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2021年3月26日(金)2時過ぎ、本丸から今度は裏坂を降りる(下の写真1)。二の丸背後にある台所門から本丸・天守曲輪へと至る搦手側の登城ルート。坂を降りた台所門跡から見上げる連立天守と桜は美しい。<br /><br />二之丸は藩政を執り行なう場でかつ藩主の生活の場でもあった。多くの御殿が建てられており、初代頼宣と14代茂承以外の藩主はここに住んでいた。天守に幕末に描かれた「和歌山御城内惣御絵図」があったが、この二の丸にはかなり大きな建物が建てられているのが分かる。<br /><br />二の丸御殿は江戸城本丸御殿を模して表・中奥・大奥に分かれていた。表は藩主が謁見や儀式を行なうとともに藩の政庁として諸役人が政務を執る場所。中奥は藩主が執務を行う普段の生活空間で、家老や側近のものが詰めていた。大奥は藩主の正室や側室たち、彼女らに仕える奥女中の居所で、部外者は藩主しか入れなかった。ちなみに大奥があったのは、江戸城・和歌山城・名古屋城のみ。<br /><br />台所門は中奥と大奥の間辺りにあった。二の丸の南側、虎伏山の麓に一中門跡から山吹渓(鶴の渓)まで続く道があるが、桜並木が美しい(下の写真2)。<br /><br />まずは西の丸に近い大奥跡へ。西の丸との間の西内堀に御橋廊下が架かっているところ。現在は芝生が広がっている。<br /><br />もともと二の丸御殿には表と奥向だけが置かれていたが、江戸城本丸が表・中奥・大奥に三区分されると、この二の丸にも大奥が設置された。ただし、和歌山城で「大奥」という名称が使われるのは江戸後期の1792年からで、それまで「御内証」と呼ばれていた。<br /><br />大奥と中奥との間は塀や御錠口で厳重に区画されていた。大奥は御殿向・長局向・広敷向に分かれており、北東部の御殿向は藩主の居所を中心とした範囲で、居間や寝所などが置かれていた。東南部の広敷向は大奥の所務を取り扱う広敷役人の役所で、ここは男性が入れた。<br /><br />西側の縦長の二階建ての長屋が長局向で、奥女中たちの生活空間だった。大奥への出入り口はこの長局向の南にある七ツ口で、朝五つ(午前8時頃)から夕七つ(午後4時頃)まで開き、ここで買物もしていた。<br /><br />江戸末期に描かれた「和歌山ニノ丸大奥当時御有姿之図」には大奥の建物や庭だけでなく、大奥を囲む多門櫓や御橋廊下の入口も描かれているが、実際に御橋廊下の架かる北側で多門櫓の礎石列が発掘されたそうだ。多門櫓は5棟並んでおり、道具を入れる物置や蔵として使われていた。<br /><br />また、御橋廊下の架かる南側からは石垣に組み込まれた穴蔵状遺構も発見されている(下の写真3)。江戸城大奥付近にあった石室と同様に非常の際に大奥の調度品などが収められていたところと考えられている。<br /><br />続いて西側の中奥跡へ。桜の木などに囲まれた広場になっており、桜まつりの提灯が掛かっていた。中奥は藩主の公邸で、殿様の居間や家老や側近の部屋や世話係の役所、風呂、台所などが置かれていた。大奥との間が厳重に区画されていたのに対し、表との間には明確な境界はなく、藩の政治と殿様に仕えることは一体化されていたと考えられる。<br /><br />一番西側の表跡も中奥跡同様、木や石に囲まれた広場になっている。花見してる人たちがいたけど、許されてるのかしら? 表は冒頭にも書いたように藩主の謁見や儀式を行う場で、藩士は身分格式で座る部屋が決まっていた。南東角に幕府の上使を迎える唐門があり、その左手にそれ以外の訪問者が使う表玄関があった。<br /><br />建物に入ると、来客や警備の侍の控室である遠侍(とおさむらい)、公式行事を行う大広間、応接を行う対面所と続いていた。また、表玄関の奥(西)の脇玄関を入ると役人が政務を行う番所、控室、詰所、執務室などの御用部屋も置かれていた。<br /><br />表跡の奥、右手には樹齢450年と云われる一の橋の樟樹(くすのき)があるが、その根元に白龍大神と樟守大神を祭る二つのお社がある。左の赤い神明鳥居が白龍大神で、右の白い明神鳥居が樟守大神。お社の前にはそれぞれ2つの石が置かれていて、その石を撫で、病気や怪我の部位を撫ぜれば、平癒すると云われている。<br />https://www.facebook.com/media/set/?set=a.6707697862633514&amp;type=1&amp;l=223fe1adec<br /><br /><br />大手門へ向かうが、続く

和歌山城 二の丸(Outer Citadel, Wakayama Castel, Wakayama, Japan)

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2021/03/26 - 2021/03/26

640位(同エリア794件中)

旅行記グループ 和歌山城

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ちふゆ

ちふゆさん

2021年3月26日(金)2時過ぎ、本丸から今度は裏坂を降りる(下の写真1)。二の丸背後にある台所門から本丸・天守曲輪へと至る搦手側の登城ルート。坂を降りた台所門跡から見上げる連立天守と桜は美しい。

二之丸は藩政を執り行なう場でかつ藩主の生活の場でもあった。多くの御殿が建てられており、初代頼宣と14代茂承以外の藩主はここに住んでいた。天守に幕末に描かれた「和歌山御城内惣御絵図」があったが、この二の丸にはかなり大きな建物が建てられているのが分かる。

二の丸御殿は江戸城本丸御殿を模して表・中奥・大奥に分かれていた。表は藩主が謁見や儀式を行なうとともに藩の政庁として諸役人が政務を執る場所。中奥は藩主が執務を行う普段の生活空間で、家老や側近のものが詰めていた。大奥は藩主の正室や側室たち、彼女らに仕える奥女中の居所で、部外者は藩主しか入れなかった。ちなみに大奥があったのは、江戸城・和歌山城・名古屋城のみ。

台所門は中奥と大奥の間辺りにあった。二の丸の南側、虎伏山の麓に一中門跡から山吹渓(鶴の渓)まで続く道があるが、桜並木が美しい(下の写真2)。

まずは西の丸に近い大奥跡へ。西の丸との間の西内堀に御橋廊下が架かっているところ。現在は芝生が広がっている。

もともと二の丸御殿には表と奥向だけが置かれていたが、江戸城本丸が表・中奥・大奥に三区分されると、この二の丸にも大奥が設置された。ただし、和歌山城で「大奥」という名称が使われるのは江戸後期の1792年からで、それまで「御内証」と呼ばれていた。

大奥と中奥との間は塀や御錠口で厳重に区画されていた。大奥は御殿向・長局向・広敷向に分かれており、北東部の御殿向は藩主の居所を中心とした範囲で、居間や寝所などが置かれていた。東南部の広敷向は大奥の所務を取り扱う広敷役人の役所で、ここは男性が入れた。

西側の縦長の二階建ての長屋が長局向で、奥女中たちの生活空間だった。大奥への出入り口はこの長局向の南にある七ツ口で、朝五つ(午前8時頃)から夕七つ(午後4時頃)まで開き、ここで買物もしていた。

江戸末期に描かれた「和歌山ニノ丸大奥当時御有姿之図」には大奥の建物や庭だけでなく、大奥を囲む多門櫓や御橋廊下の入口も描かれているが、実際に御橋廊下の架かる北側で多門櫓の礎石列が発掘されたそうだ。多門櫓は5棟並んでおり、道具を入れる物置や蔵として使われていた。

また、御橋廊下の架かる南側からは石垣に組み込まれた穴蔵状遺構も発見されている(下の写真3)。江戸城大奥付近にあった石室と同様に非常の際に大奥の調度品などが収められていたところと考えられている。

続いて西側の中奥跡へ。桜の木などに囲まれた広場になっており、桜まつりの提灯が掛かっていた。中奥は藩主の公邸で、殿様の居間や家老や側近の部屋や世話係の役所、風呂、台所などが置かれていた。大奥との間が厳重に区画されていたのに対し、表との間には明確な境界はなく、藩の政治と殿様に仕えることは一体化されていたと考えられる。

一番西側の表跡も中奥跡同様、木や石に囲まれた広場になっている。花見してる人たちがいたけど、許されてるのかしら? 表は冒頭にも書いたように藩主の謁見や儀式を行う場で、藩士は身分格式で座る部屋が決まっていた。南東角に幕府の上使を迎える唐門があり、その左手にそれ以外の訪問者が使う表玄関があった。

建物に入ると、来客や警備の侍の控室である遠侍(とおさむらい)、公式行事を行う大広間、応接を行う対面所と続いていた。また、表玄関の奥(西)の脇玄関を入ると役人が政務を行う番所、控室、詰所、執務室などの御用部屋も置かれていた。

表跡の奥、右手には樹齢450年と云われる一の橋の樟樹(くすのき)があるが、その根元に白龍大神と樟守大神を祭る二つのお社がある。左の赤い神明鳥居が白龍大神で、右の白い明神鳥居が樟守大神。お社の前にはそれぞれ2つの石が置かれていて、その石を撫で、病気や怪我の部位を撫ぜれば、平癒すると云われている。
https://www.facebook.com/media/set/?set=a.6707697862633514&type=1&l=223fe1adec


大手門へ向かうが、続く

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  • 写真1 裏坂

    写真1 裏坂

  • 写真2 二の丸南側桜並木

    写真2 二の丸南側桜並木

  • 写真3 穴蔵状遺構

    写真3 穴蔵状遺構

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