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この島にやってくる直前、司馬遼太郎の「街道を往く壱岐・對馬道」を読んできた。この旅行記を読むのはほぼ40年ぶり位か・・。彼は日本全国の地方を旅し、「街道を往く」というシリーズ物の旅行記、風土記にまとめその総数は40巻を超えている。日本全国を網羅し、自分もこのシリーズ物はかなりの巻は読んでいた。去年石垣島へ行き、沖縄ソバ店主のトニーさんと再会してきたのも、20数年前、この「街道をゆく」の中の「沖縄の道」の中に通事の子孫として出ていて、どんな人かと会いに行ったのだが、「通事」、即ち中国語の通訳官の子孫らしくユニークな人だった。去年20数年ぶりに再会したトニーさんは、自分の事は全く覚えていなかった。色々な人が全国からいろいろと訪ねて来るであろうし、自分はその内の一人として埋没し、記憶の中から抜け落ちていたのだろう。彼に取って印象に残っている人は司馬遼太郎ではなくして、現代作家の椎名誠だった。<br /><br />石垣の通事は中国語の通訳官で、清の冊封を受けていた琉球王国には必要な職制だった。この壱岐・對馬にも同じような朝鮮語の通事でもいるのかと、そうした興味も持って「街道をゆく」を読んだのだが、それには出ていなかった。江戸時代を通じ、日本と朝鮮との間は、僅かに10数回の朝鮮通信使の往来に留まり、国交はあったとしてもお互い疎遠の国で、人物の交流は絶えて久しく、日朝との間にはそうした通訳官を置く必要はなかったのだ。朝鮮は地理的には日本に一番近い隣国ではあったが、元寇以降文物の行き来は僅少で、日本にとっては近くて遠い国だった。対馬と朝鮮との関係は、琉球と中国清との関係のような深いものではなかったのだ。<br /><br />その「街道をゆく」の中に、この壱岐は高い山も無く、田畑の広がる「散村」との記述があった。取り分け大きな町はなく、4つの町が同じような規模で競い合っている。島での中心になるような町はなく、お互いが対等の関係だった。司馬が来た50年ほど前、この島は確かにその通りの一島一郡の壱岐郡で、昨日フェリーでやって来た郷ノ浦、北端の勝本、南端の石田、東側の芦辺の4つの町がそれぞれが港を持っていて、バランスよく連携していたが、20年ほど前の平成の対等大合併で、この島は一島一市の壱岐市になった。が、その環境は今でも変わらない。市役所のある郷ノ浦が特別に人口の多い、島の中心都市になったかと言えば、そうではなく、相変わらずの「散村」形態で、扁平な土地の中に集落がポツンポツンと偏まって点在しているのだ。<br /><br />ガイドのバスがやってくるまでの数十分、高台にある国民宿舎の丘の上から周辺の集落、湾越しの老人養護施設等々を眺めながら、司馬の「街道をゆく」を思い出していた。暫く待った後、ガイドの大島さんがやってきて、出発時刻を間違えたとの釈明があったが、実際はどうかは分からない。添乗員と地元ガイドの上下の関係で、大島さんが自ら悪者になったのかも知れない。バスは台地の上からUの字道路を下り降りたが、その間、宿舎の従業員7-8人が総出で台地の上から手を振り、感謝の気持ちなのか、別れを惜しんでいた。自分も夕食時に焼酎セットをオーダーしたり、結果的に飲んでしまったが焼酎2本を買ったりして、少しは貢献できたのか・・。大島さんの説明によれば、こうしていつまでも見送るのはこの宿舎の昔からの流儀とのことだった。<br /><br />楕円形に近い島の北西端から左京鼻のある東北端まで島を横断するのに20分もかからない。島を南北に縦断している唯一の国道を途中で横断する。その前に鬱蒼とした林の中にある産土神社、月読神社の前を通過する。司馬の本の中にも書いてあったが、この島は神社が多い。農耕と神社。農耕により生活に余裕ができ、富の集積も出来、豊作に感謝する気持ちも芽生えてきた。それ以前の古い黎明期、この島と北隣の対馬は大陸の宗教的習俗を最初に取り入れきた島なのだ。月読命。天照大神の弟で、須佐之男命の兄君だ。この月読命は京都の松尾大社にも祀られている。そんな説明を受けている内に、バスは目的の左京鼻に到着した。

壱岐・対馬2島巡り(13)左京鼻へ向かって。

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2022/04/15 - 2022/04/17

289位(同エリア335件中)

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ちゃお

ちゃおさん

この島にやってくる直前、司馬遼太郎の「街道を往く壱岐・對馬道」を読んできた。この旅行記を読むのはほぼ40年ぶり位か・・。彼は日本全国の地方を旅し、「街道を往く」というシリーズ物の旅行記、風土記にまとめその総数は40巻を超えている。日本全国を網羅し、自分もこのシリーズ物はかなりの巻は読んでいた。去年石垣島へ行き、沖縄ソバ店主のトニーさんと再会してきたのも、20数年前、この「街道をゆく」の中の「沖縄の道」の中に通事の子孫として出ていて、どんな人かと会いに行ったのだが、「通事」、即ち中国語の通訳官の子孫らしくユニークな人だった。去年20数年ぶりに再会したトニーさんは、自分の事は全く覚えていなかった。色々な人が全国からいろいろと訪ねて来るであろうし、自分はその内の一人として埋没し、記憶の中から抜け落ちていたのだろう。彼に取って印象に残っている人は司馬遼太郎ではなくして、現代作家の椎名誠だった。

石垣の通事は中国語の通訳官で、清の冊封を受けていた琉球王国には必要な職制だった。この壱岐・對馬にも同じような朝鮮語の通事でもいるのかと、そうした興味も持って「街道をゆく」を読んだのだが、それには出ていなかった。江戸時代を通じ、日本と朝鮮との間は、僅かに10数回の朝鮮通信使の往来に留まり、国交はあったとしてもお互い疎遠の国で、人物の交流は絶えて久しく、日朝との間にはそうした通訳官を置く必要はなかったのだ。朝鮮は地理的には日本に一番近い隣国ではあったが、元寇以降文物の行き来は僅少で、日本にとっては近くて遠い国だった。対馬と朝鮮との関係は、琉球と中国清との関係のような深いものではなかったのだ。

その「街道をゆく」の中に、この壱岐は高い山も無く、田畑の広がる「散村」との記述があった。取り分け大きな町はなく、4つの町が同じような規模で競い合っている。島での中心になるような町はなく、お互いが対等の関係だった。司馬が来た50年ほど前、この島は確かにその通りの一島一郡の壱岐郡で、昨日フェリーでやって来た郷ノ浦、北端の勝本、南端の石田、東側の芦辺の4つの町がそれぞれが港を持っていて、バランスよく連携していたが、20年ほど前の平成の対等大合併で、この島は一島一市の壱岐市になった。が、その環境は今でも変わらない。市役所のある郷ノ浦が特別に人口の多い、島の中心都市になったかと言えば、そうではなく、相変わらずの「散村」形態で、扁平な土地の中に集落がポツンポツンと偏まって点在しているのだ。

ガイドのバスがやってくるまでの数十分、高台にある国民宿舎の丘の上から周辺の集落、湾越しの老人養護施設等々を眺めながら、司馬の「街道をゆく」を思い出していた。暫く待った後、ガイドの大島さんがやってきて、出発時刻を間違えたとの釈明があったが、実際はどうかは分からない。添乗員と地元ガイドの上下の関係で、大島さんが自ら悪者になったのかも知れない。バスは台地の上からUの字道路を下り降りたが、その間、宿舎の従業員7-8人が総出で台地の上から手を振り、感謝の気持ちなのか、別れを惜しんでいた。自分も夕食時に焼酎セットをオーダーしたり、結果的に飲んでしまったが焼酎2本を買ったりして、少しは貢献できたのか・・。大島さんの説明によれば、こうしていつまでも見送るのはこの宿舎の昔からの流儀とのことだった。

楕円形に近い島の北西端から左京鼻のある東北端まで島を横断するのに20分もかからない。島を南北に縦断している唯一の国道を途中で横断する。その前に鬱蒼とした林の中にある産土神社、月読神社の前を通過する。司馬の本の中にも書いてあったが、この島は神社が多い。農耕と神社。農耕により生活に余裕ができ、富の集積も出来、豊作に感謝する気持ちも芽生えてきた。それ以前の古い黎明期、この島と北隣の対馬は大陸の宗教的習俗を最初に取り入れきた島なのだ。月読命。天照大神の弟で、須佐之男命の兄君だ。この月読命は京都の松尾大社にも祀られている。そんな説明を受けている内に、バスは目的の左京鼻に到着した。

旅行の満足度
5.0
  • 高台の上にある国民宿舎からは湾の向こうの老人施設等が見える。島ではこの辺りに唯一温泉が湧き出て来る。

    高台の上にある国民宿舎からは湾の向こうの老人施設等が見える。島ではこの辺りに唯一温泉が湧き出て来る。

  • 石船のプール。メダカが何尾も泳いでいた。

    石船のプール。メダカが何尾も泳いでいた。

  • この湾の向こうに黒崎砲台、猿岩、などがある。鄙びた景色だ。

    この湾の向こうに黒崎砲台、猿岩、などがある。鄙びた景色だ。

  • 島を東西に横断するのに20分もかからない。途中に産土神社があった。

    島を東西に横断するのに20分もかからない。途中に産土神社があった。

  • ああ、月読神社。この月読命は京都の松尾大社にも祀られている。

    ああ、月読神社。この月読命は京都の松尾大社にも祀られている。

  • 島の西北にある国民宿舎から島を横断し、東北にある左京鼻にやってきた。

    島の西北にある国民宿舎から島を横断し、東北にある左京鼻にやってきた。

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