2022/07/02 - 2022/07/03
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gianiさん
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2022/07/02
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釧路支庁に分布する湿原をすべて巡ります。
各湿原の面積は、いずれも日本のベスト5を構成しています。
釧路湿原:面積・知名度・観光化いずれも日本一。
別寒辺牛湿原:面積日本第2位。開発の手が及ばない反面、入境が困難。
霧多布湿原:面積第5位。花の種類が多い。
- 旅行の満足度
- 5.0
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旅の始まりは釧路駅から。
釧網本線で細岡駅で下車。
ここから夢ヶ丘展望台を目指します。
線路も釧路川も両取りの貪欲なスポットらしいです。細岡駅 駅
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いきなり蛇行する釧路川に遭遇。カヌーの出発ポイントです。
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達古武湖西岸を通る歩道が、昔の大雨で損傷したまま修復の予定も立っていません。
湖を1周すると1時間はかかるので、夢ヶ丘は断念。道を引き返します。 -
釧路湿原は、釧路市、釧路町、標茶町、鶴居村に広がります。
今回は公共交通でアクセスでき、且つ1km圏内にポイントが集中する釧路町管内にチャレンジします。 -
クサフジ
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写真では分かりませんが、
様々な種類の鳥の鳴き声が素敵で、高原という感じです。
高緯度なので、平原にも生息しています。 -
サギスゲ
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拡大
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ムラサキツメクサ
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ノコギリソウ?
ドクセリ? -
「路肩弱し」の標識通り、
足元の地盤が傾いています。 -
もっと傾いています。
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釧路湿原駅から至近距離にある
釧路湿原でも3本の指に入る展望台。
視界に五重六重に蛇行する釧路川が見えるポイントのはずですが、、、
ハンノキ林の葉振りが良くて、手前の部分が視界から途切れてしまいます。細岡展望台 名所・史跡
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実際は、このように見えるはずです。
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釧路湿原駅の近くにある釧路町の施設
細岡ビジターズラウンジ 名所・史跡
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内部は、こんな感じ。
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タンチョウの雛
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釧路湿原の成り立ち。
6000年前は今よりも温暖で、現在の釧路湿原全体が海底に沈んで湾でした(縄文海進による古釧路湾の形成)。
気温が下がり始めて、海退が始まります。
3000年前には、海流によって湾の入り口が砂で塞がれ、内陸化する。
古釧路湾だった部分に草が生えるが、低温と水が張っているせいで分解が進まず、年1mmの割合で堆積して泥炭層を形成し、今に至ります。 -
先ほどの達古武湖も、海退時に窪みに水が残った海跡湖です。現在は淡水湖です。
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釧路川河口には釧路市街が広がり、大正9年の大洪水で大きな被害を受けました。治水対策で、大正10年にここから1kmほど下流の岩保木水門から直線の放水路を開削しました。新釧路川と呼ばれ、釧路駅の西隣の新富士駅付近を通過して太平洋に至ります。
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釧路町昆布森地区産「さおまえ昆布」のPRキャラクター
こんボイン 属性:母。元ミス昆布。胸は驚異のKカップ(昆布はビタミンKが多く含まれることがウリのためと思われます)。
つっぱり昆布 属性:父。現役ヤンキーで頭はウニ、体は昆布。
コンブラザーズ 属性:子。仲良しの三つ子。 -
ハンノキ林ばかりの釧路湿原体験でした。
帰りもJR。釧路湿原駅 駅
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駅の待合室には、夢ヶ丘展望台は現在通行止になっていると明示。
細岡ではなく、初めからここで下車してたら、、、とタラレバ状態。
感想:細岡徒歩エリアは、ごく普通のインパクト。 -
車窓から見た岩保木水門
開発の影響で、1954年に29,000haあった湿原は、1985年には18,290haまで縮小しています(1996年・国交省のデータ)。岩保木水門 名所・史跡
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釧路市立博物館で、理解を深めます。
釧路湿原の成り立ち。
山に囲まれた地形で、温暖な縄文時代は古釧路湾の海底でした。
弥生時代にかけて気温が下がり、徐々に陸地化します。
太平洋の海流で生成された砂丘によって湾が完全に締め切られ、水はけが悪くなります。
北海道は低温のために、水はけの悪い土地の草は枯れても完全に分解されず、泥炭層の湿原になりました。 -
釧路湿原は、標高2-10m、泥炭層の厚さは1-4mになります。
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ヨシ・スゲ湿原(低層湿原)
釧路湿原の面積の80%は、ヨシ・スゲ湿原です。植物に欠かせない水は、海霧・雨水・川から得ています。ヨシはイネ科のアシ(葦、霞…)のことです。
周囲よりも標高の低いので、流水が発生して栄養分が流れ込み、草本が大きく成長します。 -
実際の光景。ヨシ(葦)湿原の景観は良くないです。
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ヨシ・スゲで形成された泥炭層にはハンノキ林も。水辺を好む樹木で、湿原で生育する唯一の高木です。
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谷地坊主
スゲ類が活発な成長を繰り返して、高さ40-50cmまで盛り上がった株です。土壌の凍結で地表から押し上げられ、周りから浮いた存在に。ハンノキ林に形成されます。 -
谷地眼(やちまなこ)
谷地坊主の逆バージョン。地中にとっくり型の窪みができるパターン。成因は完全に解明されていない。写真は細岡ビジターセンターのもの。 -
ミズゴケ湿原(高層湿原)
釧路湿原の面積の僅か2%で偏在するが、
一般に思い描かれる「湿原」の風景を造り出している。
水分は海霧・雨水から摂取し、栄養分に乏しい。
ミズゴケで形成された泥炭層のハンノキは、ヨシスゲ湿原よりも樹高も低く幹が細い。 -
初夏のミズゴケ湿原
ミズゴケは繁茂しながら盛り上がって小丘(ブルト)を作り、小さな窪地(シュレンケ)に水を溜めます。サンプルには、20種600本以上の植物が生えています。
水中から生える苔は明るい緑色(オオミズゴケ・ヒメミズゴケ・ウツクシミズゴケ)、水面より高いところに生える苔はくすんだ緑色か赤褐色(イボミズゴケ・ムラサキミズゴケ・チャミズゴケ)です。苔の上には、苔が毛細管現象で吸い上げた水を目当てに高山植物が群生します。 -
食虫植物
ミズゴケ湿原には、エグい苔も。ミズゴケ類が育たない深さの所は、モウセンゴケ。葉には紅紫色の長い腺毛が生え、その先から粘液を出して昆虫を捕らえます。見た目はとても美しいのですが、自然界のハニートラップ。
ほかにもコタヌキモ(窪地の水たまり)、ムラサキミ、ミカキグサ等の食虫植物が。 -
ミズゴケの中の動物
植物の分解はカビ(菌類)や細菌類が主役だが、冷涼な釧路湿原では彼らの仕事がすこぶる遅い。代わって、トビムシとササラダニが粉砕分解の主役です。1平方メートル当たりの生息数は、トビムシは3-10万匹、ササラダニ10-20万匹。聞いただけで痒くなる数値です。彼らは粉砕はするが、有機物の分解は本職ではないので、地表は土ではなく泥炭になる。 -
タンチョウ
湿原のスターにして、鶴界のスーパースター。日本では絶滅したと考えられていたが、1924年に釧路湿原で再発見されます。翼開長220-240cm、体重10-15kg。
アイヌ語で「葦原の神」を意味するサルロン・カムイと呼ばれます。 -
夫婦で30日以上温められた卵から孵化。身長13cm、体重130g。
雛のエサは、沼や川の小魚。 -
順調に成長すると、成鳥並みの大きさと姿に。
2歳で頭頂部が赤くなり、3歳で翼先の黒い部分が白くなり、4歳で成鳥になります。雑食です。 -
別寒辺牛湿原
全国第2位の面積を誇るが、開発の手が及ばず、学術調査の歴史も浅い。別寒辺牛湿原 自然・景勝地
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根釧国道(R44)沿いの水鳥観察館が基地です。
http://www.akkeshi-bekanbeushi.com/
ここで講習を修了して始めて、カヌー移動での可能。現時点ではこの一択です。
リサーチ不足でした。 -
国道に沿って、JRも走ります。
昔から撮影名所として有名みたいです。
最寄りの厚岸駅から6kmという公共交通の難所。
次の霧多布湿原と併せて、私はレンタカーで回りました。 -
霧多布湿原
琵琶瀬展望台は、背中合わせに海と湿原が両取りできる名所。
蛇行する川と樹木の無い湿原という、ベタな風景に出会えました。今回のマイベストです。琵琶瀬展望台 名所・史跡
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NPOが入る建物にはカフェと売店、宿が併設。
霧多布湿原ナショナルトラスト 名所・史跡
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ここから泥川へ向かって、全長500mの琵琶瀬木道が延びます。
黄:エゾカンゾウ
白:エゾシシウド -
クロハナシノブ
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ヒオウギアヤメ
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ノハナショウブ
霧多布湿原は、花の湿原と呼ばれ、多くの花と出会えます。
これは、個人的に高得点です。 -
遊歩道の終点
春は、タンチョウも飛来するそうです。 -
湿原に並ぶ杭は、漁師が昆布を陸に引き上げる際に用いた馬を繋ぎ止めるもの。漁が機械化される以前は、放牧地として使用されていました。ちょっとびっくり。
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NPOの建物の向かいには、卓状の無人島が。
ケンボッキ島で、ムツゴロウこと作家の畑正憲さんが、熊と暮らすために移住した歴史があります。嶮暮帰島 自然・景勝地
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湿原と浜中町について学べる施設の麓には、短い遊歩道が。
霧多布湿原センター 美術館・博物館
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名前の通り、いとも簡単に谷地坊主に出会えました。
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説明が、とても分かりやすいです。
霜柱と同じ理屈で、カブスゲが冬の寒さで地面ごと持ち上げられた後、春の雪解けで根本の土が流される。このことが繰り返されるうちに丸い形になりました。
※釧路湿原は国立公園ですが、霧多布は道立自然公園なので、谷地坊主等に触っても全然問題ないそうです。 -
湿原に廃油が?!
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実は、湿原の鉄分が溶け出しただけです。川で海へ運ばれると、海産物の成長に有益な影響を及ぼします。へぇ~。
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クシロハナシノブ
黙っていても、色々な花に出会えます。 -
こんな景色も。
川のせせらぎとカッコウの鳴き声のコラボが贅沢。 -
湿原センターに帰還。霧多布湿原のポイントは以上の3か所で、コンパクトです。
茶内駅から町営バスが走っていますが、本数が多くないです。霧多布岬(野生のラッコも見られる)と温泉セットで泊まるのがベストですね。
湿原周辺の景観スポット紀行↓
https://4travel.jp/travelogue/11759136 -
総括
細岡近辺は残念でしたが、車を借りて標茶・鶴居エリアにもチャレンジしたくなりました。
別巻辺牛湿原では、最近になって高層湿原(ミズゴケ湿原)が発見され、目が離せません。
霧多布湿原は、素直に再訪したいです。秋の珊瑚草&ベニマシコの鳴き声のコラボも興味深い。 -
おまけ
釧路の繁栄を支えた石炭は、もともとは大昔の植物の遺体です。通常は、微生物が二酸化炭素と無機物に分解しますが、水中に沈んだ遺体は酸素不足で分解が進まず、有機物が残って泥炭→亜炭→石炭になります(微生物が有機物を二酸化炭素に化学分解した時点で、化石燃料になる望みが絶たれます。逆に言うと、有機物を燃焼して分解すると環境負荷が高い反面、微生物に分解させればクリーンだという事です)。
北海道の湿原は、上記の水中酸素不足と寒冷による生物活動の鈍さが重なって、泥炭層が形成されます。石炭の仕掛品なので、乾燥させれば燃料になります。釧路の自称貧乏家庭で育った友人の母親は、石炭を買う余裕がなかったので、自家製泥炭で暖を取ったと証言しています。
次回は、釧路の炭坑に潜入します。↓
https://4travel.jp/travelogue/11759468
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