幸福のアラビアを求めイエメンへ！ - Part 6 イエメニア航空ファーストクラス

2005/07/03 - 2005/07/14

古代ローマ人はアラビア圏を3つに分けていた。
岩のアラビアと呼ばれた現在のレバント地域。
砂のアラビアと呼ばれた現在のサウジアラビア。
幸福のアラビアと呼ばれた現在のイエメン。

厳密には古代ラテン語でArabia Felixと呼ばれ、Felixは「肥沃な」と言う意味。当時は今では想像できないほど降雨も豊かで農作物がよく育つ地域だった為つけられた名前でした。しかし、アデン港の交易で成した財と名声からいつしかFelixと言う単語が持つ他の「幸福な」や「祝福された」と言う意味で語られるようになった…。

アラブ文化圏好きとしてはそんな幸福のアラビアと言う二つ名を聞いたら行きたくなるじゃない？ってな訳で行く計画を立てた私…と言うのは後付けの理由(笑)
当時ちょうどJALのマイルが少し溜まり、何か面白い使い道がないか模索していた時に提携しているエミレーツ航空で地域中東2へビジネスクラスで乗る事ができると判明。それなら地域中東2の中でも一番長い路線を選べ！と調査した結果出たのがイエメンのサナアだった訳です。（厳密には確かカイロの方が遠かったけど、エジプトは行った事あったので…）
毎度アホな理由で目的地を決めている私ですが、そんなサナアについてちょっと調べたら「幸福のアラビア」と言う二つ名を知り俄然興味が増し渡航する事にした次第。

それでは皆様、暫くお付き合い下さいませ！

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【注意】この旅行記は2005年当時の旅の回顧録です。
2022年12月現在、イエメンはサウジとイランの代理戦争による泥沼内戦の最中です。事態の沈静化は残念ながら全く望めず、治安も医療体制も食料事情も極めて悪化している状態です。
2015年2月15日に日本大使館が一時閉館してから久しく(現在は在サウジアラビア日本大使館が兼務)、当然、イエメン共和国全土に退避勧告が出ており、世界中の各国政府も自国民へ渡航自粛（禁止）を呼び掛けている状況です。この状況下で現地へ行く事は全く勧められず、当方としても一切の責任は負いかねます。

一刻でも早く現地に平和が訪れる事を心より願って。

エリア サヌア(イエメン)

昨日は一日早くサナアに戻ろうとするも、ムカッラ～サナア間のフライトが毎日運航ではないので泣く泣くもう一泊。滞在する事より腹痛に耐えながら部屋でうずくまっている事が泣く泣く。
一夜明けたら少し胃の調子も良くなってきたみたいで、本調子ではないながらも少しは活動できるようになった模様。

ムカッラの空港は30kmほど東に行ったアル=リヤーン村近郊にあるので、アル=リヤーン国際空港と名付けられております。
成田空港を多古空港って呼んでいるイメージ？

内戦前から地域最貧国とされていたイエメンだけど、意外にも道路の整備状況は良さげ。ムカッラなんて地方都市なのに市内から空港、そしてその先までもが３車線道路で穴も空いていない。

多分携帯の記念写真位なら誰も何も言わないんだろうけど、やっぱり写真には敏感な地域。そして空港は准軍事施設扱いだからターミナルの写真は怖くて撮れず。
チェックインホールはだだっ広い空間にポツンとカウンターがある感じでしたが、搭乗手続き自体はすんなり進みました。

私「できれば窓側を…」
係「あ、好きな所に座ってね！」

いや、自由席かよ！
搭乗券を見ていただければお解りの通り、今回は国内線と言えど、おファーストクラスでございます。なのに座席番号もなければ私の名前の記載もなし（笑）

果たして飛行機はちゃんと運航しているのでしょうか？
アフリカ諸国になると時刻表なんて目安で、直前の運休や日付変更を伴うスケジュール変更なんて当たり前のようですが、イエメンはいかに？

そんな心配は余所にちゃんと我々の搭乗する飛行機は到着。
こっそり撮った写真なのでポールやら電柱やらが映り込んでイマイチですが、737である事が見て取れます。

おファーストクラスなので運命の分かれ道は左へ！
しかも前のタラップはレッドカーペット仕様！

とは言ってもオープンスポットなので前から乗るか後ろから乗るかの差。実際にその区別は明確ではなく乗客の皆さんは思い思いのタラップから乗っている様子。
機内では前から乗った後方、後ろから乗った前方席の方のすれ違いでゴチャゴチャなのはご愛嬌（笑）

Yemenia、アラビア語表記は定冠詞の「アル」をつけたアル=ヤマニーヤ。
さすがにイエメニア航空の搭乗機なんて酔狂者は日本初だろ、と思いきや先人の皆様がけっこういらっしゃる様子。

本日の搭乗便は737-800。
不覚にも機材番号を控え忘れたので詳細は解りませんが、同社の同型機は2002年か2007年の就航。かつ2005年当時の旅行記なので7O-ADL, 7O-ADM, 7O-ADNのいずれかである事は間違いないんだけど…。
残念ながら戦乱の影響で就航規模を劇的に縮小してしまったイエメニア航空、現在どの機体もリース会社に返却され世界各地へ離散家族となってしまいました。

庶民な私は当時人生初のファーストクラスに浮足立っておりました。
「Salaam様、お座席はこちらでおじゃりまする」とご案内されるのかと身構えたら、「あ、はい、お好きなところへどうぞ～」とフランク。英語が通じるので良しです。拍子抜けし、2-2配席 x 3列のファーストクラスに3-3配席で142席のエコノミークラスが並ぶ機内の最前列1Aへ着座します。

ウェルカムドリンクが提供されました。
ディープなイスラム圏の会社なのでシャンパン等のお酒ではなくオレンジジュース。保安上の理由や、そもそも秒単位で忙しい日本の国内線と比較するのも乱暴なのかもですが、JALの国内線ファーストクラスでもウェルカムドリンクのサービスがない事を考えると提供されるだけなかなかすごいです。

ビスミッラーヒラフマーニッラヒーム…
慈悲あまねく慈愛深きアッラーの御名において

と飛行機出発前のお祈りがなくてはイスラム圏の飛行機の出発準備は完了しません。

航空会社によってそれぞれお祈りのプレゼンが微妙に違うのは興味深いですね。
イエメニアでは「ビスミッラー」から読み上げるし、カタール航空では「スッブハーナー」から、マレーシア航空は画面表示のみ、クェート航空は機長肉声、エミレーツ航空はそもそもやらないし。

無事にお祈りも完了したので問題ありません。
滑走路脇に事故ったのか撃墜されたのか解らない飛行機の残骸が転がっておりますが、お祈りを終えたのでこの飛行機は大丈夫です。

意外にもイエメンはEUの乗り入れ禁止国リストには入っておらず、戦乱で2015年から設定されていたイエメン上空が飛行禁止区域も段階的解除されたので一定の安全は担保されているのかな。
とはいえ、他航空会社は今でもイエメン上空は迂回しており、2023年現在空域の安全は確保されたとは言いづらいし、そんな疲弊した国で政府監査機関も航空会社の財務状況も万全じゃない現状、大手を振って安全なフライトとは言い辛いよね。

離陸して間もなくすると砂漠地帯上空に。
中東＝砂漠、とお考えの方も多いですが、砂丘が連なる映画やアニメで描写される砂漠は面積的に圧倒的に少なく、土漠地帯のほうが多い。

ちょいちょい地上の光景も変わるので見ていて飽きないのがイイ！
もっとも、窓際族な私は何時間でも機窓の光景を眺めていられる人だからあまり参考にならないか（笑）

年間降雨量が130mm程度しかない沿岸部ですが、雲がもくもく。
おお～雨降らないのにこんなに雲が出るんだ～、と呑気に過ぎ去る雲を眺めます。

ムカッラからサナアまで直線距離で約560km、対地速度は783kmのようですが、加減速や旋回とかでフライト時間は1時間強。
南東から北西。沿岸部から山間部。旧南イエメンから旧北イエメン。スンニ派からシーア派。フーシ派（反政府）地域から暫定政権地域（2023年現在）。
短距離ながら地理的にも文化的にも政治的にも大きく異なる移動ですね。イランとサウジの代理戦争とは言え、そもそも部族意識が強い地域特性を考えると火種の宝庫だった事が伺えます。

お飲み物は何を？
国内線ですし、そもそもディープイスラム圏な航空会社なのでお酒類はありません。
紅茶をお願いしたら、イエメニアのロゴが可愛いカップで提供されました。
このレトロな感じが良いですよね～。ノスタルジックで好き。

沿岸部からだいぶ離れてきたハズですが、ここらでも雲がもくもく。
茶褐色めいた大地に雲の影。

乗務員さんとお話しをしている間、機内食の話しになり、「国内線はやっぱり機内食なし？」と聞くと、「お腹空いているなら何か準備しますね～」と。図々しくてすいませんです。
サンドイッチとパウンドケーキを持ってきてくださいました。
サンドイッチはチーズサンド、パウンドケーキもなかなか美味。
もともと機内食サービス対象外の便みたいだけど、この軽食ってどこから出てきたのかしら？

間もなく着陸ですね。シートベルトを締めましょう。

個人用テレビこそないですが、機内誌をペラペラめくりながら窓の外を眺めていたらあっと言う間の到着。

高度が下がってきました。
おー…なんとも映画で見る火星のような風景。
緑はほぼ皆無でゴツゴツしたキャニオンが続きます。
左の方にうねうねした道が見えますが、ひょっとしたら往路はこの道路を通ったのかな？

サナア国際空港に着陸しました。
お、遠くの方に駐機している飛行機が見えます。

左に見えるのは747SPじゃないですか！！！！
レトロ飛行機マニア的にはたまらない機材で、同じ747でも胴体を無理やり短くした結果ずんぐりむっくりで不格好な飛行機になった名機。いや、迷機？
その隣は727かな？ちょっと遠くてよく見えない…。

乗務員さんはイエメン美人さん。
お写真も快諾頂いていたのですが、撮ろうとした瞬間にお隣のマダムに話しかけられちゃいましたね。

高品質！とまでは言いませんが、フレンドリーで色々と気にかけてくださるサービスでした。
なんて言うか、親戚の世話好きなおばちゃんに面倒を見てもらっている感じ？

ありがとうございました！

サヌア国際空港 (SAH) 空港