を悼むのかお地蔵さんに風車が供えられている。

恐山 自然・景勝地

山門の左右に仁王像、
二階には五百羅漢が納められている。

恐山 自然・景勝地

境内には男湯、女湯、男女入れ替え制、混浴の４つの湯小屋がある。
ここは男女入れ替え制の薬師湯。今は男湯タイム。
入湯は無料。

恐山温泉 温泉

湯上りの参拝客に聞いたところでは湯温は熱すぎるほどらしい。
また、強酸性のため、肌に傷や病気などを持っていると悪化することもあるので避けた方がいいとのこと。

恐山温泉 温泉

元来は境内に参拝する前に浴びる「清めの湯」だったようだ。

恐山温泉 温泉

手水舎の手前の不可思議な物体。
子孫繁栄を保証してくれる亀さんのようだ。

恐山 自然・景勝地

恐山の本尊を祀る地蔵堂。
恐山を開いたのは慈覚大師円仁だが、円仁が彫刻した「延命地蔵菩薩」ご本尊となっている。

恐山菩提寺 寺・神社・教会

死者の魂はここに集まるとされる。
地蔵殿の周囲にはいくつものお地蔵さまが祀られている。

恐山菩提寺 寺・神社・教会

地蔵堂を過ぎると無間地獄が始まる。
折からの霧が幻想的だ。

恐山 自然・景勝地

ここは、比叡山、高野山とともに、三代霊場に数えられている。

恐山 自然・景勝地

慈覚大師を祀った大師堂。
幼くして亡くなった赤子を悼むセルロイドの風車が風を受けて回っている。

恐山 自然・景勝地

大師堂の中に慈覚大師円仁座像が据えられていた。
最澄に師事した円仁は遣唐使一向に加わり渡海、仏法の研鑽に励んだ。
帰国後は関東東北を中心に仏法の普及に努め、山形の立石寺、松島の瑞巌寺、平泉中尊寺なども建立している。
円仁の研究に先鞭をつけたのは合衆国の駐日大使を務めたエドウィン・O・ライシャワー博士である。

恐山 自然・景勝地

死者を弔うために、ケルン状に石を積み上げて供養する。
恐山は活火山随所で白煙が上がり、硫黄の匂いがあたりに立ち込める。

恐山 自然・景勝地

お地蔵様にわらじが供えられている。
わらじは死出の旅の伴侶だ。

恐山 自然・景勝地

丘を下って平坦な場所に出ると、そこが賽の河原。
八角堂が賽の河原を見守っている。
ここも本尊はお地蔵さん。

恐山 自然・景勝地

賽の河原には水子地蔵も祀られている。

恐山 自然・景勝地

賽の河原を先を進むと宇曽利山湖。火口にできたカルデラ湖だ。

宇曽利山湖 自然・景勝地

酒を愛し旅を愛した明治大正期の歌人にして随筆家の大町桂月は奥入瀬・十和田を称揚したことで有名だが、ここにも足を伸ばしていた。
宇曽利山湖を囲む峰は8つあるが、これを仏教にちなむ蓮華の八葉に見立てたのがこの歌だ。

宇曽利山湖 自然・景勝地

岩場だらけの地獄に対し、平らかに広がる宇曽利山湖畔のこの砂浜は極楽にたとえられ『極楽浜』と名付けられている。

宇曽利山湖 自然・景勝地

東日本大震災慰霊塔。
2013年に建立された。
恐山が開かれたのは貞観4(862)年。その7年後には、東日本大震災と並ぶ規模の貞観地震が起こっている。
恐山は千年を超える時を隔てて、東北の2つの地震災害を見続けているのだ。

宇曽利山湖 自然・景勝地

再び地獄ゾーンに突入して帰路をたどる。

恐山 自然・景勝地

おお水蒸気が出ている。ここは火山活動が活発だ。

恐山 自然・景勝地

延命地蔵。
頭にとまっているのはカラスだろうか。

恐山 自然・景勝地

地獄極楽を小一時間で巡り山門に戻ってきた。
死者の魂が集まるにふさわしい、荒寥たる風景が恐山に広がっていた。

恐山 自然・景勝地

総門前の売店ではわらぞうりを売っていた。

霊場恐山 蓮華庵 グルメ・レストラン

そして風車。
そうか、ここで調達してお参りするんだ。
このセルロイドのシンプルな色遣いが、恐山のモノトーンの景色に不思議にマッチしている。

霊場恐山 蓮華庵 グルメ・レストラン

総門の前にある太鼓橋。下を流れる川を三途の川に見立てている。
近々石造りに架け替えるらしい。

恐山 自然・景勝地

下北駅に戻ってきた。
遅めのランチをとろうと思ったが適当な店がない。
コンビニで小腹をふさぐ。

下北駅 駅

青森までの切符を買う。
日本は都市部以外はクレジットカードや電子マネーが使えないことが多い。
欧米各国や中国韓国と比べると悲しくなるほどの後進国だ。

下北駅 駅

大湊線で野辺地に出て、青い森鉄道に乗り越えて青森市に向かう。

日本最古の鉄道防雪林 自然・景勝地

空腹なまま青森にやってきた。
ホテルに荷物を置いて近くの中華へ。

広東料理 東田 グルメ・レストラン

蒸し鳥のネギソース

広東料理 東田 グルメ・レストラン

海老と玉子のふわふわ炒め

広東料理 東田 グルメ・レストラン

よだれ水餃子

広東料理 東田 グルメ・レストラン

めひかりの唐揚

広東料理 東田 グルメ・レストラン

青森の宿はホテルJALシティ青森。
青森港も暮れ始めてきた。

ホテルＪＡＬシティ青森 宿・ホテル